急成長を遂げている企業のなかには、アウトソーサーに一任していた顧客接点窓口をアウトソーシングから自社内へ移管、またはアウトソーサーと自社との連携を密にすることで、顧客ニーズに素早く・適格に応え成長につなげたケースが多く見られます。健康食品や化粧品をネット販売する「北の達人コーポレーション」もその1社。サブスクリプションビジネスにおいて、電話を通じた業務改善・問題解決へを導いた事例を解説します。
1日600件の入電、インハウスとアウトソーサーで対応サポート
北の達人コーポレーションは急成長を遂げているEC企業。2019年2月期の売上高は前期比57.1%増の52億9200万円、営業利益が32.6%増の14億300万円。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しているのです。
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売上高の推移(画像は北の達人コーポレーションの決算説明会資料からキャプチャ)
業績好調に伴い、問い合わせ窓口の稼働率も増加。すべての窓口の受信数を合算すると1日あたり約600件にのぼります。
これらの入電は社内14~15名、外部パートナー3~5名の体制で応対。通話が終わるとすぐ次の電話がかかってくる状態で、後処理の時間を確保するために一時的に入電をストップするといったアナログな手法を用いることもあったそうです。
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北の達人コーポレーションのECサイト「北の快適工房」では、電話での相談・問い合わせを積極的に受け付ける旨を案内しています(画像は「北の快適工房」からキャプチャ)
入電といっても、その内容は千差万別です。北の達人コーポレーションの場合、主に4つのパターンに分けられます。
- 健康美容相談を行う商品カウンセリング課部
- 解約を受け付ける解約窓口カスタマーサービス部
- 健康相談や解約以外の電話での注文や質問に対応するカスタマーサービス部
- ラジオやBSテレビなどのインフォマーシャルからの問い合わせを対応するインフォマーシャル窓口
部署によって、つまり入電内容ごとに消費者から求められる対応、とりわけ処理スピードに関しては大きな差異があります。その差異にこそ顧客の満足度を最大化する秘訣(ひけつ)があるのです。その対応内容、目的などを説明しましょう。
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北の達人コーポレーションのコールセンターの様子
入電内容に応じた顧客対応――相談は平均10分、解約は2分~2.5分をめざす理由
北の達人コーポレーションの商品カウンセリング課に寄せられる健康美容相談の場合、一般的なコールセンターのような生産性は求めていません。ユーザーの不安の払拭や満足してもらえるような提案をすることを重視し、平均でも10分程度時間をかけじっくりと向き合う必要があります。
丁寧なカウンセリングを行うためには、情報の正確な把握と適切な情報提案が必要。消費者の“生の声”である通話内容の振り返りができるコールセンターシステムの機能を活用し、同課メンバー全員にスーパーバイザーのレポート参照権限を付与しました。
お互い今何をしているのかを共有できるように工夫し、お客さまアンケートの結果と実際の通話記録を照らし合わせて振り返ることにより、応対品質向上にも役立てています。チーム間で顧客の引き継ぎがあった場合も、通話中に保留せず指定先へ転送することで後処理の短縮にもなっているそうです。
一方、カスタマーサービス部の解約窓口受付は効率を重視しており、解約1件あたり2分から2分半ぐらいで終話できるようにしています。解約希望の消費者は、問い合わせ時点ですでに固い意思を持っているため、引き留めなどを行うよりもまずスピーディかつ気持ちのよい対応を行うことが必要だと考えたのです。
この効率化を実現するために、これまで外部パートナーに委託していた解約窓口を社内に移管。効率よく行うためにクラウド型のコールセンターシステムを自社に導入し、待ち呼(電話はつながっているものの、オペレータが対応できないため、お客さまが待ち状態になっていること)設定、ガイダンスの工夫を施してスピードアップを図りました。
一見、解約はお客さまとの関わりを断ち切るだけといったコミュニケーションの印象がありますが、そこですら北の達人コーポレーションは顧客のロイヤリティを優先しているのです。入口=相談窓口、出口=解約窓口の役割をしっかりと差別化することで、消費者のニーズに合った窓口対応が可能になりました。

自社コールセンターシステムの稼働状況モニタリング機能。北の達人コーポレーションはリンク社が提供する「BIZTEL」を導入しています
コールセンターシステムから得られる情報は、消費者の生の声ばかりではありません。自社内にコールセンターシステムを構えたことで、顧客ごとにカルテを作成し、入電があった際に適切な商品提案をできるようにしました。
電話番号ごとにどれくらいの入電数があったか、どの窓口にどれくらい電話があったかなどを、データとして把握。オペレータごとの対応件数や対応時間がひと目でわかるようになったため、オペレータの人材育成の際に適切なアドバイスも可能になりました。
急成長と比例して増加した顧客に対して定型的なコミュニケーション手段だけで対応するのではなく、顧客ごとの情報に沿った対応をすることで満足度の向上を引き出す――。北の達人コーポレーションは、事業の成長に合わせて、電話環境をクラウド利用することで、ロイヤリティの向上も同時に実現することに成功したのです。
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オリジナル記事:北の達人コーポレーションの急拡大を支えるコールセンター業務の裏側 | デジタル時代のコミュニケーション術
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