初代編集長ブログ―安田英久

不況の今こそWebに“人間力”を取り戻そう ~Web担/日経BP/MarkeZine連動コラム

第11回のテーマは「予算圧縮のいま、どう動くべきか」です。
Web担のなかの人

このコラムは、Web担当者Forumと「日経ネットマーケティング」「Markezine」各誌の編集長が、毎回共通のテーマでネットマーケティングを語るコーナーです。

第11回のテーマは「予算圧縮のいま、どう動くべきか」です。

他誌編集長のコラムも同時に公開されていますので、併せてご覧ください。

予算圧縮。いやな響きですね。やりたいことがあってもできない、人も足りない、でも成果を求められる……。

でも、このタイミングこそWeb担当者としての仕事を見直す良いチャンスなのかもしれません。以前のコラム記事「不景気の病に効きそうな薬をもらった」にも書いたように、目の前のことにとらわれていては、将来を作れませんからね。

先日、恵比寿に開店した焼き肉屋に編集部で行きました。オープン2日目に行ったのですが、ホームページにも恵比寿店の情報はないし、店に行っても看板もまだ出ていませんでした。私が店を知ったのは、桜台店に何度か行っていたので、開店のお知らせを手紙でいただいていたからでした。

焼き肉はとても柔らかくおいしく、みんな「もうおなかいっぱい」となっていたところ、副店長さん、店長さんと、代表取締役の方がそれぞれテーブルに挨拶にいらして、お店のことやサービスのことを話して行かれました。

最後に、「お客さま登録カード」と鉛筆を持ってこられました。QRコードでも空メールでもなく、手書きの登録カードですが、なんと6人全員が登録しました。

もし、テーブルにただ登録カードと鉛筆が置いてあっただけなら、みんな書いたでしょうか。

もし、挨拶なしに店員さんが「よろしければ書いてください」とカードを持ってきたら?

もし、挨拶に来られた方が「今日はどうも、またよろしく」だけ言って立ち去られていたら?

Webの仕事をしているとつい忘れがちですが、やっぱり商売は「人間」が作って育てていくもので、それは実店舗でもWebでも同じなんですよね。ネットとディスプレイを通した向こうにいるお客さんは人間です。そして、サイトの運営をするメンバーも人間、サイトに掲載する情報を作り出す社内のスタッフも人間、そして、サイトが扱っているビジネスを作って推進しているのも人間。「サイト」も「ページ」も「PV」も「コンバージョン」も、ぜんぶ人間が産み出すものですよね。

この不景気では、少ない予算でがむしゃらにがんばっても、世の中の人がお金を使おうとしていない以上、費用対効果はなかなか上がらないものです。そういうときには、目の前の仕事に精一杯になるのではなく、将来にわたってファンになってくれるお客さんを増やす「人間力」をWebの仕事に入れていきましょうよ。

Webサイトに少し人間味を出すコンテンツを追加するのもいいでしょう。問い合わせへの返信に少し人間的な言葉を添えるのもいいでしょう。Twitterなどのソーシャルメディアで情報発信やコミュニケーションをするのもいいでしょう。自社に言及しているブログを訪れてコメントしてみるのもいいでしょう。

お願いしている制作会社の人と改めてゆっくり話をしてみるのもいいでしょうし、不況の今だから、優秀な人材を新しく仲間に迎える準備を整えるのもいいかもしれませんね。

そうすることで、Webを単なるページではなく人間と人間のインターフェイスとして活用できるようになっていき(ロイヤルティ向上)、日々の仕事もスムーズに回るようになるでしょう(運営コスト削減)。また、お客さんの考えていることを知ることで、Webに求められているものや、将来の新しいビジネスの姿が見えてくるかもしれません(新規の収益ライン確保)。

予算圧縮のいまだからこそ、Webに「人間力」を追加して、将来のビジネスを産み出していくのはいかがでしょうか。

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