ネットショップ担当者フォーラム

ユーザーの「欲しい」を引き出す対話型コマース、商品レコメンド+バーチャル試着、AIを活用したペルソナ作成――電通デジタルのプロジェクト「Commerce AI Lab.」とは

10ヶ月 1 週間 ago
AIを活用しEC事業者の支援と顧客への最適な購買体験を創出するプロジェクト「Commerce AI Lab.」ではどのような取り組みを行っているのだろうか

電通デジタルが2024年9月から本格的に始動したプロジェクト「Commerce AI Lab.(コマースエーアイラボ)」。AIを活用したEC事業者の業務効率化やサポート、顧客1人ひとりに最適な購買体験の創出と新たな価値創造を目的としている。ECでのAI活用に注目が集まるなか、電通デジタルはどのような取り組みを進めているのか。プロジェクト担当者に施策内容や今後の展望を取材した。(人物写真および部署名・役職名は、2024年9月25日に実施した「コマース支援事業におけるAI活用プロジェクトに関する説明会」時点)

電通デジタルが持つ「企画実装力」「グループシナジー」「多様な経験を持つメンバー」を生かす

電通デジタルでは、実店舗とECを統合した企業のコマース全体の戦略設計、制作、運用や、購買データを活用した顧客体験の向上を支援している。また、AI事業ではクライアント企業のマーケティング戦略において、AIを活用して売り上げや顧客エンゲージメント向上、ロイヤルティ強化を支援するソリューションブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」などを提供する。

「Commerce AI Lab.」はこれらの強みを掛け合わせた複数の取り組みを通じて、EC担当者の業務を効率的かつ迅速なサポート、顧客1人ひとりに沿った最適な購買体験の創出、新たな価値創造の提供を目的とするプロジェクト。電通デジタルの永山悟氏(電通デジタル コマースマーケティング部門 部門長)はこのプロジェクト発足について次のように話す。

AI活用がゴールではない。事業においてAIを活用することで、顧客にどのような体験価値を提供できるか、EC担当者にとってより有益な活用ができているかを電通デジタルのメンバーが考えていく。これによって「社会に新しい価値を実装していく」というスタンスでこのプロジェクトを発足した。(永山氏)

電通デジタル コマースマーケティング部門 部門長の永山悟氏
電通デジタル コマースマーケティング部門 部門長の永山悟氏

プロジェクト実現に向けて、電通デジタルが持つ3つの強みを生かしている。

1つ目は「購買起点のCXの企画実装力」。近年、購買のデジタル化が進み、実店舗、自社EC、モールECそれぞれに関するデータを収集できるようになり、「どのようなユーザーが購買してくれたのか」「なぜ購入してくれたのか」「顧客にとって商品はどのような価値を持っているのか」といったことを可視化できるようになった。

ユーザー像が見えてくることで、「類似するユーザーにとっても、事業者の商品・サービスに価値があるのではないか」と推測することが可能。こうしたデータ活用・分析から生活者考察、施策企画などを行い、購買を起点としたエクスペリエンス向上につなげられるという。

電通デジタルの強み①「購買起点のCXの企画実装力」
電通デジタルの強み①「購買起点のCXの企画実装力」

2つ目が「グループシナジー」。電通デジタルはモールEC活用、リテールメディア活用、D2Cビジネス支援など多くのサービスを提供している。一方で「不足しているサービスもある」(永山氏)。その際、国内だけで約150社ある電通グループ企業が提供するサービスをプロジェクト単位で連結することで、クライアント企業に適したサービス構築につなげていくという。

そして、3つ目が「多様な経験を持つメンバー」の存在だ。電通デジタルには中途入社社員が多く、コマース領域においては前職がプラットフォーマー、リテール、大手メーカーの営業担当など多様な出自、経験を持つ社員が在籍。こうしたさまざまな社員の経験を生かしたサービスを提供しているる

「対話型コマース」「商品DNA作成」「AIペルソナ作成」「対話型レビュー生成」の4サービスを提供

プロジェクトを通じて提供している主なサービスは4つ。それぞれの特長や事例について見ていく。

ユーザーの潜在欲求を引き出し「欲しい」を作り出す「対話型コマース」

「対話型コマース」は、ユーザーの「さまざまなECサイトがあって、自分が本当に欲しい商品を見つけられない」、事業者の「ユーザーサポートを手厚くしたいが、どうしても人員を増やせない」「深夜は対応できない」といったそれぞれの課題解決につながるアクションを提供する。

事例の1つである、アートネイチャーと電通デジタルが共同で運営している男性向けの毛髪のお悩み相談AIボット「HAIRの部屋」では、「AIに相談する」ボタンを押すと、ユーザーのさまざまな悩みにAIが回答する。

電通デジタルがアートネイチャーと共同運営している「HAIRの部屋」
アートネイチャーと共同運営している「HAIRの部屋」(画像はアートネイチャーのサイトからキャプチャ)

AIがアートネイチャーのさまざまな記事やナレッジを学習しており、悩みへの回答だけでなく、お薦めシャンプーの提案、プロによる無料の頭皮診断などによる店舗への誘導も実施している。

「HAIRの部屋」におけるAIへの相談と回答事例
AIへの相談と回答事例

サービスを通じて、ユーザーの潜在欲求を引き出し「欲しい」の創出につなげている。リアルでは相談しにくいような悩みでも、「AIには話しやすい」ところがポイント。(電通デジタル データ&AI部門 プロダクトマネジメント事業部 地元昇太氏)

電通デジタル データ&AI部門 プロダクトマネジメント事業部の地元昇太氏
電通デジタル データ&AI部門 プロダクトマネジメント事業部の地元昇太氏

商品の基本情報、レビュー・クチコミなどからタグづけし、レコメンドに活用する「商品DNA作成」

前述した「対話型コマース」において、ユーザーへの商品レコメンドで機能しているのが「商品DNA作成」。商品の基本情報や画像、ユーザーからのレビュー・クチコミから商品の特長を抽出し、商品DNAのように細分化しタグ付けする。

たとえば、ユーザーが春夏用のゴルフウェアを探している場合。ユーザーから「ブランドロゴが目立ちすぎない」「接待ゴルフで着用する」「すごく汗をかく」という詳細なニーズが得られた際に、従来であれば通常の商品情報だけでは提案が難しかった商品でも、商品DNAがあることで細かいニーズに対応した商品をレコメンドできるという。

「商品DNA作成」を活用することで、ユーザーの細かなニーズに対応した商品をレコメンド可能に
「商品DNA作成」を活用することで、ユーザーの細かなニーズに対応した商品をレコメンド可能に

商品の解像度を高めて、高いレコメンド精度を実現できる点がポイントだ。(地元氏)

戦略策定時に活用できる「AIペルソナ作成」

「AIペルソナ作成」では、電通が年に数回実施している大規模調査のデータをAIに学習させ、それを基にペルソナを作成する。マーケティング戦略における初手の段階で、戦略立案・商品企画時に活用するケースが多いという。

ペルソナ作成だけではなく、ペルソナの情報を反映したAIボットを作成することも可能。作成したAIボットに対して、人間にインタビューするのと同じようにデプスインタビューを実施できる。「大規模な調査データをAIでペルソナ化でき、実調査を実施するよりも短期間かつ低コストでのアイディエーションが可能なことが強みだ」(地元氏)

AIボットとのインタビュー例。電通デジタルがAIボットの回答を大規模調査結果と照らし合わせたところ、調査データの内容が反映されており、データ的なエビデンスも得られている
AIボットとのインタビュー例。電通デジタルがAIボットの回答を大規模調査結果と照らし合わせたところ、調査データの内容が反映されており、データ的なエビデンスも得られている

「AIペルソナ作成」を活用している企業の規模や業態はさまざまだが、「ECでは、たとえばSKUが多い企業だと商品数が多いため、調査にかかる時間や手間、コストが大きくなる。そういった企業の方が有用に活用できるケースが多い」(永山氏)と話す。

AIによるインタビュー形式でレビューを作成する「対話型レビュー生成」

「対話型レビュー生成」はAIがユーザーの代わりにレビューを作成する機能だ。AIが商品購入後のユーザーに「商品の使い心地はどうだったか」などのインタビューを実施。それに対してユーザーが「ここが良かった」「この点はいまいちだった」と回答していくことで、AIが「このユーザーはポジティブな感想をこういった点に持っている。この点がネガティブだった」とポジティブ・ネガティブを判断し、両面からのレビューを生成する。生成したレビューはユーザーが「投稿してOK」という状態になると投稿される仕組みだ。

「対話型レビュー生成」を活用したレビュー作成の流れ
「対話型レビュー生成」を活用したレビュー作成の流れ

ECサイトにとってレビューは非常に重要だが、現状のレビュー投稿について永山氏は「レビュー投稿を購買者側に依存しすぎだと思っている」と言う。

「レビューを書くことが手間」だと感じている人や、文章力含めてさまざまな人がいるので、お願いしているだけではなかなかレビューが集まらないと思う。ポジティブ・ネガティブの両面からユーザーの意見を引き出すので、「絶賛だけ」というモノにはならない。

商品購入時、「本当にこれで良かったのか」と少し思う瞬間があると思う。「これで自分は最適な選択をしたんだろうか」と思った際、「なぜこの商品を選んだのか」を聞いてあげることで、実はユーザーのインサイトを確実に引き出したレビューを書いてくれることにつながるのではないだろうか。(永山氏)

地元氏は、ゴルフダイジェスト・オンラインが以前にPOCで実施したゴルフラウンド後のレビュー収集の取り組みを例にあげた。ゴルフダイジェスト・オンラインのサイトでゴルフ場を予約し、プレーしたユーザーに対してAIが感想を聞き出すという取り組みだ。

会話を続けるにつれてさまざまな感想を引き出すことができた。この結果から、たとえば「スコアが悪かったのは道具のせいだ」と言うユーザーに対しては「では、パターの調子が悪いときはこのパターはいかがでしょうか」といった商品レコメンドやECサイトとの接点作りにもつなげられる。ユーザーが話したくなるモーメントを捉えて、書くような動機づけをさせてあげられるかが大事だと思う。(地元氏)

AI活用でECサイトが「検討する場所」になる

AIを活用したEコマースの支援事業を推進する電通デジタル。今後、AI活用でEコマースはどのように変化していくのか、またどのように活用されていくと考えているのだろうか。これに対し永山氏は「ECの存在自体が変わる」と話す。

今のECは「買う場所」であって「検討する場所」にはなっていない。会話によって「実はこんなものもある」ということは自分から能動的に進めなければ見つからないのが現状。この先対話型のECが進むことでECが「欲しいものを見付ける場所」になるのではないか。(永山氏)

2024年はAIを活用した事例も増えてきており、今後、世の中の人々のAIに対する意識や活用のハードルも下がっていくと思う。そうなると日常におけるさまざまな場面や接点でAIが当たり前に活用されていくような未来も近いのではないだろうか。(地元氏)

藤田遥

2024年の男性化粧品市場規模は497億円で14.8%増。基礎化粧品の使用きっかけは肌改善や自分磨きが上位

10ヶ月 1 週間 ago

インテージが実施した男性化粧品の市場動向と意識に関する調査によると、2024年の男性化粧品市場規模は497億円で前年比14.8%増だった。基礎化粧品を使用するきっかけは、肌の改善や自分磨きが上位だった。

調査期間は2024年9月27日~10月1日で、対象は15~79歳の男女5000人。

男性用化粧品市場の内訳を見ると、2024年は基礎化粧品が438億円、日焼け止めが42億円、メイクアップ化粧品は17億円。基礎化粧品は前年比15.9%増で、全体の88.1%を占めている。

男性用化粧品の市場規模とその内訳
男性用化粧品の市場規模とその内訳

基礎化粧品市場の内訳は、洗顔が119億円、化粧水が108億円、クリームが80億円など。

基礎化粧品市場規模の推移と種類別の内訳
基礎化粧品市場規模の推移と種類別の内訳

2024年における基礎化粧品の購入金額は3131円で、購入率は33.2%。年代別では20歳代の購入金額が4615円、購入率は46.1%で最も高い。

基礎化粧品の年代別購入金額・購入率
基礎化粧品の年代別購入金額・購入率

基礎化粧品を使用するきっかけで最も多いのは「肌の乾燥やトラブル回避のため」で31.2%。「特にない」で26.5%、続いて「自分磨きの一環」が24.1%、「年齢を重ね肌のケアに関心が高まった」が19.4%で続いた。

基礎化粧品の使用のきっかけ
基礎化粧品の使用のきっかけ

男性が肌の手入れや化粧をすることについて、「とても良いと思う」が13.4%、「良いと思う」は44.5%。合計57.9%が「良いと思う」と回答した。

男性の肌の手入れや化粧に対する考え
男性の肌の手入れや化粧に対する考え

男性の化粧に関する回答を年代別で見ると、10~20歳代の若い世代ほど好意的に捉えている。性別で見ると、女性は10歳代の85.7%が「とても良いと思う」または「良いと思う」と回答、20~40歳代も同回答は70%を超えている。

男性の肌の手入れや化粧に対する考え(性年代別)
男性の肌の手入れや化粧に対する考え(性年代別)

調査概要

  • 調査地域:日本全国
  • 対象者条件:15~79歳の男女
  • 標本抽出方法:インテージの「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
  • 標本サイズ:n=5000 ※国勢調査に基づき性別・年代・地域を母集団構成に合わせて回収
  • 調査実施時期:2024年9月27日~10月1日
松原 沙甫

AIが人の代わりに買い物する時代に!? OpenAIが開発した商品購入などを代行するAIエージェント「Operator」とは? | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

10ヶ月 1 週間 ago
エージェント型AIの提供に乗り出したOpenAI。その特長と、ECサイト運営においてどのように役立つかを、事例を交えて解説します

OpenAIは、ECサイトの買い物もサポートできるAIエージェント「Operator」を開発しました。まだ検証段階ですが、eBayなどの大手米国事業者が導入し、自社サービスを利用するエンドユーザーの利便性アップにつなげようとしています。「Operator」の特長、導入企業の反応を解説します。

OpenAI、初の「エージェント型AI」ツールを開発

バーチャル上のアシスタントのように機能する

OpenAIは、ECサイトを含むWebベースのタスクを処理できるAIエージェント「Operator」を発表しました。商品検索、購入、注文などのユーザーによるアクションをサポートします。

このツールを最初に導入する事業者のなかには、オンライン小売事業者も含まれています。米国の一部ユーザー向けに早期プレビュー版としてリリースした「Operator」は、OpenAI初の公式「エージェント型AI」です。

「Operator」は、単に回答するだけのチャットボットとは異なり、バーチャル上のアシスタントのように機能します。ユーザーは自身の手間を最小限に抑えながら、ブラウザ上でクリック、スクロール、タイピングなどを行うだけでタスクを完了することができます。

eBay、Instacart、Etsyが導入

OpenAIは「Operator」をテストするために、越境ECプラットフォーム運営のeBay、食料品や日用品のオンラインデリバリーサービスを提供するInstacart、ハンドメイド商品のECを展開するEtsyなどの主要なEC事業者と提携したと発表しています。

ユーザーはそれらの事業者が運営するECサイトで、「Operator」に食料品の注文、ギフト探し、Webサイト上でのチケット予約などを依頼でき、必要に応じていつでも注文内容の調整や修正を行うことができるそうです。

OpenAIの「Operator」はECサイト運営においてどのように機能するのでしょうか?

「『Operator』は、AIを従前の受動的なツールから、デジタルエコシステムのアクティブな参加者に変えます」とOpenAIはニュースリリースで発表しています。

「Operator」を活用するユーザーのタスクを効率化し、より良い顧客体験を追求します。コンバージョン率アップをめざす企業に、AIエージェントならではのメリットをもたらします。(OpenAIのニュースリリースより)

ユーザーに代わってアクションする「Operator」

「Operator」の使い方は「ChatGPT」と似ています。まずユーザーは「operator.chatgpt.com」にログイン。次に、「食料品を注文する」や「旅行のホテルを探す」など実行したいタスクを入力します。そこから、「Operator」はクラウド上に独自の仮想Webブラウザを起動してタスクを完了していきます

「Operator」の使い方イメージ。実行したいタスクを入力すると、「Operator」がクラウド上に独自の仮想Webブラウザを起動する(画像はOpenAIのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)
「Operator」の使い方イメージ。実行したいタスクを入力すると、「Operator」がクラウド上に独自の仮想Webブラウザを起動する(画像はOpenAIのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)

この技術を可能にしているのは、OpenAIが新たに開発した「Computer-Using Agent(CUA)」モデルです。グラフィカルユーザーインターフェースで動作するようにトレーニングされており、「Operator」がWebサイトを見て、ボタンのクリック、フォーム入力、メニューの操作などにより対話する――とOpenAIは説明しています。

「Operator」がユーザーと対話しながら、仮想Webブラウザ上でフォームに入力したりメニューを操作したりする(画像はOpenAIのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)
「Operator」がユーザーと対話しながら、仮想Webブラウザ上でフォームに入力したりメニューを操作したりする(画像はOpenAIのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)

よく使うワークフローは保存可能 

「Operator」は、ユーザーが頻繁に行うタスクの手順を保存できます。たとえば、Instacartが運営する「Instacart」で、ユーザーが特定のアイテムを再注文するためのカスタム設定を作成するオプションを用意できます。また、特定の航空会社のフライトを予約することも可能です。

OpenAIは、「Operator」が「ユーザーの好みに基づいてパーソナライズされたエナメルマグを『Etsy』で注文しながら、キャンプ場のレンタルサービス『Hipcamp』でキャンプ場を予約する、といった、複数のタスクを同時に処理することもできる」と説明しています。

機密情報は手入力

それでも、人間の手入力がまだ必要なシーンは少なくありません。「たとえば、ユーザーは支払い情報やログイン詳細などの機密情報は手動で入力する必要があります」(OpenAI)

現在、「Operator」は限定的な「リサーチプレビュー」段階であり、OpenAIが月額200ドルで提供している「Pro」プランに加入している米国のユーザーのみが利用できます。OpenAIは、ユーザーのフィードバックに基づいて改良を重ね、「Operator」を他の有料プラン、国、そして最終的には「ChatGPT」の無料版に拡大する計画です。

改善すべき点はまだたくさんありますが、まずは実際にユーザーに使っていただきたいと考えています。今後数週間から数か月以内に、さらに多くのAIエージェントを発表する予定です。(OpenAI サム・アルトマンCEO)

「Operator」の有用性は? eBay、Etsy、Instacartの反応

「Operator」の有用性を示すために、eBay、Etsy、Instacartなどの主要企業と提携しているOpenAI。

Instacartでは、「Operator」を通じて、より速く、より簡単にエンドユーザーが食料品の買い物をできるようにしています。デモ動画では、エンドユーザーが手書きの食料品リストの写真をアップロードし、「Operator」がアップロードされたリストを取得、注文フローを経て、配達までをスケジュールします。

OpenAIの「Operator」は、食料品の注文のような工程を信じられないほど簡単にする革新的な技術的です。(Instacart 最高製品責任者、ダニエル・ダンカー氏)

Etsyは、「Operator」を「自社ECサイトの利用者が、何百万人もの出品者から自分のほしいアイテムをより迅速に見つける方法と捉えている」そうです。

ビジネスに特化したSNS「LinkedIn」での投稿で、Etsyは「ますます自動化が進む昨今の世情において、Etsyが提供するマーケットプレイスを利用する人との関わりを強化するために、AIを実装していく予定です」とコメントしています。

eBayの最高AI責任者であるニツァン・メケル-ボブロフ氏は、「OpenAIとの提携は、eBayが進めるAI戦略における重要なステップ」だとeBayのコーポレートサイトでコメントしています。

OpenAIとの提携は、エンドユーザーにオンラインにおける商品の発見と、新しい買い物体験をもたらします。「Operator」はユーザーを「eBay」に誘導して、ほしい商品を見つけるサポートができます。

このコラボレーションを通じて、「eBay」に出品しているセラーのリーチを拡大し、より多くの消費者に「eBay」のが取りそろえるラインアップを知ってもらえると期待しています。(eBay ニツァン・メケル=ボブロフ氏)

安全性とプライバシーへの配慮

OpenAIは、ユーザーの代わりに商品の注文などのアクションができるAIツールを作成することに伴うリスクは認識しています。

ユーザーからの安全性の懸念を払拭するため、「Operator」に組み込まれているいくつかの安全策を公表しました。

  • テイクオーバーモード:ユーザーは支払い詳細などの機密情報を自分で入力する必要がある。「Operator」はこのとき入力されたデータを保存しない。
  • 承認ステップ:AIは注文などの主要なアクションを完了する前に一時停止し、ユーザーが確認するようにする。
  • タスク制限:銀行口座の管理などのリスクの高いタスクを拒否するようにトレーニングされている。
  • リアルタイム監視:メールや金融サービスなどの機密性の高いサイトでは、「Operator」のアクションを綿密に監視する必要がある。ユーザーは「Operator」が間違ったアクションを取った場合、直接確認できる。

「Operator」にはプライバシーツールも含まれています。たとえば、閲覧履歴の削除、保存されたログイン情報の消去、データ共有のオプトアウトなどの機能です。「誤用を防ぎ、ユーザーの安全を確保するために、安全策を継続的に更新しています」(OpenAI)

とはいえ、「Operator」はまだ完璧ではありません。Open AIによると、カレンダーの管理やスライドショーの作成など、より複雑なタスクの対応はまだ苦手のようです。

長期的には、OpenAIはこの「Computer-Using Agent」モデルを、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を通じて開発者に提供したいと考えています。これにより、企業はさまざまなタスクに対応する独自のAI搭載エージェントを構築できるようになります。

OpenAI、成長著しいAIエージェント市場に参入 

大手テック企業がすでに同様のAIエージェントを構築しているなか、「Operator」はレッドオーシャン市場に参入しました。

GoogleやSalesforceなどの企業は、独自のエージェントツールを立ち上げています。これらのツールは、顧客からの質問への回答、予約のスケジュール、フォームへの入力などのタスクを処理できます。

「TikTok」を運営するByteDanceも、2025年1月にオープンソースのAIエージェント「UI-TARS」でAIエージェント市場に参入。「UI-TARS」は「Operator」と同様に、ユーザーのタスクを段階的に実行します。

他社のAIエージェント開発事例

小売業関連では、半導体メーカーのNvidiaが最近、販売促進につながるAIエージェントの開発を支援するツール「Blueprint」を発表しました。これを利用して開発者が生成するデジタルアシスタントは、テキストと画像のプロンプトを処理でき、複数のアイテムを同時に検索したり、商品が防水かどうかなどの質問に答えたりできるそうです。

このような高度な機能を備えたAIエージェントは、顧客体験を向上させ、コンバージョン率を高め、返品率を下げるのに役立ちます。また、補完商品やアップグレードに関して、開発者にパーソナライズした提案を行い、注文の平均単価を大きくするように設計されています。(Nvidia)

eBayはAIエージェントのさらなる活況を予測

eBayのメケル-ボブロフ氏は、大規模言語モデルからエージェント型システムへの進化は「ほんの1年前に予測していたよりも速く起こっている」とコメントしています。ボブロフ氏は、AIエージェントベースのやり取りが、今後数年間でEコマース、ひいてはデジタル経済全体の未来において重要な役割を果たす可能性があると考えています。

これはほんの始まりに過ぎません。eBayでもAIエージェント機能を進化させ続け、AIエージェントとの戦略的パートナーシップを深めていきます。ユーザーがお気に入り商品を発見し、ひいてはセラーがビジネスを成長させるために、AI技術の活用がどれほど効果を発揮するかを学んでいるところです。(メケル-ボブロフ氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

Digital Commerce 360

【1万人に聞いたネット通販利用】10歳代のネットショッピング利用が急進で年平均39回。60歳代のEC利用は51%

10ヶ月 1 週間 ago

野村総合研究所が発表した「生活者1万人アンケート調査」によると、10歳代のネット通販利用が拡大しており、年平均39回に達している。10歳代の次に前回調査と比較して利用が拡大しているのは60歳代。年に1回以上ECを利用する人は51%となっている。

調査実施期間は2024年8月で、全国の満15~79歳の男女1万189人が回答した。

2024年調査でECを年1回以上利用している回答者の割合は10歳代が68%(前回調査の2021年比10ポイント増)、20歳代が81%(同1ポイント増)、30歳代が86%(同7ポイント増)、40歳代は84%(同6ポイント増)、50歳代は70%(同4ポイント増)、60歳代は51%(同9ポイント増)、70歳代が23%(同3ポイント増)。いずれの年代もEC利用が増加している。

EC利用者の年間利用平均回数は2024年調査で24回。前回調査時の2021年より2回増えている。

ECを年1回以上利用する人の割合の年代別推移(左)、利用者の年間平均利用回数の推移(右)(画像は野村総合研究所の調査結果資料から編集部がキャプチャ)
ECを年1回以上利用する人の割合の年代別推移(左)、利用者の年間平均利用回数の推移(右)(画像は野村総合研究所の調査結果資料から編集部がキャプチャ)

EC利用者のネットショッピング年間平均利用回数は、10歳代が39回(同13回増)、20歳代は33回(同6回増)、30歳代は30回(同3回増)、40歳代は24回(同2回増)、50歳代が18回(同2回減)、60歳代は17回(同3回増)、70歳代は10回(同1回減)。50歳代と70歳代以外の各年代で利用回数が増えている。

2024年におけるECの年間平均利用回数(年代別。画像は野村総合研究所の調査結果資料から編集部がキャプチャ)
2024年におけるECの年間平均利用回数(年代別。画像は野村総合研究所の調査結果資料から編集部がキャプチャ)

「店舗で実物を確認せずにインターネットだけで商品を買うことがある」という回答者の割合は、2012年調査から継続して伸長。2024年調査では過半数に達した。

「インターネットで購入する場合に、実物を店舗で確認するかネットだけで買うか」の回答割合を見ると、2024年調査では「実際の店舗に行かずに、インターネットだけで商品を買うことがある」に自身の行動が「近い」と答えた割合は22%(2021年比3ポイント増)、「どちらかといえばインターネットだけで買う」は31%(同1ポイント増)だった。

「インターネットで商品を買う場合も、実物を店舗などで確認する」に自身の行動が「近い」と答えた割合は21%(同2ポイント減)、「どちらかといえば実物を確認する」は26%(同2ポイント減)。インターネットだけで商品を購入する比率は増加している。

店舗で実物を確認せずにインターネットだけで商品を買うことがあるか(画像は野村総合研究所の調査結果資料から編集部がキャプチャ)
店舗で実物を確認せずにインターネットだけで商品を買うことがあるか(画像は野村総合研究所の調査結果資料から編集部がキャプチャ)

調査概要

  • 調査名:「生活者1万人アンケート調査」(2024年)
  • 調査時期:2024年8月
  • 調査方法:訪問留置法
  • サンプル抽出方法:層化二段無作為抽出法
  • 調査対象:全国の満15~79歳の男女個人
  • 有効回答数:1万189人
松原 沙甫

オンワードホールディングスが「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定

10ヶ月 1 週間 ago

オンワードホールディングスは、「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定し、2月3日に公開した。

近年、顧客からの迷惑行為を指すカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化。厚生労働省は全ての企業に対し、従業員をカスハラから保護する対策を義務付ける方針を示し、東京都では2025年4月から「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行するなど、国や自治体も対策に乗り出している。

オンワードグループはカスハラ対策を検討するため、社内各部門から委員を選出、カスタマーハラスメント対策委員会を設置。このほど、「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定した。

基本方針は、委員会メンバーが中心となり、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に加え、社内アンケート調査を参考に作成した。

カスハラ対応フローの構築と相談窓口を設置。発生時には当該部門と適切な部門担当者、相談窓口が連携し、迅速に対策会議を開いて早期解決をめざすとしている。

オンワードグループ 「カスタマーハラスメントに対する基本方針」

カスタマーハラスメントの定義

顧客からの要望のうち、要求内容に妥当性を欠くもの、または要求を実現するための手段・態様が社会通念上、不適切なものであって、これによって従業員の就業環境などが害されるもの。

対象となる行為(以下の行為は例示でありこれに限らない)

  • 長時間の拘束、繰り返しの対応、お断りしていることに対して執拗に要求を続ける等の行為。
  • 自社の商品・サービスに対して自社の対応基準を超えた負担・対応を求める行為。
  • 従業員に対する暴力、暴言、人格を否定する発言や侮辱的な発言、威圧的な言動や行動。
  • つきまといや待ち伏せ行為など、従業員が強いストレスや恐怖を感じる迷惑行為。
  • 自社および従業員の信用を毀損するまたは業務を妨害する行為。(SNSやインターネット上における誹謗中傷行為等を含むがそれに限らない)
  • 他の顧客に著しい迷惑を及ぼす行為。
  • 虚偽の情報提供や、法令の規定、公序良俗に反する行為。

カスタマーハラスメントへの対応姿勢

  • カスタマーハラスメントに該当する行為があったと自社が判断した場合、商品提供やサービス利用を停止する場合がある。
  • さらに悪質と判断した場合は、警察や弁護士等のしかるべき機関に連絡の上、厳正に対処する。

 

松原 沙甫

実店舗でもECのWeb解析のような顧客インサイト把握をめざすJ. フロント リテイリンググループの来店客分析の取り組みとは?

10ヶ月 1 週間 ago

J. フロント リテイリンググループのパルコデジタルマーケティングは2月3日、AIカメラと接客アプリを用いて来店客インサイトを把握する実証実験を、大丸札幌店で始めた。

実証実験では、AIカメラから取得する来店客数・属性・混雑状況、フロアでの立ち止まりでの興味関心度合いなどの定量データと、接客アプリで収集する購入理由などの定性データを組み合わせて解析し、リアル店舗でも深い来店客インサイトを把握する。

実店舗でもECのWeb解析のような顧客インサイト把握をめざすJ. フロント リテイリンググループの来店客分析の取り組みとは?
実証実験について

来店客数や年齢・性別などの定量データだけでは把握が難しい「なぜ商品を手にとったか」「なぜ買ったか・買わなかったか」などの顧客理解を、来店動機などの定性データを組み合わせることで深める。店舗の売上向上と接客・運用の最適化に役立つソリューションの提供をめざす。

実店舗でもECのWeb解析のような顧客インサイト把握をめざすJ. フロント リテイリンググループの来店客分析の取り組みとは?
実証実験の内容

実施期間は2月3日~3月31日。実験はパルコデジタルマーケティング、J. フロント リテイリング、大丸松坂屋百貨店が共催する。実施場所は国内外からセレクトしたシューズを展開するショップ「&SEL.(アンドセル)」。

ECサイトにおける顧客の購買行動は、Webサイトのアクセス解析によって詳細まで把握できるようになった。しかし、百貨店などのリアル店舗の来店客情報は、来店客数や年齢性別などの属性と購買データにとどまっており、入店から商品を手にとり、比較検討、レジに持っていくまでのプロセスを詳細まで把握できていない。リアル店舗も深い来店客のインサイトを把握するための実証実験を企画し、実施することにした。

実店舗でもECのWeb解析のような顧客インサイト把握をめざすJ. フロント リテイリンググループの来店客分析の取り組みとは?
実証実験のイメージ

 

松原 沙甫

大丸松坂屋のショールーミングスペース「明日見世」が複合型体験ストアに進化。「売らない価値」をどう届けるのか

10ヶ月 1 週間 ago
大丸松坂屋百貨店のショールーミングスペース「明日見世(あすみせ)」が2024年9月にリニューアル。カフェ併設、一部商品の購入などが行えるようになった"複合型体験ストア"は「売らない価値」をどのように進化させ、ブランドに提供しているのだろうか

大丸松坂屋百貨店のショールーミングスペース「明日見世(あすみせ)」。2024年9月に“複合型体験ストア”にリニューアルして大丸東京店4階から9階へ移設、面積は約4倍に拡大した。カフェや一部商品が購入できるショップコーナーを新設している。「売らない店」の体験価値をどのように高めようとしているのか。明日見世 マネージャーの大貫哲也氏に取材した。

オープンから3年超、「売らない」ことで見えた価値と難しさ

商品を見て、触って、体験することを目的とした「ショールーミングストア」。その先駆けと言われる米国発の「b8ta(ベータ)」が日本に上陸したのが2020年8月。それ以降、複数の百貨店などが同様のコンセプトの店舗を展開している。

大丸松坂屋百貨店の「明日見世」は2021年10月から運営しており、これまでに200以上のブランドが出品。テーマに沿って独自視点で選定したユニークな商品が並び、12週間ごとに商品が入れ替わる。オープンから3年以上が経過し、どのような価値が確立できているのか。

大丸松坂屋百貨店 明日見世 2024年9月にリニューアルした「明日見世」。商品1つひとつを“しっかり”見せるレイアウトだ
2024年9月にリニューアルした「明日見世」。商品1つひとつを“しっかり”見せるレイアウトだ

ショールーミングサービス最大の価値は、ブランドや商品が持つ魅力をお客さまに届けやすいことです。売ることを前提としておらず、お客さまに「買わなきゃいけない」というプレッシャーを与えにくいため、こちらの話に耳を傾けてもらいやすいと感じます。スタッフにも販売目標を設けておらず、お互いに話しやすい状況を作っています。(本社 経営戦略本部 DX推進部 デジタル事業開発担当 明日見世 マネージャー 大貫哲也氏)

そうした良さが明確になる一方で、課題も見えてきた。

丁寧な接客ゆえに、お客さまの購入意欲が高まりやすいのですが、「今すぐ買いたい」という方に店頭で商品を販売できないのはもどかしくもありました。オンラインでの購入を促すのですが、「その行動が面倒」「個人情報を入力したくない」などの理由で購入につながりにくいケースがあります。(大貫氏)

「購入意欲が高まれば、自然とオンラインに誘導できる」と考えるブランド担当者もいるが、実際は複数のハードルが存在する。ブランド側にこうした実売への期待が高い場合、応えるのが難しいことがあったという。

大丸松坂屋百貨店 明日見世 日本屈指の産業用切削技術を持つ今橋製作所の純チタンプロジェクト「hikiZAN(ヒキザン)」の商品。専門技術を生かしたブランドは、「明日見世」との相性が良いという
日本屈指の産業用切削技術を持つ今橋製作所の純チタンプロジェクト「hikiZAN(ヒキザン)」の商品。専門技術を生かしたブランドは、「明日見世」との相性が良いという

運営を通じて、相性の良いブランドもわかってきている。

一つは、専門技術に長けた企業のブランドです。事業特性ゆえ普段はBtoBで事業を展開することが多く、小売りのマーケティング領域は専門外というケースがあるので、大丸松坂屋百貨店がそこを補完することで良い反響につながりやすいですね。

また、オンラインでの認知を一定獲得できていて、リアルでのタッチポイントの創出を目的に出品されるブランドからも好評の傾向があります。(大貫氏)

商品の価値を丁寧に伝える「アンバサダー」への期待

「明日見世」は、各ブランドに対して「プロモーション」を提供価値としているが、出品における目的やKPIは各ブランド側が設定しているという。ブランド側は、どのような期待を持って出品しているのだろうか。

「明日見世」では、アンバサダーと呼ばれるスタッフが1つひとつのブランドの特徴や訴求ポイントを十分にインプットして、自身の言葉でお客さまに伝えることを大事にしています。百貨店ならではの高い接客スキルは出品者さまに最も期待され、評価をいただいている点と言えます。(大貫氏)

大丸松坂屋百貨店 明日見世 マネージャーの大貫哲也氏
取材に対応してくれた大丸松坂屋百貨店 明日見世 マネージャーの大貫哲也氏。アンバサダーの接客は、「安心して任せられる」と高く評価されているという

「明日見世」では、ブランドをキュレーションする際の考え方として、「Social good(ソーシャルグッド):サステナブル、地域貢献など」「Essential beauty(エッセンシャルビューティー):プロダクトの ストーリーや美しさ・機能美など」「Breaking stereotypes(ブレーキングステレオタイプ):固定観念から脱却できるような商品背景など」の3点を掲げている。その上で、毎回テーマに沿って出品ブランドを選定。2024年9月~2月までは「贈る」をテーマに商品を展開している。

大丸松坂屋百貨店 明日見世 思わず立ち止まって、じっくり見たくなるものばかり。「まだ知らないブランド」に多く出会えそうだ
思わず立ち止まって、じっくり見たくなるものばかり。「まだ知らないブランド」に多く出会えそうだ
大丸松坂屋百貨店 明日見世 各ブランドの棚にはAIカメラが設定されており、性別や年代、売り場への滞在時間を取得している
各ブランドの棚にはAIカメラが設定されており、性別や年代、売り場への滞在時間を取得している

実際に店を訪れたところ、コンセプトの新しさからデザインや素材まで細部にこだわりが光る商品ばかり。そうした作り手側のストーリーまでも伝える接客に、足を止めて聞き入る顧客は少なくないという。

アンバサダーは、ブランド価値を伝えると同時に顧客の声も丁寧に拾う。接客から得られた顧客像と顧客からのフィードバックをブランド側に詳細に伝えているためだ。あわせて、売り場に設置しているAIカメラを通して分析した「顧客の性別、年代、売り場への滞在時間」も提供している。

面積を約4倍に拡大し、カフェを併設。リニューアルの狙いとは

そんな「明日見世」は、2024年9月にリニューアルオープン。複合型体験ストアとして再スタートを切った。売り場をそれまでの4階から9階へ移設し、面積は約4倍になった。カフェや約40席を備える休憩スペース、その場で購入できる物販コーナーを新設したほか、インスタレーションの展示やイベント開催も行う。このリニューアルには、どんな狙いがあるのか。

大丸松坂屋百貨店 明日見世 店内はL字型で、ショールーミングスペース、カフェ、休憩スペース、販売スペースを設けている
店内はL字型で、ショールーミングスペース、カフェ、休憩スペース、販売スペースを設けている(画像提供:大丸松坂屋百貨店)
大丸松坂屋百貨店 明日見世 テーマに応じたインスタレーション展示も。写真はイラストレーター飯尾あすかさんの作品
テーマに応じたインスタレーション展示も。写真はイラストレーター飯尾あすかさんの作品

リニューアル前は、PoC(検証プロセス)という位置付けでした。ここで得られた知見を生かして価値をより高めることがリニューアルの目的です。カフェを併設したのは、お客さまに買い物を楽しんでいただくコンテンツの拡充という理由に加え、移動距離が増える高層階へ移設しても集客を確保する狙いがあります。フロア全体では、1つひとつのブランドによりスポットライトを当てながら、体験価値を高めることを重視しました。(大貫氏)

面積は約4倍に拡大しているが、店内に置くブランド数は以前と変わらない。その分、各ブランドをリッチに見せることができ、この“広さ”は「明日見世」の特徴の1つと言える。そうした価値や収益性を踏まえ、リニューアルを機に出店料を12週間45万円から90万円に変更したという。通常の展示スペースのほかに、パネルなども展示できる大型のスペースを1つ設けており、ここのみ出品期間が6か月間タームとなる。

大丸松坂屋百貨店 明日見世 目立つ位置に設けられた大型のショールーミングスペース。2025年1月現在は三省製薬の商品や展示が並ぶ
目立つ位置に設けられた大型のショールーミングスペース。2025年1月現在は三省製薬の商品や展示が並ぶ

リニューアル後は、以前は表示していたショールーミングスペースでの価格表示をやめた。「価格がノイズになる」と考えたためだ。

価格の表示は、お客さまにとってわかりやすく、アンバサダー視点でも接客がしやすい利点はあります。一方で、価格を見て「話を聞かない」と判断する方もいます。まず商品だけを見て話を聞いた上で、価格を知って商品を評価していただけたらと思いました。(大貫氏)

「体験」を強化して、独自価値を高めたい

現在、リニューアルから約3か月が経過し、徐々に反響が得られているという。

以前からの大きな変化としては、客層の幅が広がったこと。以前は婦人服売り場のある4階だったので主に40~60歳代の女性層がメインでした。現在も女性のお客さまが多いのですが、お子さま連れや男性、外国人の方など以前より幅広い層の方が来店しています。

また、販売はオプションとして希望があるブランドの商品のみを置いているのですが、想像以上に売れ行きが良いです。現在は大半の商品が購入できます。(大貫氏)

利用者の目的としては、「ギフト需要」がかなり多いとのこと。東京駅に隣接している立地柄、出張や旅行がてら立ち寄って手土産などを購入していく人が多いそうだ。

大丸松坂屋百貨店 明日見世 「行きたいお店」として「明日見世」の情報をストックしておき、東京駅を訪れたタイミングで来店する人も少なくないという
「行きたいお店」として「明日見世」の情報をストックしておき、東京駅を訪れたタイミングで来店する人も少なくないという
大丸松坂屋百貨店 明日見世 商品単価が幅広いため、予算に応じたセンスの良い手土産やギフトが見つかりそうだ
商品単価が幅広いため、予算に応じたセンスの良い手土産やギフトが見つかりそうだ

最後に、「明日見世」の展望をたずねた。

積み重ねてきたサービスのベースを整えながら、今後は「体験」の軸を強化して、エンタメ性を高めていきたいと考えています。面積が広がりイベントなどを行えるスペースを確保できているため、リアルの体験コンテンツの拡充を見込んでいます。(大貫氏)

すでに、化粧品ブランド「三省製薬」の新商品発表会などを開催した実績もあり、作り手の声を消費者に直接届けると共に、実際に商品を体験できる場として好評を得たという。

一般的なショールーミングストアの枠を超えて、独自路線に進化している「明日見世」。体験を強化することで「売らない店」の価値がどう高まるのか、気になるところだ。

小林 香織

全国企業「倒産リスク」、小売業は2.6万社。物価高と人手不足が直撃

10ヶ月 1 週間 ago

帝国データバンクが、今後1年以内に倒産する確率を個別企業ごとに算出したリスク指標を用いて、全国の「高い倒産リスクを有する企業」を調査・分析したところ、倒産リスクが高い全国の企業のうち小売業は2.6万社だった。

企業が1年以内に倒産する確率を、10段階のグレードで表す指標「倒産予測値」で帝国データバンクが算出した147万社のうち、2024年12月時点で高リスクの企業(グレード8~10)は全体の8.6%にあたる12万6960社。業種別で見ると、高リスク企業が多い業種では物価高による消費者の買い控えや、働き手の人手不足、人件費高騰が直撃していると見られる。

2024年12月時点の倒産高リスク企業の数
2024年12月時点の倒産高リスク企業の数

2024年の倒産件数は9901件で、前年の8497件を1404件上回った。新型コロナウイルス状況下の“ゼロゼロ融資”の影響から、2021年は倒産件数が減少。しかし、融資返済や物価高、人手不足などさまざまな環境の変化により、3年連続で前年を上回る倒産が発生した。また、休業・廃業、解散した企業は6万9019件となり、前年に比べて9914件増加(前年比16.8%増)となった。

小売業は物価高騰、人件費高騰の影響が色濃く

業種別に高リスクの企業数を見ると、「建設業」が2万8817社と最も多く、前年比で4445社増加した。2番目に多い業種は「製造業」の2万8571社で同3303社の増加。3番目が「小売業」の2万6464社で同2197社の減少となっている。

業種別の倒産件数
業種別の倒産件数

「小売業」のうち、1万134社は原材料や光熱費、人件費の高騰、物価高による節約志向の影響を受けている「飲食店」(高リスク企業のうち44.4%)だった。食品の値上げはピーク時よりも落ち着いてきたものの、買い控えや価格転嫁の限界感などもあり、「飲食料品小売業」(同39.8%)も上位となっている。

高リスク企業数の推移(業種別)
高リスク企業数の推移(業種別)

「売上高10億円未満」「従業員10人未満の小規模企業」で倒産リスクが高い傾向

高リスク企業を売上高別にみると、「1億円未満」が8万1430社で最多。「1~10億円未満」が4万1168社で続き、「10億円未満」の企業で全体の96.5%を占めた。

従業員数別も同様の傾向で、「5人未満」が7万9873社と最も多い。「5人~10人未満」が2万886社で続き、高リスク企業は小規模企業が圧倒的に多いことがわかった。

松原 沙甫

ヤーマンが中東進出、サウジアラビアでECと現地の美容クリニックを通じて商品展開

10ヶ月 1 週間 ago

美容機器販売のヤーマンは中東地域に進出、サウジアラビアでの商品販売を始めた。現地向けのECサイトで「YA-MAN TOKYO JAPAN」ブランドなどの製品を展開するほか、首都リヤドの美容クリニックを通じた製品販売を始めた。

現地向けのECサイトでは、顔の下半分にアプローチして表情筋を鍛えるウェアラブルEMS美顔器「メディリフト プラス」、エステ機器の技術を応用した美顔器「フォトプラス プレステージ SP」、ローションを入れて使用する美顔器「ハイドラブライトスキン」の3製品を販売する。

現地向けのECサイトやリヤドの美容クリニックで販売する美顔器の1つ「メディリフト プラス」/YA-MAN TOKYO JAPAN
現地向けのECサイトやリヤドの美容クリニックで販売する美顔器の1つ「メディリフト プラス」/YA-MAN TOKYO JAPAN

ECサイトはアラビア語で展開。サウジアラビアを中心に、近隣の中東地域にも製品を届ける。中東での配送エリアはサウジアラビア、クウェート、バーレーン、UAE、カタール。

アラビア語で展開している中東向けのECサイト(画像はサイトから編集部がキャプチャ)
アラビア語で展開している中東向けのECサイト(画像はサイトから編集部がキャプチャ)

「SKNクリニック」として展開する美容クリニックでは、「メディリフト プラス」「ハイドラブライトスキン」の2製品を扱う。リヤドでの美容クリニックの開設・運用を通じて、新たな市場創出をめざす。

リヤドで展開する美容クリニック「SKNクリニック」
リヤドで展開する美容クリニック「SKNクリニック」

サウジアラビアの年齢の中央値は29歳と若年層が多く、30歳未満が約63%を占める。2030年までの国家改革戦略である「ビジョン 2030」では、「労働力に占める女性の割合を22%から30%に引き上げる」という目標が掲げられており、女性の社会進出によって可処分所得と外出機会の増加による美容への意識の高まりが予想されている。

東京・銀座へ2024年11月にオープンしたグローバルフラッグシップストア「YA-MAN the store GINZA」にはサウジアラビアからの顧客も来店しており、現地展開の要望が寄せられていた。

ヤーマンはこれまで、中国、米国、欧州、東南アジアで14の国と地域において事業を展開しており、中東初となるサウジアラビアを含めると15の国と地域での展開となる。グローバル展開は今後も加速させる予定。

松原 沙甫

ムラサキスポーツが語るEC売上3倍の秘訣。W2と成功させたオムニチャネル戦略とSEO強化施策

10ヶ月 1 週間 ago
EC事業を主軸に事業を成長させた「ムラサキスポーツ」が、その舞台裏をECプラットフォーム「W2」と語る
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2019年には店舗とECの連携に苦戦していたムラサキスポーツが、革新的なオムニチャネル戦略で業績を劇的に向上させた。EC売上は従前比で3倍に急増し、ECで購買した顧客の7割が実店舗に来店するというシームレスな購買体験も実現した。

ムラサキスポーツは何を実行したのだろうか? ムラサキスポーツ執行役員の佐藤はじめ氏が、ECプラットフォームの提供を通じてムラサキスポーツのECビジネスをサポートするW2の鴨下文哉氏と、成功の舞台裏を解説した。

W2の鴨下文哉氏とムラサキスポーツ執行役員の佐藤はじめ氏

店舗、EC、関連施設でLTVを高める「ムラサキスポーツ」

2023年に創業50周年を迎えたムラサキスポーツ。スポーツ用品販売事業をスタートした当初は野球やテニス、スキー用品を扱う総合スポーツ店だったが、30年ほど前からスノーボード、サーフィン、スケートボードといった、いわゆるアクションスポーツの商品を取り扱うようになった。

ムラサキスポーツ公式オンラインストア
ムラサキスポーツ公式オンラインストア(https://www.murasaki.jp/

現在はムラサキスポーツの屋号で全国140店舗(別屋号でも10店舗)、EC事業は自社サイトのほかにモール店舗も運営している。物販だけでなくアクションスポーツのイベント企画・運営の受託事業、スクール事業、契約アスリートのマネジメント事業なども手がける。

ムラサキスポーツの企業コンセプトは「“遊びでつながる”をデザインする」。遊びで人と人をつなげることが結果的に顧客を広げ、顧客の創造につながる。また、仲間とのつながりがあるから、遊びが長続きして顧客のライフタイムバリュー(LTV)が高まると考えている。(佐藤氏)

ムラサキスポーツ 営業統括本部 執行役員 営業統括本部副本部長 マーケティングサービス部ジェネラルマネージャー 佐藤はじめ氏
ムラサキスポーツ 営業統括本部 執行役員 営業統括本部副本部長 マーケティングサービス部ジェネラルマネージャー 佐藤はじめ氏

佐藤氏はムラサキスポーツと所属契約をしていた元プロスノーボーダー。引退後、社員として入社し、営業職や店舗運営の統括、商品部やEC事業の責任者などを経て、現在は営業全般に携わりながらマーケティング業務の責任者を務めている。

オムニチャネル施策として店頭受け取りを開始

ムラサキスポーツが考えるオムニチャネルは、店舗とECの購買体験だけではなく、企画運営する各種イベントやスクール、さらにはスキー場、スケートボードパークといった遊び場やフィールドでの顧客体験も視野に入れる。そのため、顧客データとして、イベントやスクールへの参加履歴、提携施設の利用履歴なども保持しているという。

ムラサキスポーツはサーフボード、スノーボードといったギアを取り扱っているので、アフターメンテナンスなど、LTVを高めるフィールドでの体験イベントといったサービスを提供している。そのため、ECの購入客をどうやって店舗につなげていくかが課題だった。(佐藤氏)

課題解決に向け、まず開始したのが店頭受け取りサービス。スタート当時はなかなか浸透しなかったが、現在ではサーフボード注文者の7割、スノーボード注文者の3割が店頭での受け取りを選択するようになった。店舗で中古買取を行っているため、ECで注文した商品を店頭で受け取る際に、使用していたボードを中古買取で持ち込む顧客も多い

中古買取の事業をスタートしたのはSDGsの観点もあるが、リユース商品にまったく抵抗感のないZ世代や、これからアクションスポーツを始めるお客さまに少しでも安価に商品を提供し、マーケットを拡大したいという思いがあったからだ。(佐藤氏)

オムニチャネルは来店客の新しい商品の購入につながっている。2023年6月、ムラサキスポーツはこうしたOMO施策をさらに充実させるため、自社ECサイトのリプレイスをW2に依頼。店舗スタッフにとっても使いやすい仕組みになったという。

スタッフを主役にする「自分ごと化」でEC事業が急成長

ムラサキスポーツがEC事業を始めたのは2010年。2019年まではグループの別会社で展開していた。当時はEC化率が3%程度と低く、施策や在庫も店舗と共有できていない状況だった。それがこの5年でEC化率は15%に急成長した。

佐藤氏が初めに着手したのは、社内の各部署を巻き込んで、EC事業への参画意識を持ってもらうこと。たとえば商品部のバイヤーに、ECに掲載する商品をすべて決定してもらい、その商品を仕入れたバイヤーに商品の説明コメントを書いてもらった。その結果、対面販売でなくてもバイヤーがどういった意図でこの商品をセレクトしているのかが顧客に伝わるようになった。

また、商品の着用画像はプロのモデルではなく、店舗スタッフが務めた。これにより店舗スタッフを巻き込み、ムラサキスポーツの店舗の雰囲気やムラサキスポーツらしさをECでも表現できるようになったという。店舗スタッフがスタイリング画像を店舗のSNSに投稿、接客にも使用することで、顧客とのつながりも生まれていった。

とにかくECに興味を持ってもらうため、「ECがここから生まれ変わり、どんどん進化する、楽しい場所なんだ」というメッセージを送り続け、EC事業にスポットライトを当ててきた。(佐藤氏)

現在ECチームで働いているスタッフの半数近くは、社内公募で集まったという。北海道から福岡まで、各地の優秀なスタッフから手があがったのは、EC事業に興味を持ってもらう取り組みを続けてきた結果ではないかと佐藤氏は分析する。

売り上げを作る組織作り

オムニチャネルやOMO施策を実施するにあたり、店舗スタッフとEC事業部のスタッフが対立関係になってしまうこともある。そこはどのように変えていったのか。佐藤氏は店舗スタッフやバイヤーが「売り上げを伸ばせるチャンス」「この仕組みを使ったら良さそう」という意識を持ち、積極的に取り組んでくれたと言う。

逆風のなかでも、トップとしてECの重要さをスタッフに伝えられたのが、成功要因の1つではないか。(鴨下氏)

W2 S&M本部 執行役員兼S&M本部 本部長 鴨下文哉氏
W2 S&M本部 執行役員兼S&M本部 本部長 鴨下文哉氏

ムラサキスポーツでは2019年に大きな組織体制の変更を行い、EC事業は商品部のなかに組み込まれた。2024年6月にも体制変更があり、現在は実店舗運営を管轄する部署に移行している。ここ最近の顧客動向から、「ECと店舗をシームレスにつなげる」「顧客の利便性アップするサービス提供」を強化するために、「ECが店舗のもっと近くにあるべきだ」という社長の思いからの改革だった。

2019年に商品部のなかにあったEC事業を第1リテールサービス部に変更

組織改革して以来、確実に店舗スタッフのOMOに対する意識が変わってきているという。

「スノーボード」「サーフボード」「スケートボード」のビッグワードで検索上位を獲得

SEOの強化にも取り組んできた。具体的にはデジタルカタログとブログに注力し、商品に興味を持った顧客が情報収集をする段階で、一度はサイトに来てもらえるようにコンテンツを作り込んだ。

デジタルカタログと動画コンテンツを含む商品詳細ページを作成し、SEOを強化した

モノが好きな人にとってカタログデータは非常に魅力的。ムラサキスポーツのサイトではサーフボードのカタログデータは閲覧数が高い。カタログデータを横並びで表示させるスペック比較はW2が開発した。

商品一覧から「比較する」ボタンをクリックすると、選択した商品だけを比較できる

また、サーフボードは身長や体重などを入力すると、そのデータにマッチしたサーフボードのサイズを計算して、リコメンドする機能も搭載した。

さまざまな角度での商品選びを追求

カタログデータの充実や探しやすさの工夫だけでなく、契約アスリートのブログなどで、顧客が思わず読み込んでしまう情報や、購入の後押しになるような情報を充実させた。

開始当初はコンバージョンが伸びなかったが、SEO施策を続けることで「スノーボード」「サーフボード」「スケートボード」というムラサキスポーツが最も欲しいビッグワードでトップクラスの検索優位性を手に入れることができ、それが売り上げの拡大にもつながった

SEO施策により、多くの検索ワードで上位を獲得している

ムラサキスポーツのECサイトは商品数が多いため、「ファッション」「スノーボード」「サーフィン」などカテゴリごとのトップページを設置。キーワードに応じてそのトップページが上位表示されるようにSEO対策を続けてきた。顧客の流入経路を見ると、カテゴリのトップページから入ってくるケースが最も多く、これも検索の優位性につながっていると考えている。

LTV最大化に向けた次なる挑戦

ムラサキスポーツのターゲットは10代〜30代の比較的若い層。少子高齢化が進み、ターゲット層が減少していくなかで、売り上げを伸ばすにはシェアを拡大し、顧客のLTVを高めることが重要だ。そのためには、顧客が利便性を享受できる環境を整えることが必要だと考えている。

店舗でもフィールドでも、どこにいてもECにアクセスさえすれば、すべてのサービスを受けられる。ECは商品を販売するだけではなく、つながりを作る装置として、これからも新しい取り組みにチャレンジしていきたい。(佐藤氏)

W2では今後のECにおける成長に欠かせないものとして「ユニファイドコマース(Unified Commerce)」を提唱している。「ユニファイドコマース」とはECサイトや実店舗で取得したデータを統合し、顧客それぞれに価値ある購入体験を提供するマーケティング手法を指す。

日本のEC事業をさらに盛り上げていくためには、OMOの実現や、顧客体験の最適化(ユニファイドコマース)をいかに浸透させるかが重要。顧客視点で購買体験の最大化を一緒に実現していきたい。(鴨下氏)

ムラサキスポーツが導入したECプラットフォームを展開するW2とは

W2は、OMO・オムニチャネルから、W2株式会社、一般用医薬品向け、食品通販向けなど幅広いEC事業に対応できるECプラットフォームを展開している。事業の成長に合わせ、ノンカスタマイズモデルからカスタマイズモデルへのシームレスなサービス切り替えもできる。800社以上が導入し、導入企業の平均売上成長率は導入前比354%という(2024年11月時点)。

商材に合わせたECサイト構築プラットフォームを提供している。事業の立ち上げから年商数百億円規模まで対応可能
ユニファイドコマースの実現をめざす

W2は、OMO、ユニファイドコマースの他、データビジネス、今後はジェネレーションAIといったすべてを組み合わせて、顧客視点に立ったエクスペリエンスの実現をめざす。ECの観点だけでなく、顧客の購買体験を最大化し、いかに「楽しさ」を作るかをテクノロジーで解決していくという。

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大村 マリ

【北~西日本の大雪予報】ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の配送で全国的に遅れが生じる可能性

10ヶ月 1 週間 ago

2月7日頃にかけて北日本から西日本の広い範囲で大雪となる予報を受け、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便は荷物の配送に遅れが生じる可能性があると発表した。

全国各地で高速道路の通行止めなどの交通規制や除雪状況、荒天によるフェリー、航空貨物、貨物列車の欠航・遅延などの交通機関への影響で、一部地域で荷物の配送などに影響が出る可能性がある。

ヤマト運輸(2月4日時点)

北海道の帯広市、釧路市、河西郡(更別村、中札内村、芽室町)、河東郡(音更町、上士幌町、鹿追町、士幌町)、上川郡清水町、川上郡(標茶町、弟子屈町)、釧路郡釧路町、中川郡池田町、足寄郡足寄町では荷物の預かりと配送業務、全国からの荷物の受け付けを停止している。

また、全国から北海道(道東地域)、北海道(道東地域)から全国を発着する荷物に大幅な遅れが生じている。

また、北海道、信越、北陸、中国、四国、九州地方から全国に配送する荷物、全国から北海道、信越、北陸、中国、四国、九州地方に送る荷物に遅れが生じる可能性がある。

佐川急便(2月4日時点)

全国的に荷物の配送に遅れが生じる可能性があり、すでに北海道の一部地域(帯広市・河西郡・河東郡・中川郡・足寄郡・十勝郡・広尾郡・上川郡(清水町・新得町))では荷物の預かり・配送を停止している。

日本郵便(2月4日時点)

2月4日以降、郵便局の窓口、配達、集荷、取集などの業務を一時休止する場合があるという。

北海道で引き受け、または配達となる「ゆうパック」などは大幅な遅延が、東北・信越・北陸・近畿・中国・四国・九州地方で引き受けまたは配達となる「ゆうパック」などは遅延が見込まれるとしている。

瀧川 正実

コーナン商事が公式通販サイト「コーナンリフォームeショップ」にEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」を導入

10ヶ月 1 週間 ago

コーナン商事は、公式通販サイト「コーナンリフォームeショップ」にEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」を導入した。

「商品名」「カテゴリ」のサジェスト表示などを実装

コーナン商事は、日用品、DIY用品、園芸用品など20万点以上の商品を取りそろえた地域密着型の「ホームセンターコーナン」、建築職人向け小売業、会員制建築資材卸売業などの事業を手がける。

「コーナンリフォームeショップ」では、リフォームに関連する豊富な商品を取り扱うほか、見積不要で工事を依頼できるサービスや、写真を使用してスピーディに見積もりができる機能を提供している。

コーナン商事 公式通販サイト「コーナンリフォームeショップ」
コーナン商事が運営する「コーナンリフォームeショップ」
(画像は「コーナンリフォームeショップ」のサイトからキャプチャ)

「ZETA SEARCH」の導入で、検索窓に文字を入力した際、キーワードや「商品名」「カテゴリ」の候補をサジェストとして表示。ユーザーが希望に近い商品を見つけやすくなるようにすることで、CX向上につなげる。

コーナン商事 公式通販サイト「コーナンリフォームeショップ」 商品検索時に「商品名」「カテゴリ」のサジェストを表示する
商品検索時に「商品名」「カテゴリ」のサジェストを表示する

「高さ」「幅」「奥行」といった詳細な条件で商品を絞り込んで検索できる機能も実装した。これにより、各ユーザーのニーズに合う検索結果を表示し、利便性向上をめざす。

コーナン商事 公式通販サイト「コーナンリフォームeショップ」 「高さ」「幅」「奥行」をかけ合わせた絞り込み検索を実装
「高さ」「幅」「奥行」をかけ合わせた絞り込み検索を実装

「ZETA SEARCH」とは

ECサイト内の検索における「絞り込み」「並び替え」の設定の自由度・柔軟性を追求したEC商品検索・サイト内検索エンジン。

キーワード入力時のサジェスト機能、もしかして検索、ドリルダウン式の絞り込み、事前に検索結果の該当数を表示するファセットカウントなど、多数の検索機能を有している。

JRE MALL ZETA SEARCH サイト内検索 EC商品検索
「ZETA SEARCH」の基本機能(画像は「ZETA CX」サイトからキャプチャ)
藤田遥

ヤマト運輸、世界200か国以上の国と地域への配送サービス「UPSワールドワイド・エクスプレス・セイバー」運賃・手数料を値上げ

10ヶ月 1 週間 ago

ヤマト運輸は2月1日、世界各国のUPSネットワークを使って書類や貨物を世界200か国以上の国と地域に届ける「UPSワールドワイド・エクスプレス・セイバー(WWX)」の運賃・料金を改定した。サービスを提供するユーピーエス・ジャパンが運賃・料金を改定したため。

手数料の変更

  • 住所変更……貨物1梱包につき1420円(免税、1回の出荷の上限は4540円)※変更前は貨物1梱包につき1250円(免税、1回の出荷の上限は4000円)
  • 個人宅配達手数料……貨物1件につき420円(免税)※変更前は貨物1件につき400円(免税)
  • 遠隔地手数料……貨物1件につき2760円(免税)もしくは1kgごとに70円のいずれか大きい方 ※変更前は貨物1件につき2700円(免税)もしくは1kgごとに60円のいずれか大きい方
  • 最遠隔地手数料……貨物1件につき2970円(免税)もしくは1kgごとに80円のいずれか大きい方 ※変更前は貨物1件につき2900円(免税)もしくは1kgごとに70円のいずれか大きい方
  • 関税等諸費用請求手数料……貨物1件につき2970円(税込) ※変更前は貨物1件につき2574円(税込)
  • 追加取扱手数料……1梱包につき2002円(税込) ※変更前は1梱包につき1738円(税込)
  • 禁制品手数料……1梱包ごとに3万6828円(税込) 声も変更前は1梱包ごとに1万8414円(税込)

運賃の改定

「UPSワールドワイド・エクスプレス・セイバー」は、仕向国ゾーン(1~10の地域に振り分け)と送る貨物の総重量で料金が適用される。

たとえば、専用のUPSエクスプレス・エンベロップを使用した場合、ゾーン1向け(中国 (北部)、韓国、台湾、マカオ)は従前の6250円から6740円に値上げした。

松原 沙甫

送料250円→330円値上げのZOZO、9か月間での効果は? 商品取扱高営業利益率は0.6ポイント改善の12.0%

10ヶ月 1 週間 ago

購入者から一律に徴収する送料を改定し、2024年4月に従来の250円(税込)から330円(同)に値上げしたZOZO。2024年4-12月期(第3四半期累計)連結業績によると、商品取扱高に占める営業利益の割合を示す商品取扱高営業利益率は前年同期比0.6ポイント改善の12.0%に。送料ポリシー変更に伴う粗利率の改善などが寄与したという。

9か月間累計の営業利益の増減分析によると、前年同期の営業利益456億9800万円に対して、2024年4-12月期は前年同期比13.3%増の517億6100万円を計上。そのうち、その他の粗利増として32億7000万円を計上しており、送料ポリシーの改定に伴う送料収入などの増加を粗利増の要因にあげている。

出荷件数は増加傾向で推移している。送料ポリシーの改定に伴い、送料収入も増加し、粗利率アップに貢献している(画像はZOZOの決算説明会資料から編集部がキャプチャ)
送料ポリシー改定で送料収入が増加、粗利率アップに貢献している(画像はZOZOの決算説明会資料から編集部がキャプチャ)

「ZOZOTOWN」の商品取扱高を同期間の出荷件数で除すことにより算出した平均出荷単価は、四半期ベースで比べると2.0~3.8%の伸び率で推移。四半期ごとの平均で見ると8654円で推移しており、前年同期と比べて257円の増加となっている。

購入金額1万2000円以上で送料をZOZOが負担する送料無料施策の実施回数は、前年度と比較して拡大。これによる合わせ買いの注文が増え、出荷単価が増加している。

平均出荷単価の推移(画像はZOZOの決算説明会資料から編集部がキャプチャ)
平均出荷単価の推移(画像はZOZOの決算説明会資料から編集部がキャプチャ)

一方、9か月間の累計実質プロモーション費用は前年同期比10.0%増の183億9700万円となり、金額ベースでは16億7500万円の増加。送料無料施策の強化が主なコスト増要因となっているという。

9か月間の第3四半期累計でプロモーション費用は増加している(実質プロモーション費用比率は対象の費用を商品取扱高(その他商品取扱高を除く)で除してZOZOが算出。画像はZOZOの決算説明会資料から編集部がキャプチャ)
実施プロモーション費用の推移(実質プロモーション費用比率は対象の費用を商品取扱高(その他商品取扱高を除く)で除してZOZOが算出。画像はZOZOの決算説明会資料から編集部がキャプチャ)

なお、2024年4-12月期(第3四半期累計)の連結業績は、商品取扱高が前年同期比8.0%増の4611億7100万円、売上高は同9.2%増の1610億7600万円、営業利益は同13.3%増の517億6100万円、経常利益は同12.9%増の518億2900万円、四半期純利益は同10.7%増となる359億4300万円。

松原 沙甫

LINEヤフー、ストア向けクリック課金型広告やCRMを自社開発へ。プラットフォームの一元化を進める

10ヶ月 1 週間 ago

LINEヤフーは、自社ECモール「Yahoo!ショッピング」向けのクリック課金型広告とCRMツールを自社開発し、プラットフォームの一元化を進める。

現在、「Yahoo!ショッピング」向けのクリック課金型広告「StoreMatch(ストアマッチ)」、クーポン施策をサポートするCRMツール「STORE's R∞(ストアーズ・アールエイト)」は、LINEヤフーが約28%の株式を間接所有するバリューコマースが開発・運用している。

両社は「StoreMatch」「STORE's R∞」の「Yahoo!ショッピング」向けに提供する取引契約を7月31日で終了する。今後はLINEヤフーが「StoreMatch」「STORE's R∞」に代わる新たなサービスを開発する。

なお、バリューコマースとLINEヤフーは新サービスへの円滑な引き継ぎを実現するため、移行に関するコンサルティング業務およびその他業務を提供する旨の基本合意書を締結することを1月31日の取締役会で決議した。関連業務は総額10億円(税抜)でLINEヤフーから受託する。

LINEヤフーは「StoreMatch」「STORE's R∞」に関する契約を2025年3月以降、順次終了することについて協議したい旨をバリューコマースに申し入れ。バリューコマースは契約終了による経済的影響が大きいことから、「StoreMatch」「STORE's R∞」に関する取引を可能な限り継続することをLINEヤフーに要請していた。

1月31日に締結した、バリューコマースとLINEヤフーの契約終了および業務委託についての合意(画像はバリューコマースの発表資料から編集部がキャプチャ)
1月31日に締結した、バリューコマースとLINEヤフーの契約終了および業務委託についての合意(画像はバリューコマースの発表資料から編集部がキャプチャ)

LINEヤフーとの間で終了する「StoreMatch」「STORE's R∞」に関わる取引の2024年12月期における売上高は164億5200万円だった(ストア向け売上高を含む)。連結売上高に占める割合は54.1%。LINEヤフーに対する売上高は24億8400万円だった。

バリューコマースにおける「StoreMatch」「STORE's R∞」の2024年1-12月期の累計実績(画像はバリューコマースの発表資料から編集部がキャプチャ)
バリューコマースにおける「StoreMatch」「STORE's R∞」の2024年1-12月期の累計実績(画像はバリューコマースの発表資料から編集部がキャプチャ)

LINEヤフーとの「StoreMatch」「STORE's R∞」を通じた取引は年2025年7月31日をもって終了予定で、2025年1-12月期の「StoreMatch」「STORE's R∞」を通じた売上高の減少は、2024年1-12月期の8~12月の実績を踏まえて、概算で73億円を見込んでいる。

バリューコマースはソーシャルコマース領域・リテールメディア領域の強化、トラベルテック事業の拡大によって業績回復に努めるとしている。

なお、バリューコマースの「マーケティングソリューションズ事業」で展開する成果報酬型広告「アフィリエイト」を通じたLINEヤフーとの取引は、「StoreMatch」「STORE's R∞」とは独立したものであるため、影響は受けない。

松原 沙甫

「お客さんから遠い場所にいないか?」既存顧客対応を見返し、リピーター施策、CRMに立ち返ってみる【ネッ担まとめ】 | 新・ネットショップ担当者が知っておくべきニュースのまとめ

10ヶ月 1 週間 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2025年1月1日~1月31日のニュース

「ネットショップ担当者フォーラム」に掲載されている2025年の展望に関する記事や、1月に私が執筆した展望記事でも触れているように、新規顧客を獲得し続けることが難しくなっていると感じます。SEOや広告を行うにしても人員、予算、時間のリソースは必要なもの。であれば、既存顧客への対応がおざなりになっていないか見返し、購入頻度を高めるリピーター施策、CRMに立ち返ってみる2025年にしてみませんか?

「売ろう売ろう」とするあまり、いつの間にかお客さんから遠い場所にいないか?

イーザッカマニア ストアーズに学ぶ「ブランド作り」+ECメディア3社が語る“2025年のEC業界”【EBSの情報交換会1/11開催】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/13207

2025年1月11日に行われた、一般社団法人イーコマース事業協会(EBS)の第214回定例会に参加しました。基調講演は「イーザッカマニア ストアーズ」の浅野かおり氏が務め、「ブランドは誰がつくるのか」と題した講演で「ブランドとは何か」「誰が作り上げていくのか」について話していました。

同店は複数のECモールにおいて賞を獲得している人気店。1月30日に発表された「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」でも、総合賞4位、レディースファッションジャンル大賞、最強翌日配送大賞、ラ・クーポン大賞の4つを受賞しました。私も何度か購入したことがあり、スタッフの顔が見えるユニークな店舗運営や独創的な雰囲気に魅せられたファンの1人です。

はたから見れば「順調そのもの」という印象でしたが、同店の25年の歴史のなかには苦悩や葛藤があり、今も顧客との距離や関係値を模索し続けていることに驚きました。

2024年夏から浅野氏の講演を4回聞いてきたのですが、登壇するたびに自社への課題を見つけて持ち帰り、スタッフと共にサイトの改善に生かしていることに感銘を受けました。

その取り組みの1つと感じたのが、2024年11月からスタートした浅野氏によるコンテンツ「恥ずかしいから読まないでください(仮)」です。そこには店長としての心境、顧客への想いが等身大で綴られています。

恥ずかしいから読まないでください(仮) | イーザッカマニアストアーズ
https://e-zakkamania.com/f/contents/241108

時折レビューに返信したくなったり
(でもなんでその人だけ返信するんって言われたらどうしよう)
(レビュー返信してくれているスタッフが気を遣ってしまったらどうしよう)
Xとかで引用してアンサーソング的にお返事書いたらどうだろう
(勝手に引用とかしてイヤ!って思うお客さんだったらどうしよう)
(そもそもXあんまり使ってなくてお作法がわからないのにどうしよう)

どうしようどうしようって思ってたら、いつの間にかお客さんから遠い場所に座ってしまってました。

店名にもある「マニア」の通り、熱狂度の高いファンが多くいることは間違いありません。けれど、その域にあっても店長自身がこのような葛藤を抱え、その思いをまっすぐ発信していくことこそ、AI活用が進む時代において、ユニークであり続けるために大切なことではないでしょうか。

定例会の後半では、「ネットショップ担当者フォーラム」編集長の瀧川氏、「日本ネット経済新聞」の手塚康輔氏、「ECのミカタ」の吉見紳太朗氏と、国内を代表するECメディアが対談。

新規顧客獲得が困難になるなかでは既存顧客の引き上げが重要、F2転換を重視することの大切さについて資料をもとに意見を交わしました。新規参入、新規顧客の獲得競走が激化していくEC業界において、既存顧客に目を向けて気を配り、対話していくことがますます重要になることを両セッションから再確認しました。

2024年末、あるECオーナーから「出店して2年目、売り上げが伸び悩んでいる」と相談を受けた際、「既存顧客へのアクションをしてみませんか」と提案しました。確かに新規顧客獲得は足踏み状態でしたが、既存顧客は何百人もいることに立ち返り、クーポンコード付の年賀状を出してみることにしたそうです。

今でこそ、LINEやさまざまなCRMツールで既存顧客に対するアプローチも簡易になってきていますが、かつては多くのECサイトが電話やはがきによる接点強化を図っていました。

アナログ手法でのリピーター施策を推奨するわけではありませんが、「店舗の思いの熱量を下げることなく顧客に伝えるにはどうすれば良いか」と考えてみてはいかがでしょうか。ぜひ、みなさんの店舗でも既存顧客との接点強化を図る年にしていただければと思います。

要チェック記事

「SEOが理不尽なクソゲーになった」時代の生き方とは? 衝撃の移籍を発表した辻さんと渡辺さんが語った | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/01/22/48494

SNSでシェアされているものなどを見ると、タイトルを額面通りに受け取った人も多いのではないかと思うのですが

"この場合のクソゲーは「難しすぎて普通にプレイしてもクリアできないゲーム」の意味ですよね。"

だと思います。私が子どもの頃には、そうした理不尽なクソゲーが多くありました。

Bingが悪質すぎる。Google検索を偽装。そこまでしてBingを使わせたいか | ニッチなPCゲーマーの環境構築Z
https://www.nichepcgamer.com/archives/microsoft-bing-disguises-itself-as-google-search-to-deceive-users.html

年始早々「『Bing』で『Google』と検索すると、表示される画面がひどい」と話題になりましたね。画面を少し上にスクロールすると、実は「Bing」の画面だとわかるのですが、Googleのトップ画面風なデザインをしていることが不評を買ったようです。2025年1月31日時点でも同じ状況でした。

DeepSeekが集める個人情報は「中華人民共和国にある安全なサーバに保存」 | ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2501/28/news117.html

「App Store」で全米ダウンロード数トップ、日本の「App Store」の無料アプリランキングでは「DeepSeek-AI」が「ChatGPT」を抜いて首位になったことが話題になりました。「規制対象の半導体を使用しているのではないか」「OpenAIのデータを『蒸留』して開発していたのではないか」など、次々と新しい話が出てきています。しばらくは慎重に注視していきたいですね。

ChatGPT searchの弱点が露呈。隠しテキストで欺かれるAI(25年前のグーグル的) | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/01/10/48432

白背景に白いテキスト、フォントサイズをゼロにする――20年以上EC業界にいる人なら懐かしさすら感じる手法の数々。そうした隠しテキストに「GPT search」が欺かれているという報告。AI検索からのアクセスも増えていますが、使用者側としてはハルシネーションに気をつけたいところです。

こうした手法は主要な検索エンジンでは意味がないどころか悪手になりかねませんし、ユーザーに役立つコンテンツでもありませんよね。

【2025年最新調査】10代の検索行動と情報収集のリアルとは?~10代が狙う検索タイミングとテーマの全貌~ | eclore
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000140336.html

今後みなさんの店舗でも潜在顧客層になるであろう15歳~19歳を対象にした、検索を行う時間帯、場所、情報、ジャンル、キーワードの特徴についての調査データ。未来の新規顧客になりうる人たちの検索行動も知って、SEOに取り組んでいきたいですね。

今、みなさんにお伝えしたいこと

「自主的ブラック」のすゝめ。伸びる人の多くがやってること。 | さこっちのnote
https://note.com/sakocchi/n/n06e545a92d49

EC業界に15年以上携わる有識者3人で「ネッ担 ニュースまとめ」の連載再開! 意気込みやEC業界をアレコレ語り合う | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/12282

「ネッ担まとめ」の前任者、運営堂の森野氏のメルマガ「毎日堂」でもピックアップいただいたのですが、その引き継ぎミーティングのときに出た話題から。

「新・ネッ担まとめ」をリレー形式で担当している3人のEC歴が合計すると50年を超えていて、「我々も老害化していることを受け入れよう」というお話です。時代の流れも働き方も変わり、人材確保も難しいなかで「『業務時間外でも仕事の勉強をしろ。スキルを磨け』とは言えない」という経営者に出会うことが増えました。

それこそ「ワシの若い頃はなぁ」なのですが、そんななかでも、夜間や休日に「自主的ブラックに頑張っている」人たちはやはり伸びていると感じることも多々あり。

自分の好きなものなら時間を忘れて見たり触れたりするのは、その好きなもののマーケティングに自分がハマっている証拠では? と考えると、少し変わるかもしれないですね。

それではまた次回! 酒匂(さこっち)の「ネッ担ニュースまとめ」をよろしくお願いいたします。

ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

UdemyでECマーケティング動画を配信中です。こちらもあわせてご覧下さい。

ユウキノインは寄り添い伴走しながら中小企業・ECサイトのSEOからコンテンツマーケティング、プレスリリースやクラウドファンディングなど集客・販促・広報をお手伝いする会社です。詳しくはユウキノインのホームページをご覧ください。

Designequationは何かに特化したサポートではなく、モール・ベンダー選定や広告・CSなど各企業に合わせたカスタマイズ型の運用サポートを行っています。

酒匂 雄二

モノタロウ、15年連続過去最高益。売上高は2881億円で13%増【2024年12月期】

10ヶ月 1 週間 ago

間接資材のECサイト「モノタロウ」の運営などを手がけるMonotaROの2024年12月期連結業績は、売上高が2881億1900万円(前期比13.3%増)だった。営業利益は同18.4%増の370億6600万円、当期純利益は同21.0%増の257億2600万円。15年連続で過去最高益を更新した。

増収は既存顧客数の売上増加に加え、注文件数ならびに注文価格の上昇が要因となった。

15年連続で過去最高益を更新したMonotaROの2024年12月期連結業績(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)
15年連続で過去最高益を更新したMonotaROの2024年12月期連結業績(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)

営業増益は増収による売上総利益の増加に加え、売上高販管費率の圧縮、広告宣伝費や人件費などの見直しが寄与した。売上高販管費率は同1.1ポイント減の15.8%、売上高営業利益率は同0.6ポイント増の14.0%となった。

販管費率の圧縮により営業利益率が改善した(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)
販管費率の圧縮により営業利益率が改善した(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)

物流費は184億3500万円で同2.3%増。売上高に占める人件費・業務委託費などの増加などが要因となっている。

2024年12月期の物流関連コスト(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)
2024年12月期の物流関連コスト(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)

2025年12月期は、新規顧客獲得による顧客基盤の拡大と増収効果により、さらなる収益拡大をめざすとしている。

次のような施策の展開を予定している。

  • 新規顧客の獲得、獲得顧客の定着化、定着した顧客のLTV拡大の最大化
  • 新規連携企業獲得、契約先企業への営業活動の継続
  • 当日出荷商品の注文締切時間を延長するエリアの拡大、配送日時を指定する際の利便性向上など、顧客フルフィルメント向上施策
MonotaROが取り組む顧客フルフィルメント向上施策(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)
MonotaROが取り組む顧客フルフィルメント向上施策(画像はMonotaROの決算概要資料から編集部がキャプチャ)

これらの施策により、2025年12月期の連結売上高は、前期比13.9%増の3281億7300万円を計画している。

松原 沙甫

KDDIとauコマース&ライフのECモール「au PAY マーケット」が進める「不正ゼロ」の売り場作りとは?

10ヶ月 1 週間 ago

KDDIとauコマース&ライフはECモール「au PAY マーケット」において、「不正ゼロ」で安心・安全に買い物ができる売り場作りの実現に向けた5つの取り組みを進めている。クレジットカードの不正利用、不正注文・不正レビュー、偽造品・模倣品などのさまざまな不正を防ぐのが目的。

「au PAY マーケット」における不正対策の取り組み
「au PAY マーケット」における不正対策の取り組み

クレジットカードによる不正利用の未然防止

顧客と店舗の双方をクレジットカード決済の不正利用から保護するため、「au PAY マーケット」に出店している全店舗で、2023年10月までにクレジットカード決済における最新の本人認証サービス「3Dセキュア2.0(EMV 3-Dセキュア)」の導入を完了。これにより、クレジットカード決済の不正利用を未然に防止しる。

AI機械学習による不正注文の24時間自動検知、専門の不正対策担当による365日目視での取引審査を実施。不正利用の疑いがある取引を検知した場合は、店舗へアラート連絡を行っている。

不正注文・不正レビュー対策

2023年10月の不当景品類及び不当表示防止法の改正によるステルスマーケティング規制の強化を受け、「au PAY マーケット」ではレビュー投稿に対して独自の基準を設け、常時モニタリングをしている。自作自演などの不正が疑われる、いわゆる「やらせレビュー」投稿などの不適切なレビュー投稿の検知、表示抑制を強化。年間約20万件の不正レビューを削除している。

店舗審査の強化

顧客の買い物体験価値の改善に向け、店舗の「au PAY マーケット」出店前審査の厳格化を進めている。各種公的書類の提出の必須化に加え、過去の販売実態や商品倉庫・商品に関するエビデンスも確認している。

製品安全対策

関係省庁からの情報提供を受けた場合、迅速に店舗へ情報フィードバックおよび必要な対応を進める体制を構築し、顧客への影響を最小限にする運営を強化している。

リコール製品や安全ではない製品から消費者を守るための日本版「製品安全誓約」に2023年6月に署名しており、関係省庁との製品の安全に関わる情報連携、店舗との連携の強化を推進している。

偽造品・模倣品対策の強化

ブランドの不正な使用による偽造品や模倣品の排除を徹底するために、権利者や権利者団体との連携を強化し、偽造品・模倣品を迅速に検知して、取り締まりや排除を行っている。

偽造品・模倣品対策として、KDDIとauコマース&ライフの取り組みに賛同する消費財メーカー、アパレルブランド、化粧品メーカーなどと個別に協定を締結。連携を密にして偽造品・模倣品の取締り強化を推進している。協力企業は順次拡大を予定している。

松原 沙甫

ファンケルが実践するインフルエンサーマーケティングとは? 新規獲得1.8倍を実現した実例を大公開

10ヶ月 1 週間 ago
新規事業の認知拡大にインフルエンサーマーケティングを選択したファンケルの事例をPLAN-Bが解説
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ファンケルは新規事業のペットフード「GOODISH(グーディッシュ)」で、インフルエンサーマーケティングを実施し、実施前と比較して1.8倍の新規顧客を獲得するという成果を得た。ファンケルのそのマーケティングを支援するのが、インフルエンサーと企業のマッチングプラットフォーム「Cast Me!(キャストミー)」を提供するPLAN-B。

ファンケルで「GOODISH」を担当する小西奈菜子氏とPLAN-Bの森山佳亮氏が、インフルエンサーマーケティングのポイントとその効果について語った。

PLAN-B Cast Me!事業部 部長 森山佳亮氏(左)とファンケル 新規事業本部 ペットフード開発部 小西奈菜子氏(右)

新規事業にインフルエンサーマーケティングを選択

無添加化粧品や健康食品などで知られるファンケルが、新規事業としてペット領域の商品の製造・販売を始めている。販売するペットフード「GOODISH(グーディッシュ)」のキャッチコピーは「ファンケルが作った愛犬の体と健康を考え抜いたごはん」。

ファンケルの「GOODISH(グーディッシュ)」
ファンケルの「GOODISH(グーディッシュ)

ファンケル内のスタートアップであるペット事業部は、限られた予算のなかでインフルエンサーマーケティングを選択した。きっかけは小西氏の実体験だったという。

実家の愛犬が当時16歳と高齢だった。母が愛犬の食事や生活に関する悩みをInstagramに投稿したところ、フォロワーやフォロー外の方から、DMやメッセージでお薦めのご飯などの情報が届いた。SNSのコミュニティはペット用の商材に合っていると感じ、そこからSNSを使ったインフルエンサーマーケティングを検討した。(小西氏)

ファンケル 新規事業本部 ペットフード開発部 小西奈菜子氏
ファンケル 新規事業本部 ペットフード開発部 小西奈菜子氏

小西氏はインフルエンサーに直接依頼するのではなく、パートナーとなる企業を探した。パートナー選びのポイントにしたのは「熱量」。ファンケルという会社のなかでペットフードは新規事業で、新しいチャレンジだ。パートナーに求めたのは、単なる受注・発注の関係ではなく、一緒に知見や学びを得て、熱量を持って併走してくれるような関係だった。

PLAN-Bが提供する「Cast Me!」は、約1万2000人のインフルエンサーが登録しているプラットフォームで、インフルエンサーと企業をつなぐ場所を提供している。ただ仲介するだけでなく、コンサルタントが企業とともに戦略やクリエイティブを考えるのが特徴だ。今回の「GOODISH」に関しても「Cast Me!」の担当者がファンケルと一緒にインフルエンサーを選考し、キャンペーンやクリエイティブについても議論を重ねた。

インフルエンサーが投稿した動画の一例

インフルエンサーマーケティングで得たもの

ファンケルのペット事業部では新規顧客獲得数をKPIに設定していた。この新規顧客獲得数が「Cast Me!」との取り組み前と比較して1.8倍に伸長した。新規顧客が獲得できたことで、当然のことながら売上目標も達成した。

もう1つ得たものが「SNSに限定しないノウハウの蓄積」だ。「GOODISH」はペットフードのなかでは高価格帯商品ということもあり、どのような顧客がどういったクリエイティブに興味を持つのか、まったくわからなかったという。そんななかで「Cast Me!」を利用し、「PDCAを小さく早く回していくなかで、社内に知見を蓄えることができた」(小西氏)。

「Cast Me!」ではインフルエンサーの投稿を無料で二次利用できる。ファンケルでもインフルエンサーの投稿を広告に二次利用した。もともと静止画像の広告を出していたが、「動いているかわいい犬の動画」という非常に目を引くクリエイティブを活用することで、多くの人の目に留まるものになったと感じたという。

インフルエンサーの投稿は積極的に二次利用して広告に活用したほうが良い。インフルエンサーによる良い投稿があっても、SNSのアルゴリズムによって時間が経過すると露出されなくなる。広告としてターゲットを絞って配信すれば、良い投稿を何度でも蘇らせることができる。(森山氏)

PLAN-B Cast Me!事業部 部長 森山佳亮氏
PLAN-B Cast Me!事業部 部長 森山佳亮氏

インフルエンサーマーケティング成功のポイント

ファンケルの取り組みにおけるインフルエンサーマーケティングの主なポイントは3つある。

① ユーザー目線での発信が重要

企業による自社クリエイティブは“広告らしい広告”になりがちだ。ましてや、SNSで消費者に刺さるクリエイティブを企業が作るのは難しい。一方、実際にペットを飼っているインフルエンサーが、飼い主の視点で作ったクリエイティブは安心感もあり、消費者に受け入れられやすい。ファンケルには、インフルエンサーから「愛犬がおいしそうに食べてくれたことがまずうれしい」「食べているかわいい愛犬の姿が普段の投稿よりも多く閲覧された」という声があったという。

多く見られるコンテンツを作れるインフルエンサーは、そもそもクリエイティブ能力の高い人たちが多い。インフルエンサーのようなクリエイターにクリエイティブを任せるというのは時代に合っている。(森山氏)

② 「シェア」と「保存」に着目したインフルエンサー選び

インフルエンサーの選び方として、フォロワー数はわかりやすい視点だが、ファンケルは単純なフォロワー数ではなく、国内フォロワーの比率の高さに注目した。

ペットの投稿は海外のフォロワー獲得にもつながる。しかし、「GOODISH」は国内向けの商品。そのため国内のフォロワー数が多いインフルエンサーを選んだ。さらに普段の投稿でフォロワーとよくコミュニケーションを取っているかもチェックした。コミュニティの雰囲気の良さも重要だからだ。(小西氏)

「フォローをしない時代になってきているため、インフルエンサーを評価するうえでフォロワーの数は“最も重要”ではない」と森山氏。今まではインフルエンサーが投稿に反応をもらって、それがフォロワー数につながり、フォロワー数の多さが信頼となるのが常識だった。

しかし、特にTikTokではフォローに関係なく、ユーザーが再生するコンテンツに合わせて、アルゴリズムが次々と動画をセレクトしていく。フォロワーが少ないからエンゲージメントが高まらないとは限らない。TikTokにはフォロワーが少なくても、コンテンツ作りがうまい人、高い頻度でバズらせる人がたくさんいるのだ。

「Cast Me!」がインフルエンサーの実績で意識してチェックするのが「過去のPR案件でどのくらいリーチインプレッション出せたか」である。コメントや「いいね」の多さ、動画の視聴時間の長さなど指標は複数あるが、現在はInstagramなら「保存」、TikTokなら「シェア」と「保存」を見るべきだという。

シェアや保存は、その投稿を他人と共有していたり、ブックマークしていたりするということで、普段の投稿では「面白いから保存」もありえるが、PR案件での保存は商品に対する反応と考えられる。PR案件でシェアと保存が取れると商品に対する反応率が高くなる

シェアや保存をするということは、商品に心惹かれている、その投稿が人の心を動かす魅力が強いと言える。シェアと保存があるかどうかをベースに見ていくと、インフルエンサー選びで失敗しにくい。(森山氏)

「Cast Me!」で案件を実施したインフルエンサーは過去のPR案件の実績が確認できる

③ 最適なコミュニケーション方法の確立と「What」の発掘

企業はどうしても自分たちの商品の良さを伝えたくなってしまうが、今回、クリエイティブの1つでは「ファンケルが作った」ということを強調した。

インフルエンサーから、ファンケルを押したクリエイティブで反応がぐっと上がったと伝えられた。このようにインフルエンサーに気付かされることは、他の企業でもよくある。インフルエンサー視点でPRの訴求軸を考えてもらうと当たりやすい。(森山氏)

商品力があるのは前提だが「インフルエンサーに商品の良さを気付かされる」ということは、インフルエンサーマーケティングの意外なメリットだ。PDCAを回しながら訴求内容をインフルエンサーと企業が一緒に探し、高品質なクリエイティブをどんどん拡散していく。そのような流れで運用することが重要なのだ。

インフルエンサーマーケティングで認知の最大化に挑む

こうした流れをPLAN-Bでは「インフルエンサーグロースモデルの4ステップ」と呼んでいる。

PLAN-Bの「インフルエンサーグロースモデルの4ステップ」

まずは適したインフルエンサーとマッチングする(ステップ1)。そして企業とインフルエンサーが一緒にクリエイティブに取り組む(ステップ2)。以前成功した訴求内容を別のインフルエンサーにも組み込んでもらうといった「クリエイティブのPDCAを回す」といったことも、このステップに含まれる。

クリエイティブが順調に進むようになってきた段階を経て、ステップ3のアンプ(アンプリフィケーション)に進む。アンプとは拡大や増幅を意味し、インフルエンサーの良いクリエイティブを二次活用し、拡大させていくことを指す。

インフルエンサーを単なるPRの媒体と捉えるのではなく、「クリエイティブの『制作能力』」「商品の『プレゼン・セールス能力』新しい商品価値を見出す『トレンドキャッチ能力』」この3つを持った人たちだと捉えると、企業のインフルエンサーの活用価値は広がっていく。

インフルエンサーアンプの概要。従来型のインフルエンサーマーケティングだけでなく、公式アカウントの投稿物の作成や広告素材の作成、商品ページでのレビュー動画の作成など、活躍の場が広がっている

そしてステップ4がブランディングアンプだ。インフルエンサーを活用して広告やSNSにおける認知の最大化に取り組み、ブランド全体の新たな訴求点を見出していく

月額3.8万円から始められるインフルエンサーマーケティング

インフルエンサーの魅力は消費者との距離感の近さだ。ブランドを成長させるためには、インフルエンサーの力を借り、消費者と密接な関係を保つことが求められるだろう。

「Cast Me!」は在籍するインフルエンサーと自由にマッチングでき、すでに中規模から大規模の企業に導入されている。ただマッチングするだけでなく、人とツールで支援する。料金は月7万円から。投稿の対象とするブランドや商品数は無制限で、「Cast Me!」経由で投稿されたクリエイティブはすべて二次利用できるため、Webサイトへの転載や広告など幅広い用途で使用可能だ。

「Cast Me!」の概要
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小林 義法

LINEヤフーの「LINEオープンチャット」で地域活性化につながる新商品を開発、その取り組みとは?

10ヶ月 1 週間 ago

LINEヤフーが、専用のニックネームとアイコンを使い、気になる話題や関心ごとなど共通点がある人同士でトークするLINEのサービス「LINEオープンチャット」を使った新たな試みに取り組んでいる。芸人が「LINEオープンチャット」を使用、チャット参加者のアイデアから商品をプロデュースしたという。

芸人“もっち”さんが「LINEオープンチャット」を活用した取り組みを行っている
芸人“もっち”さんが「LINEオープンチャット」を活用した取り組みを行っている

「LINEオープンチャット」を使用したもっちさんの地域活性化事例

「奈良県住みます芸人」の“もっち”さんが「LINEオープンチャット」で開設したチャットの参加者から集まったアイデアから、奈良県の新しいお土産をプロデュースした。もっちさんがプロデュースしたお土産「もっちのうまっちぃオイル漬け」は1月30日に発売。「大和肉鶏ミンチ」など3種類を展開し、販売価格は税抜1000円~同1180円。

奈良商工会議所の協力を得て、もっちさんと商品企画・開発で連携した目利氣(メキキ)358のECサイト、道の駅「クロスウェイなかまち」(奈良市)で販売している。今後、販売先は拡大を予定するる。

1月30日から販売を順次始めている「もっちのうまっちぃオイル漬け」。奈良の和牛ブランド「大和牛」「大和肉鶏」を奈良漬と一緒に特製オイルに漬けている。「大和肉鶏ミンチ」など3種類を展開
1月30日から販売を順次始めている「もっちのうまっちぃオイル漬け」。奈良の和牛ブランド「大和牛」「大和肉鶏」を奈良漬と一緒に特製オイルに漬けている。

もっちさんは2023年8月、「LINEオープンチャット」を用いて「奈良グルメうまっちー情報誌」と題したオープンチャットを開設。そのなかにお土産作り専用のサブトークルーム「もっちの奈良のお土産作りプロジェクト」を2024年6月に作った。もっちさんは商品のジャンルやターゲット、味、形、パッケージデザインなどのアイデアを募集。参加者からのリアルな声を商品開発に生かしてきた。「もっちの奈良のお土産作りプロジェクト」には約190人が参加している(2025年1月24日時点)。

「LINEオープンチャット」を用いたトークルームでの、もっちさんの投稿の一部
「LINEオープンチャット」を用いたトークルームでの、もっちさんの投稿の一部

もっちさんはグルメ情報に関心の高い参加者のアイデアを商品開発に活用。LINEヤフーは、「LINEオープンチャット」運用におけるアドバイスや本企画の告知に協力した。

2024年9月には試食会を実施。2025年1月29日には大阪の吉本興業本館で「もっちの新しい奈良のお土産完成記者会見&試食会」を実施した。

商品発売に向けて1月29日に開催した「もっちの新しい奈良のお土産完成記者会見&試食会」
商品発売に向けて1月29日に開催した「もっちの新しい奈良のお土産完成記者会見&試食会」

今回の新たなお土産作りは、「奈良を代表する新たなお土産をオープンチャット参加者と一緒に作り、奈良のおいしいものをもっと知ってほしい!」というもっちさんの思いからスタートした。

「LINEオープンチャット」を通じた地域活性化をめざすLINEヤフーの取り組み

LINEヤフーは、「LINE」内の「LINEオープンチャット」において、オープンチャットを活用し地域活性化をめざす「#オプチャで話そ 地域とつながるプロジェクト」の一環として、「よしもと住みます芸人」と2023年8月に連携。奈良県を含む14の地域の公式オープンチャットを開設した。

今回の取り組みは「LINEオープンチャット」を活用した公式で初めての地域に根ざした商品作りで、LINEヤフーは「今後のモデルケースになると考えている」とコメントしている。

このモデルケースを通じて、地域に関わる人々とのコミュニケーション手段としてオープンチャットが定着し、お土産に限らず、さまざまな地域の観光資源の開発に応用されることを期待している。(LINEヤフー)

「LINEオープンチャット」は、2019年8月に「LINE」でリリースされたサービス。トークルームごとに専用のニックネームやアイコンで参加できるため、普段の「LINE」とは分けて使える。「LINE」のID交換は不要なため、どのトークルームに参加しているのかを他者には知られない。勉強、就活、雑談、恋愛相談など、さまざまなテーマのトークルームがある。

「よしもと住みます芸人」は、吉本興業が「地域密着型プロジェクト」として2011年から開始したプロジェクト。吉本興業に所属する芸人が、地域の旬な情報を発信し、地域活性化を手伝う。もっちさんは、このプロジェクトに参加している「よしもと住みます芸人」のなかの1人。奈良県の「住みます芸人」の1人として、さまざまなシーンで奈良県を盛り上げている。

松原 沙甫
確認済み
1 時間 11 分 ago
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