ネットショップ担当者フォーラム

ヤマト運輸が宅急便サービスの内容を変更。時間帯指定「12時から14時」は廃止、「19時から21時」を新設

8 years 9ヶ月 ago

ヤマト運輸は「12時から14時」の配送時間帯指定を廃止するなど、宅急便のサービス内容を変更する。

当日の再配達締め切り時刻の変更

当日の再配達の依頼を受け付ける当日の締め切り時刻を変更する。開始日は4月24日(月)から。

セールスドライバーとサービスセンターは従来の20時から19時までに変更。再配達自動受付(従来は20時まで)とインターネット(同19時40分まで)は18時40分とする。

ヤマト運輸が配送時間帯指定「19時から21時」を新設、「12時から14時」は廃止

当日の再配達締め切り時刻の変更

配送配達時間帯の指定枠の変更

「12時から14時」の時間帯指定を廃止。また、「20時から21時」の時間帯指定を廃止し、「19時から21時」の時間帯指定を新設する。

指定可能な時間帯は6区分だったが、変更後は5区分となる。6月中にスタートする。

ヤマト運輸が配送時間帯指定「19時から21時」を新設、「12時から14時」は廃止

配達時間帯の指定枠の変更

サービス内容変更の背景

ヤマト運輸は、ECの拡大により物量が増加する一方、労働人口の減少などにより労働需給は逼迫、厳しい経営環境が続いていると説明する。

労働力確保に向けて職場環境を改善、社員の新しい働き方を創造するために、「働き方改革室」を本社内に新設(2月1日)。全社をあげて働き方改革を推進しているという。

社員の法定休憩時間の適切な取得、勤務終了から翌日の始業までの間に一定時間のインターバルを設ける制度の確立など、社員が働きやすい環境を構築するため、サービス内容の変更を決定したとしている。

ヤマト運輸の配送を巡る現在の環境

ヤマトホールディングスが3月6日に発表した2017年2月度の小口貨物取扱実績(宅急便・クロネコDM便)によると、2016年4月~2017年2月の宅急便取扱個数(累計)は17億1226万個(前年同期比8.0%増)。

11か月累計で、過去最高だった2016年3月期の取扱個数17億3126万個(12か月累計)に迫る数値となっており、2017年3月期は過去実績を大きく上回る18億7000万個の取扱個数を見込んでいる。

ヤマト運輸の直近5年間の宅急便取扱個数と宅急便単価の推移

直近5年間の宅急便取扱個数と宅急便単価の推移

配送個数が伸びている一方、取扱個数の過去最高を記録した2016年3月期は、宅急便単価が大きく下落。2015年3月期の595円から578円まで落ち込み、2017年3月期は556円まで下落すると予想している。

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、EC業界に関わること約11年。日々勉強中。

瀧川 正実

EC業界に携わる皆さん、「再配達ゼロ」に向けて行動しませんか?

8 years 9ヶ月 ago

EC業界、物流業界で「再配達」ゼロをめざしませんか?

「再配達」ゼロに向けて活動を本格化した団体がある。通販物流代行・物流コンサルティングなどを手がけるイー・ロジットの角井亮一社長が中心となり、通販・EC事業者など流通業者と宅配業者の健全なパートナーシップを築くための活動を行う「宅配研究会」だ。

昨今の物流問題の課題の1つとしてあげられる再配達。これをゼロにするという目標を掲げ、宅配研究会が「第3回再配達削減2ウィーク!」を始めた。

まず、「再配達を減らす」ことで宅配ドライバーの負担を減らし、地球環境に貢献しているのかを理解してもらうことを目的に活動。啓蒙活動を含めたキャンペーン月間として「再配達削減2ウィーク!」を行っている。

宅配研究会が進めている「再配達削減月間」キャンペーン

画像はFacebookのイベントページから編集部がキャプチャ

現在、宅配便の年間配送個数は37億個を突破。そのうち再配達割合は20%の7億4000万個に達している。再配達は2600億円のコスト、9万人相当の再配達労働力、1.8億時間の再配達時間、さらには、山の手線の内側2.5個分のスギ林の年間CO2排出量を無駄にしているという。

「ドライバーさんの苦労を減らしたい!」「無駄なお金、そしてCO2を減らしたい!」。こうした宅配研究会の活動に賛同する企業、および個人を現在、募集している。

なお、「再配達削減2ウィーク!」は以下の企業や団体から支持を受け、活動を開始している。

【現在のサポート団体・企業】(登録順、3月16日現在)

  • 3R活動推進フォーラム
  • 創価大学安田ゼミSKYSTACK
  • 公益財団法人流通経済研究所
  • 再配達ゼロアプリ「ウケトル」
  • 株式会社イー・ロジット
  • 舟納豆
  • 株式会社北国からの贈り
  • 株式会社カワタキコーポレーション
  • 株式会社藤栄
  • 株式会社エスシー
  • 大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎章洋先生
  • 通販通信(アドブレイヴ)
  • ECのミカタ株式会社
  • ネットショップ担当者フォーラム(インプレス)

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、EC業界に関わること約11年。日々勉強中。

瀧川 正実

ナノ・ユニバースがスマホECのサイト内検索を強化、AI型ソリューションを導入

8 years 9ヶ月 ago

TSIホールディングスの子会社でセレクトショップ事業のナノ・ユニバースは3月15日、NTTレゾナントが提供しているECサイト内検索ソリューション「goo Search Solution」を導入した。

曖昧な単語でも正しい検索結果を表示する機能や、検索キーワードをサジェストする機能などを実装。サイト内検索の利便性を高めて売り上げ拡大を狙う。

「goo Search Solution」はAI型の検索ソリューション。ユーザーが使った検索キーワードのデータに基づき、「表記ゆれ」の辞書を自動的に生成、検索キーワードを拡張させることで検索結果の0件ヒットを防ぐ。

ユーザーの購買履歴やサイト閲覧履歴などに基づき、ユーザーのニーズを自己学習して検索結果の表示順位を自動で最適化するという。

ナノ・ユニバースは、「表記ゆれ」への対応や、具体的に欲しいも商品が決まっていない顧客への商品提案などで、サイト内検索に課題を感じていたという。「goo Search Solution」がこうした課題の解決につながると判断、導入を決めた。

「タッチサジェスト」で検索結果をパーソナライズ

「goo Search Solution」に備わっている「タッチサジェスト」は、検索の絞り込み条件をサジェストすることで、ユーザーの商品探索行動をサポートする。

ナノ・ユニバースがスマホECのサイト内検索を強化、NTTレゾナントのAI型ソリューションを導入

「タッチサジェスト」のイメージ

たとえば、ユーザーが「カットソー」のカテゴリーで検索した場合、サイト内でよく利用されている絞り込み条件として「Tシャツ・カットソー」「パーカー」「タンクトップ」となどのキーワードを表示。キーワードをタップすると絞り込み後の検索結果画面に移動する。

また、ユーザーが「カットソー パーカー」で検索した場合、「カットソー」単独で検索した時とは表示内容が変わる。細かい絞り込みによって、目的の商品へたどり着きやすくするという。

ナノ・ユニバースがスマホECのサイト内検索を強化、NTTレゾナントのAI型ソリューションを導入

検索した場合の「タッチサジェスト」の表示イメージ

サイト内検索エンジンのベンダー大手ナビプラスが2016年12月に公表した「サイト内検索導入調査レポート」によると、EC売上高のTOP100の95%以上はサイト内検索エンジンを導入。売上高TOP10のECサイトの検索機能は、他のサイトに比べ充実していることから、売上高と検索機能の相関性もうかがえるとしている。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

アマゾンに負けない買い物体験を提供する方法とは? 米国EC企業3社の事例 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

8 years 9ヶ月 ago

Amazon(アマゾン)は年間99ドルの有料会員制プログラム「アマゾンプライム」への積極的な投資を続けています。セールスポイントはスピード配送。プライム会員が対象商品を購入すると、商品が2日以内に届く配送サービスを無料で利用することが可能です。他の国では、当日配送や2時間以内配送も追加料金なしで使えることができます。

プライムサービスは、利便性と低価格を追求し、何度も購入することで年会費を償却できるようにしています」。小売事業者向けコンサルティング会社A.T.Kearney社のアンドレ・メンドーザ・ペナ氏はこう語ります。

支払った年会費の元を取りたいと考える消費者が頻繁にアマゾンで買い物をしています。つまり、他の小売事業者から購入する可能性があった消費者も、結局、アマゾンに流れしまっているのです。

アマゾン対抗策は「アマゾンで手に入れられないサービスの提供を」

インターネットリテイラー社が行った消費者調査によると、95%はアマゾンで買い物をし、69.5%の世帯がアマゾンプライム会員でした。投資銀行Cowen & Co.社が公開した最新の試算によると、全米の45%の世帯がアマゾンプライム会員だそうです。アマゾンプライムが浸透している中、「他の小売事業者はアマゾンでも手に入れられないサービスを提供する必要がある」とコリンズ氏は指摘します。

ターゲットは「実店舗+デジタル」のポイントプログラム

米国大手の百貨店Target(ターゲット)は実店舗の力とデジタルの価値を掛け合わせてアマゾンと戦おうとしています。Web調査会社SimilarWeb社によると、2つのアプリ(本体のショッピングアプリと、「Cartwheel」と呼ばれる店舗向けクーポンアプリ)は、小売業界で最も利用されているアプリTOP25で常にランクインしています。2017年1月現在、「Cartwheel」はGoogle Play(グーグルプレイ)では15位、本体のショッピングアプリは23位にランクインしています。

アマゾン以外で購入してもらう方法は? Amazonプライムに対抗する米国EC企業3社の事例 Targetの「Cartwheel」
Targetの「Cartwheel」。画面には商品ごとに割引率が表示されている(画像は「Cartwheel」の動画から編集部がキャプチャ)

ターゲットは店舗内で使えるアプリ機能を継続的に進化させています。その1つの例が、2016年9月に始めたCartwheelアプリ経由で使えるポイントプログラム「Cartwheel Perks」です。消費者は購入金額1ドルごとにポイントを獲得でき、合計500ドル以上を購入すると最大20ドルの商品と交換できます。「Cartwheel Perks」は現在、4つの都市で使用できます。

エイアード氏は、このようなデジタルを駆使した店舗機能が、カスタマーエクスペリエンスを向上し、さまざまなチャネルで買い物をする消費者を惹きつける大切なカギになると考えています。エドアード氏は次のように言います。

さまざまなチャネルで買い物をする消費者の方が、1つのチャネルで買い物をしている消費者よりも多くの売り上げをもたらしてくれます.

スマートフォン所有者で、インターネットリテイラーの調査に回答した71.5%は小売店舗のアプリを少なくても1つはダウンロードしていると答えています。そして、47.2%は商品を調べるためにアプリを利用すると回答。44.9%は商品購入に、20%はロイヤリティプログラムに、16.7%は店舗内の買い物の際にアプリを利用すると答えています(複数回答可)。

消費者パネル調査などのNPDグループで小売業界のチーフアナリストを務めるマーシャル・コーエン氏はこう言います。

消費者に商品を頻繁に購入してもらうためには、商品情報などだけでは足りないのです。素晴らしい買い物体験楽しみを追加しなければいけません.

店舗のサービス提供を通じてロイヤリティを高めるBenefit

化粧品などを販売するBenefit Cosmeticsのオムニチャネルマーケティングシニアディレクターであるジェニファー・ウィップル氏によると、Befinetは店舗内のメイクアップと眉サービスでロイヤリティを高めているそうです。

Benefitは30店以上の店舗を構えています。消費者は眉の手入れやメイクアップサービスをオンライン経由で予約し、近くの店舗でサービスを受けることができます。予約用サイトには、消費者が興味を持ちそうな記事や動画のコンテンツを掲載しています。ウィップル氏はこう言います。

私たちの消費者は、エステティシャンと親しくなり、眉の手入れの予約を3~4週間ごとに入れてくれるんですよ。

アマゾン以外で購入してもらう方法は? Amazonプライムに対抗する米国EC企業3社の事例 Benefit Cosmeticsの予約サイト
Benefit Cosmeticsの予約サイト(画像はBenefitのサイトから編集部がキャプチャ)

店舗利用に関する次の予約を入れると同時に、消費者は実店舗で他の商品やサービスを購入します。ウィップル氏は、「眉担当のエステティシャンは、必ず最後に眉毛用製品を使って仕上げます。その後、多くの消費者がカウンターに座って、メイクアップアーテイストからメイクをしてもらいます」と話します。

ブランドイメージや販売商品に合致したBenefitのようなサービスは、購買促進につなげるための方法の1つ。コーエン氏は、棚に置いている商品以上の“何か”を戦略的に提供することで、ロイヤリティを育んでいるのです。コーエン氏はこう言います。

ロイヤリティを高めるもう1つの方法は、店舗をインスピレーションや生活向上の場所にすることです。ユニークな商品や品ぞろえとともに、消費者が学んだり、楽しめる経験を提供するのです。

実店舗の活用で復活したJ.C. Penny

一方、大手デパートチェーンのJ.C.Pennyは、オムニチャネル部上級副社長のマイク・アメンド氏が「リテールテイメント」(リテールとエンタテインメントを合わせた造語)と呼ぶ特別な店舗の催しを開催。オンラインのみの小売事業者と差別化していいます。

アマゾン以外で購入してもらう方法は? Amazonプライムに対抗する米国EC企業3社の事例 J.C.Pennyの店舗
J.C.Pennyの店舗(画像はJ.C.Pennyのサイトから編集部がキャプチャ)

たとえば、2016年春の母の日に向け10店舗で実施したキャンペーンでは、ブログやピンタレストで影響力のある人を集め、洋服、ヘアメイクを提供。秋には、キャリア女性向けのスタイリングワークショップを開催し、ビジネスに最適な洋服やヘアメイクのアドバイスを提供するといったサービスを行いました。J.C.Pennyは消費者のロイヤリティを高めるために、こうした催しを積極的に行っています。

CEOのマーヴィン・エリソン氏は、消費者がJ.C.Pennyでしか手に入れられないPB(プライベートブランド)を拡大しているとアナリストへの業績報告会で説明。J.C.Pennyは2019年までに、全商品の最大70%を独自のプライベートブランドにする予定です。

J.C.Pennyは2012年のリブランディングに失敗し、大量の顧客を失いました。2013年から負の流れを止めようと、ロイヤリティの高い消費者をターゲットにさまざまな売り上げ向上施策を実施しています。現在、こうした施策が効を奏しているようです。

エリソン氏によると、J.C.Pennyの現在のアクティブ顧客数は2011年と同じレベルまで戻っているそうです。課題は、最もお金を使うオムニチャネル消費者のロイヤリティをどのように高めるか。アメンド氏によると、チャネルを超えてJ.C.Pennyで買い物をする消費者は、店舗のみ、もしくはオンラインのみで買い物する消費者の2倍以上の購入金額なのです。エリソン氏はこう話します。

オムニチャネルのプロセスは、114年の歴史で培ってきたJ.C.Pennyの全ての資産を使う絶好の機会です。店舗、スタッフ、在庫、デジタルプラットフォーム、サプライチェーンなど持っているリソースを集結してコストを削減、ロイヤリティが高く、大切なお客さまのお役に立ちたいと考えています。オムニチャネルが進化すれば、私たちの店舗の戦略的価値も上昇していくわけです。

こうした施策により、J.C.Pennyのオンライン経由の注文の50%以上は何らかの形で店舗が関わっています。店舗受け取りや店舗からの配送、店舗での返品、店舗からのオンライン注文などです。アメンド氏によると、J.C.Pennyを訪問する消費者の70%以上が、店舗訪問前にECサイト「JCP.com」を訪問し、商品などを確認しているとのこと。J.C.Pennyは、オンラインと店舗を融合している好例です。

アマゾン以外で購入してもらう方法は? Amazonプライムに対抗する米国EC企業3社の事例 J.C.PennyのECサイト
J.C.PennyのECサイトの注文の50%以上は店舗が関わっている(画像は編集部がキャプチャ)

インターネットリテイラー社の調査に回答した消費者の中の56.1パーセントは、近くに実店舗がある場合、オンラインではなく実店舗で買い物をする可能性が高いと答えています。

インターネットリテイラー社がシカゴのホームデポで取材した33歳のアーロン・ウィルホフト氏がその典型例です。彼は商品を買いに店舗へ向かう前、頻繁にオンラインストアをチェックすると回答。細かく確認したい商品を決めてから、お店に向かうのです。

最近、世界最大の家電量販店Best Buy(ベストバイ)の店舗で買い物をした25歳のダン・ラングフィールド氏も同様です。彼は、配送中に傷がつく可能性があるため、テレビや大型家電をオンラインで買うのは不安だと言います。オンラインで商品をチェックすることは多いのですが、購入の意思決定は店舗ですることが多いそうです。

インターネットリテイラー社の調査では、消費者がオンラインで欲しい商品を探している時は、まだ購入を決めていません。53%のユーザーは店舗が近くにあるならば実際に商品を見てみると答えています。

オンラインで商品を探しつつ、最終的に店舗で購入する理由は、「すぐに商品が必要」(65.6%)「配送料を払いたくない」(45.3%)「他の商品も実際に見て見たい」(27.2%)という結果でした。

店舗を配送センターに位置付けるBest Buy

ベストバイの広報は、実店舗はオンライン戦略の大きな一部を担っていると説明します。消費者がECサイト「BestBuy.com」で商品を調べ、店舗で購入するパターンや、その逆のパターンもあるとベストバイは深く理解しています。

ベストバイの第3四半期(2016年8~10月期)のオンライン売り上げは、国内の総売上の10.8%を占めています。インターネットリテイラー社が発行する「Top500 Guide.com」によると、ベストバイの2015年のオンライン売上高は、40億ドルでした。

ベストバイは、店舗とECのオペレーションを一体化し、2014年以降はオンラインの注文を店舗から配送しています。店舗が配送センターの役割を担っているのです。ベストバイのオンライン注文の半分は、店舗受け取りか、店舗からの配送になっています。

ベストバイは最近、近隣の店舗で取り扱いがある商品だけをフィルターし、検索できる新機能をECサイトに追加しました。これは、CEOのヒュバート・ジョリー氏が第3四半期の業績報告会で投資家たちに説明しました。また、オムニチャネル機能の1つとして、店舗スタッフによる30分の接客をアプリ経由で予約できる機能も試験運用しています。

アマゾン以外で購入してもらう方法は? Amazonプライムに対抗する米国EC企業3社の事例 Best Buyでは店舗に「STORE PICKUP」を設け、店舗受け取りなどに対応している
Best Buyでは店舗に「STORE PICKUP」を設け、店舗受け取りなどに対応している(画像はBest Buyのサイトから編集部がキャプチャ)

スピード配送はオンラインで購入する理由にはならない

J.C.Pennyは、店舗受け取りサービスの効果を実感しています。送料がかからないのでコスト削減に大きく寄与。そして、店舗で受け取る消費者の40%が、受け取りの際に50ドル以上を支払って別の買い物をしているからです。

「全ての買い物において、訪問頻度と購入金額を高めていくことができる可能性があります」。J.C.Pennyの広報はこう語ります。「Top500 Guide.com」を元に行ったインターネットリテイラー社の予測では、JCP.comの購買者の50%はリピート客で占めています。

店舗に足を運ばず、オンラインだけで買い物を済ませたい消費者向けには、ほぼすべての消費者が2日以内の配送を利用できるようにするそうです。J.C.Pennyの広報は、この施策がアマゾンのプライム会員向けの2日以内配送への対抗策なのかどうかに関してはコメントしませんでした。

興味深いのは、インターネットリテイラー社の調査において、スピード配送はオンラインで購入する理由のトップ3にランクインしていないことです。それよりも「すぐに商品を手に入れる必要がある」というのが実店舗に足を運ぶ最大の理由でした。

アマゾンへの対抗策として、立地の良い便利な店舗は小売事業者にとり有利に働くでしょう。ロイヤリティを高めることは、リピート客の購買促進に役立ちます。ただ、消費者はどんなサービスよりも価格に重きを置いていることは注意すべき点です。

Internet RETAILER

世界最大級のネット通販業界の専門誌「Internet Retailer」は、雑誌のほか、Web媒体、メールマガジンなどを運営。Vertical Web Media社が運営を手がけている。

Eコマースの戦略に関し、デイリーニュース、解説記事、研究記事、電子商取引におけるグローバルリーダーをランク付けする分析レポートなどを発行している。

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逆境を支えた「お客さまの言葉」【ネッ担人気記事ランキング】 | 週間人気記事ランキング

8 years 9ヶ月 ago

1位は「いくらの及川屋」を運営する及川冷蔵の及川廣章社長へのインタビュー。お客さまからの励ましの言葉が、逆境の経営を支えました。

「都税クレジットカードお支払サイト」や「ヤマサちくわオンラインショップ」、ランクインはしませんでしたが、国際郵便マイページサービスからも情報漏えいが発生し、漏えい事案が多い1週間でした。

  1. 東日本大震災で廃業寸前、ピンチをチャンスに変えた加工品会社の復興ストーリー

    tweet11はてなブックマークに追加

    岩手県大船渡市「いくらの及川屋」。震災からの6年

    2017/3/10
  2. カード情報など約72万件が漏えいか。決済代行のGMOペイメントゲートウェイ

    tweet19はてなブックマークに追加

    運営を受託していた東京都税の支払いサイトなど2サイトに不正アクセス

    2017/3/13
  3. ドクターシーラボ公式ECサイトの公開停止の影響は? 1か月半で通販売上は最大11億円減

    tweet38はてなブックマークに追加

    約1か月半にわたって公開を停止していた公式ECサイトを、3月14日10時にリニューアルオープンする

    2017/3/14
  4. ヤマト運輸のサービス見直し、再配達問題……配送に対する消費者のホンネは?

    消費者の約2割が「値引きされるなら再配達にならないよう気をつける」と回答

    2017/3/10
  5. 「楽天市場」が取り組む2017年の戦略とは? ECモールの価値向上に向けた3施策

    「検索結果のパーソナライゼーション」「楽天ペイ(楽天市場決済)」「配送改善」などを計画

    2017/3/15
  6. Amazon、3日限りの「春のタイムセール祭り」3月31日から

    アマゾンは3月31日(金)からの3日間「春のタイムセール祭り」を開催する。

    2017/3/15
  7. 2社の通販サイトでカード情報が漏えいか。止まらないECサイトへの不正アクセス

    食品ECサイトなど2社が、運営する通販サイトからカード情報の漏えいの可能性を公表した

    2017/3/16
  8. スマホECで買い物する消費者はアプリ派、それともブラウザ派? ニールセン調査

    スマホ利用者は13%増の5897万人、アプリとブラウザの利用比率は拮抗している

    2017/3/13
  9. あの老舗通販「日本直販」がLINEをECに活用、チャットbotで商品提案も

    若年層に対するメルマガに変わる集客ツールとして活用

    2017/3/10
  10. 大塚家具がECの本格展開で掲げる商品とサービスのオムニチャネル施策とは

    EC対象商品の拡充、商品紹介ページとECサイトの統合、訪問提案サービスのウェブ申込などを展開

    2017/3/14

※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

uchiya-m

プレミアムフライデーに「ネットで買い物」は約1割

8 years 9ヶ月 ago

市場調査などを行うクロス・マーケティングが実施した「プレミアムフライデーに関する実態調査」によると、プレミアムフライデー(2月24日)を利用した消費者のうち、10%が「ネットショッピングをした」と回答した。

クロス・マーケティングが実施した「プレミアムフライデーに関する実態調査」

ネット通販利用は1割

プレミアムフライデーを実際に利用した消費者は全体の4%にとどまったものの、「利用したかったが、利用しなかった」と回答した消費者を含めると、約3割が利用に意欲的。

今後のプレミアムフライデーで「やってみたいこと」として買い物を上げる消費者も多いことから、消費促進につながる可能性がある。

2月のプレミアムフライデーは「利用する気はなく、利用しなかった」が69%で最多。「利用した」は4%、「利用したかったが、利用しなかった」は26%だった。

「プレミアムフライデーでしたこと」で最も多かったのは「買い物をした」(17.3%)。2位以降は「家でゴロゴロした」(14.5%)、「大衆食堂や居酒屋で外食した」(12.7%)、「カフェ・喫茶店に行った」(11.8%)、「ネットショッピングをした」(10.0%)、「銀行・役所・病院に行った」(10.0%)。

「利用したかったが、利用しなかった」と回答した理由は、「仕事が忙しかったから」(36%)が最も多く、「早帰りしにくい雰囲気だったから」(27%)が続いた。「会社で認められていない」「サービス業なのでできない」との回答もあり、職場環境や業務内容によって実現しにくい様子もうかがえる。 

「4月のプレミアムフライデーでやりたいこと」の上位は「買い物をする」(32.7%)、「家でゴロゴロする」(30.7%)、「旅行に出発する」(22.0%)などが上がった。

クロス・マーケティングが実施した「プレミアムフライデーに関する実態調査」

プレミアムフライデーの買い物意向は強い

調査会社のマクロミルが実施した別のプレミアムフライデー実態調査では、早帰りして外出した人の約4割が「ショッピングをした」と回答。一定の消費促進につながっていることがうかがえる。

調査概要

調査手法:インターネットリサーチ
調査地域:東京都、および政令指定都市を持つ都道府県
調査対象:20~69歳の男女、フルタイム勤務の有識者
調査期間:2017年2月25日〜2月27日
有効回答数:スクリーニング2533サンプル/本調査774サンプル

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

2社の通販サイトでカード情報が漏えいか。止まらないECサイトへの不正アクセス

8 years 9ヶ月 ago

ECサイトへの不正アクセスによって、クレジットカード情報が流出した可能性がある事件が相次いでいる。

食品ECサイトなど2社は3月14日、不正アクセスによるカード情報漏えいの可能性があると発表した。ECサイトへの不正アクセスをめぐっては、3月10日にGMOペイメントゲートウェイが受託運営するサイトからの情報流出が発覚したばかり。ECサイトのセキュリティ対策が喫緊の課題になっている。

カード情報の漏えいの可能性を3月14日に公表したのは、 電動製品や防災グッズのECサイト「匠ワールド」を運営する株式会社匠と、ちくわなどを扱うECサイト「ヤマサちくわオンラインショップ」を運営するヤマサちくわ株式会社。

「匠ワールド」は2039件のカード情報(氏名、カード情報、カード有効期限)が漏えいした可能性がある。Webアプリケーションの脆弱性を突かれ、顧客が入力したクレジットカード情報を抜き取られた可能性があるという。

「ヤマサちくわオンラインショップ」から漏えいした可能性があるカード情報(氏名、カード情報、カード有効期限)は9426件。第三者による不正アクセス(SQLインジェクション攻撃)が原因としている。

「ヤマサちくわオンラインショップ」からカード情報が漏えい

「ヤマサちくわオンラインショップ」ではお詫び文を掲載(画像は編集部がキャプチャ)

経産省主導でセキュリティ対策を急ぐ

経済産業省主導の「クレジット取引セキュリティ対策協議会」(事務局は日本クレジット協会)は、2017年3月8日に公表した「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画-2017-」において、EC事業者に対して2018年3月までにカード情報の非保持化、もしくは「PCI DSS準拠」を求めていく方針を掲げた。

カード情報の漏えいの頻度が高い非対面(EC)加盟店については原則として非保持化(保持する場合はPCIDSS準拠)を推進。EC加盟店におけるカード情報の非保持化を推進するため、PCIDSS準拠済みのPSP(決済代行会社)が提供するカード情報の非通過型(「リダイレクト(リンク)型」または「Java Scriptを使用した非通過型」)の決済システムの導入を促進するとしている。

また、独立行政法人情報処理推進機構では不正アクセス対策についての資料をまとめており、「安全なウェブサイトの作り方」などを閲覧することができる。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

リピート客約9割のアマゾンに勝つロイヤリティ施策には何が必要? 米国ECの今に学ぶ | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

8 years 9ヶ月 ago

Amazon(アマゾン)にお客も売り上げも奪われていく中、ネット通販事業者などの小売事業者はより効率的に消費者の関心を惹き、リピート客になってもらうためのマーケティング施策などでしのぎを削っています。アマゾンの得意分野である価格競争力と利便性を最も重視する消費者が多い中、小売事業者は消費者に訪問してもらうため、あらゆる努力をしています。

米国でもリピート顧客のロイヤリティUP施策が進む

テレビ通販・オンラインショッピングのEvine Live社の取締役副社長兼CMOニコル・オストヤ氏によると、売り上げの50~75%はリピート顧客の購入が占めています。そして、リピート顧客は新規顧客よりも購買単価が高いそうです。

リピート顧客が会社にもたらす価値を鑑み、Evine Live社はさらに進化したリピート顧客用のロイヤリティプログラムを第3四半期(2017年8~10月期)にスタートする予定です。

新しいプログラムは、Evineブランドのクレジットカード所有者を対象にスタートします。オストヤ氏は詳細な数字は開示していませんが、対象者数は何百万人にものぼり、全顧客の数十%が対象になるそうです。

現在、Evine Live社のクレジットカードを保有する消費者は、特定日の配送料無料、特別割引サービスなどを受けることができます。新プログラムは、購入金額の高い優良顧客がより大きな割引率で買い物ができるなど、さらにサービスを充実するようです。

Evine Liveの自社クレジットカード使用者には、送料無料特典、年間を通じた特別割引などを提供してる
Evine Liveの自社クレジットカード使用者には、送料無料特典、年間を通じた特別割引などを提供してる(画像はEvine Live社のECサイトから編集部がキャプチャ)

オストヤ氏は自社のロイヤリティプログラムを、「飛行機に乗れば乗るほど、良い席を確保できる航空会社のマイレージプログラム」に例えます。新プログラムの導入によって、Evine社はクレジットカード保持者の割合を3~4%増やし、リピート顧客の増加につなげたいとしています。

InternetRetailer社(インターネットリテイラー社)発行の「Top500 Guide.com」によると、リピート顧客の割合において、Evine社は北米500社のEC業者の中で4位にランクインしています。第1位であるアマゾンのリピート顧客の割合は88%で、500社の平均は37%です。

割引に頼ったロイヤリティプログラムは「もろい」

Evine社など複数の小売事業者は、競合他社の中でも非常に効率的なロイヤリティプログラム「アマゾンプライム」を持つアマゾンに対抗しようとしています。

消費者はスマートフォン、Google(グーグル)、アマゾンを駆使して、欲しい商品を数分またはそれ以下の時間で探します。膨大な数の販売事業者をオンラインで見つける消費者は、自身が最も重視するポイントに基づいて購入する店舗を決めています。そのポイントとは、「価格」「利便性」「信頼度」「ロケーション」「サービス」などです。

インターネットリテイラー社は2016年12月、オンラインで買い物をする550人のアメリカ人(21歳以上)に調査を実施。どのような要素がロイヤリティを高めるのか、オンラインと店舗を融合するといった小売事業者の試みに対して消費者はどんな反応を示しているか調べました。調査の結果、消費者のオンラインおよび店舗での購買決定に関し、何が決め手になり、何が妨げになっているかが明らかになりました。

たとえば、インターネットで商品を探す際、アマゾン以外の特定小売事業者のECサイトを最初に訪れる消費者の割合はわずか3.9%。まずアマゾンで最初に商品を探す消費者は52.4%で、グーグルはアマゾンに次いで38.8%という結果でした。

InternetRetailer社の調査によるとAmazonのリピート顧客の割合は約9割
InternetRetailer社の調査によるとAmazonのリピート顧客の割合は約9割(画像はAmazon社のサイトから編集部がキャプチャ)

インターネットの商品検索ではアマゾンとグーグルが優位に立っています。しかし、消費者はネット上でさまざまな販売サイトを行き来するため、ネット通販においてまだ絶対的な勝敗は決まっていません。最初に特定小売事業者のECサイトを訪問する消費者の内、65%が最終的にその事業者のWebサイトで購入すると答えています。まだ、巻き返しのチャンスがあるのです。

そんな中、小売事業者はECサイトの利便性をより高めたり、サービスの拡充を進めようとしています。利便性向上、充実したロイヤリティプログラム提供のほか、実店舗を持つ事業者では、店舗とオンラインのオペレーションを融合するオムニチャネルサービスの拡大など、オンライン限定の事業者には真似できない店舗内でのカスタマーエクスペリエンス向上などにも取り組んでいます。

こうした取り組みについて、何が消費者を惹きつけるのでしょうか? 回答者の内、84%が同じ小売事業者で頻繁に買い物をするロイヤリティの高い消費者であることが判明。オンラインで購入する際、店舗へのロイヤリティが高まるのは価格と答えた消費者の割合は85%送料無料と答えた人は70%でした(複数回答可)。

実店舗に関しても、価格が重要と答えた人が最も多く79%商品の良さが大切と答えたのは63%自宅や職場に近いからと答えた人は61%でした。

実店舗はオンラインへの送客にも強みがあります。インターネットリテイラー社発行の「全米EC事業 トップ500社」内の企業平均値では、店舗を持つ小売事業者のリピート率が43%だったのに対し、オンラインのみの小売事業者は34%にとどまりました。

消費者の83%が小売事業者のロイヤリティプログラムに参加していると答える一方、プログラムによって実店舗への愛着が湧くと答えたのは25%オンライン小売事業者に関しては18%にとどまりました。その理由は、ロイヤリティプログラムが当たり前になっているからかもしれません。「Top500 Guide.com」によると、「全米EC事業 トップ500社」にランクインしているオンライン小売事業者500社のうち、448社がロイヤリティプログラムを提供しているのです。

多くの小売事業者は、消費者との関係を築き、長期間にわたって良好な関係を保つためにはロイヤリティプログラムが有効だと考えています。ロイヤリティプログラムにはさまざまなパターンがあります。特別割引、メンバー限定の特典、購入に応じて貯めることができ次回以降の購入で使えるポイント制度――などが一般的です。

調査会社Forrester Research社によると、ロイヤリティプログラムに参加している消費者は、参加していない消費者よりも3か月間で平均42.33ドルも多く商品を購入しています。また、Accenture Interactive社の調査では、ロイヤリティプログラム会員の方が、非会員よりも12~18%多く販売事業者の売り上げに貢献するという結果が出ています。

Forrester Research社のシニアアナリスト、エミリー・コリンズ氏によると、ロイヤリティプログラムの提供は消費者の購入を促すきっかけにはなるものの、価格や利便性以外の訴求も必要だそうです。コリンズ氏は次のように説明します。

割引に頼ったロイヤリティプログラムで作られた消費者との関係はとても不安定なのです。小売事業者は、ブランドや品質に結び付くような多面的な関係性を消費者と築く必要があります。

消費者のロイヤリティを上げるには努力が必要

家電のネット販売を手がけるAbt Electronics社の共同代表ジョン・アブト氏は、「消費者のロイヤリティは努力して獲得していくものです。コツや秘訣(ひけつ)があるわけではありません」と話します。

アブト氏は1936年に創業し、1998年にオンラインショップをスタートしました。非上場のAbt Electronics社は、2015年に4億ドルをオンラインで売り上げ、イリノイ州のグレンビュー市で大型店舗も経営しています。Abt Electronics社に消費者が高いロイヤリティを示すのは、長期間にわたってカスタマーサービスに注力していることです。そして、熟練したスタッフがもたらす影響が大きいようです。

Abt Electronics社のECサイトには、「カスタマーサポートが最も重要な優先事項」と記載されている
Abt Electronics社のECサイトには、「カスタマーサポートが最も重要な優先事項」(赤枠)と記載されている(画像はAbt Electronics社のECサイトから編集部がキャプチャ)

Target(ターゲット)は、オンラインショップや実店舗での再購入を促すさまざまな取り組みを展開しています。たとえば、1802店舗中80店舗をリノベーションし、オンラインで購入した商品を店舗の前でピックアップできるスペースを設置。店舗に入らずに商品を受け取ることができるようにすることで、消費者の利便性を高めています。

コンサルティング会社Retail Systems Research社の取締役ニッキー・ベイアード氏は、次のように解説します。

伝統的な小売事業者が“便利になり過ぎること”を恐れている中、ターゲットのこの取り組みはとても大胆なものと言えるでしょう。店舗は利便性を追求したデザインにはなっていません。より長く店舗内に滞在してもらうようにデザインされているのです。滞在時間が長ければ、より多く買い物をするわけですから。一方、アマゾンが証明したのは、消費者の利便性を高めれば高めるほど、より多くの人が商品を購入してくれるということです。伝統的な小売事業者は、利便性に対する偏見を克服する必要があるでしょう。

*今回は前編をご紹介しました。後編は3月16日に公開します。

Internet RETAILER

世界最大級のネット通販業界の専門誌「Internet Retailer」は、雑誌のほか、Web媒体、メールマガジンなどを運営。Vertical Web Media社が運営を手がけている。

Eコマースの戦略に関し、デイリーニュース、解説記事、研究記事、電子商取引におけるグローバルリーダーをランク付けする分析レポートなどを発行している。

Internet RETAILER

エステーがヘルスケア分野のネット通販に参入、第1弾はアロマオイル

8 years 9ヶ月 ago

消臭剤大手のエステーは3月27日、アロマオイルのネット通販を開始する。新たにヘルスケア分野へ参入し、事業の柱に育てたい考え。香りに関する知見を生かし、ヘルスケア分野で新規事業の育成をめざす。

新商品の発売に合わせてギフト商品を扱っている直営オンラインショップをリニューアルする予定。

商品名は「アロマサプリ」。6種類の香りと3種類の専用ディフューザーを通販限定で販売する。実勢価格は1箱あたり税別2000円。内容量は10mL。

天然精油のアロマオイルを使用し、「リラックス」「リフレッシュ」「ヒーリングリセット」など目的に合わせて香りのコンセプトを設計。臭覚や香りの持つ特性に着目し、アロマの持つ機能性についての研究を重ねて商品化したという。

新商品の発売に合わせて直営通販サイト「エステーオンラインショップ」を全面リニューアルする。オンラインショップでは現在、消臭剤などのギフト製品を扱っているが、リニューアル後は「アロマサプリ」を中心としたサイトに切り替える。

エステーは持続的成長のための種まきとして、新たな販売チャネルの開拓などを検討していた。

エステーはヘルスケア分野のネット通販に参入

「エステーオンラインショップ」は「アロマサプリ」を中心にしたサイトに刷新する(画像は編集部がキャプチャ)

 

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

Amazon、3日限りの「春のタイムセール祭り」3月31日から

8 years 9ヶ月 ago

アマゾンは3月31日(金)午前0時から4月2日(日)までの3日間、新生活・新入学の時期に向けた商品を集めたタイムセールイベント「春のタイムセール祭り」を開催する。

「春のタイムセール祭り」では5分ごとにさまざまな商品を特別価格で販売する。対象予定商品はLGの4Kテレビ、シャープ、日立、パナソニックの家電、デルやマウスコンピューターなどのパソコン、ワインやプレミアムビールなどのアルコール類、プラダやグッチといった有名ブランドの商品など。

また、Amazonプライム会員だけが参加できる「特選タイムセール」では、カスタマーレビューの評価が星4つ以上の売れ筋商品を多数提供予定。40%OFF以上の商品も含まれる予定。

「春のタイムセール祭り」の予告ページ
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「運転手が足りない」が約6割! 宅配便値上げの背景に深刻な人手不足と高齢化

8 years 9ヶ月 ago

大手宅配会社による送料値上げの観測など、配送関連の課題が顕在化した通販・EC業界。配送料の値上げの理由の1つに「運送業界の深刻な人手不足」が指摘されているが、実際はどのような状況なのか。

国土交通省が2月16日に開催した「第1回 総合物流施策大綱に関する有識者検討会」の資料などから、運送業界の労働者不足の実態を探る。

国交省がまとめた資料によると、国内のトラック運送業界で2016年7~9月期に「人手が不足していると感じる」と回答した企業は全体の58%。前四半期(2016年4~6月)との比較では、「やや不足している」が21ポイント減の18%だった一方、「不足している」は約2.8倍の40%に急増。事業者の人手不足感が過去数年間で最も悪化している実情がうかがえる。

ドライバー不足の現状について(企業からの聞き取り調査)トラック協会が実施

国交省の資料から編集部がキャプチャ

トラックドライバーの高齢化も深刻化。平均年齢は全産業の平均を上回っており、特に大型トラックの運転手は2015年時点で全産業の平均より5歳高い。今後、高齢ドライバーの引退が相次げば人手不足がさらに深刻化する可能性がある。

トラックドライバーの平均年齢

画像は国交省の資料から編集部がキャプチャ

国内EC市場は拡大を続けており、物販系の市場規模は2015年時点で約7兆2000億円。宅配便の取扱件数は2015年までの5年間で約12%増えるなど、急激な物量の増加が配送業界の人手不足に拍車をかけている。

国交省が課題解決に向け検討会を発足

政府は2013年に閣議決定した「総合物流施策大綱(2013-2017)」に沿って物流課題の解決に取り組んでいる。「物流の効率低下につながる取引慣行を含めた物流の現状把握と課題解決」を掲げ、EC市場の拡大に伴う再配達増加への対応などを検討してきた。

「総合物流施策大綱(2013-2017)」は2017年に目標年次を迎えるため、国交相は次期総合物流施策大綱の策定に着手。物流を取り巻く課題への対応の方向について検討を行い、今後の物流施策の在り方について提言を得ることを目的として、「総合物流施策大綱に関する有識者検討会」を2017年2月に開始した。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

日本郵便の「国際郵便マイページサービス」で顧客情報約3万件が流出の可能性

8 years 9ヶ月 ago

日本郵便は3月14日、「国際郵便マイページサービス」の運営サイトが第三者による不正アクセス攻撃を受け、サイト上で登録されていた顧客情報約3万件が外部に流出した可能性があると発表した。

「国際郵便マイページサービス」はEMS、国際小包、国際書留といった荷物を発送する際、郵便物に添付する国際郵便の送り状、インボイスなどをオンライン上で作成するシステム。

Apache Software Foundationが提供するJavaのウェブアプリケーションを作成するためのアプリケーションフレームワーク「Apache Struts2」の脆弱性を突かれたのが原因。その脆弱性は、第三者によりサーバ上で悪意あるコードをリモートで実行される可能性があるというもの。

2017年3月12日から3月13日までの間、「国際郵便マイページサービス」サイト上で作成された送り状1104件、サイト上に登録されているメールアドレス2万9116件が流出した可能性があるという。

2017年3月13日22時49分に「国際郵便マイページサービス」を緊急停止。不正アクセスおよび情報流出の防止対策を講じ、3月14日に復旧している。

日本郵便はシステムの監視を強化するとともに、再発防止について取り組んでいくとしている。

なお、情報が流出した可能性のある顧客について今後、個別に連絡をするという。

ホームページ上で情報流出の可能性について公表している(画像は編集部がキャプチャ)

「Apache Struts2」の脆弱性に関し、決済代行のGMOペイメントゲートウェイが運営を受託している2つのサイトが外部から不正アクセスを受け、セキュリティコードを含むカード情報71万9830件が漏えいした可能性があることがわかっている。

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、EC業界に関わること約11年。日々勉強中。

瀧川 正実

楽天、食料品などを最短20分で届ける「楽びん!」の配送料を無料に

8 years 9ヶ月 ago

楽天は3月14日、注文から最短20分で食料品などを届ける「楽びん!」の1回あたりの最低注文金額を従来の税込900円から2000円に引き上げ、配達料を無料にした。

ユーザーからの意見などを反映し、より利用しやすい料金設定に変えた。

配達料は従来、商品の受け取り方に応じて税込390~770円に設定していた。注文金額が2500円を超え、配達車両まで商品を受け取りに来た顧客のみ配達料が無料だった。

顧客の意見などを踏まえてサービス内容の検証を重ねた結果、サービスの品質向上を図るには最低注文金額の変更と配達料無料が必要と判断した。

「楽びん!」は2015年8月に開始。2016年5月には出前をしていないレストランなどを中心に、フードデリバリーサービスを本格的に開始した。現在は渋谷区、目黒区、港区、世田谷区、新宿区、品川区の全域で、約850店舗の飲食店を対象にしたフードデリバリーサービスを展開している。

コンビニエンスストアやドラッグストアなどで販売されている日用雑貨も扱う。注文から最短20分で届けるスピード配送が特徴。

楽天のフードデリバリーサービス「楽便!」の配送料が無料に、最低注文金額は2000円に引き上げ

最低注文金額を2000円に引き上げ、配達料を無料にした(画像は編集部がキャプチャ)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

越境ECで成功するには何が必要? グローバル企業ACIの日本責任者に聞いてみた | 『ヨドバシ.com大躍進の舞台裏 ネット通販11社の成功法則+関連サービス260まとめ』ダイジェスト

8 years 9ヶ月 ago

グローバルで決済に関するサービスを展開しているACI Worldwideは、EC事業者向けに決済サービス「PAY.ON」と不正検知サービス「ACI ReD SHIELD ®(エイシーアイ・レッドシールド)」を提供している。

日本ではまだサービスの利用が広がっていないものの、世界各国では導入が広がっているサービスで、今後日本でも販売を強化していく。日本エイシーアイ・ワールドワイドのカントリーマネージャーの朴健一氏に、提供するサービスの強みなどを聞いた。

世界160か国以上で利用されている決済ソリューション「PAY.ON」

当社では決済に関するソリューションの提供を行っています。サービスはいくつかあるのですが、1つは日本のクレジットカード発行会社向けのソリューション。発行したクレジットカードが海外で利用された際に、当社のソリューションを使って決済される仕組みです。

また、銀行に対しては、企業が各国で行う取引のグローバルキャッシュマネジメントに関するソリューションを提供しています。

そして、EC事業者向けには、大きく分けて2つのサービスを提供しています。1つはグローバル決済サービス「PAY.ON(ペイオン)」というサービスで、世界160カ国以上、350以上の決済サービスと接続されています。

「PAY.ON」を導入すればシングルゲートウェイで世界各国の決済サービスを利用できます。中小加盟店向けには決済代行会社(PSP)やSIer、ECカート事業者を通じて提供していく予定です。

朴健一カントリーマネージャー

圧倒的なブロック率の高さを誇る不正検知サービス

もう1つは、不正検知サービス「ACI ReD SHIELD ®」です。決済された取引が不正かどうかを判断し、加盟店にリアルタイムで結果を戻すサービスです。不正取引が増えている昨今ではとても注目を集めているサービスといえます。

不正検知サービスについては、当社のほかにもサービスを提供している会社がありますが、「ACI ReD SHIELD ®」は世界各国のECサイトで導入されているため、世界各国の不正取引のグローバル事例を認識しています。

ECサイトでは海外からの攻撃が特に多くなっているため、こうした海外のECサイトの不正取引事例も数多く持っていることで、結果的に他社サービスに比べ圧倒的に高いブロック率を提供できるようになっています。

不正取引については、以前はブランド品など高額な商品を扱っているECサイトが標的になることが多かったのですが、最近では数千円の商品に対する不正注文も増えてきています。そういう意味では、以前より多くのECサイトが不正取引のリスクにさらされているといえます。

日本では、最近になって越境ECというワードが注目されており、海外に目を向ける企業が増えてきました。ただ、海外の企業はすでに、世界に向けた販売を始めています。

そうした中で今後、日本のEC企業は内需の減少などにより、必ず海外に向けた販売を行っていかなければならなくなってきます。そうした際に、ワールドワイドで決済に関するソリューションを提供している当社のサービスがお役に立てる機会がさらに多くなると考えています。(談)

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ネットショップ担当者フォーラム編集部

「楽天市場」が取り組む2017年の戦略とは? ECモールの価値向上に向けた3施策

8 years 9ヶ月 ago

楽天は2017年、「楽天市場」の決済や配送、検索機能などの大幅な強化を図る。「楽天市場」の店舗向け決済サービス「楽天ペイ(楽天市場決済)」を4月から段階的に導入するほか、モール内検索の表示結果のパーソナライゼーション、配送サービスの強化などに取り組む。楽天が「新春カンファレンス2017」で明かした2017年の重点施策とは。ご招待いただいた新春カンファレンス2017(仙台)で行われた講演内容から、楽天が2017年に取り組むことなどをまとめてみた。

プラットフォームの価値向上に向けた3つの施策

楽天は2017年、楽天市場のプラットフォーム機能をより高めるため「モール内のナビゲーション強化」「配送の強化」「決済の利便性強化」に取り組む。

モール内ナビゲーションを強化

ECカンパニー・楽天市場開発ジェネラルマネージャーの兼平辰也氏は、「(ユーザーが)欲しい商品にスムーズに到達できるよう機能を強化している」と述べ、楽天市場内のナビゲーション機能を改善していくと強調した。

具体的には、モール内検索機能の検索結果を顧客ごとに最適化するため、同一のキーワードで検索した場合でもユーザーの年代や性別に応じて異なる結果を表示するようアルゴリズムを改善していく。

キーワード、ジャンル、製品など入力データによる最適化(シリーズやラインナップによる誘導を行う。本体と純正アクセサリを紐付けて検索させる)+ユーザー属性による最適化を行う。パーソナライズ・セグメンテーション(年代や性別など)
モール内検索のパーソナライゼーションを進めている

また、検索結果の一覧画面に、スーパーポイントアッププログラムにより付与されるポイントと、店舗により付与されるポイントを合わせた、最終的なポイント倍率や送料を表示するなど、買い物の利便性を高めるための施策も推進するという。

ポイントの倍率や種類がわかりやすくなるよう、ヘッダに現在のポイント倍率(例えば「5倍」)を表示する。また、サーチ結果や商品ページに「通常購入で1倍、楽天カード利用で3倍、アプリから当月1回以上購入で1倍、楽天モバイルへのご加入で1倍、アイテムボーナスポイント分9倍」……というように表示する。
検索結果の一覧画面に表示するポイント表示のイメージ
検索結果一覧に「送料無料」「送料14,00円」「送料800円(20800円以上購入で無料)」というように、商品価格と送料を併記する
検索結果での送料表示のイメージ

商品ページに登録する商品名やサムネイル画像をシンプルな内容に統一していく方針も打ち出した。商品名やサムネイルに「送料無料」「セール」といったプロモーションを目的とした情報を盛り込まないようガイドラインなどで促していくという。

その理由として、「商品名や商品画像にプロモーションの情報が多いと、検索結果の画面で商品を探しにくいという意見がユーザーから上がっている」(兼平氏)と説明。プロモーションに関する情報は「キャッチコピー」の欄に入れることが望ましいとした。

「「商品名や商品画像にプロモーションの情報が多いと、検索結果の画面で商品を探しにくい」というユーザーの声をうけ、プロモーション要素を排除したシンプルな商品写真に統一していく。
シンプルな商品名とサムネイル画像への変更を店舗に促す方針

商品ページへの納期表示も

配送サービスの強化にも取り組む。楽天市場ではこれまで、コンビニ受け取りや商品別配送方法設定の導入など、多様化するユーザーの配送ニーズに対応してきた。

楽天市場では、これまで店舗ごとに送料テーブルを設定していたが、楽天が作成した標準の送料テーブルの導入を推奨していくという。これにより今後は楽天会員の住所情報をもとに商品ページへの納期表示などを通じて、より便利な売り場を目指す考え。

また、購入履歴画面に配送ステータスを表示する機能を改善し、納期をアプリなどでユーザーに通知するサービスを検討していることも明かした。

導入前は全商品共通の配送方法。導入後は商品ごとに最適な配送方法の選択が可能になる。
商品別配送方法設定で商品ごとの配送方法を設定できるようにする
検索ページや商品ページで正しい送料の表示が可能になる
送料テーブルの標準化によって、検索や商品のページで正しい送料表示を行う

「楽天ペイ(楽天市場決済)」導入で決済を強化

兼平氏は2017年4月から店舗向けの新たな決済サービス「楽天ペイ(楽天市場決済)」がスタートすることも改めて説明。楽天市場内で利用でる決済手段を統一することで、まとめ買いなど買い物の利便性を高めるとともに、店舗側の決済の負担軽減や不正注文対策などの効果が見込めると強調した。

現状は複数店舗での購入と、導入後の購入
「楽天ペイ(楽天市場決済)」導入によるまとめ買いのイメージ

4月以降の一部新規出店者を対象に導入されるが、既存の出店者には移行期間を設ける。既存の出店者の移行スケジュールは現在策定中だという。

まとめて購入をONにするというボタンが付く。カート画面、支払内容、支払い方法の確認画面での表示も変わる
まとめ購入機能に関するサイト画面のイメージ

データを活用した店舗支援に注力

楽天市場のビッグデータを活用した出店者支援の取り組みを強化する。例えば、ショップのサービスレベルを数値化する診断サービス「R-Karte」は今夏以降、レビューの評価点の内訳をグラフ化したり、ユーザーからの評価の根拠を可視化したりする新機能を追加するという。「R-Karte」は今年1月にも診断項目の拡充などを実施した。

R-Karteにおける店舗チェックシートお世話になっております。機能追加。1/19リリースの機能追加第一弾は、過去平均店舗サブジャンル平均をの比較と、評価点の推移グラフが追加された、第二弾(今夏リリース予定)の機能追加では、評価点の根拠を★やgraphで可視化する
今夏をめどにレビューのレビュー分析機能を「R-Karte」に追加する

また、昨年から試験的に実施していた「楽天ページ診断サービス」を全店舗に展開。同サービスは商品ページのABテストを行うためのツールを提供するもので、2016年に約1100店舗が利用した結果、「転換率が平均43%向上するなど高い成果を上げたことから全店舗への展開を決めた」(ECカンパニーCOO&ディレクター・野原彰人執行役員)と言う。

現在はパソコンサイトのみに対応しているが、2017年下期にはスマホサイトにも適用できるようにする。

ECカンパニーCOO&ディレクター・野原彰人執行役員
出店者支援の施策を説明する野原執行役員

店舗同士の交流を促進

楽天市場の出店者同士が交流するプラットフォーム「RON会議室」を4月にリニューアルすることも発表した。店舗運営における課題や疑問を店舗同士の情報交換による課題解決を目指すQ&A型の「ご意見番機能」を開始するほか、楽天が発信した楽天市場に関するニュースのバックナンバーをカテゴリーごとに整理して情報を追いやすくする。

人気ショップの店長などが講師を務め、他の店舗にノウハウを教える「R-Nations」(アールネーションズ)も加速させる。2017年4月に第2期「R-Nations」を開始するほか、楽天の地方支社を拠点に全国16か所で地域毎の「Area-Nations」(エリアネーションズ)も新たに実施する。

初年度の2016年は5店舗のリーダー店舗が24店舗のパートナー店舗にノウハウを提供した結果、パートナー店舗の流通額が平均50%増えるなど高い成果を上げたという。

人気ショップの店長などが講師を務め、他の店舗にノウハウを教える「R-Nations」。Area-Nationsは2月開始。全国16か所で地域ごとのコミュニティ作りを行う。R-Nations(第2期)は4月開始予定
「R-Nations」を全国16か所で地域ごとに実施する

楽天が培ってきた文化も継承

EC事業を統括するECカンパニー プレジデント・河野奈保上級執行役員は今後の楽天市場の方向性について、「(楽天市場の)さらなる価値向上のために、プラットフォームを強化するための新しいアクションを行っていく」と述べた上で、「商品やビジネスに対する出店者の想いを重視し、それぞれの出店者が持つストーリーをお客様に届けるなど、これまで楽天が大切にしてきた文化も継承していきたい」と抱負を述べた。

ECカンパニー プレジデント・河野奈保上級執行役員
ECカンパニー プレジデント・河野奈保上級執行役員

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

チャットボットの普及で「会話型EC」が当たり前になる日は近い?

8 years 9ヶ月 ago

野村総合研究所(NRI)が公表した「ITロードマップ」(情報通信関連の重要技術が2021年までにどのように進展し実用化されるかを予測したもの)によると、「チャットボット」は2021年度には普及期に入ると予測した。

「自動会話プログラム」の「チャットボット」を巡っては、Facebookから「Facebook Messenger Platform」、LINEが「Messaging API」をリリースするなど、新しいサービスが相次いで発表されている。

人工知能(AI)技術を取り込むことも可能で、近年は顧客からの問い合わせ対応、商品提案など顧客との接点作りで活用したいという企業ニーズが増加している。

2019~2020年度に「チャットボット」関連サービスが多数登場。チャットプラットフォームとの融合が進むとNRIは予測。チャットプラットフォームでは、個人の属性情報なども利用できるようになり、「チャットボット」を用いたサービスはさらに発展するとした。

また、「チャットボット」間の連携によるサービスの高度化が検討され始めると予測。Facebookなどのチャットプラットフォーム提供企業が中心となりAPIの標準化も検討され始めるとした。

2021年度以降は「チャットボット」同士が連携し、「パーソナルエージェント」へと進化する。日常生活から公共手続きまで、あらゆるサービスで「チャットボット」が広く利用されるようになると予測する。

野村総合研究所(NRI)の予想では「チャットボット」は2021年度に普及期へと入る

NRIの予想では「チャットボット」は2021年度に普及期へと入る

米国ECでチャットボットの成功例、日本でも活用進む

ECに「チャットボット」を活用し、会話を通じて商品提案や受注を行う取り組みが国内外で目立ち始めている。

世界最大級のネット通販業界の専門誌「Internet Retailer」によると、ナスダック上場のフラワーEC企業「1-800-Flowers.com」は、IBMの「Watson(ワトソン)」やFacebookメッセンジャーのボットを活用してECを展開関連記事はこちら

Facebookメッセンジャーのチャットボット経由で注文した消費者の70%以上を新規客が占めるなど、新規顧客の獲得に成果を上げている。特に、「ギフトを贈る習慣のある若い層を取り込むための重要なツールと考えている」(クリス・マッキャンCEO)。

野村総合研究所(NRI)の予測では「チャットボット」は2021年度に普及期へ入る  「1-800 Flowers.com」のAI活用例
「1-800 Flowers.com」に搭載したAIコンシェルジュサービス「Gwyn(グウィン)

国内では「日本直販」が3月8日、LINE@アカウントを利用し、「チャットボット」でユーザーと会話しながら商品を提案する新たな取り組みを開始した。ユーザーの投稿に合わせて「商品ランキング」などのURLを表示。将来はLINEトークの画面上でチャットを通じて消費行動を引き起こす「LINEコマース」をめざす。

アスクルは日用品のECサイト「LOHACO」のカスタマーサポートに「チャットボット」である「マナミさん」を利用。電話やメールでの問合比率を下げることに成功した。また、楽天は「楽天市場」の出店者からの問い合わせに「チャットボット」が24時間365日対応するサービスを提供している。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

大塚家具がECの本格展開で掲げる商品とサービスのオムニチャネル施策とは

8 years 9ヶ月 ago

家具大手の大塚家具は3月10日、EC事業の強化とオムニチャネル化の推進などを含む「経営ビジョン」を発表した。

商品紹介サイトとECサイトの統合、EC対象商品の拡充などに取り組む。インターネットの普及で家具の購買スタイルが変化していることを受け、 ECとリアル店舗をシームレスにつないで商品やサービスを提供していく。

EC商品を6月までに4000種類に拡充

3月に商品紹介サイトとECサイトを統合、インターネットで商品情報を調べたユーザーがECサイトを利用しやすくした。

EC対象商品は2017年6月までに現在の約2800種類から4000種類に拡充する。品ぞろえや価格競争力を生かし、EC事業を店舗と並ぶ第2の柱に育てたい考え。

4月をめどに、家具の訪問提案や採寸サービスのWeb申込を開始する。2016年9月にリリースした家具の配置をシミュレーションできるAR(拡張現実)アプリなどと併せ、自宅で家具を検討しやすくする。

大塚家具が手がけるEC強化に向けたオムニチャネル施策

大塚家具の商品とサービスのオムニチャネル化施策(画像は「経営ビジョン」から編集部がキャプチャ)

大塚家具がEC事業の強化に取り組む背景には、インターネットの普及に伴い家具の購買スタイルが変化していることがあげられる。購買前にインターネットで情報収集する世代が家具を購入する年代に差し掛かったことから、「インターネットでのプレゼンスがリアル店舗の集客に直結する」と判断した。

大塚家具のネット通販は2009年に開始。一時、EC事業を縮小したものの、2016年に「IDC OTSUKA オンライン」をリニューアルしている。

大塚家具が指摘する消費者の購買行動の変化

大塚家具が指摘する消費者ニーズの変化(画像は「経営ビジョン」から編集部がキャプチャ)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

ドクターシーラボ公式ECサイトの公開停止の影響は? 1か月半で通販売上は最大11億円減

8 years 9ヶ月 ago

ドクターシーラボは約1か月半にわたって公開を停止していた公式ECサイトを、3月14日10時にリニューアルオープンする。

当初、2月8日に公式ショッピングサイトをリニューアルして公開する予定だったが、システム変更などの開発面で混乱が生じていたという。

公式ECサイトの休業期間中、通販はコールセンターでの受注が中心だった。主力商品の購入が可能な特設ECサイトを立ち上げたものの、「2月以降の通信販売の売上に影響を受ける見込み」(親会社の社シーズ・ホールディングス)。

2~3月の当初想定顧客数に対して10%程度の脱落を保守的に見込んでおり、通販売上は最大で11億円減の影響を受ける見通し。

ドクターシーラボ公式ECサイトの公開停止の影響は? 1か月半で通販売上は最大11億円減

公式ECサイトでは3/14の再開予定を告知している(画像は編集部がキャプチャ)

ドクターシーラボは2月6日、会員ステージが上がるほどポイント優待率がアップする新優待サービス「Ci:Labo33」をスタート。これまでの4~14%といったステップアップ割引に代わり、「サンキューポイント」を最大33%付与する制度に変更した。

割引からポイント付与への移行で、まとめ買いをしやすい環境を作る狙いがあると見られる。

この新制度のスタートに伴い通販サイトのリニューアルを進め、2月8日に刷新版のECサイトをオープンする予定だった。

シーズ・ホールディングスは当初、2017年7月期の通販売上は255億5000万円を予想していた。ただ、1か月半にわたるサイト刷新の影響を保守的に見積もり、下期(2017年2~7月期)に11億円の減収を想定。通期(2017年7月期)の通販売上高は従来予想比11億円減少の244億5000万円を見込んでいる。

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、EC業界に関わること約11年。日々勉強中。

瀧川 正実

取扱高2倍! 商品数3倍! 店舗数16倍! ヤフーのeコマース革命は第二章へ【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

8 years 9ヶ月 ago

3年で取扱高2倍! 商品数3倍! 店舗数16倍! と、ものすごい伸びです。プレミアム会員の年間客単価が3.5倍と優良顧客の囲い込みにも余念がありません。eコマース革命の第二章は「お得革命」ということなので、ユーザー側としてはどんどんメリットが増えそうです。2017年もYahoo!ショッピングに注目です。

eコマース革命の第二章は買い手への革命!

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/4073

まとめると、

  • 「ロイヤルカスタマーの醸成(リピート施策)」「集客の大幅増(集客)」「販促企画の拡大(販促施策)」「お客様からの信頼(信頼性)」は、2017年も継続
  • Yahoo!プレミアム会員に向けたポイント施策が成功。非プレミアム会員と比較すると、年間客単価が3.5倍も高い
  • ヤフー、ソフトバンク社員も「Yahoo!ショッピング」で購入しているが、お願いだからヤフオク!では売らないでと言っている

eコマース革命は出店料を無料にするなど、売り手に対する革命だった。これからeコマース革命は第二章に入る。第二章は買い手への革命だ。やりたいのは“お得”革命。これを実現したい。腹を決めて“お得革命”をしっかりとやり遂げたい。ソフトバンクとYahoo!ショッピングの連動などが2017年にやること。Yahoo!ショッピングの出来上がった流れにしっかりと乗ってほしい。

Yahoo!ショッピングの勢いが止まらないですね。特にYahoo!プレミアム会員の年間客単価が3.5倍というのはすさまじいです。ソフトバンクユーザー向けの施策も成功していますし、社員も購入するなどグループの強みを最大限に活かしていますね。お得革命がどうなるかも楽しみです。

ネットショップは見栄えからじゃなくて集客からです

ネットショップ始めたけど「全っ然売れへんねん!」【オカンでもわかるWeb集客の基礎】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/4009

まとめると、

  • インターネットでできる基本的な集客施策は、SEO、リスティング広告、アフィリエイト広告、アドネットワーク、ソーシャルメディアマーケティングの5つ
  • 特にSEOはインターネット集客に欠かせない施策の1つ
  • アフィリエイトは成果報酬型であること、新規ユーザーの獲得に強いこと、第三者目線での訴求ができることが強み

ネットショップはまずは集客ですよね。人が来ないと写真も文章も見てもらえませんから。記事に書かれてる5つの施策は基本中の基本ですので、どんなものかは知っておかないといけません。しかし、オカンのコメントがおもしろすぎますw

モバイルファーストインデックスも大切だけどAMPも大事

ECサイト初のAMP成功事例? AMP対応したインドのショッピングサイトは1日の注文が52%増加、一覧ページのトラフィックが59%増加 | 海外SEO情報ブログ
https://www.suzukikenichi.com/blog/first-succesful-case-study-of-amp-ecommerce/

まとめると、

  • インドのショッピングサイト「Snapdeal」 はコンテンツ全体の70%~80%をAMP化
  • 1日の平均オーダーが52%増加、一覧ページの1日の平均トラフィックが59%増加
  • AMPのキャッシュからも購入が可能で、普通のECサイトの購入プロセスと変わらない

いずれにしても、EC サイトの AMP ページで実際の購入まで可能になっているという事実は真実です。

しかも、ただ単に AMP 化したということではなく、AMP 化によって成果が出ています。

AMP は記事コンテンツを配信するパブリッシャーだけが恩恵に預かれる仕組みという概念を、少しずつかもしれませんが払拭できそうです。

これはネットショップを持っている人にとっては衝撃です。モバイルファーストインデックスに対応することを考えながら、AMPのことまで考えないといけません。PCサイトをメインに考える時代は終わってしまいましたね。

EC全般

自社ECのお客様像をデータから明らかに!? 17の数字で振り返る2016年自社EC | ヒトテクノロジーラボ
http://hitoteku.com/topic_list/2016ECmatome

これを見てもスマホ化の流れが顕著です。客単価はPCが高いものの、購入数自体はスマホ。

家計簿 Zaim 購買データを統計解析した「プレミアムフライデーの会社員の支出」発表 | 株式会社 Zaim
https://blog.zaim.net/?p=2641

前年同時期と比較した伸び率なので説得力のあるデータです。個人的には「プレミアムフライデーってなに?」だったのですが。

アパホテル、客室テレビで動画コマースを開始 | 通販新聞
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2017/03/post-2788.html

これはありそうでなかった施策。成果が出これば他も追随するかもしれませんね。

自社ECサイトは「何曜日」「何時」「何のデバイス」で買い物されているの? | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/4083

このデータはすでに知っている人も多いのでは? 知らなかった人はGoogle アナリティクスなどで確認を。

100人に聞いた「スマホでついポチっと買ってしまったもの」教えて! | WP
https://www.webprofessional.jp/realistic-ec-usage-status-seen-from-unexpected-expensive-items/

「ユーザーの利用回数や利用金額にはまだまだポテンシャルがあるようにも思えます」。ライトユーザーはまだまだ多いです。

データフィード広告市場規模、2020年は1,507億円に[ビカム・デジタルインファクト調査] | ECzine
http://eczine.jp/news/detail/4355

データフィード広告も必須になってきました。自力では難しいことも多いので、依頼先を早めに見つけておきましょう。

ヤマトヤマトの1週間【今週のネッ担人気記事ランキング】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/4089

ヤマト関連の記事はこちらで。

スピード配送ではアマゾンに勝てない――ウォルマートがプライム対抗策を廃止した理由 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/4082

「とにかく低価格で送料無料を望む家庭やユーザーも、ウォルマートに移っていくかもしれません」。この流れは日本にも来るのでしょうか?

今週の名言

「ソーシャルで拡散すれば良いじゃん」は、「お金が無いならヒットビジネスを考え出せばいいじゃん」と同じくらいバカっぽいので、よくよく考えてから言いましょう

「そーだ、ソーシャルで拡散しよう」とか、泥縄では無理なんで! | More Access! More Fun!
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=31645

簡単にできるのなら誰でもやってますよね。上手くいかないから価値があるわけで。

森野 誠之

運営堂

運営堂代表。Web制作の営業など数社を経て2006年に独立後、名古屋を中心に地方のWeb運用を支援する業務に取り組む。現在はGoogleアナリティクスなどのアクセス解析を活用したサイト・広告改善支援を中心にWeb制作会社と提携し、分析から制作まで一貫してのサービスも開始。豊富な社会・業務経験と、独立系コンサルタントのポジションを活かしてWeb制作や広告にこだわらず、柔軟で客観的な改善提案を行っている。理系思考&辛口の姿勢とは裏腹に皿洗いを趣味にする二児のパパ。

森野 誠之

情報漏えいを防ぐECサイトの不正アクセス対策は何が必要? 【流出責任の裁判例あり】 | 通販新聞ダイジェスト

8 years 9ヶ月 ago

通販サイトが不正アクセスを受けて、顧客情報を流出させてしまう事故が後を絶たない。情報処理推進機構(IPA)では1月、SQLインジェクションのぜい弱性に関する注意喚起を公表。ぜい弱性があることを知らないまま運営しているサイトは相当数あるとみられるからだ。また、2月にはオープンソースのコンテンツ管理システム(CMS)「WordPress(ワードプレス)」に重大なぜい弱性が発覚した。セキュリティーを意識した通販サイト運営には何が必要なのか。

情報漏えいを防ぐECサイトの不正アクセス対策は何が必要? 【流出責任の裁判例あり】 不正アクセスが原因とみられる2016年以降の主な情報流出事件(ネット販売関連のみ)
不正アクセスが原因とみられる2016年以降の主な情報流出事件(ネット販売関連のみ)

IPAでは1月25日、中国の「WooYun」というウェブサイト(上から3番目の画像は「インターネット・アーカイブ」で保存されていた同サイトの過去のトップページ)に、SQLインジェクションのぜい弱性が存在する日本のウェブサイトが約400件登録されていることが判明したと発表した。同サイトはぜい弱性のポータルサイトで、投稿者が発見したウェブサイトのぜい弱性情報を投稿できる仕組み。日本のメディアでも話題となったが、昨年7月以降閉鎖状態となっている。

IPAによれば、2004年の「情報セキュリティ早期警戒パートナーシップ脆弱性届出制度」発足から16年までに届出されたSQLインジェクションのぜい弱性は1055件。今回判明したぜい弱性は約40%に相当するわけだ。

これらのぜい弱性は、不正アクセス禁止法に抵触する方法により検出された可能性があるため、本来であればIPAの取り扱い対象外。しかし、今回は特例として、このうち248のウェブサイトの運営者に対し、ぜい弱性の存在を連絡しているという。

独立行政法人が「特例」としてこうした対応を公表するというのは、それだけ事態が深刻だということ。IPAでは通知したサイトの詳細は明らかにしていないが、通販サイトが含まれていることも十分に考えられる。さらに問題なのは、こうしたぜい弱性が氷山の一角ある可能性が高いこと。IPAでも「セキュリティーを考慮したウェブサイト構築と検証が、いまだにほとんど実践されていない」と警告する。

SQLインジェクションのぜい弱性を突いた不正アクセス事件は後を絶たない。最も知名度の高いぜい弱性と言えそうだが、なぜ無くならないのか。IPA技術本部セキュリティセンター情報セキュリティ技術ラボラトリー脆弱性分析エンジニアの大道晶平氏は「セキュリティーを意識していない開発者が多いのが実情だろう。『コードは書けるがSQLインジェクションを知らない』という開発者もいるはずだ」と指摘する。

情報漏えいを防ぐECサイトの不正アクセス対策は何が必要? 【流出責任の裁判例あり】 情報処理推進機構(IPA)では「ウェブアプリケーションのセキュリティー実装チェックリスト」を公開している
IPAでは「ウェブアプリケーションのセキュリティー実装チェックリスト」(IPAのサイトにジャンプします)を公開している

拡張機能に注意

2月に発覚したワードプレスのぜい弱性は、悪用することでワードプレスを使うサイトが簡単に改ざんされてしまうというもので、IPAなどが注意を喚起。JPCERTコーディネーションセンターでは、ワードプレスを利用していると思われる国内の複数サイトが改ざん被害を受けたと報告。さらに、米FEEDJIT社では、20のグループが約156万サイトの改ざんに成功したという調査を発表している。ワードプレスで構築した通販サイトも少なくないことが予想されるだけに、該当する事業者は対応する必要がある。

CMSは、ウェブサイトのコンテンツ作成や更新、管理が簡単にできるため、利用する通販サイトは増えている。今回ぜい弱性が発覚したワードプレスは拡張機能も多く、IPAによれば国内外で半数のシェアを占めるなど、個人・法人を問わず利用者は非常に多い。それゆえに攻撃者から狙われる機会も多くなる。

今回発覚したぜい弱性は「REST API」に関わるもの。REST APIは、ワードプレスの使い勝手を良くするための機能で、4.7.0から追加された。ぜい弱性が存在するのは4.7.0と4.7.1。これを悪用すると簡単にサイトを改ざんすることができる。

ワードプレスの開発者は、1月26日付で更新した最新バージョン、4.7.2でぜい弱性を解消。ただ、当初はREST APIのぜい弱性を公表していなかった。深刻なぜい弱性であることから、利用者の安全性を考えて、公表はアップデートが終わったであろう2月1日まで遅らせたとのだという。

それにも関わらず、改ざんされるサイトが多数出てしまった。ワードプレス本体にアップデートがあった場合、初期設定のままなら自動で更新される。しかし「自動更新でバージョンアップすると、PHPとのバージョンの整合性が取れなくなったり、拡張機能が使えなくなったり、他の製品との連携が取れなくなったり、さまざまな理由で正常にサイトが運営できなくなる恐れがあるので、自動更新をオフにして、更新は手動でしている利用者が多いのではないか」(大道氏)。

REST APIのぜい弱性に関しては開発者がブログで公開したため、セキュリティー関係者などの間では大きな話題となったものの、肝心の利用者には危険性が伝われなかった恐れがある。とはいえ、REST APIのぜい弱性が公表されるまで、製品更新からは1週間ほどのタイムラグがあった。その間にアップデートしてもサイトに問題が起きないかどうかをチェックし、最新版にすることはできたはずだ。大道氏は「仮に深刻な脆弱性のアナウンスがなかったとしても、最新版にするという習慣付けが重要だ」と説く。

今回問題となっているぜい弱性は、ワードプレス本体にあったものだ。ただ、ワードプレスの場合、拡張機能のぜい弱性が発覚することの方が件数としては多い。拡張機能は個人や小規模な組織が開発することがあり、セキュリティーへのケアが不十分だったり、最後に更新してから何年も経過していたりすることもあるため、本体よりもぜい弱性が見つかりやすいのだ。大道氏は「アップデートはきちんとすることはもちろん、メンテナンスされていない拡張機能はなるべく使用しないようにすることが重要だ」と話す。

CMSを利用した通販サイトは多く、例えばワードプレス用の買い物カゴプラグインとしては「Welcart e-Commerce」がある。また「EC-CUBE」はネット販売対応のCMSだ。

CMSは知識や技術の乏しいユーザーでも簡単にコンテンツの作成・更新ができる一方で、利用者がセキュリティーへの意識が低いと大きな被害を生み出す恐れもある。運用面でも、管理者権限を与えるユーザーを制限したり、認証画面が外部からアクセスできないようにするパスワードは強固なものにする、といった対策が求められる。

「WooYun」では日本サイトのぜい弱性が公開されていた 情報漏えいを防ぐECサイトの不正アクセス対策は何が必要? 【流出責任の裁判例あり】
「WooYun」では日本サイトのぜい弱性が公開されていた(画像は「インターネット・アーカイブ」で保存されていた過去のトップページ)

“流出責任”はどこに

システム会社の過失認める、売り上げ損失は避けられず

企業が通販サイトのぜい弱性を原因として顧客情報を流出させてしまった場合、サイト構築を委託した外部企業に責任を問うことはできるのだろうか。

SQLインジェクションのぜい弱性を突かれてカード情報流出事故を起こした通販サイトの運営企業が、システム開発会社に損害賠償を求めた裁判があり、東京地裁の判決では賠償請求が一部認められた(判決は2014年1月23日、確定)。

これは、インテリア商材を販売する会社(以下A社)が、通販サイト構築を委託したシステム開発会社(以下B社)を訴えたもの。判決文によれば、サイトのサーバーが不正アクセスされ、最大1万6798件の個人情報(うちクレジットカード情報は7316件)が流出。サイトにはSQLインジェクションに対するぜい弱性などがあった。

A社では「個人情報流出を防ぐためのセキュリティー対策をしていなかった」などとして、B社に対して顧客への謝罪費用(約1900万円)、売り上げ損失(約6000万円)など、合計で約1億1000万円の賠償を求めた。一方、B社では「SQLインジェクションで第三者がカード情報などの重要情報を取得したとは認められない」「適切なセキュリティー対策を講じたウェブアプリケーションを提供する必要はあるが、セキュリティーレベルを整備し続ける義務はない」「不正アクセスは想定不可能な方法で行われたもので、予見可能性はなかった」などと反論した。

判決では「流出の原因はSQLインジェクションである」とした。B社の責任については「個人情報流出を防ぐために必要な対策を施したプログラムを提供すべき債務があった」とした上で、経済産業省やIPAによるSQLインジェクション対策に関する注意喚起を根拠に「SQLインジェクション対策をする必要があった」とし、必要な対策(バインド機構の使用とエスケープ処理)を行っていなかったことを指摘、重過失を認めた

一方でA社の責任も認めた。当初は顧客のカード情報が保存されない仕組みだったものの、利用されたカード会社情報を取得するようA社側の要望があり、データベースに保存する方式(暗号化はなし)に変更。B社から保存しない形式への改修提案を受けていたのに、A社が放置していたからだ。判決では3割の過失相殺が相当とした。

認めた賠償額は約3230万円。顧客への謝罪費用はほぼ満額認められたが、売り上げの機会損失については400万円のみが認定された。ここから3割の過失相殺を計算し、B社の賠償額は約2260万円となる。

今回は通販サイト側の主張が一部認められたが、全ての流出事件に当てはまるかどうかは分からず、また売り上げの機会損失は避けられない。基本的には発注者側が要件を明確にすることが重要だ。カード情報の取り扱いや、SQLインジェクションなどのぜい弱性の有無をチェックする検査を行うことなど、きちんと指示をしておく必要がある

今回の例では「管理者のID・パスワードが容易に推測可能なものだった」(B社はA社の変更を前提としていたと主張)など、通販企業がサイト運営に際し十分な知識を持っていたのか疑わしい部分もある。「無関係」と油断をせず、意識を高める必要があるだろう。

IPAが公表している情報セキュリティ対策

通販新聞
確認済み
18 分 4 秒 ago
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