SNSの浸透、新型コロナウイルス感染症拡大などで、InstagramがEコマースビジネスに与える影響が大きくなっている。国内利用者のインサイト情報を踏まえ、Eコマース事業者が押さえるべき、Instagramのビジネス活用法、自社サイトへの集客を増やすポイント、効果的な広告活用をFacebook Japanの丸山祐子氏(コマース事業部 Industry Manager)が解説する。
Instagramの国内月間アクティブアカウント数は3300万以上
Instagramは2018年にグローバルの月間アクティブアカウント数が10億を突破。日本の月間アクティブアカウント数は2019年に3300万を突破、その後も利用者数は拡大を続けているという。「日本の利用者はアクティブにInstagramを活用しており、日常生活の一部になっている」(丸山氏)
日本のInstagram月間アクティブアカウント数は3300万以上
利用者ごとの興味・関心に合わせてコンテンツを表示し、「商品が顧客を見つける」という発見型コマースを実現するInstagram。検索はテキストからビジュアルにシフトしつつあると指摘し、日本のInstagram利用者がハッシュタグで検索する回数は、グローバルと比較して5倍にのぼるという。
日本のInstagram利用者はハッシュタグ検索する回数が多い
日本の利用者にとってInstagramは情報収集のツールになっており、テキストからビジュアルで検索を行うという行動にシフトしています。特に日本では、ビジュアル検索がアクティブに使われているということが数字でも示されている。デジタルコマースシフトの時代を迎え、Instagramがビジネスで果たす役割も大きくなっています。(丸山氏)
Facebook Japanの丸山祐子氏
(コマース事業部 Industry Manager)
丸山氏がこう話すように、Instagramで商品を発見、購入を検討、自社サイトに訪問する消費行動が増えている。
アパレルブランド「HACHITEN(ハチテン)」を展開するエイトでは、2020年に店舗を閉鎖、現在はEC専業として事業を展開している。EC利用者の約4割がInstagram経由の流入。2020年2月のコロナ禍以降、Instagram経由のアクセスは従前比約2倍になったという。
インテリアブランド「songdream(ソングドリーム)」を展開する富士家具工業では、2021年1月度におけるInstagram経由の利用者は、前年同月比3.4倍に拡大。他チャンネルよりも高いセッション率を記録している。
また、Instagram利用者はホームページ、Instagram投稿を事前にチェックしてくるため、顧客が実店舗へ訪問し問い合わせをしてきても、他の問い合わせよりも対応工数を削減できているという。
パルが展開するアパレルブランド「who's who Chico(フーズフーチコ)」では、Instagramライブで紹介した商品の初日の予約数が、過去最も予約数が多かった商品の初日予約と比べて206%だった。
Instagram経由で自社ECサイトへのアクセスが増えている
発見型コマース、Instagramのコマース機能とは
Instagramは、オンサイト(Instagram上のデータ)とオフサイト(CRM、SDK、PIXEL、Conversion API、PURCASE DATAなど)の利用者データを機会学習、利用者ごとにパーソナライズしたコンテンツを表示する。
機械学習によって、利用者側から見ると自分と親和性の高いコンテンツが表示される、ビジネス側は購入可能性の高い利用者にパーソナライズしたコンテンツを届けることができるのです。これが、「商品が顧客を見つける」という発見型コマースの仕組みになっています。(丸山氏)
Instagramの「発見型コマース」の仕組み
他のeコマースプラットフォームと何が違うのか? Facebook JapanではInstagramを「好きと欲しいを作るプラットフォーム」と位置付けており、偶発的発見や人とビジネスとのつながりを創出するとしている。「発見」「比較検討」「検索」というさまざまなフェーズで影響力を持つInstagramは、購買行動に大きな影響を与えているという。
Instagramとeコマースプラットフォームの差異
日本の利用者が、商品タグが付いている投稿などから商品詳細を見る割合は、他国平均の3倍(出典:2020年9月のInstagram内部データ)で、2019年比で65%増えている。
そこで、Instagramのeコマースに関する機能を見てみよう。
各種機能について
商品タグ(2018年6月に日本で導入)
フィード投稿やリール動画などに表示される商品に商品名や価格を記載したタグを付けることができる機能。タグをクリックするとInstagram内の商品詳細ページへ移動する。消費者は、投稿を見て商品を「発見」、タグをタップして価格や商品の詳細を閲覧して購入を「検討」、リンクから外部ECサイトに移動し、投稿で見た商品を「購入」することが可能。
ショップ機能(2020年6月に日本で導入)
FacebookやInstagramなどのMetaが提供するプラットフォーム上で単一のショップを開設し、投稿にタグ付けした商品を一覧表示したり、ブランドイメージに適した見せ方をカスタマイズしたりできる機能。テーマに合わせて商品を分類して表示することができる「コレクション」機能もある。
Instagramショップ(2020年6月に日本で導入、11月に独立したタブに)
2020年10月の導入当初は、発見タブからアクセスできる機能だったが、11月に独立したタブとなり、アプリ画面下部にあるショッピングバッグのアイコンをクリックすると、商品タグを使っている投稿やブランド、「ショップ機能」で作った「コレクション」が利用者ごとにパーソナライズされ、利用者の好みに合ったビジネスやブランド、商品を見ることができる。
Instagramショップには「コレクション機能」や「商品タグの付いた投稿」などが、利用者ごとにパーソナライズされて表示されます。商品タグをクリックするとInstagram内の商品詳細ページに移動します。このタブに自社商品や投稿が表示されることで、より多くの利用者を自社のECサイトに誘導することができます。(丸山氏)
集客を増やす3つのポイント
集客を増やす3つのポイント
①ショップへの導線をスムーズにする
Instagramの利用者は、「プロフィール」「Instagramストーリーズ」「ショップ機能」「Instagram動画」などを多面的に利用して情報を発見するといい、複数の機能を併用すると回答した利用者の割合は85%に達する。従って、様々な機能を使ってコンテンツを投稿し、ECサイトへの導線を増やすことが重要だと丸山氏は説明する。
Instagramのフィード投稿では、直接リンクを貼ることができない。「興味があれば商品詳細ページへ移動できるように、『商品タグ』を活用しましょう。『商品タグ』を使えば自社ECサイトへのスムーズな導線を設計することができます」(丸山氏)
商品タグは、フィード、ストーリーズ、Instagram動画(ライブ動画アーカイブなど)、リール(短尺動画を楽しむことができる機能)などに付けることが可能。
通常のフィード投稿と商品タグを付けた投稿について
ストーリーズでの商品タグ付けについて
写真のなかに複数の商材がある場合、それぞれに商品タグを付けたい。丸山氏も「しっかりと全ての商品にタグを付けることがポイントになります」と説明。続けて「タグが近すぎるとクリックしにくくなってしまうので、重ならない程度の商品数で収めることを推奨しています」と言う。
全ての投稿に商品タグを付けることをお薦めするという
投稿数が増えるほど、利用者にとってはコンテンツを遡って商品を発見しにくくなる可能性がある。そこで活用したいのが、商品を一括して表示できる「ショップ」機能。テーマに合わせて商品を分類して表示することができる「コレクション」を作成したい。そしてもう1つが、「まとめ」機能だ。
コレクションでは、近日発売予定の商品、プロモーション(お得商品)、カテゴリ別ベストセラー(子供服、靴など)、今週のトレンド、季節のイベントなど、商品をテーマごとに分類していくことが効果的としている。
まとめ機能は、既存のフィード投稿をテーマごとにまとめて見せることができるもの。こちらも同様に、テーマを設定し、様々な商品を紹介することができる。
「コレクション機能」と「まとめ機能」
ライブ配信で紹介した商品の再紹介、導入強化も活用したい。「アーカイブを残すことによって閲覧機会を増やすことが重要。そして、コレクション機能などを使い、紹介商品をしっかり分類していくことが大事になります」(丸山氏)
ライブ配信でのアーカイブや導線強化について
②モバイルに最適化されたパッとわかりやすい商品紹介
Instagramは、利用者のほとんどがモバイルで使用している。そのため、「一目で色味やサイズ感がわかる、どんなメリットがあるのか、といったことを理解してもらうことが必要になります」(丸山氏)
Webサイトを訪れたユーザーは、自分にとって必要なサイトか否かをファーストビューの3秒で判断すると言われている。Instagramも同様で、画面の小さいスマホに投稿した情報を利用者に訴求するには、ファーストビューで必要な情報をわかりやすく画像で伝える必要がある。
- 一目で色味やサイズ感
- 背景色で商品を埋もれさせない
- 複数色の展開
- 商品の平置きだけでなく着画も
- 利用シーンの画像
といった工夫を投稿コンテンツで行うことも、集客を増やすポイントになるという。
モバイルに最適された商品紹介の例
③コンテンツ化して商品の情報量を増やす
フィード、ストーリーズ、Instagram TVなどで商品認知を獲得した利用者に対し、商品理解の促進を行っていきたい。
商品詳細ページでは、画像だけではなくて動画なども設定することが可能。複数のクリエイティブを入れることもできます。化粧品を販売している場合、光の角度によって色の見え方が変わったりしますので、商品画像のほか、モデルによる使用イメージなど、1つのコンテンツだけでは表現できないことを、商品詳細ページで表現できます。(丸山氏)
商品詳細ページのコンテンツ化
「プロフィール」「ストーリーズ」「ショップ機能」「Instagram TV」などを多面的に利用し、情報を発見する利用者が多いInstagram。こうした機能経由で商品詳細ページを閲覧した利用者を、自社サイトに誘導することがビジネス側にとって重要になる。
Instagramから自社サイトに利用者を誘導するために「最も重要です」と丸山氏が強調するのが商品詳細ページ。興味を持った利用者に対して、画像や動画などで訴求し、自社サイトに誘導する導線を設計したい。
商品詳細ページの重要性について
ビジネスの拡大につながる広告活用
Meta(旧社名Facebook社)のInstagram内部データ(2017年10月)によると、Instagramのプロフィールへのアクセスについて、2/3は非フォロワーからのものだという。
日々のInstagram運用では、フォロワーへの訴求に傾注してしまうケースがあるが、非フォロワーというオーディエンスにアプローチすることも重要になる。フォロワーだけへのアプローチには限界があり、商圏が狭まってしまうのだ。
たとえば、20歳から34歳女性をターゲットとするビジネスの場合、10万人のフォロワーを獲得しても、それは対象人口の約1%。インフルエンサーを活用しても、その人が持つフォロワーのうち、F1層がどれだけいるのかによって限定的なリーチになってしまう懸念もあります。こうした課題を解決するのが広告の活用です。ターゲットオーディエンスへ確実にリーチすることが可能になります。(丸山氏)
広告を活用するとターゲットへのリーチを広げられる
InstagramではMetaが保有するビッグデータを活用。クリック率やコンバージョン率などのアクションデータから、利用者ごとに最適な広告をパーソナライズして配信している。そのため、Instagram内外での利用者情報の量や質を上げていくことが、見込み客への広告配信の精度向上につながる。
どのように広告を使えばいいのか? 丸山氏は1つの例として、オーガニック投稿は「既存コミュニティとのつながり」「投稿、ページでのブランディング」に。広告は「新規ユーザー獲得」「キャンペーン認知」「目的に合わせた最適化」(購買、アプリのインストールなど)といった使い分けを提案する。
オーガニックと広告の使い分け
ビッグデータの活用で気になるのが、サードパーティーCookie(クッキー)規制による広告の配信精度などだ。
オンサイト(Instagram上のデータ)とオフサイト(CRM、コンバージョンAPI、SDKなど)のデータを広告に活用してきたMeta。今後は「オフサイトのデータ利用制限により、既存の広告もオンサイトデータの活用がカギとなります」(丸山氏)と言う。
データ活用について
Instagramでもオンサイト上のデータが広告運用に関しても大事なポイントになってきます。たとえば、ビジネス側のコンテンツに興味を持った人たちといったデータを活用することで、オフサイトで取得できなくなったデータを補完していくようなイメージになります。
「コレクション」を閲覧した利用者、その商品を見て商品を保存した利用者、実際にURLをクリックした利用者など、購入に近づいていった利用者群や類似オーディエンスにターゲティングするといったことも可能になります。Instagramで広告展開することでさまざまなデータを取得していくと、広告の精度自体が高まっていきます。(丸山氏)
データ活用について
こうしたInstagramの広告について説明した丸山氏は、広告メニューとして「商品タグ付き広告」「ダイナミック商品タグ付き広告」をあげた。
- 商品タグ付き広告……広告内の商品画像や動画に商品タグを付け、興味を持った利用者がInstagram内で商品詳細を確認でき、自社ECサイトへ誘導させる機能を搭載した広告
- ダイナミック商品タグ付き広告……利用者の興味関心をもとにカルーセル形式で複数の商品を訴求する商品タグ付き広告
商品タグを使わない広告と比較したときの商品タグ付き広告の顧客獲得単価はマイナス20%となり獲得効率がアップした
Metaの調査(Facebook Brand Lift Study Duration: 2021-2-23~2021-3-16)によると、商品タグ付き広告を通常広告に加えて配信したブランドは、通常広告単体よりも広告想起、好意度、購入にも大きく貢献したという。
クラウドファンディングのマクアケは、商品タグ付き広告で利用者をInstagram上の自社ショップに誘導、高い効率で購入を促すことに成功したという。
商品タグ付き広告のパフォーマンスは、商品タグなし広告と比較して、CPAはマイナス5%、CVRは9%向上、CTRLは27%向上した。
マクアケの事例
ヨガ・ウェルネスのセレクトショップ「LIFE TUNING DAYS」では、Instagram上でのインフルエンサーを活用した事前告知やライブ配信、商品タグ付き広告を総合的に活用した。
フォロワー数約6000人のアカウントだったが、約7000人もライブ配信を視聴。「広告とインフルエンサーの両方を活用することで、フォロワー数以上の利用者の視聴につながりました」(丸山氏)
広告がどのくらい売り上げに貢献しているのかを測定する効果測定機能「コンバージョンリフト」を使った調査では、広告非接触群との比較でコンテンツビューは5.8倍、商品のカート追加は3.6倍を記録。売上拡大につながったという。
「LIFE TUNING DAYS」の事例
新型コロナウイルス感染症拡大によって急速に拡大するEコマース市場。こうした状況とInstagramの各種機能、事例など踏まえ、丸山氏は「ぜひEC事業者さまのビジネスにInstagramを活用してほしい」と呼びかけた。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:EC事業者が押さえておくべきInstagramの最新情報&自社サイトへの誘導を増やすための3ポイント&広告活用を解説
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