サイトリニューアルの最前線|クラウド型CMSで実現するWebガバナンス強化
日本を代表する大手製造企業を中心に、Webサイトのリニューアルからリニューアル後の運用支援、デジタルマーケティング戦略までワンストップでサポートするコネクティ。同社が提供するCMS・CDPを用いて、企業のさまざまな課題解決を支援している。
「Web担当者Forum ミーティング 2024 秋」では同社の服部恭之氏が登壇し、「Webガバナンス」「多言語対応」「アクセシビリティ向上」をテーマにCMSの効果的な活用方法を解説した。
広範囲にわたるWebガバナンスの対応領域
服部氏によれば、最近のサイトリニューアルの問い合わせやコンペの提案依頼書で圧倒的に多いテーマが「Webガバナンス」であるという。
これまでは、サイトデザインやコンテンツの提案に関する比重が高かったです。いまはWebガバナンスがかなりの割合を占めています。サイトリニューアルのご要望の約半分がWebガバナンスの強化というケースもあります(服部氏)
Webガバナンスとは、企業や組織が安全で安心なサイト運営をするためのルールを決め、ドキュメントやガイドラインの整備、運用プロセス、責任範囲などを包括的に定めることである。
Webガバナンスが重要視される背景には、企業内でのWebサイト運営体制の変化があります(服部氏)
これまで特定の部署が少人数で運営していた企業Webサイトが、Web発信の多様化に伴い、管理体制が変化している。広報、商品担当、人事など部署ごとに情報発信を行うケースが増加。安全に混乱なく各担当者がコンテンツを更新するには、部署ごとにユーザーのアクセス権限を付与したり、コンテンツごとにアクセス制御が必要になったりする。
一般的にCMSを利用すると、Webガバナンスの統制が取りやすい。1つのプラットフォームで複数のページやコンテンツを管理できるため、一貫性のあるコンテンツの更新が可能だ。ユーザーごとのアクセス権限を細かく設定することで、意図しない変更を防止できる。さらに、履歴管理やバージョン管理機能により、コンテンツ作成の透明性が向上する。
すなわち、CMSが持つ「ユーザー設定」「アクセスコントロール設定」「ワークフロー設定」「履歴管理・バージョン管理」の各機能を正しく理解し、活用することがWebガバナンスの基本となる。
Webサイトのすべてにおいてガバナンスを強化する傾向
ただし、Webガバナンスに対する企業のニーズは、一般的なCMSが持つ機能では充足できないこともあると服部氏は指摘する。
単純な運用ルールの設定にとどまらず、「Webサイトのありとあらゆる場所において、統制を取りたい」という声が増えています(服部氏)
Webガバナンスは、CMSが対象としてきたコンテンツ統制から範囲を拡大し、コミュニケーション戦略の統制までを対象とするようになっているというのだ。これには、複数のデジタルチャネルの運用、データプライバシー、ブランド戦略、アクセシビリティ、社会的責任までもが含まれる。Webガバナンスを強化することで、企業は信頼性を維持しながら、複雑化するデジタル環境に対応していく必要があると服部氏は話す。
複数の企業サイトで一貫したコミュニケーションの方針をとる
では、具体的にどんな手法でコミュニケーション戦略に統制をかけるのか。
企業サイトを訪れる主なユーザー層を明確化し、そのユーザーに向けた情報発信を行っていく。具体的には、ユーザーのニーズや行動を分析し、典型的なユーザー像をペルソナとして定義。その後、ターゲットとなるユーザー層が決まったら、ブランドの価値や目標を一貫して伝えるコミュニケーションを設計する。
大手企業は事業ごと、グループ会社ごとに複数のサイトが存在する。グローバル展開をする企業では、国ごとにサイト管理が必要になる場合もある。組織や地域ごとに独自で進めていたコミュニケーション戦略は、自由度が高い一方で、統一したブランド認知が難しいという課題があった。
企業全体でコミュニケーションの統制を図れば、一貫した情報発信ができ、企業の信頼度が高まるという。このような戦略のコンサルティングには1年以上かかるケースもあるが、統制のとれたサイト設計を望む企業が増えていると服部氏は話す。
ガバナンスを強化するためのコンテンツ統制とUI/UX戦略
ガバナンス強化のため、サイトのコンテンツを統制したい企業もある。コンテンツの統制では、不適切な内容が含まれているコンテンツが炎上することを防ぎたい、法律に抵触する内容を事前にチェックしたいといった企業の思惑がある。
CMS活用のほか、企業が扱う製品情報を一元管理するPIM(Product Information Management)やデジタル資産を管理するDAM(Digital Asset Management)、配信を最適化するCDN(Content Delivery Network)、攻撃をブロックするWAF(Web Application Firewall)などを用いてシステム的に管理を行うこともある。
統一のとれた企業サイトが、ユーザー体験を向上させる
コンテンツの統制に関連して、UI/UXの統制も重要だ。
UI/UXが全社的に統一されていないとユーザーが混乱するだけでなく、ブランドイメージを毀損するおそれもあります(服部氏)
従来の企業サイトでは、商品ページ、IRページ、採用ページなど担当部署ごとに作ることが多かった。そうなると、見た目で揃っているのはヘッダーだけで、中身のレイアウト、写真や文字の位置・大きさはバラバラなことが多かったという。
ネットでの情報発信が当たり前になった今、ユーザーは企業サイト内のさまざまなページを閲覧する機会が増えている。IRのページで企業の財務状況を確認して、サステナビリティに関する取り組みが掲載されたページへ移動するというようなユーザーのサイト内の行動もある。
そのとき、サイト全体のコンセプトやデザインが一貫していないと、ユーザーが途中で離脱しやすくなる。ユーザーが興味を持って、より多くのコンテンツを閲覧してもらえるよう回遊性の高いUI/UXの設計が求められている。
これを実現するために、設計段階からCMSを使ってデザインを制御するケースが増えている。コネクティのエンタープライズ・クラウドCMS「Connecty CMS on Demand」(以下、CMSoD)では直感的にコンテンツを制作できる「ブロックエディタ」を提供し、レイアウトパターンを設計段階で統制している。コンテンツの塊を1カラム、2カラムというようにパーツに分け、その範囲内でコンテンツを作成する担当者が自由に配置、修正できる仕組みだ。
コンテンツ自体の制作の自由度は高まるように見えるが、決まったパーツの範囲内で調整するので、Webサイト全体のデザインが崩れることなく、統一感を維持できる。担当者もあらかじめ用意されたパーツを使えばいいので、細かいレイアウトに時間をかけず、テンポよくコンテンツの変更や切り替えができる。
グローバルな企業サイトもUI/UXを統制して一貫したデザインを実現
このようなサイト設計は、グローバルで複数のサイトを抱える企業にとっても有効である。アジア、北米、ヨーロッパなど複数の地域でWebサイトを持つ企業の場合、サイト運用は地域・国ごとに任せたい。ただし、ページの見た目は統一したい。そこで、本社で基本的なパーツをあらかじめ用意して配置する。言語表示が変わっても、基本的なパーツが揃っているので企業として一貫性のあるWebサイトになるというわけだ。
コネクティがリニューアルを請け負った大手企業のWebサイトでは、本社から提供する共通パーツ、地域・国ごとに作成可能なパーツというように分類し、編集できるパーツをアクセスコントロールで制御しているケースもあります(服部氏)
たとえば「サステナビリティに対する取り組み」など、企業が一貫したメッセージを伝えるコンテンツは本社の裁量でアップデートする。一方で、具体的な取り組み内容は国ごとに更新できるよう、ブロックを分けてアクセス権限も付与する。こうすることで、制作現場のニーズに合わせたサイト設計でありながら、サイト全体の企業イメージに一貫性を持たせることができる。
AIを利用してWebサイトの翻訳を統制する
グローバルサイトのWebガバナンスで必須のテーマに翻訳がある。 従来のグローバルサイトでは、国ごとにそれぞれ翻訳をする、あるいは中央集権型で本社のサイト管理チームがまとめて翻訳するケースが多かった。本社での翻訳を省力化するためにブラウザでの自動翻訳が使われることも多い。
もっとも自動翻訳には問題も多い。外資系企業のサイトで自動翻訳されたような日本語のページを見たことがある人も多いだろう。表示された日本語を読むことはできるが、企業のメッセージや製品情報を正確に読み取るのは難しい。
最近、特に日本企業は、統一した企業イメージの浸透やブランド戦略のために、他の言語の翻訳コンテンツにも統制をかける傾向にある。本社で翻訳したコンテンツを、現地のサイト担当者が公開前に訳文をチェックする。高品質で信頼性の高いサイト作りに不可欠なプロセスだが、手間がかかるという課題があった。
そこで、効率よく多言語展開を行うためにコネクティのCMSoDでは、多言語ページを自動生成するローカライズAI機能の提供を開始した。
CMS上でボタンを押すとAIが翻訳し、現地でのチェック要求をワークフローに投入するという仕組みです(服部氏)
ゼロからのローカライズは手間のかかる作業だが、AIによる翻訳支援を受けられることで担当者の負担が減り、スムーズな多言語展開が実現される。
200万以上のWebサイトに導入されているWebアクセシビリティツール「UserWay」
Webガバナンスの強化には、法規制への対応も求められる。2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法では、事業者に対し「合理的配慮」の提供が義務化された。これは、障害のある人がサービスを利用する際に不利益を被らないよう、事業者が可能な範囲で対応することを意味する。Webサイトにおいても、視覚障害者や操作性に制約のあるユーザーを意識した設計・構築を心がけるべきだろう。国際基準に準拠したWebサイトの設計も推奨され、グローバルなサイト設計への対応は企業にとって重要なテーマのひとつである。
法規制対応の難しいところは、それが各国ごとに異なるという点です。そこで、個別に対応するのではなく、各国の法規制に対応できるようなポリシーを自社で定め、それをグローバル展開する手法がトレンドになっています(服部氏)
法規制の中でも、アクセシビリティへの対応策として服部氏は、AIを活用したWebアクセシビリティツール「UserWay」の活用を挙げた。
UserWayはアメリカで開発された国際的なWebアクセシビリティガイドラインであるWCAG2.1およびWCAG2.2に準拠しているツール。AIによる自動修正を行い、Webサイトのアクセシビリティを改善し、手動での修正作業を大幅に削減する特徴を持つ。UserWayはユーザーが自分に合った設定を選べるカスタマイズ機能も提供する。個々のニーズに応じたアクセシビリティを実現する画期的なツールだ。
UserWayを使うと、サイト上に表示されるアクセシビリティのメニューをクリックするだけで、サイト表示の拡大・縮小、コントラストなどが瞬時に切り替わる。2024年9月よりコネクティはUserWayの販売代理店となり、ツールの提供を開始した。海外製のツールをコネクティがサポートすることで日本語での対応が可能だ。
複数の企業サイトをクラウド型CMSで安全に一括管理する
企業サイトを狙ったハッキングやサイバー攻撃は日々増え続け、日本のWebサイトも常に危険にさらされている。特にCMSはサイバー攻撃の標的となることも多い。
先日、服部氏が相談を受けた例では、ある企業の子会社のWebサイトが改ざん被害に遭ったという。原因は子会社のWebサイトがオープンソース型のCMSを利用していたため、セキュリティ管理が万全ではなかったことによる。
子会社のサイトがサイバー被害に遭った場合でも、ユーザーから見れば親会社やグループ全体で同じ組織と捉えられ、企業全体の信頼性低下に繋がるリスクがある。サイトのシステム管理についても、統制の取れた強固な管理体制を意識する企業が増えている。
コネクティのCMSoDのようにクラウド型のCMSを導入すれば、大手企業でもグループ全体で一括したセキュリティ管理が可能だ。CMSoDでは、各種ツールのバージョン管理や脆弱性への対応、定期的なセキュリティアップデートの仕組みも備わっている。
従来、セキュリティ診断は年に1回といった頻度で行われるのが一般的でしたが、クラウド型のCMSoDでは常時監視・常時対応を実現しています。セキュリティ対策の面では、クラウド型が有利です(服部氏)
Webガバナンスの整備が企業のデジタル戦略を強化する
CMSoDはCMS市場・製造業において5年連続シェアNo.1を誇る。クラウド型のCMSoDはユーザー設定、アクセスコントロールの制御、ワークフローの設定、履歴管理など、Webサイトリニューアルからサイト運用まで一括でサポートする。
コネクティは設立から17年にわたり、さまざまな企業のコーポレートサイトのリニューアルに携わってきた。サイトリニューアルの信頼性の高さから、コネクティのCMSoDを10年以上継続して導入している企業もあるという。
Webガバナンス強化への関心の高まりから、日本企業のコーポレートサイトの戦略的な活用をこれまで以上に後押ししたいという服部氏。2024年夏に締結したコニカミノルタジャパン株式会社とのCMSoD販売パートナー契約も、その一環といえる。
サイトリニューアルやWebガバナンス強化、アクセシビリティ改善、マーケティングのためのツール活用など、Webサイトに関するご相談はぜひ当社にお寄せください(服部氏)
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