ということで、1月22日にインデックス・アイの山崎さんとの共著『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)が出版されますよー!来週から一部書店で先行発売されます。
次世代共創マーケティング池田 紀行,山崎 晴生
SBクリエイティブ 2014-01-22
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共創マーケティングは、あらゆる商品がコモディティ化する高度成熟市場において、顧客を単に「製品を”消費”する消費者」として捉えるのではなく、共に価値をつくり、向上させていく「価値共創者」とみなし、マーケティングを再構築して行く古くて新しいマーケティングコンセプトです。
共創マーケティングによって得られる効果は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上、顧客のエバンジェリスト化によるクチコミの促進、コミュニティリサーチによる予期せぬ、期待を超えたインサイト発掘など多岐にわたります。本書の5章で、共創マーケティングで先行する味の素、江崎グリコ、花王、キリン、ベネッセ、リクルート、良品計画など7社の担当者インタビューも掲載していますので、そちらもぜひご覧ください。
そして本書は、うちの共創マーケティングプラットフォーム「ココスクウェア」を使った「次世代共創マーケティングコミュニティ」で、360人の方々と交流をしながら書き進めました。多くの方との意見交換を通して、多くの新しい気づきを得ることができました。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
今回、SBクリエイティブさんからチャンスをいただき、2014年という年に共創に関する本を上梓させていただきましたが、先ほども書いたように、共創(Co-Creation)というコンセプトは古くからあるものです。日本のマーケティング史において共生、共同、協働、協業などを表す「co-」が初めて付いたのは1970年代にまでさかのぼります。それゆえ、本書を書き上げるにあたって、数多くの先人たちの書籍や論文に教えを請いました。
下記に――驚くほど広く深い――共創マーケティングに関連する書籍を紹介します。拙著『次世代共創マーケティング』と合わせてお読みいただくと、より深い知識を吸収できると思います。ピンと来た本がありましたら、ぜひ手に取ってみてください。なお、下記に紹介する本の多くは高広の兄貴から「これも読まずに共創を語るな」と愛の鞭を入れられて読んだ本であることを付記しておきます。
では行ってみましょう(※下記、著者名のあいうえお順です)
● 学習院大学の青木教授編著の骨太ブランド戦略本。コモディティ化はなぜ起こるのか。どうすれば脱コモディティ化ができるのか。ブランド戦略の視点から価値共創やコミュニティの意義がまとめられています。
価値共創時代のブランド戦略―脱コモディティ化への挑戦青木 幸弘
ミネルヴァ書房
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● 名著『ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング』の共著者でもある一橋大学の阿久津教授の本。ソーシャルメディアによって情報の流れや人の集まり方が変わり、ときに経済価値をも変えてしまう。本書ではこの大きなうねりを「ソーシャルエコノミー」と呼び、AKB、ニコニコ超会議、B1グランプリなど、ネットとリアルの双方で大きな話題となった事例をベースにわかりやすく解説してくれています。
ソーシャルエコノミー 和をしかける経済阿久津 聡,谷内 宏行,金田 育子,鷲尾 恒平,野中 郁次郎
翔泳社
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● 慶応大学 池尾教授の本。『次世代共創マーケティング』の出版が決まってすぐに手に取った本です。いまから10年前に書かれた本ですが、ネットコミュニティの特性、高関与商材と低関与商材におけるコミュニティマネジメントのポイントなどがしっかりまとめられています。
ネット・コミュニティのマーケティング戦略―デジタル消費社会への戦略対応池尾 恭一
有斐閣
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● 「共創マーケティング≒共創コミュニティ≒自社メディア」ということで手に取った本。近年注目されるオウンドメディア戦略についてわかりやすくまとまっています。大和ハウスの大島さん、花王の本間さん、著者の鼎談も読みごたえありです。
オウンドメディアマーケティング 顧客との関係を創造し、ビジネスを強化する自社メディア戦略井浦知久
宣伝会議
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● 「共創マーケティング≒共創コミュニティ≒マーケティングプラットフォーム」ということで手に取った本。こう言っては失礼ですが、さほど期待せずに手に取ったものの、メチャクチャ素晴らしい本で感動。本書では「ブランドは場(プラットフォーム)である」とし、体験価値を共創するプラットフォームの意義や構築の仕方についてわかりやすくまとめられています。最近、「【R25】戦略コンサル“山口”さんの洞察がおもしろい!」というまとめで共著者の山口さんがバズッてました。山口さんのTwitterアカウントはこちら ⇒ @blogucci
プラットフォーム ブランディング川上 慎市郎,山口 義宏
ソフトバンククリエイティブ
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● とっても良い本です。リフレーミングとは、当事者自身の認知や活動の枠組み(フレーム)が変わることによって、同じ出来事に対する人々の受け止め方や反応の仕方が新しいものへと生まれ変わることを指すセラピー用語。市場の定義をリフレーミングすることで成功したマルちゃん鍋用ラーメン、はとバス、キリンフリー、アタックNeoなどが秀逸です(キリンフリーとアタックNeoは、本書の第Ⅲ部「市場の共創性―リフレーミングを受け止める」で考察されています。
マーケティング・リフレーミング — 視点が変わると価値が生まれる栗木 契,水越 康介,吉田 満梨
有斐閣
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● ブラー(blur)とは、「あいまいなもの」を意味します。情報伝達手段の飛躍的進歩の結果として、「コネクション」「スピード」「無形物」の価値が増大しました。いつでもどこでもつながり合い、ものごとのスピードは加速し、経済の中で形のないものの占める割合が増加した結果として、「生産者と消費者」「製品とサービス」といった、従来あったはずの境界がブラー(blur)つまり「あいまいなもの」になってきています。ブラー化の象徴として製造業のサービス化があり、それが全ての事業や製品をサービス業として捉える「サービス・ドミナント・ロジック」につながり、そしてそれが消費者を「価値共創者」として捉えるという価値共創につながります。多少難しいですが、価値共創の背景をしっかり押さえておきたい方は読んでおきたい一冊。
ブラーの時代―eコマースの新・経営戦略スタン デイビス,クリストファー マイヤー,Stan Davis,Christopher Meyer,入江 仁之
ピアソンエデュケーション
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● 本書は、サービスイノベーションや組織学習の方法(サービスの改善や改革のアプローチ)を整理している本ですが、「価値共創」の概念をしっかり理解したい方にも必読の書。共創と切っても切れないサービス・ドミナント・ロジックについて深く考察されています。顧客と企業の価値の共同創造(Value Co-Creation)から見た新しいサービスの取り組み方がよくわかります。
サービス・イノベーションの理論と方法近藤 隆雄
生産性出版
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● 「世界でもっとも影響力のあるビジネス思想家」と言われるC・K・プラハラード氏の著書。『企業による価値創造から個人とともにイノベーションを起こす「コ・イノベーション」の時代へ。』として、これからは企業が価値を創造して顧客に提供するのではなく、顧客と企業が共に価値を共創する時代であると説いています。若干難しいですが良著です。
コ・イノベーション経営: 価値共創の未来に向けてC・K・プラハラード,ベンカト・ラマスワミ,一條 和生,有賀 裕子
東洋経済新報社
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● 共創に通じる「共生」を日本で最も早くマーケティングに取り入れた本がこちら。高度成長期に陰りが見えた1970年代に、低成長時代のマーケティングとして「共生」というコンセプトを(当時論文で)提唱した先見の明に感服しました。
共生マーケティング戦略論―IMコミュニケーション/消費者行動/ブランド戦略/流通チャンネル清水 公一
創成社
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● ご存知、高広の兄貴の著書です。本書は流行を追うのではなく、「本当の変化を把握するための基礎力をつけるための本」。本書の中では、価値共創にも通じるブラーの解説とその先行事例としてのヘルシア12週間健康チャレンジキャンペーンの考察、そして価値共創における重要な視点である「生産と消費が一体化した文脈価値」に通じる考え方としてContextual Marketingという新しいマーケティングコンセプトが提唱されています。ぜひ拙著と一緒に読んでほしい一冊です。
次世代コミュニケーションプランニング高広 伯彦
ソフトバンククリエイティブ
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● 本書も、比較的早い時期に手に取った本です。大日本印刷は、「自立性と多様性をもった個と個の相互作用の中から予期せぬ現象が生み出され、その結果がまた個に影響を与える状態を『創発』と呼び、これから創発がますます起こりやすくなると説きました。いまから8年も前にこんな完成度の高い本が世に出ていたことに感服しました。拙著の書き始めに記した「共創時代の知は、確定された知の結果ではなく、プロセスの中にある。」という言葉は、本書の著者である井関利明氏からいただいたものです。
創発するマーケティングDNP創発マーケティング研究会,井関利明、山川悟、新井範子、上原征彦
日経BPコンサルティング
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● 説明する必要はないくらい有名な本ですね。ハードカバー500ページの骨太本ですが、「関与する消費者」と、その生態系をしっかり理解しておきたい方は必読です。
ウィキノミクスドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ,井口 耕二
日経BP社
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● ご存知、萩原さんの著書です。拙著を書き上げるにあたって、僕も、共著者の山崎さんも、何度も読み直しました。共創マーケティングにおいて重要な役割となる次世代マーケティングリサーチについて、本書以上にわかりやすく解説されている本はありません。ぜひ拙著と一緒に読んでほしい一冊です。
次世代マーケティングリサーチ萩原 雅之
ソフトバンククリエイティブ
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● こちらもあまりにも有名ですね。本書では、マーケティング3.0を「協働マーケティング」 「文化マーケティング」 「スピリチュアル・マーケティング」の融合であると位置づけています。そして、協働マーケティングでは、製品開発やコミュニケーションにおいて顧客や他者をいかに参加させ、協力を得るかが問題になると説いています。
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則フィリップ・コトラー,ヘルマワン・カルタジャヤ,イワン・セティアワン,恩藏 直人,藤井 清美
朝日新聞出版
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● ブランドの熱心な支持(ブランドアドボカシー)を測る指標として最も有名なNPS(Net Promoter Score:推奨者正味比率)について理解する必読の書。類書も多いですが、NPSを学ぶなら元祖であるベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルド著の本書がお勧めです。
顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)フレッド・ライクヘルド,鈴木 泰雄,堀 新太郎
ランダムハウス講談社
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● 本書の著者であるポール・アダムス氏がGoogleに在籍していた頃、ソーシャルメディアに関する研究を主導し、その成果としてGoogle+のサークル機能がつけられたそうです。社会学者のマーク・グラノヴェッターは、強い絆と弱い絆に関する論文の中で、「強い絆よりも弱い絆の方が良い情報源になることが多い」と述べています。本書は、ソーシャルメディア時代における情報伝播のメカニズムを解き明かしてくれます。コミュニティの生態系、ネットでの人と人のつながり、情報伝播メカニズムなどを理解することができるでしょう。
ウェブはグループで進化するポール・アダムス,小林 啓倫
日経BP社
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● この本も、比較的初期に手に取った本です。2003年に出版された本ですが、すごくたくさん付箋が付きました。共創コミュニティではなく、いわゆる従来型のブランドコミュニティの運営法や留意点を復習できる一冊です。
オンライン・コミュニティがビジネスを変える―コラボレーティブ・マーケティングへの転換村本 理恵子,菊川 曉
NTT出版
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● 慶応大学 和田教授の本。ブランド論としては良著ですが、タイトルにある「価値共創」にはほとんど触れられていませんでした…。
ブランド価値共創和田 充夫
同文舘出版
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で、原稿を印刷所に入稿したあとの年末年始で読んだ本がこちら。
● 電通のプラットフォームビジネス局に在籍し、気鋭のプランナーとして注目されている廣田周作氏の著書。本書では、「シェアードヴィジョン」(皆で創りたいこと、皆で創る理想の姿)を明確化することの意義や、そのつくりかた、運営法などがわかりやすく解説されています。ソーシャルメディアの復習にも最適な一冊です。
SHARED VISION廣田 周作
宣伝会議
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● 先に紹介した『コ・イノベーション経営』の共著者であるベンカト・ラマスワミ氏の著書。こちらの本は、理論中心ではなく、とにかく抱負な事例をベースに共創の考え方について学べる一冊。2011年に出版された本なのに、なぜか絶版になっています。Amazonで600円くらいで買えます。良著。
生き残る企業のコ・クリエーション戦略 ビジネスを成長させる「共同創造」とは何かベンカト・ラマスワミ,フランシス・グイヤール,尾崎正弘,田畑 萬,山田美明
徳間書店
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● イノベーションはもはや企業だけで行うものではなく、ネットを通じて消費者とつながり、彼らの叡智をうまく取り込む「イノベーションの民主化」を説く一冊。これは拙著のインタビュー内で、良品計画の奥谷氏が仰っている、顧客による「ユーセージ・イノベーション」(用途開発)にも通じています。タイトルはイノベーション本っぽいですが、内容は骨太の共創本です。事例も抱負な一冊。
ユーザーイノベーション: 消費者から始まるものづくりの未来小川 進
東洋経済新報社
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● 相互につながり合う顧客に対応するためには、企業も顧客と相互に接続されなければならないことを説いています。サービス・ドミナント・ロジックや価値共創を企業の組織論的なアプローチから解説している一冊。
コネクト ―企業と顧客が相互接続された未来の働き方Dave Gray,Thomas Vander Wal,野村 恭彦 (監訳),牧野 聡
オライリージャパン
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いやはや、奥が深い。これらの先人の知恵に触れれば触れるほど、自分の研究と実践がまだまだまだまだ足りないことを痛感します。
上記でご紹介した先人たちの研究と実践の通り、「共創」(Co-Creation)は、一時のバズワードではなく、「顧客そのもの」や「顧客と企業の関係」に対する “考え方” を変えるマーケティングコンセプトです。公式アカウントマネジメントに代表されるような通常のソーシャルメディアマーケティングや従来のブランドコミュニティの運営、そしてアドホック(単発的)なMROC(Market Research Online Communities)を実施することがすなわち共創マーケティングではありません。また、単発的な「消費者参加型商品開発プロジェクト」を立ち上げることや、調査や投票によって消費者に意思決定を委ねることでもありません。
顧客を単なる「消費者」としてではなく、共に価値を創造していく「価値共創者」として捉え直すこと。高度に成熟したマーケット、商品のコモディティ化、PLC(Product Life Cycle)の短命化、消費者の情報行動の変化など、企業を取り巻く外部環境は変化のスピードを早めています。そんな外部環境下において、多くの企業は、3割の顧客から7割の利益を得ています。
絶え間ない新商品投入とテレビCMによって棚(店頭)を確保し、マーケットシェアを維持・向上させて行くパワーマーケティングの効率は明らかに落ちてきています。
マーケターは誰に向かって、もしくは誰と共にブランドを育てていくべきか。そろそろパラダイムシフトが必要な時期に来ているように思います。
※2月4日(火)に出版記念セミナー(参加費無料)をやります。ご興味がある方はこちらからぜひ。