EC事業者など“その道のプロ”が評価したECサイトは、どんな点が優れているのか? EC事業者などが審査して評価した「第11回 全国ネットショップグランプリ」(一般社団法人イーコマース事業協会主催)の受賞5サイトには、他のECサイトも参考にできる成長のヒントが存在している。EC事業者や専門家が評価したECサイトから、優れたサイト作りや戦略作りなどのヒントにつながる評価ポイントをまとめた。
第11回を迎えた「全国ネットショップグランプリ」は自薦・他薦含めて240店舗の応募があり、関係者がその中から優秀店舗5サイトを表彰した。
イーコマース事業協会の会員による投票、専門家・学識経験者・有識者を交えた審査委員会にて審査し、表彰店舗を決めた。主な審査基準は次の通り。
- アイデアのユニークさ、目新しさ
- 一般の顧客ユーザー(利用者)への情報提供の適切さ
- 各デバイスでのデザイン性の高さ・操作性、動作確認
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第11回「全国ネットショップグランプリ」表彰式の様子
グランプリ
和気文具 |
https://www.wakibungu.com/文具に付加価値を提供して、価値ある文具を販売していることが伝わってくる。特に情報発信は他のECサイトのお手本になる。ウェブマガジンではさまざまな切り口で文具の素晴らしさ、うんちく、選び方を提案しており読み応えがある。
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和気文具はECサイト内で「ウェブマガジン」を展開
YouTube、Instagramなどで顧客との接点を築いており、コミュニケーションを重視していることが伝わってくる。
和気文具はYouTubeに「和気文具チャンネル」を開設している(編集部が追加)
PCとスマホで同等の情報量を提供しながらも、スマホ版ではイメージスライダーやカルーセルなど余分の演出は使わず、モバイルでの回線に配慮した取り組みに好感がもてる。さらにスマホ版で、より多くの情報が見たい人と、サクッと見たい人の双方を満足させるように、「説明を全て表示する」「説明を隠す」のボタンで切り替えられるのはよいですね。
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スマホサイトでは「説明を全て表示する」「説明を隠す」ボタンで説明文の表示・非表示を切り替える
きちんと質感が伝わる説明写真・イメージ写真、実際にその商品を使っての商品説明(「使えると思うよ」ではなく、手帳であればそれへ実際に書き込んで「ほら、使えるよ!」的な商品説明)、疑問を払拭する丁寧な用語解説(AとBの違い)、自分も誰かに語りたくなるような豆知識(うんちく)など、丁寧な商品ページ作りが心がけられていて、好感を持てる。加えて、「もっと便利するアイテム」としての関連商品・オプション商品の紹介や、たとえば「本商品はリフィルのみの販売です。カバー付きはこちら」のように、「買ったけどアレが付いてなかった。買い足ししなければ……」のような失敗を防ぐ工夫、配慮もなされており、安心して買い物できる。
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商品説明ページ
豊富な品ぞろえを探しやすくしている点などはユーザーへの配慮を感じた。
準グランプリ
ひなたライフ |
https://hinatalife.com/Instagramなどに対応したスタイリッシュな画像やデザインが目を引いた。
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「ひなたライフ」のトップページ
SNSとの連携なども意識しつつ、商品の魅力をビジュアルで訴求し、購買につなげている。
個々の商品だけをクローズアップして紹介するのではなく、日常生活にどのように存在する商品であるかをビジュアルでコミュニケーションしている。またそれぞれのビジュアルには言語による表現を設定し、補足的に深い情報を提供している。写真の組合せ順序もよく考えられている。
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商品の魅力をビジュアルで訴求する
「ひなたぼっこのような温かい暮らしのお手伝いをしたい」というコンセプトがとても伝わるECサイトだった。
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ひなたライフのInstagramのフォロワーは13万人超(4月22日時点)
商品に合ったシンプルで清潔感のある世界観と、スクロールとともに緩やかに移り変わる写真と、ふわりと表示されるテキストなど、魅せ方にも工夫をこらしていて素晴らしいです。少しテキストの文字が小さく読みにくい点がありますが、全体的にはとても好感が持てます。
サイト全体のブランディングがしっかりしているので、価格競争に巻き込まれることはないのであろうかと感じた。
ふとん通販 ねむりサプリ |
https://www.rakuten.co.jp/sleepmaster/デスクトップサイトのヘッダー内、「世界各国のお布団をそろえました」というコピーにドキッとした。冷静に考えればどこの国でも布団で寝るのが当たり前、どこの国でも布団はあるが、なぜか「布団は日本だけのもの(文化・生活習慣)」のような錯覚がどこかにあった(ある)のかもしれない(と考えさせられた)。
専門店ならではの、素材の説明やアレルギーに関する情報がしっかり記載されている。
1つひとつの商品にコンセプトや用途が記載しておりお客さまを迷わせない設計になっている。
製品の写真表現は工夫があり見やすいレイアウトも心がけている。
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商品説明ページ
特別賞(大阪府知事賞)
HEADS |
http://www.e-heads.co.jp/資材の卸となると、その商品(資材)のブツ撮り写真のみ掲載されている、付帯する情報としても寸法や重量、材質程度であることが多いが、その資材を実際に使用した様子や店頭ディスプレイの様子(例)などのイメージ写真も併せて多数掲載されており、その資材の利用をイメージしやすいのが好印象。その資材の使用方法や使用における注意点、コツも解説されている。お客さまへのヒアリング、そこから吸い上げた要望などを、商品の改善へ結びつけている。
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HEADSのトップページ
資材だけでなく、それと同デザイン・同テイストのPOPやギフト用の掛け紙などの素材(PDFなどのデータ)を無料でダウンロードできる。SPツールの会社として、ただ売るだけでなく、お客様の売り場、売上アップまでを考えていることの証。「冷凍スイーツ販売成功事例」のような、ビジネスのアイデア、商品開発の提案も行なっている。ただ、SPツールを売る...のではなく、その先もきちんと見据えるビジネスを手がけている会社であること、そして、スタッフ一人一人もそのような想いで取り組んでいることが伝わってくる。
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POPのテンプレートがダウンロードできる
商品本体に品番が記載されており、注文履歴や納品書などを見なくてもスグに・楽に再注文ができる仕組み。12時までの注文で当日出荷→翌日到着なので、開店前に不足間近であることに気づき注文すれば、翌日には届き困らない。
「テイストシリーズ」で「テイスト」から選ぶのは良い。イメージに合ったモノはないか? という探し方ができる。
写真の綺麗さ、使用シチュエーションの描き方はさすがです。
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使用シチュエーションを描いた商品詳細ページ
特別賞(中小機構 理事長賞)
鶏肉、からあげ通販のチキンナカタ |
https://www.rakuten.co.jp/chicken-nakataサイトロゴに打ち消し線が引いてあったり、キービジュアルの「チキンだけではなナカッタ!?」というコピー、「猫とこたつと思い出みかん」「うめたまご」「高糖度いちご紀州まりひめ」など……「鶏肉通販のショップではないのか?」と思わされる(惑わされる)。それらの「鶏肉ではない商品」や企画コンテンツへもかなり力が入れられているし、本当に販売しているし……読み込めば「チキンナカタというショップ(チャネル)を通じて和歌山のものを売る、和歌山を盛り上げる」という意図があってのことと理解できる。本業である鶏肉、からあげの販売をシッカリやっている上でのそうした取り組みということで、サイトロゴの打ち消し線や「チキンだけではナカッタ!?」というコピーの意味を理解できた。
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鶏肉、からあげ通販のチキンナカタのトップページ
キャッチコピーのわかりやすさ、届きやすさも素晴らしい。鶏専門店だったが、台風の被害で鶏以外も扱うようになったと推測できるが、それを逆風ととらえず、前向きにECサイトで地域支援も含めて商売に取り組む姿勢がサイトから感じることができた。サイト名の一時的な変更をフックに、「台風21号の影響と被災地支援販売」につなげている導線設計は、思わずクリックしてしまう設計だった。
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「台風21号の影響と被災地支援販売」を呼び掛けている
楽天のショップで、ユーザーレビューだけのページ、いわゆる「お客様の声」のみのページを用意しているのは初めてみたかもしれない。ざっくりと「ショップ」の評判を見て、評価するのには都合が良い。
生産者や、販売者のこだわり、チキンへの愛が伝わってきます。
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※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:ECのプロが評価した通販サイト5選。ネットショップグランプリ受賞店に学ぶサイト作り
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