新学期(米国は9月から)の準備の際、購入前に実際に商品を試したい消費者が多いため、実店舗での買い物が増加すると予想されています
新学期は小売事業者にとって2番目に大きなシーズンで、店舗の売上予測は明るい兆しがさして見えています。
消費行動が店舗へ回帰していると発表した全米小売業協会(NRF)によると、今新学期シーズンの成長率は前年比8.2%と予測。新しいサイズを試着したいというニーズと、最新のファッションを実際に見てみたいという消費者ニーズが成長をけん引するそうです。
百貨店は数年にわたった新学期シーズンの落ち込みに直面した後、回復基調を継続。その結果、百貨店の売り上げは前年比13%増になるとNRFは見ています。
NRFは、「back-to-school(新学期)」は「in-store shopping(店舗での買い物)」の再開を意味すると予測。複雑な商品から高価な衣類まで、あらゆる商品を購入する消費者が、店舗へ足を運ぶと予測しているのです。。
私はめったに服を買いませんが、購入前に見て・着てみるのが好きなので、店舗で買います。家具も同じです。
筆者が実施した買い物に関する調査によると、特に低価格で大きなモノ(たとえばベッドフレーム、扇風機、テレビなど)、簡単なモノであればお店で手に入れるというのが共通回答です。また、時間がない時も、店舗での買い物が好まれています。
店舗でのショッピングでは、子どもを連れて直接手に取って商品を選びます。ネットでしか買えないような特別なモノでない限り、子どもたちは通路を歩き回るのを好むからです。通常はTarget(『Digital Commerce 360』発行の『北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版』で5位にランクイン)で商品を購入します。衝動買い以外は、店頭で服を買うことはありませんが、子ども達は自分でスニーカーを選ぶと言い張ります。
リテールセラピーは実在する
小売店での買い物には、「リテールセラビー」と呼ばれるものがあります。
ある人は、洋服を試着するのが好きで、本格的なショッピングを楽しみたいために店舗へ足を運び、対面でのサポートを求めます。また、ある人は、歩くことでインテリアのアイデアを思いついたり、必要なモノを思い出したりすることができるので、店に足を運ぶことを好みます。また、別の人は、家を出てしばらく外出する際、HomeGoods(親会社であるTJX Cos.の下、トップ1000位の中で69位にランクイン)やTargetに立ち寄るのが楽しいと話します。
店舗とオンラインの買い物体験は相互に排他的なものではないため、オムニチャネルの出番となるわけです。ほとんどの消費者がマルチチャネルを利用していて、利便性と選択肢が、長期的に消費者と小売事業者の双方に利益をもたらします。
PwCの年次消費者調査によると、消費者の40%近くが少なくとも週に一度は実店舗で買い物をするのに対し、オンラインで同じことをする人は27%であることがわかっています。
実店舗に着いてから価値のある買い物をするために、オンラインは家で予習をすることができます。在庫の有無、幅広く正確な品ぞろえを事前に確認できるのです。こんな意見もあります。
最近、在庫や陳列場所の確認は、直接スタッフに聞くよりスマホで確認することが多いので、買い物がうまくいかない状況にはなりません。スマホでできないことを店員に聞く必要性が減ってきているので、カスタマーサービスは良い方向にシフトしているように思います。Lowe’sはアプリでの案内もしっかりしているし、私の行く店舗は従業員も親切です(いつもそうとは限りませんが)。
小売店での究極の買い物体験
体験は感動であり、感動の一部は触感です。ある人は、ハンドバッグに使われている革の種類など、生地の質を見極めるのに、店舗は役立つと話します。
筆者は、どのようなお店が本当に体験を提供してくれるのか、いつもリサーチしています。Nike(トップ1000位の10位)が常にその対象で、商品を間近で見ることに勝るものはない一部の高級小売店も含まれます。
また、ホームセンターは、自宅の部屋のセッティングを想像する上で興味深い環境を提供してくれます。オンラインでシミュレーションできるツールはたくさんありますが、実際にソファへ座る体験に勝るものはありません。調査では、独立系書店での体験談を紹介してくれた人もいました。
McNally Jackson BooksellersはここNYCではかなり新しい会社です。同僚によると、一貫して素敵な時間を過ごすことができる場所と聞きました。かわいいコーヒーショップがあり、店内にはふかふかの椅子がたくさん散りばめられている、などなど。この勧めをもとに最近ブルックリンの店舗を訪れましたが、私も同感です。
効率が肝。スピード、即時性求める消費者たち
買いたい商品数が少ないとき、試着が必要なとき、至急必要なとき、あるいは“土壇場”で急にモノが必要なとき、大きなモノ(例:ベッドフレーム、扇風機、テレビ)が必要なとき、店舗は最速の買い物方法になることがあります。また、必要な時に間に合わないギリギリのプレゼントも、店舗での買い物に向いています。
筆者は店舗に行くのが好きです。品ぞろえが豊富で、すぐに見て回れます。ほとんどの場合、数分で良いモノが見つかります。
カジュアルな黒のリネンパンツを探していた筆者は、Googleで検索してみたものの、地元の商店街まで1マイルほど歩いた方が効率的な買い物ができるようでした。すぐにAthleta(親会社であるThe Gap Inc.の傘下起業で、トップ1000位の19位)の店舗を一周し、目ぼしい商品をいくつか見つけ、15分以内に他のコーディネート商品と一緒に、店舗を後にしました。オンラインショップでは、商品を手にすることができないため、返品もあり得たでしょう。
「もっと早く必要なものがあれば、Nordstrom(トップ1000位の20位)に行きます」とある消費者は話します。
そこで、Nordstromの店内へ入るり、"now"ファクター、つまり今すぐ(5時間以内の即日配達ではなく、1時間以内)について聞きました。たとえば、子どもがミットをなくしてしまったことに朝気づき午前10時からの試合に必要である、その日の夕食に作ることを約束したレシピのために特定の耐熱皿が必要であるといった「今すぐ」需要への対応です。テクノロジーは、店舗の効率化にも貢献します。
先日、Targeのレジに並んでいたら、店員がスキャナを持って近づいてきました。彼女は私の商品をスキャンし、あまり待たずに会計を済ませることができたのです。
基本的なことは今も変わらない
『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが1033人のを通販・EC利用者を対象に行った調査から、消費者がオンラインで何を求めているのか考えてみましょう。
送料無料は、商品の在庫状況、過去の経験、適切な価格は引き続き上位にランクインしています。ショッピングには基本的なことが重要であることに変わりはありません。
特定の小売店で買い物をしようと思った理由(出典: 『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが行った調査)
消費者は、空っぽの棚、店舗間の在庫の不一致、値札のない商品といった問題に直面することがあります。在庫は買い物の基本です。消費者は他にも、「何もない店の棚は見ていて楽しくないし、探しているものが十分に棚に並んでいない」というコメントもしていました。
ハードウェアストアのHome Depot(トップ1000位で4位)やLowe’s(トップ1000位で11位)は、必要なものを探すのに時間がかかりすぎます。大抵は小さな商品だし、スタッフも見つからないので、あまり行きたくないです。でも、見つけたときは、とても親切に対応してくれます。
一方で、商品を探すのに苦労している消費者もいます。品ぞろえの豊富な店舗や広い店舗面積の店舗では、必要なモノを見つけることに苦労します。特に、Macy's、Kohl's、JCPenneyといった百貨店が挙げられています。
消費者は詳細な商品情報を求めている
最近、店頭で商品を見つけることが難しくなっています。2種類の歯磨き粉、保湿剤、低脂肪クリームチーズ、出産祝いのカードなど、見つけられないものばかり。あらゆるものが製造中止になったり、品薄になったりしているようで、お店で扱っているブランドも少なくなっています。必需品を探すために、オンライン(通常はアマゾン)を利用することが多くなりました。衣料品店も品薄です。Old NavyからNordstromまで、何も見つからないんです。
こうした状況を踏まえると、Amazonに消費者が向かうのは当然のことでしょう。つまり、消費者は在庫状況なども含めた詳細な情報を求めているのです。
小売店やブランドのECサイトにおける商品詳細情報は、あまりにも情報が薄いか、情報過多かどちらかです。実店舗のスタッフが、初心者の私に必要なモノと、もっと高度なスキルがないと無駄な買い物になるモノを正直に教えてくれたのは、ありがたかったです。
カスタマーサービスでは例外が奨励される
筆者はネットで購入した商品の返品に多くの時間を費やしています。時には、一度に何十件ものオンライン注文を受けることもあり、それらを店舗に返品するだけで数時間かかってしまうこともあります。
店舗へ出向いて買い物をするのが好きな人にとっては、今のガソリン価格では、返品は少し気が引けるかもしれません。ショッピングは購入が目的ですが、ポジティブな返品体験は消費者の心に残り、ロイヤリティを高めてくれる可能性があります。
『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが1033人の通販・EC利用者を対象に行った調査によると、消費者は高い返品手数料を好まないことが判明しています。また、返金を得るまでに1週間以上かかる場合や、あまりにも制限の多い返品ポリシーも好まれないことが指摘されています。
オンラインで購入した商品を返品する際、不満に思うこと(出典: 『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが行った調査)
ただ、例外的な要素が店舗への関心を高める可能性があります。同僚の数人は、もしかしたら嫌なことに巻き込まれる可能性があるというような「例外的」要素に言及しました。
Best Buy(トップ1000位の6位にランクイン)で、購入時に故障していたテレビを返品する際、ひどいサービスを受けました。カスタマーセンターのスタッフは私が壊したと責め立て、店長に報告するまで返金はしないと伝えてきたのです。実店舗ではお店の責任者に直訴できるのに対し、オンラインでは匿名性が高くなってしまいます。
多くの人が、ホームセンター店頭での購入やカスタマーサービスという名の例外的なサービスに注目しています。そのなかで目立ったエピソードがあります。
Home Depotのオンラインストアで、デッキ用のステインを注文しました。商品が届くと、着色はされておらず無地のように見えました。使用前にカスタマーサポートに電話をしましたが、彼らはサポートまでできませんでした。私は着色されていないことに気づいたので、地元の店舗に商品を持って行き説明をしました。すると店頭スタッフが商品に色を塗ってくれたのです。地元のホームセンターは、オンラインのミスを救済してくれたわけです。
消費者が例外的な助けを必要としているとき、従業員が店頭で規則を「破って」くれることもあります。ある消費者は、Joann(トップ1000の266位にランクイン)の店では、店頭でクーポンを組み合わせたり、競合店のクーポンを簡単に使えることが気に入っていると言っていました。同じことをオンラインで実現する場合、とても難しいことだと指摘しています。
店舗のスタッフは消費者への対応をもっと改善すべき
正直なところ、最近の店での買い物は大変なことになっているようです。冒頭に予測した新学期の数字を振り返ると、誰が消費者の面倒を見るのだろうかと考えさせられます。筆者が訪れる多くの店は、デパートから専門店まで人手不足が起きているからです。
お店での対応は運次第という側面があります。人手不足のなか、店員を探し出すのは大変です。しかも、その店員は夏休みのアルバイトで、高校生や大学生の若者だったりします。知識も乏しく、基本的な質問にも答えられません。
筆者のキャリアは小売業の売り場から始まりました。研修もありました。小売業で働くことを特権と考え、楽しんでいました。ただ筆者の娘は最近、ニューヨークの高級小売店に就職しましたが、残念ながら真逆の経験をしていました。娘は決して再び小売業で働きたいとは思わないでしょう。私は今でも戻りたいと思っています。
理由は、ある人が話してくれたようにシンプルなことです。
Targetは従業員を親切にする努力をしている。
その通りです。私は50年経った今でもTargetで買い物をしていますし、これからもTargetに行くつもりでいます。
知識は重要。消費者の時間節約にも
素晴らしい店舗は、お客さまとのつながりを大切にしています。私は、優秀なスタッフと会話し、Sephoraのビューティーアドバイスのような洞察を得ることを楽しんでいます。
同僚の奥さんは、Paper Sourceをあげました。彼らは、現在店頭に並んでいるもので、デザインやクラフトの課題を解決する手助けをしてくれたからです。
店舗での買い物は、最終的には人とサービスによってその価値が決まるのかもしれません。
試着室のジレンマ
ネット通販でサイズが合わないというのは、以前からよくあることでした。しかし、より深刻なのは、試着するために店舗に足を運んだのに、試着室で問題が発生することです。ある消費者はこう話しました。
多くの店舗で、品揃えが悪く、棚が空っぽ。レジの列も長い。Macy'sにドレスを探しに行ったら、試着室が閉まっていて、レジも閉まっていた。だから、Nordstromに行ったんです。
多くの人が店に行く理由は、「購入前に試着したい、商品を実際に見てみたい 」ということです。ある母親は、娘とプロムドレスを買うために出かけたところ、試着室が閉まっていることに驚いていました。
自身の適正サイズを判断する際、役立ったこと(出典: 『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが行った調査)
筆者は他の多くの人と同じようによく中間サイズを選びます。店頭ならすぐに試着して決められますが、オンラインではそうもいきません。1色だけ欲しい場合、オンラインでは2つ注文して1つを返品します。
過去6か月の間、筆者はシカゴのZARAを3店舗訪れましたが、そこでの体験はほとんど同じような失望感でした。試着室の数は限られており、客をサポートできる人はほとんどいなかったのです。
ZARAのファンである筆者は、いくつかの商品を手に入れるために店に向かいました。到着して周りを見渡すと、レジの列には20人並んでいました。販売員は3、4人しか働いていないようでした。他の店舗では、レジに2人しかおらず、他の店員はほんの数人しか働いていません。試着室には10~12人ほどの列ができていて、複数の服を抱えていました。私の服を預かって、部屋が空くまでラックに掛けてくれる人は、かろうじていましたが、販売員がお客さまの買い物をサポートすることなどはありませんでした。
引き続き魅力のあるショップローカル/ショップスモール
『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが1000人以上に行った調査では、回答者の21%が地元で買い物をするよう意識していることがわかりました。
コロナ禍がアパレル、アクセサリー、シューズのオンライン購買行動に与えた影響(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが行った調査)
近所の小さな店での丁寧な接客などによって、購買行動が変わることがあります。「私は、地元の小さな装飾のブティックや衣類のブティックで買い物をします。地元のママの商品も陳列されていると聞いたからです」
顧客を大切にするということは、十分な在庫と、販売されている商品に精通した販売員を確保することです。小売事業者が店舗をしっかり管理することができれば、勝算があるのかもしれません。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:店舗回帰のトレンドに学ぶお客に支持される売り場作りと改善策&最新の消費行動 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ
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