人をひとりのヒトとして判定することでどこまでマーケティングは機能するか  ~ヒトの「カメレオン化」をもっと研究しよう~ | 業界人間ベム

業界人間ベム - 2024年3月3日(日) 10:33
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変に長いタイトルになってしまいましたが、要は「IDにより人を特定することで期待されていたマーケティングは本当に機能しているのか」という話です。個人情報保護の観点で承諾のないまま裏側で紐づけられるのはNGになってしまって、現実論として「無理!」なのに、このような力業かつコストのかかる仕組みを作っても、本当に機能するのか?という議論です。そしてそもそもヒトの多面性というか移り気加減を無視した考え方になっていないかを考えてみようと思います。

この発想に至ったのはトレンダーズの「インフルエンスファクター」のSNSによる行動パターンがヒトに帰属しないということがデータではっきりしていることからです。

インフルエンスファクターでは、ヒト・モノ軸×ソサイエティ・パーソナリティ軸で、オーディエンス・トラスト・ナレッジ・ディスカバリーの4つの購買意志決定パターンを設定するのですが、このパターンはヒトに帰属しているのではなく、対象ブランドのカテゴリーや価格帯によって変わってしまいます。

特定のカテゴリー、価格帯のブランドを預かるマーケターにはこのインフルエンスファクターは非常に役立つロジックですが、こういう行動パターンがヒトによるものでないとすると、マーケティング理論としてすべてのブランドに機能する理論において「こういう人」と括ることだけではマーケティングは機能しないと言えます。

もうひとつファネルの理論も言ってみればヒトで括る考え方です。「認知したヒトのうちの、関心をもったヒトのうちの、比較検討したヒトのうちの、購入意向を持ったヒトのうちで購買者がいます。」という構造をつくって考えていますが、現実は、商品によってはメディアで認知していなくても買うヒトはいます。関心をもたなくても買ってしまうヒトもいますし、比較検討しなくても買ってしまうヒトもいます。購買行動をあまり単純化するのは危険です。

 さて、ではヒトで括るのが万能でないならどうすればいいでしょう。ある意味原点回帰かもしれませんが、コンテンツ、コンテキスト、タイミング、ジオなどを総動員するしかありません。つまりIDでのヒトの特定が万能ではなく、同じ人間が様々な購買行動パターンを起こすことを前提にマーケティング活動を設計するのです。

 「十人十色」から「ひとり十色、二十色」は、本当は昔からあったのです。しかし現在はヒトの「カメレオン化」を強く促す情報社会です。そうした中で「広告」は相対的に力を失っていると思います。テレビの視聴率が落ちて、デジタルメディアに流れているのでしょうが、その分は効果的な広告枠にはなっていません。デジタル化は圧倒的に消費者にコンテンツ消費の主導権をもたらしました。虫食い消費、1.5倍速消費、広告スキップは当たり前で効果的な広告枠は存在するでしょうか。テレビを観ない若い層にとって、広告とは「ウザい」ものでしかありません。

 広告枠をつくって配信すること自体がこの先危うい仕組みです。

 そうなると体験をつくるリアルな仕掛け、当然それがSNSとの相乗効果をつくり込むしかありません。「SNSで集客し、リアル体験をSNSで拡散する」というごくごく当たり前のことをもっともっと中身に知恵を使っていくのです。

 広告代理店にとっては得意の「仕掛け」の分野です。(仕組みづくりは下手ですからねw)

 さて、広告主に警鐘を鳴らしておきたいと思います。広告枠に放送・配信するのは楽ではありますが、効果的な広告枠はどんどんなくなります。当然単価は上がりますが、そもそも買えなくなります。いわゆる広告枠を買う以外の施策を考えてください。

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