実践編

資料請求で大切なのは、「モチベーション」

資料請求で大切なのは、「モチベーション」

資料請求側の心理的なものは誰にでも理解できる。企業ホームページを運営して、「資料請求が増えないなあ」と思っているWebマスターも、別の場面では資料請求をしようかどうか迷う人になるのだから。にもかかわらず、ホームページは資料請求が増えるように設計されているとはとても思えない。

まず、どんな資料がもらえるのか書いてあるホームページがほとんどない。大半は、「資料請求」というボタンが用意されているだけだ。しかも、ボタンの位置は図で見るように、ページの右上、グローバルナビゲーションの右端となっている。

資料請求ボタンはなぜかページの右上にある
図1 資料請求ボタンはなぜかページの右上にある

なぜ日本のホームページではこんな風な常識ができてしまったのだろうか? これはホームページづくりの常識でしかない。つまり、グローバルナビゲーションと言えば、左から「製品情報」「企業情報」「採用情報」「資料請求」と並べる、と相場が決まっているのだ。

「どんな製品だろう?」 → 良い製品だったならば次は「どんな会社だろう?」 → 良い会社だったならば、よし、「資料請求しよう」。そんな順番で見てもらうという理屈があるため、グローバルナビゲーションの右端に、「資料請求」「問い合わせ」というボタンが配置されることになる。

しかし、この常識はぜひとも疑わなければならない。右端、ページ右上のボタンは決してクリックされやすい位置ではないのだ。このごろはGoogle Analyticsでも「クリックマップ」と言って、ページが表示された上に、どのリンクが何%クリックされたかがグラフ表示されるというわかりやすいモードがあるのでぜひ確認しておきたい。

訪問者は左側のボタンをクリックして、製品情報や企業情報に移動することが多い。クリックすると製品情報や企業情報が現れるのだから、そのページを読みたいと思う。内容を追いかけてページを下にスクロールする。ページをスクロールして、一番下まで読んで、「良いページを見つけた」「良い商品を見つけた」「覚えておこう」と感じる。これは資料請求を増やすチャンスである。

しかし、ページの一番下まで読み終えたとき、資料請求のボタンは上にスクロールアウトしてしまって表示されていないのである。これでは資料請求しようがない(図2)。

長いページを下まで読むと、上のボタンは消えてしまう
図2 長いページを下まで読むと、上のボタンは消えてしまう

ホームページの一番下に一番多く表示されているボタンのトップ3は「戻る」「ホーム」「▲このページのトップへ」というものだが、これは人気がないボタンである。訪問者は「先に進みたい」のであって、「元いた場所に戻りたい」のではない。これらのリンクをクリックしてくれればページの上部が表示されて、その結果再び「資料請求」のボタンが目に入るようになるわけだが、今やこうしたサイト構造を表すだけの文言のボタンはクリック率が低下してしまって、訪問者はそこで帰ってしまうことが多いのである。ページの一番下にこそ、「資料請求」のボタンは必要なのである

しかも、ただ「資料請求」という文言では足りない。先述のように、「良い資料があるからもらっておこう」と思うのだ。ただただ資料請求というボタンをクリックすれば、単なるフォームのページが出てくることを誰もが知っている。フォームの記入欄を見たい、なんて人はいないのである。かなり慣れたとは言え、フォームの記入は面倒なもの、しかも個人情報リスクのともなうものなのだ。

そこで、ページの下部に設置したいのは単純な資料請求ボタンではなく、「こんなに良い資料を用意していますよ」というアピールだということになる。資料の画像と説明文を添えて、「詳しくは資料請求のページで」となっているからこそ、「こんな資料がもらえるのだったら、資料請求のページに行ってみよう」と思うのである。大切なのはこのモチベーションなのだ。確認画面から完了のサンキュー画面まで、訪問者を引っ張っていくのは常にこのモチベーションだ

「立派な印刷物がないから画像が出せない」という勘違い

また、資料請求のページの素っ気なさも何とかしなければならない。資料請求のページと言えば、タイトルは「資料請求」というだけ。タイトルの下の本文はと見ると、「*印は必須です」なんて事務的なことしか書かれていない。その下はもうフォームが始まってしまう。これで資料請求をしようというモチベーションが高まるはずがない。

プレゼントのページでこんな素っ気ないことをする会社は1つもない。プレゼントであれば、リンク元ページに「こんな素敵なプレゼントがあります!」と書かれていて、クリックしてプレゼントページに行くと、賞品が画像入りで「何名様!」と当たりそうな感じに演出されている。だからこそ、面倒でDMが届くかもしれないフォームに名前を書くのである。

資料請求にもこのモチベーションの流れが必要だ。自動車メーカーや住宅メーカーのホームページにはこうした流れができあがっていることが多い。どちらも高額商品で、立派な印刷物をたくさん持っているからだ。住宅製品ごとのパンフレットだけではなく、「家づくりの基礎知識」「間取り百選」「外断熱工法の秘密」なんて、魅力的なものを多数そろえている。資料請求のページでも、表紙や見開きの画像が掲載され、どれぐらいのページ数であるか記述されていたりする。魅力たっぷりだ。

ほとんどの会社でこれをやっていないのでは、「魅力的な資料がない」と自分で告白しているようなものである。

立派な印刷物がないから画像が出せないと思っているWebマスターも多いが、実際には、訪問者の「良い資料」の基準は「立派な印刷物かどうか」ではない。内容が充実しているかどうかだ。たとえばパワーポイントで作成した説明資料、エクセルでまとめた実験結果、ワードで作成した市場調査のアンケート集計、いろいろな資料が現場にはある。営業スタッフは客先に出かけて、「こんな資料があるのですが」と渡して喜ばれていたりする。顧客のなかには、「君のところはこういう情報提供をいろいろしてくれるからお宅から買うんだよ」と、うれしいことを言ってくれたりする。

こうした営業資料の存在を、総務・広報・宣伝などの部門出身のWebマスターが知らない、ということも少なくない。実際、「立派な印刷物」となると会社案内しかない会社も多いだろう。ホームページがもともとその立派なパンフレットを原稿にして作成されている場合、本当にパンフレットの内容とホームページの内容がまったく同じということもあるのだ。

その意味では、立派なパンフレット以外の資料を掲載したほうが、「もらっておきたい」というモチベーションを与える力があるかもしれない。

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