ニトリのリニューアル失敗から得られる教訓。リスク分散としての多店舗展開は重要だ | 単発記事 | ネットショップ担当者フォーラム | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2015年6月26日(金) 09:00
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「ニトリネット」の休止期間中による売り上げは、予算比で半分程度に落ち込んだ

ニトリが行ったサイトリニューアルの失敗は、6月17日~6月23日午後6時までの実質7日間、通販・EC売り上げの大半を占める「ニトリネット」の営業停止という自体を招きました。ただ、ニトリは「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」にも出店しており、サイト訪問者をモール店へと誘導。全通販・ECの営業ストップという最悪の事態は避けることができました。今回はニトリの失敗事例から、“EC”の観点で機会損失を最小限に抑える「リスクヘッジ」の方法についてまとめてみます。

ニトリネットの休止期間、売り上げは予算比で半分程度に

(ECの売り上げは)ほぼ「ニトリネット」による売り上げ。休止期間中の「ニトリネット」の売り上げは、予算比で半分くらい。

ニトリによると、「ニトリネット」の休止期間中の売り上げは予算比で半分程度に落ち込んだそうです。

どの程度の機会損失になったのか、昨年の実績をベースに算出してみます(閑散期と繁忙期の波動があるので、あくまで予測です)。

2015年2月期におけるニトリの通販売上高は、前期比27.0%増の155億円でした。1日あたりの通販売上高を算出すると約4200万円。休止期間を7日間として計算すると、前期実績ベースでは7日間で約2億9400万円の売り上げとなります。

ニトリの通販売上高は毎年2桁成長を続けている(詳しくはこちら)のですが、前年の平均実績ベースで予算を立てたと仮定してみると、約1億4700万円の売り上げが休止期間中に吹き飛んだ計算となります(通販売上高はほぼ「ニトリネット」ということですが、モール店の売上高も含んでいるので、もちろん正確な数値ではありません。あくまで目安として算出しています)。

こうした計算からは、少なくとも1億円以上は機会損失が発生したのではないかと推測できます。しかし、「モールにトラフィックを誘導できたので、半分程度の売り上げ損失で収まった」という前向きな見方もできます。

ニトリネットの運営休止中は楽天にトラフィックを誘導
ニトリネットでは楽天店への誘導を案内していた

つまり、自社ECサイトだけではなく、モールへの出店で複数店舗を運営する多店舗展開を行っていたので、売り上げの減少を最小限にとどめることができたとも言えるです。

ニトリのリニューアル失敗は、“リスクの分散”という観点から、多店舗展開の重要性をEC事業者に示したのではないでしょうか。

過去にヨドバシカメラもリニューアルによって自社ECサイトが正常に稼働しないといったことが起きました。資本力のある大企業レベルでも、リニューアルの失敗に陥るケースはあるのです。

また、情報漏えい事故など、何かが引き金となり自社ECサイトが突如、運営できなくなるということは、どんなレベルの企業でも起き得るという認識を持つことが重要になるでしょう。

ニトリの楽天店
楽天店には「現在ご注文集中により、配達日確定のメール配信に遅れが発生」と記載されている
レンサバのデータ吹き飛び、2週間も自社ECサイトが再開できないということも

ここで3年前に多店舗運営の重要性を認識したというEC会社の事例を。まだ記憶に新しいかもしれない、レンタルサーバー事業のファーストサーバが2012年に起こしたデータ消失事故のことです。

同社のサーバーを利用していた、照明器具のネット通販を手がける老舗ネット通販企業、照国電気は2週間もの期間、自社ECサイトの休止に追い込まれました。

ローカルに保存したバックアップデータで復旧にとりかかったものの、2週間もの期間を要したそうです。バックアップがあっても、商品点数が数万点もあるケースなどでは、復旧作業と検証のための時間が膨大だったのです。ECはサイトが稼働しなければ機会損失の影響をもろに受けてしまうのです。

堂園秀隆社長はファーストサーバの件を次のように振り返っています。

自社サイトが2週間ダウンした時は、楽天市場とYahoo!ショッピングのモールでも店舗を運営していたので、なんとかしのぐことができました。ニトリさんの事故は他人事じゃない。やはりリスクヘッジとしての多店舗展開は必要だと思います。

資本力のある大手企業ならばリスクヘッジとしての多店舗展開は痛くもないコストかもしれませんが、中小企業となると話は別になるかもしれません。ただ、現在は「Yahoo!ショッピング」への出店が無料化されているので、「リスク分散やサイトの丸ごとバックアップとして出店するのはアリだと思います」と堂園社長は説明します。

ただ、戦略としてモールに出店しないという企業も多いのは事実。音響機器ECのサウンドハウスのように、「自社EC一本 → 多店舗展開 → 自社EC一本」といった具合に戦略を変えていく企業もあります(詳しくはこちらから)。1つ言えることは、多店舗展開をしていない企業は、あらかじめ考えられる最悪のケースを想定し、リスク分散の方法を考えておく必要がありそうということですね。

ただ、多店舗展開も注意が必要です。Googleのパンダアップデートによって、重複コンテンツや低品質コンテンツはサイトの評価を低く下げてしまい、検索エンジンからの集客減に陥ってしまう可能性があります

自社ECサイトとモール店のコンテンツを変えなければ、EC事業全体に悪影響を与えてしまう恐れがあります。

たとえば、「どのサイトもメーカーから提供された説明文をそのまま活用」といったことは避けるべきしょう。それぞれのサイトで、ユーザー属性に適した説明文などオリジナルコンテンツを掲載していくことが求められます。

リスクヘッジとしての多店舗展開も、それなりに手間をかける必要があるということですね。

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瀧川 正実
ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販、ECに関する業界新聞の編集記者を経て、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、EC業界に関わること約8年。まだまだ、日々勉強中。

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