BEENOS(旧ネットプライスドットコム)の創業者で、現在はアジア新興国を中心にスタートアップに投資を行う佐藤輝英氏は2015年7月、ベンチャーキャピタル「BEENEXT」を立ち上げた。BEENOSでもアジア各国のオンラインマーケットプレイスやオンライン決済会社などへの積極的な投資を行ってきた。BEENEXTを新しく立ち上げた狙いは? 今後の投資戦略などについて佐藤輝英氏に話を聞いた。
BEENOSの経営陣に安心、新たな段階に
――BEENOSでアジア各国のスタートアップ企業への投資を行ってきましたが、ベンチャーキャピタルを立ち上げた背景を聞かせてください。
インターネットを使って社会問題を解決したり、生活を豊かにするようなサービスを創造しているのは、それぞれの国にいる起業家です。そうした起業家をサポートするにはどうすればいいのかを考えた結果、シンガポールを拠点にするベンチャーキャピタルを作ることにしました。
2014年12月にBEENOSの代表取締役を退任し、その後、世界中の起業家に会うために世界中を飛び回りました。そのため、1~2月はほとんど会社に行きませんでした。でも、会社が次の体制下でも、しっかり成長を続けることを確認できた。予定ではもう少しの間、BEENOSの取締役を務める予定だったのですが、2月に取締役も退任しました。
大株主で、ファウンダーでもあるので、必要とされればアドバイスなどをするつもりです。しかし、この1年間は次の世代がしっかり経営しているので、安心できています。
取締役も退任したので、世界中でさまざまな人たちと会って話をしてきました。地球規模でインターネットによるイノベーションが加速しているということを再認識することができました。
佐藤 輝英 氏
国をまたいだ起業家のコミュニティを創る
――ベンチャーキャピタルの目的は。
起業家たちのネットワークを作ることが最大の目的です。世界中の投資先の起業家をオンラインとオフラインの両方でつなげることで、お互いのノウハウを共有し、成長のスピードを早めることができます。
ノウハウの共有以外にも、起業家は他の起業家と会うことで、インスピレーションを受けたり、新しい構想が浮かんだり、ベンチマーク先ができたり……いろんな発見があります。起業家独自の放つエネルギーが新しいイノベーションを起こす源泉になるので、ネットワークを広げ、国をまたいだ起業家のコミュニティを創ることに力を入れています。
――シンガポールに拠点を置いた理由は。
東南アジアやインドといったアジア新興国のハブとして、人と情報が集まりやすい場所だからです。シンガポールはアジア新興国のほぼ全ての起業家や投資家が簡単に集まるので、情報やネットワークを広げやすいという利点があります。
――投資対象は?
世界中の次世代の起業家が対象で、eコマースだけではなくインターネットテクノロジー全般です。ただ、変化率の大きい国への投資を優先するので、当面はインドへの投資が多くなると思います。おそらく今回のファンドの半分以上はインドへの投資になるでしょう。次いで、東南アジアです。
――出資しているのはどのような人たちなのですか。
今回のファンドへの出資者のほとんどが、自らも起業家として成功した方々。新しいことに関心があり、事業などに関わっていきたいが会社の経営などで忙しく、深く関わることは物理的にできない。一方、経済面や人脈面では次の世代を支えるための活動をしていきたいという方々がほとんどです。今回のファンドの目的は、こういった先輩起業家と、未来の起業家との間のネットワークを作ることにもあります。
――すでに投資している企業のサービスはどんなものがありますか。
インドの「Droom」というサービスは、スマホで車やバイクなどを売り買いするサービス。個人だけでなく、ブローカーやディーラーも出品していて、ものすごい伸びですよ。このサービスは他の地域でも展開できるのではないかと思っています。
「HackerEarth」はエンジニアのデータベースで、どのくらいの能力を持っているか独自のオンラインアセスメントツールでリアルタイムに把握できます。企業が採用したいエンジニアをオンラインで探すことができるサービスです。採用が発生した際にお金をもらうというビジネスモデルとなっています。
このほか、東南アジアや米国、日本も含めて、既に15程度の企業に出資しましたが、年内には20程度に増える予定です。
BEENEXTが出資しているベンチャー企業のロゴ
インドネシアで約120人の起業家向けキャンプ
――投資の意思決定はどのように行うのですか。
BEENOSでは現地の起業家に会った後、取締役会を緊急開催し、投資するかどうか決めていました。しかし、インドなど動きの早い国では1週間もすればすでに次の話が決まっているということが少なくないほど、すごいスピードで動いています。そのため、BEENEXTは私が会って、話していいと思ったらすぐに投資できるようにしています。
――勉強会やミーティングはどんなペースで行うのでしょうか。
集まれる人だけで集まるようなミーティングについては随時で、特に定めてはいません。決まっているのは、年に1度、世界中の投資先の起業家を集めた「BEE Global Camp」という起業家向けキャンプを世界のどこかで開催することです。2014年はシンガポールで40名ほどを集めて開催しましたが、2015年は11月にインドネシアのバリ島で120名を集めて行いました。2016年はインドで開催する予定です。
――今後の取り組みは。
これまでと変わらず、起業家との信頼関係と、起業家同士のネットワークを大事にしていきたい。最終的には、そのネットワークが複数の線でつながりコミュニティ化していくことが理想ですね。
BEENEXTのミッションは、エイブラハム・リンカーンの言葉を少し引用し「起業家の、起業家による、起業家のためのパートナーシップ」という言葉を掲げました。こうした動き方をするベンチャーキャピタルファンドは、米国にはいくつかあります。しかし、アジアにはあまりない。さらに複数国をまたいで活動しているものはありません。そういう立ち位置を不思議な日本人として創っていきたいと考えています。
BEE Global Campの集合写真
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オリジナル記事:BEENOS創業者の佐藤輝英氏が挑むアジア新興国の起業家ネットワーク作り | 単発記事
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