Infinity Venture Summit参加報告――不況下にも元気な海外ネット広告関連ベンチャー企業
2009年5月21~22日にかけて、インフィニティ・ベンチャーズLLPが主催する注目ネットベンチャー企業が集まるカンファレンス「Infinity Ventures Summit 2009 Spring」(IVS)が北海道で開催された。ここでは、ウェブ広告関連のセッション内容について紹介する。
iPhone広告トラフィックが他を圧倒
グローバルモバイル広告配信企業「AdMob」
モバイル広告配信サービスを提供する米「AdMob」社からは、創業者兼CEOのOmar Hamoui氏が登壇し、同社からみたモバイル広告動向について語った。AdMobは世界各国で、7,000以上のケータイサイト、1,600以上のモバイルアプリケーションに、760億以上のモバイル広告を配信しているシリコンバレーのベンチャー企業だ。
AdMobにおけるモバイル広告ページビューは図1のように右肩上がりで拡大してきたが、中でもiPhoneからの広告リクエストが他のウェブアプリケーションよりも圧倒的に高い比率を占めている。同社サービスはiPhoneへのソリューションが早期から提供され始めたこともあり、iPhoneアプリ上位100のうち33のアプリで利用されている。また、同社の広告ネットワークから見たiPhone/iPodのユニークユーザー数は、前月だけで4000万人――iPhone/iPodの販売台数が約3,300万台であるとすると、iPhone/iPod全体の約40%をカバーしている試算になっている。
さらに、米国のスマートフォン端末市場と同社モバイルネットワークにおける広告リクエスト比率を比較すると、販売台数では3位のiPhoneが、広告配信比率では1位で59%を占めている(図2)。米スマートフォン市場比率は、BlackBerryで知られるリサーチ・イン・モーション(RIM)が最も高く、次いでWindows Mobile、iPhone、Palm、Symbian、Androidという順番であるのに対し、同社データによる広告アクセス比率は、圧倒的にiPhoneが高く、次いで、RIM OS(17%)、Windows Mobile(8%)、Android(7%)と続く。Androidは、スマートフォン端末市場ではまだ6位(シェア2%)だが、AdMobにおける広告リクエストでは4位(シェア7%)に位置しており、端末市場比率の割には広告リクエスト比率が高目となっている。
また、同社から見たモバイル広告の特徴について、Hamoui氏は「モバイル広告へのアクセス増加にはキャリアの携帯電話網だけではなく、ワイヤレス無線経由のトラフィック増も重要な要素だ
」とコメント。これは、米国市場の話であるから、日本市場とは様相が異なるが、同社におけるiPhone向け広告のうち40%は、キャリア経由ではなくWi-Fiワイヤレス無線経由だとのことだ。
広告効果については、モバイル端末上におけるウェブアプリとiPhoneアプリからの広告アクセスを比べると、CPC(クリック単価)はさほど変わらないが、CTR(クリック率)は、ウェブアプリよりiPhoneアプリからの方が2倍高く、iPhoneアプリでのインタラクティビティが高いという特徴があるという。
最後に同社は、5月21日に日本法人を設立し、John Lagerling氏が社長に就任したことを発表した。AdMob入社前、同氏はグーグル日本法人でモバイルビジネス統括部長だった人物で、さらにその前はNTTドコモでiモードの海外展開などの業務などに携わった。グーグルでは、NTTドコモやKDDIとの検索提携など、日本・アジア太平洋地域のパートナー関係構築に関わった。AdMobは、欧米の携帯向け広告配信では大手といえようが、モバイル先進国である日本市場へは満を持しての進出となる。今後、後発となる日本市場で同社サービスがどれだけ普及するかが注目される。
Facebook人気ナンバー1アプリを提供する「RockYou」
次に、Facebookアプリで人気ナンバー1の「RockYou」について触れる。RockYouは、FacebookやMySpaceなどのソーシャルネットワーク上で「SuperWall」などの人気ソーシャルアプリケーションを提供している会社だ。月間アクティブユーザー数は4000万人以上で、Facebook最大といわれる広告ネットワークも運営している。日本での知名度はまだこれからだが、Mixiアプリでもサービス提供開始しており、今後の展開が期待される。
「RockYou」のアプリケーションの特徴は、自社でユーザー獲得に凌ぎを削るのではなく、それはFacebookやMySpace、Yahooなどすでに多数のユーザーを抱えているSNSプラットフォームに任せ、自社はその上で、人気アプリを提供する分散型ビジネスモデルをとっていることだ。
「RockYou」の収益ベースは3本立てになっている。1つ目はブランド広告販売で、広告主にはトヨタ、日産、コカコーラなども含まれる。2つ目は広告ネットワークで、RockYouアプリ向けのみならずサードパーティアプリも含めて、パフォーマンスベースの広告サービスを提供している。3つ目はデジタルグッズで、仮想貨幣による仮想アイテムの売買からの収益だ。
そうしたビジネスモデルをベースに、同社はSNS上で非常に多くのアプリを提供しているが、中でも高い比率を占めるアプリのジャンルはゲームだ。Facebook上では40%以上、MySpace上では60%以上、iPhone上では70%以上が、実にゲームで占められている。そして、アクティブユーザーの比率が高く、毎日・毎週という高頻度で利用されるのもゲームだという。それは、そのアプリをどうデザインしたか、課金の仕方がどうか、どんなデジタルグッズを売っているかにかかわらず、他のアプリより圧倒的に利用頻度が高いとのことだ。また、「SuperWall」のようなコミュニケーションアプリは、大多数のユーザーベースを抱えて始めて広告収益を上げられるようになるが、ゲームは小さなユーザーベースでも容易に収益を上げられるようになる。そのため、FacebookやMySpaceの中には、わずか10万人のユーザーしかいなくとも、一日何十万円の売り上げをあげるアプリが多数ある。
2つ目の収益の柱である広告ネットワークは、集客力のあるFacebookプラットフォームなどを活用したい広告主をターゲットに、ユーザーが作成したコンテンツに関連性の高い広告を掲載し収益を上げるアドネットワークだ。SNS上のGoogleAdwordsのようなサービスで、こちらも順調に収益を上げているようだ。
Infinity Ventures Summit 2009 Spring
http://www.infinityventures.com/ivs/
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