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「お~いお茶」のキャラマーケ戦略が好調、Xやぬいぐるみの有効活用で“お茶離れ”世代にもじわりと浸透

伊藤園が公式キャラ「お~いお茶くん」を起点に若年層にアプローチ。X運用やぬいぐるみ活用で生まれた変化について聞いた。

小林 香織

7:05

「お~いお茶」の公式キャラクター「お~いお茶くん」(以下、写真提供 伊藤園)

国内緑茶市場で長年トップシェアを誇る伊藤園。主力ブランドの「お~いお茶」は、1989年の発売から累計450億本を販売し(2024年12月末時点)、「最大の無糖緑茶飲料ブランド(最新年間売上)」としてギネス世界記録に認定されたことがある。同ブランドでは、2023年頃からブランド公式キャラクター「お~いお茶くん」を活用したマーケティングを本格化。同施策を通じて、お茶をあまり飲まない層にも認知が広がっているという。老舗ブランドが仕掛ける「ゆるキャラ」活用のねらいと成果とはーー。

お茶の良さを“堅苦しくなく”伝える「伝道師」に

同ブランドの公式キャラクター「お~いお茶くん」は2020年に誕生した。ブランドが持つ「定番」「安心」といったキーワードを体現することや、マルチな活用を想定してデザインされたという。

「お~いお茶」の公式キャラクター「お~いお茶くん」

お茶目で愛着があるキャラクターとして制作されており、性別設定はありません。おっちょこちょいで教えたがり、かつチャレンジ精神があるが空回りしてしまう、といった性格です(伊藤園 広告宣伝部デジタルコミュニケーション課 課長 小口 翔平 氏)

「お~いお茶くん」活用のねらいを、小口氏は次のように説明した。

緑茶飲料の顧客層は中高年中心で、男女比では男性が約7割です。急須でお茶を淹れた(または淹れてもらった)経験があり、昔からお茶を飲む習慣がある方と言えます。また、お茶が持つ健康にまつわる機能的価値や「ほっとする」といった情緒的価値を好んでいると考えます。

一方、若年層は茶葉から淹れるお茶ではなく、ペットボトルのお茶を「お茶」として認識しており、本来のお茶の良さが伝わりにくいと感じています。そこで、「お茶の良さ」や「ブランド価値」を堅苦しくなく伝えられる伝道師として、「お~いお茶くん」を活用しようと考えました(小口氏)

男性中心の顧客層から、全世代へ認知拡大をねらう

お茶を飲まない層への普及をねらいとしつつ、キャラクターマーケティングの主なターゲットは、「お~いお茶くんを知らないすべての人」としている。「お~いお茶」をすでに知っている層にも、お茶やブランドの価値をより深く知ってもらいたい意図があるそうだ。そのため、キャラクターマーケティングのKPIには「お~いお茶くんの認知度」を設定している

主な活躍の場は「X」、48.5万フォロワーを獲得した運用

伊藤園が「お~いお茶くん」の戦略を本格化したのは、2023年頃から。それ以前から「お~いお茶」のブランドアカウントとして運用していたX(旧Twitter)を、「お~いお茶くん」のアカウントにリブランドして活動を強化することにした。

「お~いお茶」では複数のSNSアカウントを運営しているが、動画よりも静止画メインのコミュニケーションとなること、当時のフォロワー数が30万人近くまで拡大していたことから、Xを主な活躍の場に選んだという。現在(2026年1月上旬時点)、同アカウントは48.5万人のフォロワーを獲得している。フォロワーは「お~いお茶」の顧客層とは異なり、約7割を女性が占めている

「お~いお茶くん」の公式Xアカウント(公式Xアカウントよりキャプチャ)
Xでは「ぬいぐるみ」を使用したクリエイティブが中心だ

2023年以前も、SNSでは主にイラストによる2次元の「お~いお茶くん」を使った投稿をしていましたが、キャラクターマーケティング施策が本格化してからは、3次元の「ぬいぐるみ」をクリエイティブの主役に据えています。イラストよりもリアル感や愛着が生まれるためか、フォロワー数やエンゲージメント数が伸びやすくなりました。投稿は「お~い」という呼びかけで始まりつつ、トンマナとしては「ですます調」で統一し、「お~いお茶」の化身であることを踏まえ、“中の人感”が出ないよう配慮しています(伊藤園 広告宣伝部デジタルコミュニケーション課 池上 大将 氏)

アカウントの運営は自社、及び外部パートナーと二人三脚で行い、不定期で更新している。クリスマス、ハロウィン、エイプリルフール、バレンタインデーなどの大きなモーメントでの投稿はマストとしつつ、それ以外は月ごとにアイデアを出し合って企画を決定している。時に、流行に乗るようなタイムリーな投稿もする。現状は、お茶の具体的な良さを伝えるというより、キャラクターを認知してもらうことを優先しているそうだ。

社内の担当者は小口氏と池上氏の2人だが、それ以外の社内メンバーの意見を採用することも多いという。運用ルールとして、発信内容は広報部など関連部署の確認を経てから投稿している。

たとえば、Xの「ヘッダー」を利用した「うまくヘッダーに収まらない」というコミカルさをネタにしたミームが起こったときは、当アカウントでもタイムリーにその投稿をしています。これは、社内の若手社員から出たアイデアでした(池上氏)

X運用におけるKPIは、投稿の平均的な「インプレッション数」と「エンゲージメント数」を基準にしている。各投稿の翌日に、X上の数値やパートナー企業が作成した分析レポートをもとに仮説を立てながら分析を実施している。これまでのところ、数値目標は概ね達成しているという。

バズ投稿による売上増に、大谷選手関連の投稿でメディア露出増も

約3年にわたって戦略的にSNSを運用するなかで、大きな反響を得た投稿もある。たとえば、2025年4月1日の「エイプリルフール」の投稿は、1.9万件の「いいね」と57万の「インプレッション」を獲得した。これは、「自販機で『お~いお茶くん』が買えるようになった!?」という内容で、実際には自販機で購入できないのだが、「ぬいぐるみがほしい」という声が想像以上に集まったという。

同投稿が話題になったことで、当社が運営している「お茶の文化創造博物館・お〜いお茶 ミュージアム」にて、「お~いお茶くん」のぬいぐるみが買えるという情報が広まりました。実際にミュージアムに足を運んで購入された方も多くいました(小口氏)

近年の「ぬい活」ブームが後押しとなってか、「お~いお茶くん」のぬいぐるみの人気はさらに高まっている。「より小さいものがほしい」という声が多く寄せられ、ペットボトルよりも小さい手のひらサイズが2025年9月に追加発売された。その他、「お~いお茶くん」のタオルやどら焼きなども展開し、グッズ類が売上増に貢献しているという。

ぬいぐるみをはじめ、グッズ類が売上増に貢献している

さらに、伊藤園の調査では、「キャラクターへの興味関心が、お茶製品購入のきっかけになるか」との質問で「はい」と答えた人が上昇傾向であるとの動きも見られる。「お~いお茶くんのブランドへの好影響は確実にある」と、小口氏は考えを示した。

またXでは、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手に関連した投稿もたびたび反響を呼んでいる。「お~いお茶」では、2024年4月30日から大谷選手をグローバルアンバサダーに起用。そこで、「お~いお茶くん」のアカウントでも相乗効果を狙った投稿をしているという。

大谷選手をテーマにしつつ、「お~いお茶くん」が主語になるような見せ方をしています。「認知度向上」のKPIを踏まえて、「お~いお茶くん」の情報を世の中に届けやすいコミュニケーションの構造を裏テーマとしており、大谷選手に関連した投稿を始めました。その結果、Xアカウントの内容がメディアの記事として取り上げられるケースが増加し、2025年上半期には約80件のメディア露出がありました。過去の運用と比較して明らかに露出が増えたため、こちらも「お~いお茶くん」の成果と捉えています(小口氏)

「お~いお茶くん」を国民的キャラに、海外展開も見据える

伊藤園では、「お~いお茶くん」の施策を今後も継続していく意向だ。これまで同様に、Xを舞台にしながら認知向上を目指すという。

圧倒的な知名度を誇る「お~いお茶」に対して、現状の「お~いお茶くん」の認知度は、5人に1人が知っている程度です。まだまだ伸びしろがあり、Xをメインに情報発信を続けていきます。また、これまではコメントへの返信は一部にとどまっていましたが、今後は積極的に返信していきたいとも考えています(小口氏)

IP事業にも意欲的な姿勢を見せる。「お~いお茶くん」は、2025年3〜5月にストリングスホテル 名古屋で、『 「お~いお茶くん」デコレーションルーム 』の宿泊プランを販売した実績があるが、こうした他社とのコラボレーションも歓迎しているという。さらに、小口氏は「グローバル展開」の展望にも触れた。

ストリングスホテル 名古屋で販売した『 「お~いお茶くん」デコレーションルーム 』(出典:ベストブライダルのプレスリリースより)

いずれは、「お~いお茶くん」をお茶の魅力をカジュアルに伝えられる国民的なキャラクターにしていけたらと思っています。また、「お~いお茶」の製品は50ヵ国で販売しており、「お~いお茶くん」のグローバル展開も視野に入れています。欧米では緑茶を飲む習慣は現状ありませんが、日本のキャラクターやアニメ文化に対するリスペクトを利用し、キャラクターを海外戦略の戦術として活用していきたい考えです。欧州では、すでにキティちゃんと「お~いお茶くん」のコラボ事例もあります(小口氏)

小さな成果は積み重なっているが、目下の課題は変わらず「認知向上」だという。世界No.1の緑茶飲料ブランドとして、国内外から親しまれる「ゆるキャラ」ポジションの獲得を目指す。

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