ネットショップ担当者フォーラム

経験者ゼロの“鳥オタク”が始めたテーマパーク発のネット通販。「掛川花鳥園」のECビジネス挑戦記

4 years 8ヶ月 ago
静岡県にある鳥と花のテーマパーク「掛川花鳥園」。ファンと飼育員の声を商品開発に生かし、ユニークなオリジナル商品を販売しています。スタッフのモチベーションアップにもつながっているECサイトの取り組みとは?

新型コロナウイルスの影響により、1か月以上の休園を余儀なくされた鳥と花のテーマパーク「掛川花鳥園」。園内販売の商品を通販で販売したことをきっかけに、ECサイトを本格的にスタートしました。商品開発にはファンだけでなく飼育員の「ほしい」という要望を積極的に取り入れ、ユニークなオリジナル商品を数多く取りそろえています。

ECサイトの運営や商品開発秘話を「掛川花鳥園」の北條龍哉氏(運営管理部課長・学芸員 バード統括兼広報担当)に聞きました。

鳥たちがすぐそこに! 子どももマニアも楽しめる鳥のテーマパーク

――「掛川花鳥園」について教えて下さい。

北條龍哉(以下、北條氏):「掛川花鳥園」は静岡県にある花と鳥の専門施設、テーマパークです。2020年9月で開園17周年を迎えました。

動物たちがいる施設内にお客さまが入る、という少し変わった展示形態をしています。一般的な動物園のように動物が檻の中にいるところもありますが、基本的には鳥たちが放し飼いになっているエリアに入っていただきます。また、バードショーなどのイベントや、鳥を腕に乗せる体験なども行っています。

――放し飼いという珍しい展示形態ですが、事故の危険性などはないのでしょうか?

北條氏:私たちの展示形態ですと、飼育員が鳥の世話をしているところにお客さまが入ってきますので、基本的には展示エリア内に飼育員がいる状態なんです。「鳥につつかれた」というケースがないとは言えないのですが、事故やトラブルを防ぐ・回避できるスタイルになっています。鳥の糞だけは避けられませんが(笑)。

17年間この形態で営業していると、お客さま達にも認知が広がり、むしろそれを織り込み済みで来園していただく方が大半を占めています。

――飼育員の方が気を配れる状態になっているんですね。

北條氏:そうですね。鳥の専門施設として営業しているので、トラブルに対する対応だけでなく、「この鳥はどういった鳥なの?」といった質問をお受けすることもあります。お客さまと会話するなかで、飼っている鳥の飼育相談を受けることもあり、飼育員とお客さまの距離が比較的近いのも特徴です。

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ 鳥と花のテーマパーク
「掛川花鳥園」で展示している鳥や花(画像は「掛川花鳥園」サイトからキャプチャ)

ファンの「応援したい気持ち」がEC開始を後押し

――ECサイトを開設したきっかけや経緯を教えて下さい。

北條氏:大きなきっかけは新型コロナウイルスだったのですが、コロナ禍以前から「園内売店の商品を通販で販売してほしい」という声があり、個別に対応をしていました。なので、大々的に通販はしていなかったんです。

緊急事態宣言で2020年4月中旬から5月末まで休園。鳥たちの世話があるので飼育員は出勤していたのですが、園内販売などは完全に閉めていました。休園から2週間ほど経ったとき、園内販売の担当者から「賞味期限が近づいてきて、営業再開時に販売できない商品が多くある」と相談を受けました。

賞味期限のある商品は最初、近隣の学童保育、市を通じた寄付を行っていたのですが、だんだん追いつかなくなってきて……。廃棄も返品もできず困っていたときに「通販で売ってみたらどうか」という案が出たのが始まりですね。

ゴールデンウィーク中にお菓子と園内販売で扱っていた小さなぬいぐるみなどをセットにした商品を300個くらい販売しました。お菓子2種類と小物を合わせて6~7点入ったセットで大体4000円~5000円くらいの商品です。有難いことに大きな反響をいただき、1日で完売しました。

すぐに完売した理由は、お客さまが「掛川花鳥園を応援したい」という気持ちを持って下さっていたことだと思います。当時、休園によって経営が厳しくなり、クラウドファンディングや寄付を募っている動物園が多数あり、SNSやニュースなどでも取り上げられていました。

そんななか、「掛川花鳥園」はそういった取り組みを行っていなかったので、「掛川花鳥園は大丈夫なのか?」という気持ちがお客さまの中にあったようで……。商品を販売すると知り、「寄付などの代わりに商品を買って応援しよう」と購入して下さったお客さまが多くいらっしゃいました

すぐ完売してしまったので、第2弾、第3弾と販売しました。販売数や販売スピードは少しずつ下がってきていましたが、今後いつまで休園が続くかわからない状況のなか、私たちが提供する商品を応援の気持ち込みでお客さまが購入して下さるのなら、正式に通販にチャレンジしようとなったんです。「なんとかして収入を得ないと厳しい」という経営面の課題もありました。

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ 北條龍哉氏
掛川花鳥園 運営管理部課長・学芸員 バード統括兼広報担当の北條 龍哉氏(画像提供:掛川花鳥園)

――公式にECサイトをスタートする前に通販があり、ステップアップする形で始めたんですね。

北條氏:通販なんて格好良いものではなかったですけどね(笑)。告知は公式サイトやYouTube、Facebookで行っただけで、注文の受付もメールかFAXのみ。梱包や発送作業もすべてマンパワーでこなしていました。非常に大変でしたね。

その経験もあり「きちんとしたシステムを使わないと駄目だ」となり、いろいろと調べてショッピングカートASPを導入しました。

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ
「掛川花鳥園」のECサイト(画像は「掛川花鳥園」公式オンラインショップからキャプチャ)

ECサイト運営はスタッフ全員が別の業務と兼任

――ECサイトの運営体制を教えて下さい。

北條氏:メインは4人です。私がWeb関係の作業や告知、広告などを行っています。園内販売の責任者がECサイトの責任者を兼任し、注文処理や梱包などをするスタッフが2人です。

――運営に携わっているスタッフの皆さんは、以前から「掛川花鳥園」で働いている方でしょうか?

北條氏:そうです。元々、私が飼育管理部門の統括と広報を兼任していまして。Facebookの管理などを行っていた流れで、一緒にECサイト運営を行うことになりました。販売の責任者は園内販売の経験がありますが、ほかの作業を行うスタッフは飲食部門のスタッフ。ECサイト運営の経験者が1人もいない状態でスタートしました

――慣れない作業で苦労したことも多いのではないでしょうか?

北條氏:どのような商品を販売したら良いか、商品展開はどうするかなどわからないことだらけでした。そのうち開き直って「とりあえず何でも良いから商品を出してみよう」となり、面白そうな商品をとにかく出し続けていたら数が増えて盛り上がってきた、という流れです。そのため、経営戦略や商品展開などを緻密に行ってきたわけではないんです。

“鳥オタク”のスタッフやファンの声を商品開発に生かす

――ECサイトで販売している商品はユニークなものが多いですが、どのような特徴がありますか?

北條氏鳥と花の専門施設なので、何らかの形で鳥と花が絡む商品にしています。 オリジナル商品が多いのは、「掛川花鳥園」で飼育している鳥の既製品がメーカーにほとんどないからからです。たとえばメジャーなペンギンやフクロウなどのぬいぐるみはメーカーが制作した既製品があるのですが、それ以外はほとんどない。

動物園系のぬいぐるみは動物園が主導となってメーカーに依頼して制作することが多いのですが、「掛川花鳥園」のような鳥専門だと、お客さまに人気がある鳥の商品はほとんどオリジナルで作らざるを得ない。そういった事情がありますね。

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ オリジナル商品 ぬいぐるみ
「掛川花鳥園」で人気の鳥ハシビロコウのぬいぐるみ(画像は「掛川花鳥園」公式オンラインショップからキャプチャ)

――取り扱っている商品はECサイトだけで販売しているのでしょうか?

北條氏:最近はEC限定の商品もありますが、基本的には園内販売でも取り扱っています。

アイディアを出しやすい環境が社員のモチベーションアップにつながる

――商品開発にファンや飼育員の声を取り入れていると聞いています。このような取り組みはいつから始めたのでしょうか?

北條氏:施策としてきっちり行っていたわけではなく、飼育員とお客さまとの距離が比較的近く、お客さまの意見を聞きやすい環境だったことが要因の1つとしてありますね。お客さまからの「こういう商品はないの?」という声に対して、「面白そうなので作りましょうか」「できあがったらぜひ買って下さいね」という会話をすることもありました。

公式サイトの問い合わせフォームやYouTubeのコメントに商品への要望が寄せられることもあります。そういったご意見を商品開発の参考にしています。

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ ファンの声から生まれた商品
ファンの声から生まれた「変わり種キーホルダー」(画像提供:掛川花鳥園)
掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ ファンの声から生まれた商品 キーホルダー
ECサイトで販売している「変わり種キーホルダー」(画像は「掛川花鳥園」公式オンラインショップからキャプチャ)
掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ ファンの声から生まれた商品 ぬいぐるみ
ファンの声から生まれた「ぐでシャコぬいぐるみ」(画像は「掛川花鳥園」公式オンラインショップからキャプチャ)

それから、「掛川花鳥園」の飼育員は私も含めてみんな鳥オタクなんですよ。そのため、日常生活で使う物を購入するときに、価格が同じで鳥のデザインがワンポイントでも入っている物とそうでない物なら、鳥のデザインを選びます。

自分たちがプライベートで使う物で「こういう商品があったら良いな」という意見や「こういう商品を作って欲しい」という要望から商品を作っていますね

商品のロット数や価格なども考慮しますが、商品のアイディアは自由に出し合っています。商品を作るときはオリジナルで制作することが多いこともあり、商品提案のハードルが比較的低いですね

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ 飼育員の声から生まれた商品 タオル
飼育員の声から生まれたオリジナルタオル。一番最初に飼育員が作った商品で、デザインも担当スタッフが書き起こしている(画像提供:掛川花鳥園)

――ファンだけでなく、多くの社員の皆さんの意見が取り入れられるのは珍しいですね。

北條氏:ECサイトだけで企業経営が成り立っているわけではありません。そのため、ECサイト一本で運営している企業と比べると、新しいことにチャレンジするハードル、もし上手くいかなくても次にその経験を生かすハードルが低いことが要因としてあります。

また、商品の最終承認を行う総務部長がいるのですが、その人が「赤字にならなければ良いよ。やってみて」と言ってくれる環境なんです。少し変わった商品や売れるか微妙なラインの商品を出しやすい環境ではありますね。

――開発担当の方は専任で行っているのでしょうか?

北條氏:全員飼育員と兼任で行っています。開発スタッフは「自由な発想でやってください」というスタンスです。

「掛川花鳥園」で飼育している鳥の要素が少しでも入っていれば、「掛川花鳥園の商品です」と販売できるので、固定商品というのがあまりないんです。

たとえばお菓子屋さんだったらお菓子関連、アパレルだったら衣料品や小物となってしまうと思うのですが、「掛川花鳥園」は商品の幅が広く取れて、制約が少ないんです。「出したい」と思って現実的に可能であれば色々な商品を出していますね。

――制約が少なくハードルが低いと、皆さんのモチベーションアップにもつながりそうですね。

北條氏開発スタッフのモチベーションはとても高いです。「あれもこれも」と夢ばかり膨らんで「どこに注文したら商品にできるの?」という内容も結構あります。アイディアはたくさんありますね。

――商品に対してファンや飼育員の方からどのような意見がありますか?

北條氏:飼育員からは「たくさん売れて良かった」という声が多いです。「次どうするか」と開発が楽しいサイクルに入っていますね。

お客さまの反応だと、常連のお客さまの中には購入した商品を身につけて来園して下さる方もいますね。そういうのを見れると励みになりますし、「こういう使い方があるんだな」と知る機会にもなります

EC利用者と来園者に傾向の違いあり

――ECサイト利用者の傾向はありますか?

北條氏:約9割が女性です。年齢層は20~50代くらいの方が多い。扱っている商品が可愛らしいデザインが多いので、女性が多いのかもしれません。

――「掛川花鳥園」の来園者と傾向に違いはありますか?

北條氏:若干違いますね。来園するお客さまだと男性4:女性6くらいでやや女性の方が多い傾向があります。

――コロナウイルスの影響で、来園客数にどのくらいの影響がありましたか?

北條氏:ひどかったですね。日によっては、その日の入園者数よりスタッフの方が多いこともありました。

常々痛感したのが、私たちのような観光業は、多くの人々が生きていくなかでの優先度が下がってしまうということ。こうした事態に備えて、いろいろな工夫を行っていく必要があると痛感しました

――ECサイト利用から来園につなげる施策は行っていますか?

北條氏:計画中です。たとえばECで購入した商品を来園時に入り口で提示したら特典やサービスを受けられるような内容を考えています。

SNSはメリットとリスクを検討して運用

――ECサイト運営において大変なことは何でしょうか?

北條氏:SNSはブログとYouTube、Facebookしか運用していないので、新商品を作っても告知手段が限られてしまう点はありますね。Instagramは2021年3月24日から開始したばかりです。

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ Instagram
「掛川花鳥園」のInstagram(@kakegawa_kachouen)(画像は「掛川花鳥園」Instagramからキャプチャ)

――SNSの投稿や運用はどなたが担当されているのでしょうか?

北條氏:動画の制作や編集は飼育員が分担して行っていますが、投稿はほぼ私が行っています。

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ YouTubeチャンネル
「掛川花鳥園」のYouTubeチャンネル(画像は「掛川花鳥園」YouTubeチャンネルからキャプチャ)

――この3つのSNSを選んだ理由は何でしょうか?

北條氏:「掛川花鳥園」が開園した17年ほど前というのは、ブログがそれなりの地位を得ていたこともあり、最初にスタートしました。

YouTubeはブログ内に動画を貼り付ける際、一度YouTubeにアップロードしていたので、そこから利用を開始しました。

Facebookは2009年から運用しています。当時、「SNSといえばFacebook」という状況だったため、ブログに代わる積極的な発信ツールとして活用していくことになりました。Twitterだと1回に発信できる情報が少なかったため、Facebookを選びました。現在Twitterを運用していないのは……人手の問題です(笑)。

スタッフの気さくさがファン作りに自然とつながる

――ブログでは読者の方とコメント欄でコミュニケーションを取っていましたが、ファン作りで意識していることはありますか?

北條氏:特別意識していることはありません。飼育員は名札を付けて作業をしているので、「あのブログ記事を書いた○○さんですよね」と園内で声をかけやすい環境はあると思います。私たちが考えている当たり前の接客やお客さまとのコミュニケーションが自然と反映した、という感じです。

飼育員がそばにいてお客さまが鳥を腕に乗せる体験を行っている際、状況が許す限り「こんな写真が撮りたい」というご要望に対して「では、このように鳥の位置を変えてみましょうか」などのやり取りを可能な範囲で行っています。そういった気さくさがお客さまに伝わっているのかもしれません

掛川花鳥園 自社EC ECサイト開設 掛川花鳥園公式通販サイトFBPショップ スタッフブログ
「掛川花鳥園」の飼育員が更新しているブログ(画像は「掛川花鳥園」サイトからキャプチャ)

――飼育員の皆さんがとてもサービス精神旺盛だな、と感じたのですが、そういった点は意識しているんでしょうか?

北條氏:「丁寧な接客をしましょう」ということは伝えていますが、どこまでやるかは飼育員に任せています。労働時間の兼ね合いもあり、やり過ぎは良くないとは伝えていますが。

ただ、お客さまから見たら「こんなにサービスしてくれた」ということは印象に残りやすいのだと思います。スタッフのファンになって下さる方もいるので。

――SNSへの投稿内容のテーマなどはありますか?

北條氏:特にありません。使ってはいけない表現や言葉、見た人が不快になるような内容ではないことに気を付けて「自由にやって下さい」と伝えています。「掛川花鳥園」のSNSは自由さが個性にもつながっていますので

写真に一言そえた内容を半年に1回投稿するようだと寂しいので、そういったことは避けるように伝えています。

――今後のECサイトの展望について教えて下さい。

北條氏:「掛川花鳥園」という施設ありきでECサイトを運営していますので、ECサイトは本業ではないことを前提に、来園して下さった方や来園できない方へのサポート、フォローをメインとした使い方になると思います。ECサイトを使った感想や商品へのご意見をいただけると、とても励みになります。

また、スタッフが楽しい、商品開発を通じてモチベーションアップにつながっているので、スタッフが大きな成果を生み出せる場としての在り方も良いと考えています

◇◇◇

北米では、小売(リテール)と娯楽(エンターテイメント)を合わせた「リテールテイメント」が進んでいます。日本ではユニクロが、売り場と公園が融合した新型店舗「UNIQLO PARK」を、ギャップジャパンが店内にカフェエリアを併設した店舗をオープンしています。

娯楽の1つである「動物園」+「EC」の取り組みは「リテールテイメント」の1つと言えます。「掛川花鳥園」の取り組みや社内外に与える効果は、「リテールテイメント」の参考になるのではないでしょうか。

藤田遥
藤田遥

「Shopify Plus」といえども万能じゃない。土屋鞄製造所がうまくいったのは「使いこなせた」から【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

4 years 8ヶ月 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2021年4月5日〜11日のニュース
ネッ担まとめ

「Shopify Plus」を使いこなすには社内調整も重要です。ECサイトはユーザーが使うものなので、事業者側の都合を盛り込んだだけでは上手くいきません。

大規模ECサイトの構築は社内調整が肝

土屋鞄製造所が成し得た【Shopify Plus】によるEC運営 事業を大きく前進させるために必要な視点|ECのミカタ
https://ecnomikata.com/original_news/29716/

まとめると、

  • 土屋鞄製造所が利用していたシステムはアップデートに膨大の工数や費用、サーバーの保守費用などに問題を抱えていた。そこでShopifyの最上位プラン「Shopify Plus」を導入。通常版のShopifyとの違いは接続できるAPIが多いこと、決済画面のカスタマイズ機能、追加料金なしで10ストアまで運営可能なことなど
  • とはいえ万能なシステムではないので、要件を盛り込むだけではなく、削らなければならない場面も多々ある。事業者サイドで考え決定するべきことは多い。要件を整理し、コントロールする体制が必要
  • Shopifyアプリはすぐに実装できて、失敗したと思ったらすぐ元に戻せるのがメリット。開発に時間がかからないのでどんどん次に進める

システムへの依頼でよくあるのが、「全部の機能の優先度が高いので、もれなく組み込んでください」というもの。それで思考停止してしまうと、ただ現場の担当者が満足するだけで、お客様もハッピーじゃないし、ECサイトとしても成長しません。
─フラクタ 代表取締役 河野貴伸氏

Shopifyなら大規模なECサイトもあっという間にできて、機能追加も簡単……というイメージがありますが、実際はそうではなく、事業者側が素早く動けるかどうかに依存するようです。社内の要望をベンダーに投げるのではなくちゃんと調整しておけば、ベンダー側もスムーズに動けますし、開発不要のアプリを使えるShopifyのメリットも活かせます。ECサイトは会社同士の総力戦になってきていますので、実店舗に対するネット店のような考え方では行き詰ることは目に見えています。

BASEは使い勝手を良くしてユーザーを増やす方針

BASE株主総会に行って継続投資に値するか?ショップ運営者目線で考えてみた。in2021 | ベランダゴーヤ研究所
https://make-from-scratch.com/base-kabunushisoukai-2021/

まとめると、

  • BASEで月間2万円しか売り上げがなくても上位1.1%に入れるので、売り上げが立っている店舗はかなり少数であることが推測できる
  • BASEは月商数千万~億単位のEC事業者よりも、中小企業・個人をエンパワーメントすることに重きをおいている。しかし、1店舗あたりの売り上げを増やすことよりも、さらに使いやすいプロダクトを開発することを優先している
  • 一度慣れてしまえば、他のシステムを検討するのは心理的に敷居が高いため、「お手軽にECするならBASEが一番」と認知してもらい、アカウントをどんどん開設してもらう戦略は理にかなっている。
日本国内の小規模店舗・個人事業者に加えて、企業希望者、副業希望者もターゲットユーザー
2020年12月期 第4四半期決算説明会資料より編集部でキャプチャ

お手軽にECサイトを始めることができるBASE。モールのように細かいルールもないですし、ASPのカートよりも使い方が簡単です。ECの世界に入るにはまずBASEというイメージを作っていくのは良いですよね。そのため売上が立っていない店があるのは仕方ないと思っていましたが、月商2万で上位1%に入ってしまうのは驚きです。今後も利用者を増やしていく方針のようなので、どこまで増えていくか注目しましょう。

売れない理由をデータから解決した事例

発売わずか3ヶ月で30万本の大ヒットを生んだsopoはデータから生まれたという話 | Chiba Hisayoshi | note
https://note.com/tivashsuper/n/nc0cc6c6f06bc

まとめると、

  • コンビニでコスメが売れないのは「欲しい物がない」というシンプルな理由だった。欲しい物がない→場として認知されない→売れない→売れない場だから商品が充実しない……という負のフィードバックに陥っていた
  • ファミマ限定のコスメブランド「söpö(ソポ)」は目元に絞って商品を企画。マスク生活でメイクアップ全体の需要が落ちる中、目元の商品の需要が落ちていなかったため
  • 化粧品のEC化率は非常に低く30%程度までいけば良いところ。全国に17,000店舗あるファミリーマートはオフライン接点として非常に魅力的

一瞬で理解させるという意味において統一されたコピーも重要です。「ひとくちだけ、試してみたい、色がある」はコピーライターの小藥元さんにご協力いただいてつくりました。おかしやちょっとした食べ物のイメージがあるコンビニという場所とsöpöのこだわりであるジャストサイズ、トレンドのかわいらしさを表現しています。

まさにデータから生まれて育っていったという事例です。「売れない理由は何か?」「売れる分野はどこか?」「売れる商品は何か?」「売るにはどうするのか?」などなど、マーケティングの書籍に書かれているようなことを確実に進めています。理屈だけではわかりづらいものも、こうして数字と事例があるととってもわかりやすいですね。

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お店やブランドをファンにアピールしやすくなりました。ECサイトとnoteをつなげましょう! | note公式
https://note.com/info/n/n0a63440d964e

Shopifyの購入ボタンの使い方 WordPressを使いながらShopifyの決済システムを使おう | Shopify
https://www.shopify.jp/blog/setup-buy-button

ECサイトにコンテンツではなくてコンテンツにEC。SEOをやっている人たちもECに入ってくるということ。

アダストリアのEC売上は23%増の538億円、EC化率は30.6%。自社EC売上の半数はスタッフのスタイリング投稿経由【2021年2月期】 | ネットショップ担当者フォーラム
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ショップスタッフによる「STAFF BOARD」経由の売上高は自社EC売上高の約半分。接客が重要なのはネットも同じ。

しまむらのEC売上高は約17億円。店舗受け取りが約9割のワケと今後の戦略 | ネットショップ担当者フォーラム
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低価格商品で店頭受け取りが送料無料となればこうなりますよね。

物流業界のDXに求められるのは「競争」と「協業」 TSUNAGUTEが見たコロナ禍の変化と実情を語る | ECzine
https://eczine.jp/article/detail/8984

デジタル化とデータ化でどこまで効率化できるかがポイント。

ネット通販好調で物流施設用地の地価上昇 こうした動きを背景に | ITmedia ビジネスオンライン
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2104/06/news058.html

上記に関連して。こうした背景があるとさらに効率化のニーズが高まりますね。

SEOは攻略するものではない。SEOの具体的なアイデアがあふれてくる3つの本質的思考 | 松尾茂起(ウェブライダー) | note
https://note.com/shigepiano/n/nd65571220b69

ユーザーは何かしらの解決策を求めているのがポイント。

2021年に更新される Google Merchant Center 商品データ仕様の変更点とそのポイント | SEM Insight
https://sem-insight.com/2021/04/08/849/

Google対応と考えるときついです。データを整備すると思えば投資になりますね。

今週の名言

急激に業績を伸ばそうとするから、目標を賞罰にすり替えて、達成できない個人を罰し、個人の責任を追及するようになるんです。でも、少しずつ成長していこうと思ったら、賞罰にする必要なんてないんです。
─サンコーインダストリー 代表取締役社長 奥山淑英氏

「会社の机で死にたい」90歳最高齢の総務部員が、毎日最後に退社する理由 採用でスペックを重視しない会社 | PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/44715

社員の成長にフォーカスしたら、賞罰ということは考えなくなりますよね。

森野 誠之
森野 誠之

ワークマン、バルクオム、TSI、モノタロウ登壇、ネッ担2021春 5/26(木)オンラインで開催

4 years 8ヶ月 ago
ネットショップ担当者フォーラム 2021 春  〜eコマース コミュニケーションDay〜

本イベントはオンラインLIVE配信での開催です

5月26日(水)、eコマースを運営するマネージャークラスの方、そのマネージャ右腕となる方を対象に、アフターコロナを考え、今後のさらなる流通業界の活性化に向けて成長していただく場として「ネットショップ担当者フォーラム 2021 春 eコマースコミュニケーションDay」をオンラインLIVE配信で開催いたします。

なお、本イベントのご聴講資格はEC事業者限定(eコマースサイトをお持ちの方限定)とさせていただきます。

お申し込みの
参加対象者の方への特典

『ネットショップ担当者フォーラム年間特集号 2021年版』をプレゼント

本イベントにお申し込み頂いた参加対象者の方に、PDF資料をプレゼントします!
※PDFは会期後にお渡しします。

充実の主催者セッション
SA-1 オープニング基調講演
「ワークマンプラス」に学ぶ4000億円市場を切り拓く市場創造とニーズ喚起のマーケティング
講師
  • 株式会社ワークマン
  • 常務取締役
  • 土屋 哲雄
SB-1 オープニング基調講演
メンズスキンケア国内EC市場No.1のバルクオム。ロイヤルカスタマーの継続利用を促し、解約を防ぐ「CRM施策」を徹底解説
講師
  • 株式会社バルクオム
  • Domestic SBU
  • Division Director
  • 高橋 文人
SA-4 ゼネラルセッション
Coming Soon
SB-4 ゼネラルセッション
Coming Soon
講師
  • 株式会社TSI
  • デジタルビジネスDiv デジタルマーケティング
  • 越智 将平
S-8 クロージング基調講演
小売視点で読み解く「モノタロウ」のデータドリブン経営の本質と考え方
〜「モノタロウ」&オムニコンサルタント逸見氏と考える小売視点によるデータ活用〜
講師
  • 株式会社MonotaRO
  • データマーケティング部門
  • 米島 和広
講師
  • 株式会社CaTラボ
  • 代表 オムニチャネルコンサルタント
  • 逸見 光次郎

これまで毎年4月にEC事業者のコミュニケーションの場、学びの場として開催してきた本イベントですが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を受け、今回はリアル講演をオンラインLIVE配信に切り替えお届けします。

なお、本イベントのご聴講資格はEC事業者限定(eコマースサイトをお持ちの方限定)とさせていただきます。

開催概要

イベント名
ネットショップ担当者フォーラム 2021 春
〜eコマース コミュニケーションDay〜
日時
2021年5月26日(水)10:30-17:55
参加費
無料(事前登録制)
※セッション登録をされなかった協賛企業からも個別にご連絡を差し上げる場合がございます。ご了承下さい。
配信方法
Zoom
主催
株式会社インプレス ネットショップ担当者フォーラム
参加対象
eコマースサイトを運営されている方に限定させていただきます。
申込時にECサイトのURLをご記入いただく必要がございます。
ハッシュタグ #nettan​
URL このページ
https://netshop.impress.co.jp/event/202105tokyo
お問い合わせ
株式会社インプレス イベント事務局
受付時間 10:00〜18:00(土・日・祝日を除く)

タイムテーブル※講師・講演内容は予告無く変更される場合があります。予めご了承ください。

10:3011:20
SA-1 オープニング基調講演
「ワークマンプラス」に学ぶ4000億円市場を切り拓く市場創造とニーズ喚起のマーケティング
土屋 哲雄
講師
  • 株式会社ワークマン
  • 常務取締役
  • 土屋 哲雄
セッション概要

ワークマンが新たに始めた新業態店舗「ワークマンプラス」。普及価格×機能性市場のアスレジャー市場は、4,000億の空白市場と言われる。その空白市場を切り開いたワークマン。市場を創造しながら、どのように顕在顧客のニーズを顕在化していったのか。新たな市場へ参入した理由や商機、それを踏まえた商品開発、アンバサダーマーケティング、SNS、販売促進(SNS、口コミ拡散など)といった「ワークマンプラス」快進撃のマーケティング、戦略について、土屋哲雄専務の著書『ワークマン式「しない経営」―― 4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』(ダイヤモンド社)をベースに解説する。

プロフィール

東大経済学部卒業後、三井物産株式会社入社。
海外留学、三井物産デジタル社長、経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、
上海広電三井物貿有限公司総経理。三井情報株式会社取締役執行役員。
株式会社ワークマン常務取締役経営企画・IT・ロジ担当(現任)。
個人向け作業服市場で「完勝」したので、次は低価格アウトドア市場に参入し25%のシェアをめざす

内容レベル

大規模店舗向け・中規模向け・小規模店舗向け

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SB-1 オープニング基調講演
メンズスキンケア国内EC市場No.1のバルクオム。ロイヤルカスタマーの継続利用を促し、解約を防ぐ「CRM施策」を徹底解説
高橋 文人
講師
  • 株式会社バルクオム
  • Domestic SBU
  • Division Director
  • 高橋 文人
セッション概要

2020年のメンズスキンケアに関する市場調査において、3部門で1位を獲得したバルクオム(※)。2020年の年間売上は前年比約150%増と、堅調に推移しています。売上増を支えるのが、ロイヤルカスタマーの存在。バルクオムでは顧客の継続利用を促すため、あらゆるCRM施策を展開しています。当講演では、「LTV向上」「CS対応」と大きく2つの要素から成り立つバルクオムのCRM施策や、9つのセグメントから見えてきたロイヤルユーザー像、解約の低減を実現した事例などを解説します。

(※)「TPCマーケティングリサーチ株式会社」が調査した『2020年メンズスキンケアに関する市場調査』。スキンケアアイテム通販チャネル(全価格帯)をはじめブランド全体通販チャネル(3,000円未満)・ヘアケアアイテム通販チャネル(3,000円未満)の3部門で1位を獲得​

プロフィール

新卒で美容家電メーカーへ入社。ECモールの立ち上げやWebマーケティング全般の業務に従事。
2017年8月にバルクオム参画。Webマーケティングの責任者・韓国事業の責任者を経て、2020年より現職、
国内事業を統括。D2Cからマスブランドへの転換期におけるオフラインの販路拡大に向けたマーケティング戦略を牽引。

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11:3512:15
A-2 講演
EC企業のデジタル化はどう実現する? 「データ+人材+システム」で導くデジタル最適化のポイント
森 英一
講師
  • 株式会社ecbeing
  • 企画制作統括部
  • 統括部長
  • 森 英一
セッション概要

デジタル化の推進であがる「人材がいない」「適任者がいない」という課題。企業のデジタルシフトは、システムを導入しただけでは実現できません。そのシステムに通じた「データの活用」「人材(運用)」などが必要となります。ecbeingの得意領域である「ECビジネス」を軸に、企業のデジタルシフトを「データ活用」「人材」「システム」というアプローチで実現した事例を説明。「適任者がいない」状態でも運用しやすいシステム、活用法、運用面などについて、ツールの紹介を踏まえて解説していきます。

プロフィール

2011年株式会社ecbeingに入社。Webディレクター・プロデューサーとして200を超えるサイトの新規・リニューアル構築提案を手がける。また提案型のサイト運用業務を通じて、商材に応じた顧客とのコミュニケーション改善を行い、現在ではWebコンサルティング業務に注力している。

内容レベル

大規模店舗向け ・ 中規模向け

参加対象者

企業DX化を積極的に検討・情報収集をされている企業役員、又はDX化を推進する部門担当者およびシステム担当者。

受講するメリット

Web最適化・企業のDX推進に関する企業の具体的事例が聞けます。

こんなニーズや悩みにこたえられる内容です

企業のDX化推進のためにシステム導入を開始しているが、導入費や更新にたびたびコストがかかる。DX化推進のために導入したシステムを理解し、既存システムと合わせて運営、活用をしてくれる人材が少ない。

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B-2 講演
東急ハンズでのAIチャットボット活用事例
二上 浩一
講師
  • 株式会社ユーザーローカル
  • チャットボットチーム カスタマーサクセス
  • リーダー
  • 二上 浩一
城野 佐和子
講師
  • 株式会社東急ハンズ
  • デジタル戦略部 企画戦略グループ
  • 城野 佐和子
セッション概要

​自社ECサイトの売上が伸びている担当者様であれば「問い合わせの増加」に苦しめられているのではないでしょうか、さらに「サイトを強化するためコンテンツを充実させることによってサイトが見にくくなっているのでは?」などというUI/UX面でも課題を抱えているかもしれません。それらを解決するのがAIチャットボットです。本講演では東急ハンズでのAIチャットボットの活用事例から、導入時のポイントや成果を出すコツをご紹介します。

プロフィール

株式会社ユーザーローカル 二上 浩一 氏
新卒で株式会社ユーザーローカルに入社。マーケティングツール事業の法人営業を経てチャットボット事業の立ち上げに参加。現在は同事業カスタマーサクセスチームのリーダーとしてチャットボットを通じて顧客のDX推進を支援している。

内容レベル

大規模店舗向け ・ 中規模向け ・ 小規模店舗向け ・ モール店舗向け

参加対象者

通販事業のご担当者、カスタマーサポートのご担当者様、デジタルマーケティングのご担当者様、管理部門のご担当者様など。

受講するメリット

チャットボットを利用して実際に成果が出ている最新事例を元に、チャットボットで期待できる成果、成果を出すためのポイントなどをご紹介いたします。

こんなニーズや悩みにこたえられる内容です

以下のようなお悩みにお答えします。

  • ・コールセンターへの問い合わせを削減したい
  • ・顧客を待たせることなく疑問を解決してもらいたい
  • ・Webサイトのユーザビリティを向上したい
  • ・顧客の声をダイレクトに把握してサービス改善したい
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12:3013:10
A-3 講演
アプリで実現するDXを導く5Tips
〜アンダーアーマー、ダルトンに学ぶ〜
島袋 孝一
講師
  • 株式会社ヤプリ
  • マーケティングスペシャリスト
  • 統括部長
  • 島袋 孝一
和田 理美
講師
  • 株式会社ヤプリ
  • マーケティング本部 PR&オフラインマーケティング部
  • 和田 理美
セッション概要

コロナ禍においてDXへの注目度が加速度的に増している中、多くの企業が手法を模索しながらDX推進に取り組んでいます。一方で、数多ある施策から「自社に適した手法・打ち手」の選定に悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。本セッションでは、企業・ブランドと顧客との関係構築に特化した「DX実現手段としてのスマートフォンアプリ活用」について、最新事例の紹介やDX推進するための5Tipsをお話いたします。

プロフィール

株式会社ヤプリ 島袋 孝一 氏
2004年パルコ入社。店舗リーシング・販促宣伝、経営企画室を経て、2013年よりデジタルマーケティングに従事。2016年キリン入社。グループ横断のデジタルマーケティング部にて、LINE公式アカウント、SNS運営に従事。2019年ヤプリにマーケティングスペシャリストとして参画。企業のオムニチャネル ・OMO支援を行う。
コロナ禍では、自社マーケティングのDXシフトを先導。数々のオンラインセミナーを企画・運営。予定調和に終わらないモデレートは、「ウェビナーの魔術師」とも形容される。日経COMEMO KOL、LinkedIn公式クリエイター。

株式会社ヤプリ 和田 理美 氏
大学卒業後、電子部品メーカー2社にて既存営業を経験。2016年に創業期のヤプリへ5人目のセールス担当として参画。SHIBUYA109エンタテイメント、プロントコーポレーション、青山学院大学など、業種・業界を問わない50社以上の公式アプリ立ち上げに従事。拡大するセールス組織で、セールスリーダーを経て、累計100以上の公式アプリ立ち上げに携わる。
2019年10月より、オフラインマーケティングに所属。

内容レベル

大規模店舗向け ・ 中規模向け ・ 小規模店舗向け

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B-3 講演
Coming Soon
講師
  • アドビ株式会社
13:2514:10
SA-4 ゼネラルセッション
Coming Soon
SB-4 ゼネラルセッション
Coming Soon
越智 将平
講師
  • 株式会社TSI
  • デジタルビジネスDiv デジタルマーケティング
  • 部長
  • 越智 将平
14:2515:05
A-5 講演
Coming Soon
井野川 拓也
講師
  • アマゾンジャパン合同会社
  • Amazon Pay事業本部
  • 本部長
  • 井野川 拓也
プロフィール

2010年1月より2015年10月までアマゾンジャパン セラーサービス事業本部 事業開発部 部長として、セラービジネスの事業企画、マーケティング、出品事業者向けの広告事業、事業者向けのID決済ビジネス、などを担当。 2015年11月よりAmazon Pay事業の日本に於ける責任者となり、現在に至る。

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B-5 講演
Fastlyで実現!もっと高速に、もっと安全に、もっとパーソナライズされたショッピング体験
松田 未央
講師
  • Fastly
  • シニアセールスエグゼクティブ
  • 松田 未央
加藤 晋平
講師
  • インフラレッド合同会社
  • 代表
  • 加藤 晋平
セッション概要

速くて柔軟、安全安心なECサイトは時代の要求です!「表示が遅い」「すぐに落ちる」という課題や、「複数サービスを1ドメインで提供したい」「開発コストを掛けずにお客様条件で表示を変えたい」といった柔軟な運用、そして「個人情報の流出対応」などセキュリティ面も含めた要求全てを”既存のECサイト”で同時に実現する全く新しいサービスFastlyを、実例や導入の勘所を織り交ぜてご紹介いたします。

プロフィール

Fastly 松田 未央 氏
Fastly エッジクラウドプラットフォームを語ることが好きで、テクニカル&ビジネスの両側面から話せる営業担当。Compute@Edge のようなサーバレスアーキテクチャをいじり始めると時間を忘れて没頭してしまう。趣味の釣りは、仕事のストレスを海にパージするための大切なイベント。

インフラレッド合同会社 加藤 晋平 氏
10年以上に渡ってECテクノロジー分野で活動のエンジニア。国内外のEC構築プラットフォームに精通し常に最高の体験を実現する為に試行錯誤。最近はエッジコンピューティングのEC分野への適用を研究中。毎週末自転車、バイク、トレイルラン、ボートと2次元移動系をなにかやってます。

内容レベル

大規模店舗向け ・ 中規模向け ・ 小規模店舗向け

自社でECサイトを運用されている、または委託して運用されているマーケティング、企画担当者が日頃感じているシステムへの課題を整理し、その解決策をご提案します

参加対象者

B2B、B2C、物販、サービスを問わず自社でECサイトを運営している会社様

受講するメリット

受講いただいた方の中から先着5社に既存ECサイトの速度判定を含めたコンサルティングを提供。現状の課題を把握し、解決策をご提案します。

こんなニーズや悩みにこたえられる内容です

エンドユーザーのオンラインショッピング体験、ECシステムの柔軟性と俊敏性、SEO、越境EC分野で課題を抱えている方に特にお勧めいたします。

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15:2016:00
A-6 講演
グローバルECサイトコスト削減の裏技とは?
〜海外売上比率を向上させたお客様事例もご紹介〜
秦 藍子
講師
  • Wovn Technologies株式会社
  • Marketing Department
  • 秦 藍子
セッション概要

グローバルECサイトは多言語化、決済、配送など色々とコストがかかりそうだから、今はまだいいと思っていませんか?
それは世界の97%の市場を捨てているかもしれません。
実はテクノロジーを活用すればグローバルECサイトを思っているよりも簡単に始めることができます。
本セミナーでは、従来のグローバルECサイト立ち上げとテクノロジーを使った場合のグローバルECサイト立ち上げを分かりやすく比較していきたいと思います。また現在グローバルECサイトを運用中の方にとってもよりコストメリットや運用を楽にできるような情報をご紹介できればと思っております。

プロフィール

銀行に新卒入社し、ベンチャー企業から大手民間企業まで様々な業界への融資業務に従事。2020年、Wovn Technologiesに入社。マーケティング活動を中心として、イベント企画や運営などを行う。「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」というミッションのもと日々奮闘中。

内容レベル

大規模店舗向け ・ 中規模向け ・ 小規模店舗向け

参加対象者

国内外問わずECサイトで売上を伸ばしたい方
在留外国人対応、海外展開、インバウンド対応などの外国人戦略を検討・推進している方

受講するメリット

グローバルECサイト立ち上げる上で具体的にどんな課題がでてくるかを理解できます。
ECサイトの運用を楽に、コスト削減を実現した事例を知ることができます。

こんなニーズや悩みにこたえられる内容です

ECサイトの多言語化は大変そうでなかなか始められない。
ECサイトの多言語化はしているものの、運用に苦労している。

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B-6 講演
EC需要拡大の今こそ『サイト内検索』にテコ入れ!
CVR400%アップの事例で学ぶ、今すべきECサイトのAI活用
〜0件ヒット対策から、未来の検索技術まで〜
北岡 恵子
講師
  • NTTレゾナント株式会社
  • スマートナビゲーション事業部 サービステクノロジー部門
  • シニアコンサルタント
  • 北岡 恵子
セッション概要

コロナ禍の影響もあり、近年EC需要は急速な拡大を続けています。来訪者が増える分売上がアップするのは自然なことですが、コンバージョン率やリピーター率はどのように変化をしているでしょうか。何の施策もないままにユーザーを増やすだけでは、穴の開いたバケツに水を入れ続けるようなものです。本セミナーでは「来訪した後何をすべきか」をAI活用の観点からお話をさせていただきます。

プロフィール

外資系コンサルテイング会社を経て、2007年 NTTレゾナント株式会社に入社。「goo」サービスのプロデューサーを務め、のちにBtoB向けアプリ開発者支援サービス「Remote TestKit」の国内外マーケティングを担当。現在はEC向におけるAI活用支援や、サイト内検索「goo Search Solution」の導入支援をしている。

内容レベル

大規模店舗向け ・ 中規模向け ・ 小規模店舗向け

参加対象者

自社ECサイトをお持ちの方

受講するメリット
  • ・ECサイトにおけるAIを活用すべき分野が理解できる
  • ・サイト内検索の重要性が解る
こんなニーズや悩みにこたえられる内容です
  • ・AIを活用し、よりCVR、売上をアップしたい事業者様
  • ・人的リソースが不足し、施策が十分に行えていない事業者様
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16:1516:55
A-7 講演
Coming Soon
井上 純
講師
  • 株式会社visumo
  • 取締役
  • 井上 純
プロフィール

2012年にWebインテグレーション会社からecbeing社に入社。アパレル・雑貨系商材を中心としたブランドのECサイト構築および運用支援のコンサル営業に従事し、50サイトを超えるプロジェクトに参画。2017年より新設した次世代マーケティング推進室に異動し特定企業のデジタル活用支援をしながら、ビジュアルマーケティングプラットフォーム“visumo”の事業責任者および東南アジアでの販売を中心としたグローバル推進を担当。2019年4月1日に株式会社visumo設立と共に取締役に就任。サービス導入が300社を超え、国内における次世代のビジュアルマーケティングを推進すべく活動中。

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B-7 講演
ポストコロナで多様化する顧客ニーズを満足する秘訣
國村 太亮
講師
  • 株式会社セールスフォース・ドットコム
  • Commerce Cloud プリンシパル・ビジネスコンサルタント
  • 國村 太亮
セッション概要

コロナ禍により顧客行動は大きく様変わりし、デジタルの顧客接点の重要性は増すばかりです。世界No.1のCRMを提供するセールスフォースによって実現できる「顧客中心」のEコマースとは。全世界でのべ10億人を超える消費者の調査を通して見出したインサイトをもとに、カスタマージャーニーを通して顧客満足度を高める秘訣について、事例を交えてお話しします。

プロフィール

新卒でHBC北海道放送へ入社。その後、マギル大学へ留学し同大学MBAを取得。帰国後、フィリップスエレクトロニクス自動車電球(現ルミレッズオートモーティブ)の市販部門カントリーマネージャーへ。自社ECサイト構築・運営に携わる。以降、アマゾン、アシックス等でEC事業に従事し現在に至る。

内容レベル

大規模店舗向け

参加対象者

自社ECサイト運営の責任者

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17:1017:55
S-8 講演
小売視点で読み解く「モノタロウ」のデータドリブン経営の本質と考え方
〜「モノタロウ」&オムニコンサルタント逸見氏と考える小売視点によるデータ活用〜
米島 和広
講師
  • 株式会社MonotaRO
  • データマーケティング部門
  • 米島 和広
逸見 光次郎
講師
  • 株式会社CaTラボ
  • 代表 オムニチャネルコンサルタント
  • 逸見 光次郎
セッション概要

1800万の超品ぞろえと探しやすいUXで右肩上がりの「モノタロウ」の基礎となっているデータドリブン経営。小売りやEC企業はどのようにデータ活用と向き合えばいいのか? 本セッションでは、「モノタロウ」のデータマーケティング部門 集客・WEB改善グループ所属の米島和広氏、食品やDIY関連のECビジネスなどにも関わるオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏が、さまざまな事例を交えて小売視点でデータドリブン経営の本質と考え方についてディスカッションします。「経験と勘ではなくデータを活用した経営、ECサイト運営をどうすれば実現できるのか?」。それを実現するためのヒントをお伝えします。

プロフィール

株式会社MonotaRO 米島 和広 氏
2012年にWebインテグレーション会社からecbeing社に入社。アパレル・雑貨系商材を中心としたブランドのECサイト構築および運用支援のコンサル営業に従事し、50サイトを超えるプロジェクトに参画。2017年より新設した次世代マーケティング推進室に異動し特定企業のデジタル活用支援をしながら、ビジュアルマーケティングプラットフォーム“visumo”の事業責任者および東南アジアでの販売を中心としたグローバル推進を担当。2019年4月1日に株式会社visumo設立と共に取締役に就任。サービス導入が300社を超え、国内における次世代のビジュアルマーケティングを推進すべく活動中。

株式会社CaTラボ 逸見 光次郎 氏
学習院大文学部史学科卒。
三省堂書店本支店勤務、イー・ショッピング・ブックス(現:セブンネットショッピング)立ち上げ、アマゾンジャパンブックスMD、イオンネットスーパー立ち上げとデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ執行役員EC事業部長のち経営企画オムニチャネル(人間力EC)推進担当を経て独立。現在は株式会社CaTラボ代表オムニチャネルコンサルタント。プリズマティクス社アドバイザー、GMOメイクショップオムニチャネルスーパーバイザー、流通問題研究協会 特別研究員、日本オムニチャネル協会 理事、デジタルシフトウェーブ スペシャリストパートナー、EVOCデータマーケティング取締役、ピアリビング取締役 兼務

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ゴールドスポンサー
  • アドビ株式会社
  • アマゾンジャパン合同会社
  • 株式会社ecbeing
  • Wovn Technologies株式会社
  • 株式会社セールスフォース・ドットコム
  • 株式会社visumo
  • Fastly株式会社
  • 株式会社ヤプリ
  • 株式会社ユーザーローカル
シルバースポンサー
  • エヌ・ティ・ティレゾナント株式会社
高嶋 巌

全国ネットショップグランプリのグランプリはヤッホーブルーイングの「よなよなの里」

4 years 8ヶ月 ago

一般社団法人イーコマース事業協会が4月10日に行った「第13回 全国ネットショップグランプリ」の表彰式で、ヤッホーブルーイングが運営するクラフトビールのECサイト「よなよなの里」がグランプリを受賞した。

審査員からは「躍動感とエンターテイメント性が非常に高い」「『ブランディング』と『マーケティング』が共存する最強のサイト」などと高い評価の声があがった。

「全国ネットショップグランプリ」は100社以上のECサイトがノミネート。イーコマース事業協会会員による投票、専門家・学識経験者・有識者を交えた審査委員会にて審査し、表彰店舗を決めた。審査対象はスマートフォンサイト、PCサイト。

「アイデアのユニークさ、目新しさ」「一般の顧客ユーザー(利用者)への情報提供の適切さ」「各デバイスでのデザイン性の高さ・操作性、動作確認」が審査基準となっている。

グランプリを含めたアワード受賞店舗は次の通り。

グランプリ

会社名:株式会社ヤッホーブルーイング
ショップ名:よなよなの里

ヤッホーブルーイング ショップ名:よなよなの里
グランプリを受賞した「よなよなの里」

準グランプリ

会社名:有限会社フレックス
ショップ名:パジャマ屋IZUMM

有限会社フレックス ショップ名:パジャマ屋IZUMM
準グランプリの「パジャマ屋IZUMM」

会社名:株式会社クロシェ
ショップ名:クロシェオンラインショップ

株式会社クロシェ ショップ名:クロシェオンラインショップ
準グランプリの「クロシェオンラインショップ」

特別賞

日本ネット経済新聞賞

会社名:株式会社早和果樹園
ショップ名:紀州有田みかんの早和果樹園

株式会社早和果樹園 ショップ名:紀州有田みかんの早和果樹園
日本ネット経済新聞賞の「紀州有田みかんの早和果樹園」

ネットショップ担当者フォーラム賞

会社名:株式会社小島屋
ショップ名:小島屋

株式会社小島屋 ショップ名:小島屋
ネットショップ担当者フォーラム賞の「小島屋」

 

瀧川 正実
瀧川 正実

新たな越境ECプラットフォームになる?JTBが始める「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」事業とは

4 years 8ヶ月 ago

JTBは仮想空間上のバーチャルな日本を通じて交流や物販販売などを行える「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」事業を、クラウドサービスのFIXER、アジア向けの日本紹介サイト「Fun! Japan」を運営するFun Japan Communicationsとスタートした。

「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」事業は、仮想空間上にバーチャルな日本を構築。進化し続ける街や施設に世界中の人々が集い、観光やショッピング、さまざまなコンテンツを楽しみながら交流を深めることができるようにするプラットフォーム事業。国内外の消費者・自治体・事業者が参加できる。

JTBとFIXER、Fun Japan Communicationsが手がける事業「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」
「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」事業のイメージ

FIXERが保有するクラウド基盤上に、「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」を3社協働で構築。まずは、バーチャル空間内でユーザーが自分の分身であるアバターを操作しながらユーザー同士でコミュニケーションを行える機能、日本各地の歴史や文化を深く知りリアルに近い体験ができる機能を拡充する。

次に、海外・国内のユーザーに対して、日本の自治体や事業者が日本各地の特産品や体験コンテンツを提供、日本の技術やサービスを発信する場として活用できるように機能・サービスを拡張する。

JTBとFIXER、Fun Japan Communicationsが手がける事業「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」
「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」で展開予定の機能など

将来的には空間内での交流・商流などを通じて、将来的には訪日やリアルでの商品購入といった相乗効果を期待する。

すでに東京の丸の内エリアや北海道エリアなどのバーチャル空間を構築している。4月末から段階的にユーザー登録を開始し、エリアや機能の拡張を週単位で図っていく予定だ。

なお、2030年にはバーチャル交流人口の規模は政府目標である訪日外国人旅行者数6000万人を上回ると想定。「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」で2024年までに1000万人のアクティブな交流人口の創出を目標としている。

「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」のイメージ動画
瀧川 正実
瀧川 正実

顧客の個人情報はどう扱うべき? DX時代にプライバシーやデータコンプライアンスへの理解が深まらない企業が直面する2つの課題 | 電通デジタル 特選コラム

4 years 8ヶ月 ago
DX時代に企業が直面する「個人情報の取り扱い」という課題について、弁護士の田中氏、トレジャーデータの山森氏、電通デジタルの今井氏が語ります。(前編)
企業がDX時代に直面する「個人情報の取り扱い」、課題とヒント(前編)

「個人情報」の取り扱いが、改めて注目されています。顧客接点のデジタル化が進み、個人情報をさまざまなタッチポイントで取得できるようになったためです。

今や、GDPR(※1)やCCPA(※2)など、世界的に個人情報保護規則の潮流が強まっています。日本でも個人情報保護法の改正(※3)があり、「顧客の個人情報をどう扱うか」について、企業のさまざまな部門が課題を抱えています。

本記事では、DX推進の上で必須である個人情報の取り扱いと、それに関連したプロジェクトを進める上での難しさ、そして解決の糸口を、実際にクライアントの課題に相対する3人の鼎談としてお送りします。

法務的な観点から弁護士の田中浩之氏、顧客データ基盤を提供するトレジャーデータの山森康平氏、そしてデジタルマーケティング全般のソリューションを提供する電通デジタルの今井紫氏です。

※1 GDPR:General Data Protection Regulation。一般データ保護規則。2018年に施行。EEA(欧州経済領域)で統一された、厳格な個人情報保護に関する規則。
※2 CCPA:California Consumer Privacy Act。カリフォルニア州消費者プライバシー法。2020年に施行。カリフォルニア州の住民の個人情報を取扱う事業者に適用される。全米初の包括的な個人情報に関する州法。
※3 改正個人情報保護法:2020年、日本で改正個人情報保護法が成立・公布され、2年以内に施行されることになった。一部のクッキーの利用が規制されるなど、規制が強化・追加されている。

課題1:部門間の「個人情報に対する意識の違い」から意思決定が遅くなる

今井この鼎談では、それぞれのクライアントから日々寄せられる個人情報関連の質問や課題を共有し、解決のヒントを導き出せればと思います。

電通および電通デジタルの場合、デジタルマーケティングを端緒とし、企業のさまざまな部署、部門を横断して個人情報に関してのお悩みを伺いつつ、戦略立案から戦術レベルまでをカバーしています。最近では特に、個人情報周りでの関係者間の調整に難しさを感じます。

山森私たちが提供する「Treasure Data CDP(※4)」は、顧客情報を含めたあらゆるデータをマネジメントできるデータ基盤ですので、「個人情報の取り扱い」はまさに最重要項目と考えています。その前提で最近感じるのは、クライアントがCDPのようなデータ活用サービスを検討・導入するのに、どうしても時間がかかりがちだという課題です。

※4 CDP:Customer Data Platform。企業が持つ顧客データを統合管理し、DXの基盤となる。「Treasure Data CDP」についてはトレジャーデータのサイトを参照。

今井「Treasure Data CDP」自体はクラウドのサービスですから、オンプレミス(自社設備と自社システム)でデータ基盤を構築するのに比べれば、導入に際しての工数は圧倒的に少ないはずですよね。どこに時間がかかるのでしょうか?

山森個人情報に関与する部署・部門が複数にまたがっているため、まず導入の意思決定プロセスに非常に時間がかかるのです。

今井なるほど、そこは電通デジタルも同様の課題を感じています。以前は企業1社の中で調整ができていたのが、近年はグループ企業間や、販社を含めた広い企業体も包括する全体で、データの共有やプライバシーポリシーの統一をしたいという要望もいただくようになりました。そうしたケースでは、実際に顧客データを保有している現場と本社の間に、意識の乖離や物理的な距離があって、調整が難しい

また、デジタルマーケティングの担当者は法務の専門家ではないので、プライバシーの重要性を理解していただくまでに数か月かかってしまうこともあります。

山森日本でも個人情報保護法の改正がありましたし、グループがグローバルに展開している場合は、さらに各国のプライバシー関連の法制度や判例なども把握しないといけませんよね。

さて、田中先生は個人情報と知的財産、そしてITの分野に精通しておられ、国内、海外のデータ保護法案件を手がけておられます。私や今井さんもよく相談させていただいていますが、法律家として、企業の部門間調整などについてどうお感じですか?

田中私は弁護士として、企業の法務部門担当者との接点が多いのですが、法務とそれ以外の部門の温度差はよく感じます。現場と経営層、法務、そしてグローバルといった多岐に渡る部門の調整は非常に難しく、プロジェクトマネジメントに時間がかかるのもよく分かります。

一方で、経営層の意思で進めようとしている企業はスピード感がありますね。データ活用とプライバシー保護の重要性をメンバーが理解しているプロジェクトは、どんなビジネスであれ、決断が速い印象です。

今井同感です。プライバシー関連が絡むプロジェクトは、マーケティングの現場からスタートするというよりも、最初に法務部門やコンプライアンス、そして経営陣といった関係各所が重要性を共有することで、初めてスタートラインに立つように思います。

課題2:プライバシーを専門にする人材の不足

山森今、クライアントとお話すると、個人情報やプライバシーの取り扱いに対して不安に思われている方が増えていますね。巨額の制裁金を課すGDPRの執行事例が実際に増えている影響が大きいと思います。そこで改めて社内の運用を見直したときに、改正個人情報保護法に沿って考え直さなければならない点が多数あった、ということもあるでしょう。

今井ただ、とにかくプライバシー関連は動きが非常に激しく、一企業の担当者がグローバルにおける法規制をリアルタイムで把握していくのは、現実的には難しいです。GDPRでも「明文を現実に落とし込むことが、システム上できない」という状況が各企業にあり、「法の解釈」が一層重要になってきています。法律と実務について、田中先生はどうお考えですか?

田中こればかりは日々勉強していくほかないのですが(笑)、私自身はEUやアメリカの他、世界各国の法規制について常に最新の情報を得て、クライアントの実務を踏まえたアドバイスができるように努めています。

具体的な案件に取り組む中で、海外の弁護士と協同して知見が蓄積していく面もありますし、ここ数年、グローバルのデータ保護法に関する企業向けセミナーを定期的にやらせてもらっていますので、その準備のなかでもアップデートをするようにしています。

山森最近ではCRM担当者やマーケティング担当者も、法律をある程度勉強しないと実務が成り立たなくなってきていると感じます。私はよくお客様に「ビジネスが総合格闘技化していますよ」と伝えています(笑)。寝技と打撃ではないですが、静的な構造で成りたっている既存システムや法務部門と、動的に変化する要件を検討していきたいマーケティング部門やDX部門が協力しないと、実情に追いつけなくなっている。部門間で、用語すら噛み合わないケースも実際に起きていますよね。

それと、プライバシー関連のプロジェクトが進まない要因の1つには、プライバシーやデータコンプライアンスの専門人材が日本企業にはほとんどいない、ということがあります。

今井日本企業における情報セキュリティー担当者は、「インシデントが起きたときの対策」がメイン業務で、プライバシーは管轄外であることが多いのではないでしょうか。海外ではプライバシー専門の役職者がいる場合もありますが、田中先生から見て、日本企業でもそういった動きはありますか?

田中ある程度の規模の企業では、いわゆるCPO(Chief Privacy Officer:プライバシー担当責任者)のような役職を設置する動きはあると思います。担当領域としては、事業側のニーズを踏まえて、プライバシーを尊重しながらビジネスにデータを利活用する、いわば“アクセル”側の役職ですね。

他方でGDPRが定めるDPO(Data Protection Officer、データ保護責任者)のような、事業や企業が法律に則った活動を行っているか監視する、“ブレーキ”側の役職もあります。

データ活用についてのアクセル側とブレーキ側、双方の責任者・担当者がいると、バランスは良いでしょう。ただし、両方が役職としてそろってしっかりワークしている企業は、正直、日本ではまだ多くないのではないでしょうか。

※後編に続く

トレジャーデータと電通・電通デジタルが協業し提供するソリューションについて、興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

この記事のオリジナル版はこちら
企業がDX時代に直面する「個人情報の取り扱い」、課題とヒント(前編)

電通デジタル
電通デジタル

【4/10開催の無料イベント】シニア層、若年層を獲得するためのヒントが学べる「ネットショップカンファレンス2021」

4 years 8ヶ月 ago

一般社団法人イーコマース事業協会は4月10日(土)、設立19周年の記念イベント「ネットショップカンファレンス2021」をオンラインLIVEで開催する。会員、非会員ともに参加費は無料。

▼「ネットショップカンファレンス 2021 特設ページ

特別講演

  • 「どう攻略!新しい大人市場~50代以上をネットでカネのなる木に?~」
    (人生100年時代未来ビジョン研究所 所長 阪本節郎氏)

テーマは「シニア攻略」。人口ピラミッドで最大のシニア層の意外な消費行動の解説、シニア層と長期に渡りビジネスを展開することができる攻略法などを披露する。

基調講演

  • 「ズレているおじさんが気づいていない若者の情報行動」
    (法政大学社会学部メディア環境設計研究所長 藤代裕之氏)

ステレオタイプで考えがちな若者のリアルな行動実例と豊富なデータを用いて解説。情報収集から生まれる消費行動を学び、将来の顧客像がどういったものになるのかを説明する。

第13回全国ネットショップグランプリ

ECサイトを半年以上運営しているECサイト運営企業を対象に表彰するアワード。話題性やデザイン性、専門性、社会貢献など多様な観点からECサイトを評価する「第13回全国ネットショップグランプリ」の受賞店舗を表彰する。

「ネットショップカンファレンス2021」について

  • 日時:4月10日(土)12:50~18:00
  • 会場:オンライン(ZOOM)
  • 参加費:協会会員、非会員ともに無料
  • 主催:一般社団法人イーコマース事業協会
  • 詳細と申し込みhttps://www.ebs-net.or.jp/2021comference/
瀧川 正実
瀧川 正実

大阪府警がアフィリエイターを書類送検/休業支援金の中小企業向け申請期限を5月末まで延長【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

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2021年4月2日~8日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?
  1. アフィリエイター摘発の衝撃。狭まる「アフィリエイト広告」の包囲網

    2021年3月17日に大阪府警が薬機法違反の疑いでアフィリエイターを書類送検しました。府警の動向や2020年7月の「ステラ漢方事件」を受け、事業方針転換や審査基準を厳しくする企業も出てきています

    2021/4/7
  2. 休業者が直接申請できる「休業支援金」の中小企業向け申請期限を5月末まで延長

    「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(休業支援金)の中小企業向けに関する申請期限を5月31日(月)まで延長。申請期限延長の対象は2020年4月~12月の休業分

    2021/4/6
  3. ファーストリテイリングが有明本部に「自社スタジオ」「新拠点のカスタマーセンター」など開設

    ユニクロの本部「UNIQLO CITY TOKYO」やジーユー本部などのグローバルヘッドクォーターが入る有明本部の4階を改装。撮影スタジオ、Web制作専用ワーキングスペース、仮想店舗などを設置した

    2021/4/8
  4. しまむらのEC売上高は約17億円。店舗受け取りが約9割のワケと今後の戦略

    しまむらが発表した2021年2月期のEC売上高は約17億円。2022年2月期は50億円、2024年2月期には約120億円まで拡大する計画

    2021/4/7
  5. “コロナ特需”で出荷急増!? それでも品質の落ちない物流センターのシステムとマテハン機器とは?

    『EC通販で勝つBPO活用術』(高山隆司/佐藤俊幸 著 ダイヤモンド社 刊)ダイジェスト(第11回)

    2021/4/8
  6. コメリが通販+店舗網+タクシー買物代行でアプローチする「買い物難民」救済策

    カタログ販売の「コメリまごころ便」を通じてカタログ衛生用品・介護用品・日用品などを販売、商品はつくば市内のタクシー事業者が届ける

    2021/4/8
  7. 横浜DeNAベイスターズの観客動員数を1.8倍にしたマーケティング戦略

    2019年シーズンの年間来場者数228万人と過去最高を記録した「横浜DeNAベイスターズ」。観客動員数やグッズ売上を大きく伸ばしたベイスターズがこの先に描く成長戦略とは?

    2021/4/6
  8. 「配信率」見逃していませんか?Eメールをマーケティング戦略に活かす3つのポイント

    デジタル化が進んだ今こそ、顧客と直接つながるために不可欠なEメールを戦略的に活用していきましょう

    2021/4/8
  9. 日本郵便が郵便物、ゆうメールの土曜日配達を休止。配送日数は1日程度繰り下げへ

    2021年10月以降、普通扱いとする郵便物および「ゆうメール」の土曜日配達を休止する

    2021/4/7
  10. アダストリアのEC売上は23%増の538億円、EC化率は30.6%。自社EC売上の半数はスタッフのスタイリング投稿経由【2021年2月期】

    「.st(ドットエスティ)」を展開するアダストリアの2021年2月期におけるEC売上高は、前期比23.4%増の538億円。EC化率は30.6%。EC化率の内訳は自社ECが約15.9%、モールなどの他社ECは14.7%

    2021/4/6

    ※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

    内山 美枝子

    ユニクロの国内EC売上高、中間期は4割増の738億円【2021年度】

    4 years 8ヶ月 ago

    ファーストリテイリングが4月8日に発表した2020年9月-2021年2月期(中間期)の連結業績によると、国内ユニクロ事業におけるEC売上高は前年同期比40.5%増の738億円だった。

    連結売上高は同0.5%減の1兆2028億円。国内ユニクロ事業は同6.2%増の4925億円だった。国内ユニクロ事業に占めるEC売上高の割合は15.0%。

    今期のユニクロでは、ライブコマース「UNIQLO LIVE STATION」などをスタート。EC売上高が大幅に増加したものの、EC関連の物流費は金額ベースでは前年と同水準に抑えることができ、効率化が進んでいるという。

    ジーユー事業のEC売上高は同約4割の増収。店舗受け取りなど店舗とECのサービスを融合したO2O(Online to Offline)が好調だったことや、アプリを通じた情報発信を強化したことが奏功した。

    ファーストリテイリングの2020年8月期(通期)連結決算では、国内ユニクロ事業のEC売上高は1000億円を突破、前期比29.3%増の1076億円だった。

    ファーストリテイリングが10月15日に発表した2020年8月期連結決算によると、国内ユニクロ事業のEC売上高が1000億円を突破、前期比29.3%増の1076億円となった
    国内ユニクロ事業のEC売上高推移(画像はIR資料から編集部が作成)

    ジーユー事業は通期EC売上高を公表していないものの、EC売上構成比を公表しており、それによると約9%。ジーユー事業の売上高は2460億円だったため、EC売上構成比から算出したEC売上は約221億円となる。

    瀧川 正実
    瀧川 正実

    セブン&アイのEC売上は1041億円で3.9%増。ニッセンHDは営業赤字3.5億円【2020年度】

    4 years 8ヶ月 ago

    セブン&アイ・ホールディングスの2021年2月期におけるEC売上高は、前期比3.9%増の1041億3800万円だった。

    売上構成比率の高いネットスーパーが前期比2ケタ減となったが、イトーヨーカドーやセブンネットショッピングが2ケタ増となり、増収をけん引した。

    セブン&アイHDのEC売上高は、グループを横断したECサイト「omni7(オムニ7)」を通じた売上高の合計。ニッセンホールディングスの売上高は含まない。

    ブランド別の売上高は、「セブンネットショッピング」が同18.1%増の236億8800万円、食品宅配の「セブンミール」は同0.3%増の233億7400万円、「イトーヨーカドー」は同38.2%増の75億300万円、イトーヨーカドーの「ネットスーパー」は同10.1%減の357億3400万円だった。

    このほか、「アカチャンホンポ」は同7.9%増の70億円、「そごう・西武」は同23.7%増の50億4100万円、「ロフト」は同52.8%増の17億9400万円で、それぞれ増収となっている。

    セブン&アイグループのEC売上(画像は決算補足資料から編集部がキャプチャ、一部を加工した)

    なお、ニッセンホールディングスの2021年2月期連結業績は、売上高が前期比0.3%増の380億5600万円だった。売上総利益は同3.0%増の186億5700万円、販管費は同3.9%増の190億800万円で、営業損益は3億5100万円の赤字(前年同期は1億8400万円の赤字)となった。

    石居 岳
    石居 岳

    コメリが通販+店舗網+タクシー買物代行でアプローチする「買い物難民」救済策

    4 years 8ヶ月 ago

    コメリは茨城県つくば市のタクシー買物代行事業に参画、外出での買い物が難しい消費者に向けて、カタログ販売の「コメリまごころ便」を通じてカタログ衛生用品・介護用品・日用品などを販売する取り組みを始めた。

    「コメリまごころ便」は、衛生用品・介護用品・日用品などをカタログ販売するサービスで、電話やネットで受注する。

    コメリの「コメリまごころ便」
    「コメリまごころ便」(画像はつくば市の公開資料からキャプチャ)

    つくば市のタクシー買物代行サービスは、新型コロナウイルスが心配、店までの交通手段がない、外出できない、ネット注文ができないといった消費者に向け、タクシー事業者が商品を自宅などまで配送する行政サービス。スギ薬局、カスミが参画している。

    消費者は「コメリまごころ便」から必要な商品をタクシー事業者に電話やFAXで依頼。注文を受けたタクシー事業者は、コメリが展開している店舗取り置きサービスを利用してつくば市内のコメリ店舗で商品を受け取る。その商品を消費者にタクシーで配送する仕組み。

    商品代金・買物代行利用料金は、消費者へ注文商品を配送した際にタクシー事業者が徴収する。配送手数料は300円。

    「買い物難民」といった社会問題の解消につなげると同時に、「コメリまごころ便」を通じた新規利用者の獲得なども期待する。

    コメリの2020年3月期における通販・EC売上高は126億円でEC化率は3.6%。ECサイトで注文した商品を店頭で受け取れる店舗取り置きサービスの件数は年々増加しており、2020年3月期は前の期と比べて約1.3倍の2万3000件。2021年3月期は3万件を見込んでいる。

    コメリがEC化率10%をめざし、EC事業を強化 EC売上とEC化率
    EC売上・EC化率の推移(画像は決算補足説明資料から編集部がキャプチャ)
    瀧川 正実
    瀧川 正実

    ファーストリテイリングが有明本部に「自社スタジオ」「新拠点のカスタマーセンター」など開設

    4 years 8ヶ月 ago

    ファーストリテイリングは、ユニクロの本部「UNIQLO CITY TOKYO」やジーユー本部などのグローバルヘッドクォーターが入る有明本部の4階を改装し、撮影スタジオ、Web制作専用ワーキングスペースなどを設置した。

    ユニクロ、ジーユーなどのグループブランドが利用できる撮影スタジオを4月から本格的に稼働した。企業が独自所有するスタジオとしては5950平方メートルと日本最大級。写真や動画が撮影できる大型スタジオ、自然光でも撮影できるスタジオも開設した。

    ファーストリテイリングは有明本部を改装、撮影スタジオ、Web制作専用ワーキングスペースなどを設置
    日本最大級のスタジオという
    ファーストリテイリングは有明本部を改装、撮影スタジオ、Web制作専用ワーキングスペースなどを設置
    複数の撮影を同時進行で行えるスタジオ

    Web制作部門専用のワーキングスペースも設置し、最新の商品や着こなしの情報をデジタルに変換、いつでも顧客に情報として届けられる体制を整えた。

    現在、山口本社内のカスタマーセンター拠点に加え、同フロア内にカスタマーセンターの新拠点を開設する。世界中から集まる顧客の声や要望をダイレクトに経営や本部社員に届け、リアルタイムに商品・サービス開発に活用する体制にする。

    ファーストリテイリングは有明本部を改装、カスタマーセンターを設置
    インハウスのカスタマーセンターを設置

    有明本部の改装後のレイアウトは次の通り。

    • 6階:UNIQLO CITY TOKYO(ユニクロ本部)
    • 5階:ジーユー本部、PLST本部
    • 4階:撮影スタジオ(約5950平方メートル)、Web制作専用ワーキングスペース(約991平方メートル)、仮想店舗(標準店約1157平方メートル・大型店約1983平方メートル/各1店舗)、カスタマーセンター(991平方メートル)、その他、執務スペース、ホール、スポーツジムなど
    • 3階:倉庫
    • 2階:倉庫
    • 1階:倉庫・搬入口
      ※1フロア 1万6528平方メートル

    ファーストリテイリングは2017年春から、本格稼働している物流施設と一体型のオフィス「有明本部」を基点に、リアルとネットの融合を進め新たなビジネスモデルの構築を進めている。

    情報製造小売業への変革をめざすその取り組みは「有明プロジェクト」と呼ばれており、顧客と店舗、本部、生産拠点、物流拠点などをITでつなぐことで、顧客を深く理解し、顧客が求めている商品だけを作り、最適な形で届ける仕組みをめざしている。

    ファーストリテイリングの2020年8月期連結決算によると、国内ユニクロ事業のEC売上高は、前期比29.3%増の1076億円。実店舗を含む国内ユニクロ事業の売上収益は同7.6%減の8068億円。売上構成比は2019年8月期の9.5%から13.3%へ上昇した。

    ジーユー事業の2020年8月期売上高は前期比3.1%増の2460億円。決算では通期のEC売上構成比を公表しており、それによると約9%。前期比約6割の増収だったという。EC売上構成比から算出したEC売上高は約221億円となる。

    石居 岳
    石居 岳

    「配信率」見逃していませんか?Eメールをマーケティング戦略に活かす3つのポイント | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

    4 years 8ヶ月 ago
    デジタル化が進んだ今こそ、顧客と直接つながるために不可欠なEメールを戦略的に活用していきましょう

    デジタル化が進んだ今、顧客と直接つながるためにはEメールが不可欠です。しかし、マーケティングに活用するには戦略を立てなければいけません。データベースを駆使して、できるだけ多くの潜在顧客にメールを送るというデフォルトのアプローチでは、売り上げを伸ばせないだけでなく、企業の評価を落とすことにもなりかねないからです。では、どのようにEメールを活用すれば成果につながるのでしょうか?

    デジタルで先手を打たなければ、後手に回る

    2020年のサイバーマンデー(11月30日)では多くのブランドが、例年以上に早くホリデーシーズンのプロモーションを開始し、EC売上は史上最大となる100億ドルを記録しました。

    米国の消費者がいくらオンライン購入に費やしたか(2020年11月1日〜12月31日)
    消費者がホリデーシーズン(2020年11月1日〜12月31日)にオンライン購入にいくら費やしたか(画像:Adobe「2020 Holiday Shopping Trends」より編集部が作成)

    不確定要素の多かった2020年のホリデーシーズンでECが成功を収めたことにより、ECのさらなる可能性が裏付けられたと言えるでしょう。よりわかりやすく言うと、ブランドは2021年、デジタルで先手を打たなければ後手に回るということです。

    重要指標「メールの配信率」をおさらい

    デジタル化が進んだ今でも、顧客と直接つながるために不可欠なのはEメールです。ただ、マーケティング活用は戦略的に行なわなければいけません。

    Eメールマーケティングで忘れられがちなのがメールの配信率。メールがスパムフォルダに入ったり、メールボックスのプロバイダにブロックされたりせずに、消費者の受信箱に届く確率を表しますメールの配信率によって、スパムとして振りわけられることなく、大多数にメールを無事に送信ができるかどうかが決まります

    配信率には、送信者としての評価、メールへのエンゲージメント、コンテンツの質、インフラなど、いくつかの重要な基準が影響します。

    なぜデジタルファーストの世界で、配信能力がさらに重要になるのでしょうか? ホリデーシーズンに初めて商品をECで購入する人が増たことで、ホリデーショッピングはブランドのファンを作り、LTV(顧客生涯価値)を高める良いきっかけになりました。Eメールはこれらの新しい顧客に直接語りかけることができる数少ないチャネルの1つであり、彼らが見たいと思うコンテンツを適切なタイミングで提供することができます。

    しかし、すべてのEメールが同じように受け入れられるわけではありません。デジタル環境で顧客と接する時、送信者は特に、配信頻度に注意しなければなりません(メッセージが読まれないまま放置されると、評価が悪くなります)。

    また、しばらくコンタクトしていなかった古い顧客に突然連絡して、その顧客をさらに遠ざけてしまわないように注意しなければなりません(もしくは、その顧客はすでにメール受信を停止しているでしょう)。

    複雑に聞こえるかもしれませんが、これらの課題の多くは自社の責任なのです。デジタルファーストに取り組む際、メルマガ購読者の受信箱に確実に届くようにするために、2021年の計画に組み込むべき3つの戦略をご紹介します。

    米Amazon.comのトップページ
    米Amazonは2020年のホリデーシーズンで過去最高の売り上げを記録した(画像:サイトよりキャプチャ)

    1. メルマガ購読者をセグメント、直接語りかける

    メルマガ購読者リストの管理は、効果的なコミュニケーションの鍵です。メールアドレスの配信可否を検証するサービスやハードバウンス(ドメインやメールアドレスが存在しないなど、宛先不明の恒久的なエラー状態)は、利用されていないアカウントを追跡し、あなたのブランドの評価を守るのに役立ちます。

    リストを更新する際、5年間メールを開いていない人全員にメールを送信するのではなく、より戦略的かつ選択的に行いましょう。エンゲージメントを最大化するために、季節ごとの取り組みや過去の購買データを考慮しましょう。

    また、それぞれの顧客データに基づいて、パーソナライズされたプロモーションやコンテンツを追加することも検討してください。すべての人が同じものを必要としているわけではない、ということを忘れないでください。

    購入見込みの高い顧客にだけ、割引を提供しましょう。また、過去に同じカテゴリーの商品を購入したことがある顧客にのみ、新商品情報を送りましょう。オーディエンスに関連性の高いコンテンツを提供することで、エンゲージメントの可能性を高めることができます。

    顧客も人間です。あなたのブランドに対して、それぞれのイメージを持っていることでしょう。透明性のあるメッセージを心がけてください。もし、ある人が特定の時期にお金を使う傾向があり、ホリデーシーズンに商品を購入していたことがわかっている場合は、メールの件名は次のように表現してみましょう。

    ホリデーシーズンは終わりましたが、自分へのご褒美をあげちゃダメなんてことはありません!

    2. 送信頻度と配信停止数の両方に基準を設定する

    顧客は、ホリデーシーズンには頻度の高いコミュニケーションを期待しますが、それ以降はメールへの許容範囲が狭くなります。どのくらいの頻度で誰にEメールを送るかをテストする際は、最もアクティブな顧客から始めて、その後であまりエンゲージメントの高くない顧客に向けて送信します。

    たとえば、現在送信している週3通のメールで高いエンゲージメントが得られている場合のみ、週に4~5通のメールを送信することを検討します。そうでない場合は、週に送るメールの総数を減らすことを考えましょう。

    エンゲージメントに基づいて顧客をグループ化することは、ブランドの評価を守るだけでなく、エンゲージメントの低いメールの総数を減らすことにもつながります。

    配信停止に関しては、顧客理解に繋がるオプションを戦略的に導入することを検討してみましょう。一回で全てを配信停止にするのではなく、複数のコミュニケーションを提供して、オプトインまたはアウトすることができるようにするのです。そうすることで、顧客は興味のあるコンテンツを選ぶことができ、ブランドは今後のコミュニケーションをパーソナライズするための情報を得ることができます

    「ZOZOTOWN」のクーポン付きメール例
    「ZOZOTOWN」がユーザーに送付するクーポン付きメール例

    3. 結果が出ない場合は、同じことを繰り返さない

    メーリングリストの全員に40%オフの割引コードを送る前に、過去のデータを見てみましょう。休眠顧客に再アプローチした過去の取り組みはどうでしたか? リターンはありましたか? 売り上げを伸ばせても、多くの配信停止依頼が来ていませんか? これらの情報をもとに、リスクとリターンが見合っているかどうかを判断し、顧客との相性が良いチャネルでの発信を検討します。

    メールの配信には結果が伴います。現在の取り組みが今年の残りのパフォーマンスの行方を決定します。たとえば、ホリデーシーズンに凡庸で特徴のないEメールを積極的に送った結果、1月には配信数が急減したブランドがありました。

    ◇    ◇   ◇

    メールキャンペーンを成功させるためには、配信率を後回しにするのではなく、最優先するべきです。顧客はデジタルファーストの世界に完全に適応していますが、その代償として、競合他社からの連絡に影響を受けやすくなっています。

    Eメールで直接顧客に話しかけるだけでなく、パーソナライズされた体験(割引や商品のレコメンデーションなど)を提供することで、顧客をコンバージョンさせ、再び購入してもらうことができます。将来に向けて、長期的で健全なデジタル戦略を念頭に置き、準備を進めていきましょう。

    この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

    Digital Commerce 360
    Digital Commerce 360

    “コロナ特需”で出荷急増!? それでも品質の落ちない物流センターのシステムとマテハン機器とは? | 『EC通販で勝つBPO活用術』ダイジェスト

    4 years 8ヶ月 ago
    『EC通販で勝つBPO活用術』(高山隆司/佐藤俊幸 著 ダイヤモンド社 刊)ダイジェスト(第11回)

    アフターコロナ時代に求められる物流センターの第2の条件は、出荷増でも品質の落ちないシステムとマテハン機器を装備していることだ。前回ご紹介した第1の条件である人員規模と同じように、システムや設備機器においても出荷量の波動、特に出荷増に対応できるキャパシティーが必要である。

    この条件を満たしていない物流センターでは、人員が足りていたとしても、コロナ特需のようなケースでは注文の集中をさばききれず、パンクする危険がある。

    通販20年のノウハウが詰め込まれた独自システム

    スクロール・ロジスティクス・センター浜松西(SLC浜松西)は、カタログ通販で60年以上の歴史を持つ株式会社スクロールの物流センターと併設されており、敷地は1万5,000坪、建物の延べ床面積は2万坪以上の巨大なセンターだ。この物流センターをコントロールしているのが、EC物流受託20年のノウハウをつぎ込んだ自社開発のシステム「L-spark」である。

    「L-spark」は、いわゆる「WMS」の1種だ。「WMS」とは「Warehouse Management System」の略で、倉庫管理システム、または在庫管理システムと訳される。WMSの大きな機能は3つあり、EC物流の優劣はWMSで決まるといわれる。

    在庫管理(入荷、検品、保管、ピッキング、出荷等の在庫管理)
    ② 出荷指示データからの伝票類出力
    出荷進捗管理

    ①在庫管理

    「在庫管理」では、入荷検収時に事前に送られてきた「入荷予定データ」をもとに、入荷した商品個々のバーコードラベルを読み取ることで、正確な入荷検収が可能となる。

    また入荷検収後、商品を商品保管棚入れる際に、棚のロケーションバーコードと商品のバーコードを読み取り、どこの棚に商品が保管されているか管理していく。 食品など賞味期限のあるものについては、ロットごとの賞味期限と出荷期限をデータで保持するのもWMSの役割となる。

    ②出荷指示データからの伝票出力

    「出荷指示データからの伝票類出力」では、作業効率改善のためのさまざまな機能がWMSに付加されている。ここがWMSの優劣を決めるところでもある。

    例えば、顧客からの注文が10行でオーダーピッキングする場合、顧客のオーダー順にピッキンングに行くと、棚の間を行ったり来たりしなければならない。そこで、WMSで一番効率的なピッキング順に指示書を作成する。下図は1つの例だ。

    図 WMSによるピッキング指示書の例
    WMSによるピッキング指示書の例

    顧客のオーダー順はバラバラだが、WMSが作成するピッキング指示書では、棚番順にピッキングする指示になっており、担当者(ピッカー)は一筆書きを描くように効率的に動き、ピッキングが完了する。より効率的にピッキングを行うために、複数人分のオーダーを統合し、まとめてピッキングしてきた後、個々の顧客に振り分ける方法もある。ピッキングする棚の粒度が細かくなるため、さらにピッキング効率はアップする。

    下の写真は「GAS(Gate Assort System)」という仕分けを補助するマテハン機器だ。

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    GAS(Gate Assort System)

    32個のゲートがあり、商品のバーコードを読むと購入客の伝票が入っているゲートが開き、そこに商品を入れる仕組みだ(伝票は事前に各ゲートに割り振られている)。GASを使うと、32人分のピッキングをまとめて棚番順に行い、その後、仕分けることで作業効率が上がる。スクロール360で導入したところ、初日にして導入前比160%の効率化ができた。

    このようにWMSはECショップの特性に合わせて、出荷効率の上がる作業手順を用意していく。自社物流ではなかなか投資できないマテハン機器でも、EC専用の物流倉庫であればいろいろなショップと共有しながら投資していけるのも強みとなっている。

    ③出荷進捗管理

    「出荷進捗管理」では、当日の出荷予定数と実際の出荷指示数のギャップをいち早く察知し、シフトを組むことが重要だ。出荷予定が1,000件だったが、テレビ番組で取り上げられて3,000件なった時、作業の進捗率が高いショップの人員を、波動が出たショップに移すのである。

    下の写真は、物流センターのコマンドルームの壁に掛かっているクライアント別の進捗率一覧だ。当日の出荷指示件数に対して進捗状況がひと目でわかる。マネージャーはこのモニターで状況を把握し、適切に要員の配置替えを行い、当日内にすべてのECショップの出荷が完了するように運営している。

    写真 クライアント別進捗率一覧を映すモニター
    クライアント別進捗率一覧を映すモニター

    まだある「L-spark」の付加価値機能

    スクロール360独自のWMS「L-spark」には、こうしたWMSの3大機能に加え、より進化した特長的な付加価値機能が備わっている。それを紹介しておこう。

    ①送り状のオンデマンド印刷機能

    「L-spark」では、顧客別の送り状は注文データと商品検品データが合って初めて印刷される。そのため印刷がされる前の段階であれば、キャンセルも住所変更もWebから操作できるようになっている。

    ECショップにキャンセルが入った場合、「L-spark」の管理画面でその顧客の送り状が印刷されたかどうか確認し、印字前であればECショップは出荷キャンセルボタンで出荷を止められる。いちいち物流センターに電話する必要はない。住所の修正も同じ操作だ。

    ②物流KPI分析機能

    物流現場にはさまざまな経営指標データがある。入荷したら仕入れと商品在庫、出荷したら売上といったデータがWMSに残るので、それを集計し、月次でECショップに紹介するようにしている。

    例えば「2か月以上出荷のない商品リスト」「商品の在庫点数と1か月の出荷点数からの在庫の消化月数」などだ。「発注ミスで今ある在庫がなくなるまで10年かかる」といった商品が発見されるときがある。

    ③動画再生システム

    商品を検品梱包する作業場には、動画撮影するカメラが設置されており、動画は2か月程度保存される。「3点注文したのに2点しか入っていなかった」といったクレームが入った場合、その顧客の出荷を担当した作業員の作業した時間にさかのぼって、動画が確認できるようになっている。これが動画再生システムだ。

    顧客のクレームから、どの受注ナンバーの出荷作業かを割り出し、それを担当した作業員と作業時間を特定する。出荷作業が完了するごとにタイムスタンプを記録しているのでさかのぼるのは容易だ。

    下の写真は、クレームのあった作業時間の再生動画の画像だ。商品の画像までは鮮明に映っていないが、何個封入したかははっきりと確認できる。

    写真 動画撮影カメラ
    動画撮影カメラ
    写真 画再生システム
    動画再生システム
    写真 録画された作業風景
    録画された作業風景

    月に2~3回、動画確認の依頼が入るが、誤送はほぼゼロだ。もともと、間違えて出荷できないシステムを採用している。納品明細書と商品のバーコードを読んで、合っていなければ送り状がでないシステムのため、誤送の確率は0.0016%以下だ。

    ただし、ゼロでないのは、やむなく短期バイトや派遣を入れた場合に誤送が起こることがあるからだ。スクロール360のルールでは、複数点の検品の場合は、必ず1点ずつバーコード検品をすることになっているが、短期バイトがこのルールを破り、1点のバーコードを複数回読んで間違った点数なのに、合ったと勘違いして封入してしまったことがある。

    決められたルールを破ったケースがほとんどであり、現在は極力、短期バイトや派遣を入れない体制で運営している。

    ◇◇◇

    次回は第3の条件「多拠点化への対応」について解説する。

    この記事は『EC通販で勝つBPO活用術』(ダイヤモンド社刊)の一部を編集し、公開しているものです。

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    活況のEC・通販業界において、アフターコロナを勝ち抜くために必要なことは何か。ネット通販の事業戦略設計やプロモーション、フルフィルメントなど、ネット通販の実践から得たノウハウを紹介し、物流、受注といったフルフィルメントのアウトソーシングの活用の仕方や成功事例を解説する。デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、「BPO」(Business Process Outsourcing)を最大限有効活用したシステム構築に必携の1冊。

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    佐藤 俊幸
    高山 隆司, 佐藤 俊幸

    日本郵便が郵便物、ゆうメールの土曜日配達を休止。配送日数は1日程度繰り下げへ

    4 years 8ヶ月 ago

    日本郵便は、2020年12月に公布された「郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律に基づき、関係法令が施行された場合に2021年10月以降、普通扱いとする郵便物と「ゆうメール」の土曜日配達を休止する。

    2021年10月から、普通扱いとする郵便物、「ゆうメール」の配達日数を、1日程度段階的に繰り下げる。

    日本郵便は、2020年12月に公布された「郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律に基づき、関係法令が施行された場合に2021年10月以降、普通扱いとする郵便物と「ゆうメール」の土曜日配達を休止
    配達日数の繰り下げについて

    「ゆうパック」「ゆうパケット」「クリックポスト」「レターパックプラス」「レターパックライト」「速達」「レタックス」「書留」「簡易書留」などについては、引き続き土曜日、日曜日、休日も配達、配達日数に変更はない。

    このほか、郵便の速達料金を1割程度引き下げる。普通扱いとする郵便物の土曜日の配達休止に伴い、配達日指定料金区分を変更する。

    石居 岳
    石居 岳

    アフィリエイター摘発の衝撃。狭まる「アフィリエイト広告」の包囲網 | 通販新聞ダイジェスト

    4 years 8ヶ月 ago
    2021年3月17日に大阪府警が薬機法違反の疑いでアフィリエイターを書類送検しました。府警の動向や2020年7月の「ステラ漢方事件」を受け、事業方針転換や審査基準を厳しくする企業も出てきています

    「アフィリエイト広告」の包囲網が狭まっている。大阪府警は3月17日、薬機法違反の疑いでアフィリエイターの男性を書類送検。アフィリエイターの立件は珍しく、過去に例がないとみられる。ただ、これは伏線の可能性がある。昨年末に行われたASPへの家宅捜索、今回の摘発など断続的に明らかになる府警の動向は、これに続く”本丸”を視野に入れたものとみられるためだ。

    狭まる「アフィリエイト広告」の包囲網

    アフィリエイターを書類送検

    書類送検されたのは、神奈川県茅ケ崎市在住の自営業の男性(51)。アフィリエイト・サービス・プロバイダ(ASP)を通じて、健康食品の販売者である広告主と契約。自身が運営するサイトにおいて、この健食について「更年期障害、糖尿病、痛風の予防・改善に効く」などと紹介していた。

    大阪府警は、健食で医薬品的効能効果を標ぼうしていたとして、この男性を薬機法違反(第68条、未承認医薬品の広告の禁止)の疑いで書類送検。男性は「認識が甘かった」と容疑を認めているという。

    アフィリエイト摘発に照準

    商品の供給者を規制対象とする景品表示法と異なり、薬機法の規制対象は「何人も(何人規制)」。当然、アフィリエイターも対象になる。

    通販新聞 アフィリエイト アドネットワーク 大阪府警 アフィリエイト摘発
    薬機法と景品表示法の対象について

    ただ、広告の一義的な責任は、本来、広告主である販売者に求められる。このアフィリエイターがサイトを通じて販売した商品数は、宣伝した昨年9月から11月の間にわずか3個。それだけに摘発は衝撃だ。

    府警は、昨年7月の「ステラ漢方事件」でも同社従業員のほか、広告代理店、広告制作会社従業員を含め、計6人の逮捕に踏み切っている。

    不適切なアフィリエイト広告の氾濫は、広告主だけでなく、代理店、ASP、アフィリエイターなど、これに絡む仲介者の責任転嫁の連鎖が生み出す。摘発は、これを一網打尽にすることで抑止力を働かせようとする府警の強いメッセージとも取れる。

    残る謎は、「わずか3個」の違法行為に府警が動いたことだ。

    なぜ「たった3個」で摘発されたのか

    「コロナだけど、今度、東京に行かんといけんのや」。府警に近い、在坂の関係者は昨年末、ある捜査員のそんな言葉を聞いている。「ステラ漢方事件」の関係者も「府警は違法なアフィリエイト広告の捜査に相当数の人員を割いていた」と話す。

    わずか3個を販売したに過ぎない男を調べるために府警がわざわざ出向いたとすれば、あまりに仰々しい。

    逮捕者が一人であることも疑問だ。

    一般的に、広告主は、ASPを介して複数のアフィリエイターと契約を結ぶ。アフィリエイターの質も副業目的から、法人化してこれで生計を立てる者までさまざま。自然、その結果は、販売数となって表れる。広告主から提示されたレギュレーションが同じであれば、当然、より過激に、より多く販売した者もいる可能性があるからだ。

    報道に接した多くの業界関係者も「3個売っただけの人を摘発してもしょうもない」、「これで終わりでは書類送検された51歳が浮かばれない」と感想を口にする。

    ASP家宅捜索とつながる線

    糸口は、昨年12月、府警によるASPへの家宅捜索が行われたとみられることだ。当時、府警は「事実関係を含めノーコメント」としていたが、当のASPは「捜査当局に協力しているのは事実」と認めていた(本紙1785号既報)。

    このASPは、書類送検されたアフィリエイターとの関係に、「捜査の詳細が共有・開示されることはないため確認する術がない」とする。ただ、前出「ステラ漢方事件」の関係者は、このアフィリエイターが扱っていた広告案件が、このASPを介して委託されたものだと明かす。

    九州の通販企業 家宅捜索否定せず

    ASPへの家宅捜索、アフィリエイターの摘発から浮かびあがるのは、ある広告主の存在だ。九州・福岡に本社を置く、この会社が扱うのは、伝承的な健食素材を使ったサプリメントや飲料。通販で展開しており、広告は更年期障害等をイメージさせる訴求もみられる。民間信用調査機関の調べによると、売上高は約10億円だ。

    ある業界関係者は昨年末、この通販企業にも府警による家宅捜索が行われたと明かす。取材に代表者の男性は「家宅捜索を受けているとも、受けていないとも答えられない」とするが、否定はしなかった。

    捜査の行方について、ある警察OBは、「いずれ本丸にいくのでは」と話す。「違法な広告による販売も当然、3個と100個では重みが異なる。ただ、いきなり本丸を挙げて証拠がなかったらアウト。軽いのから手をつけて聞き出して、証拠があればその時点で立件。はじめから重いのはやらない。今回、書類送致したということは、(広告主やASPとの)関係を色々しゃべっているということ。自分が指揮官でもそうする」。

    「ステラ漢方事件」を踏まえた府警の対応

    府警は昨年7月、「ステラ漢方事件」で、同社の責任者である社長の逮捕に至っていない。これに疑問の声もあった。

    関係者によると、ステラ漢方と代理店は、チャットのグループで広告内容の確認や変更の承認を行っていたという。家宅捜索の段階で、このチャットの存在が判明し、登録のあった関係者に逮捕容疑が絞られたようだ。だが、代表者は含まれておらず、「証拠にならず、知らなかったという言い逃れができた」(事件関係者)。

    その反省からくるものか定かでないが、今回、ASP、アフィリエイターなど慎重に外堀を固めつつ、本丸に迫ろうとしているのかもしれない。府警の狙いはどこにあるのか、動向を注視する必要がある。

    不適切広告がアドネットで氾濫。「単品コスメ配信NG」方針転換も

    相次ぐ摘発の背景にある「不適切広告の氾濫」

    アフィリエイト広告に対する規制当局の圧力が強まっている。運用に注意が必要なのが、ウェブメディアへの広告配信プラットフォームであるアドネットワークや、リスティング広告で集客される「アドアフィリエイト」と呼ばれるものだ。新たな新規獲得手法と注目されるが、不適切な広告も氾濫する。

    「有名人が入った高単価ダイエット案件なのでぜひご実施のご検討よろしくお願いいたします! NG媒体なし」。ASPを利用する代理店のもとには連日、こうした広告案件の依頼が寄せられる。

    通販新聞 アフィリエイト アドネットワーク 大阪府警 アフィリエイト摘発
    ASPを利用する代理店に届く広告案件の依頼

    広告運用のイニシアチブは本来、販売者である広告主が握っている。広告枠を自ら精査し、代理店はその手数料収入を得てきた。テレビや新聞など、旧来の広告手法は、取引額も大きく、媒体社も自らの媒体価値に配慮し、広告考査など慎重に運用してきた。

    一方、近年、成長を遂げるEC市場を下支えするのがアド運用型と呼ばれる新興代理店の存在だ。これら代理店は、広告主と成果目標を共有しつつ、一定の予算枠を預かり広告を運用する。成果に対するリスクを負う反面、自ら広告運用のイニシアチブを持ち、効率的な獲得が行えれば、より多くの収益を上げることができる。成果報酬型のビジネスモデルだ。

    有効な手段の一つが自ら広告主となり、アフィリエイトサイトへの誘導を目的にアドネットを活用して広告出稿を行う「アドアフィリエイト」になる。

    ただ、運用はブラックボックスで、販売者は実態を把握しにくい。成果は「数値」による報告のみで評価せざるを得ない。コントロールが効かず、不適切なサイトへの広告掲載や、獲得件数を優先した運用も目立つ

    それでも、景品表示法の表示責任は、「商品の供給者」である販売者が負うことになる。「ステラ漢方事件」、これに続くアフィリエイターの摘発など、薬機法の「何人規制」発動も相次いでいる。代理店をはじめ、仲介者の責任も重くなっている

    通販新聞 アフィリエイト アドネットワーク 大阪府警 アフィリエイトの動向
    アフィリエイト規制をめぐる最近の動向

    審査基準を厳しくする企業も

    「事業方針変更により、EC単品コスメ案件を配信NGとさせていただきます」。今年3月、媒体社にアドネットを提供するZucksは、広告案件の提案先にこう通知した。4月末をもってEC単品通販案件の取り扱いをすべて停止するという。同業のpopInも「警察当局等の一連の動きを受けて、審査基準を厳しくすると聞いた」(業界関係者)という。

    Zucksは、電通が出資するCARTAHOLDINGSのグループ。popInは「ステラ漢方事件」で摘発対象になった広告を配信していた1社(本紙1785号既報)。不適切な広告配信の背景には、これら仲介者の存在が指摘されている。

    ある代理店はアドネットのこうした対応に、「これまで何度も厳しくすると言ってきたが、収益が上がらず、ほとぼりが冷めると、結局元に戻してきた」と冷やか。ただ、規制当局が取締りに本腰を入れる中、ウェブ広告業界にも変化の兆しが現れている。

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    通販新聞

    しまむらのEC売上高は約17億円。店舗受け取りが約9割のワケと今後の戦略

    4 years 8ヶ月 ago
    しまむらが発表した2021年2月期のEC売上高は約17億円。2022年2月期は50億円、2024年2月期には約120億円まで拡大する計画

    しまむらが発表した2021年2月期のEC売上高は約17億円だった。2020年10月に自社ECサイト「しまむらオンラインストア」をオープンしており、初年度の数値は「ほぼ見込み通り」(しまむら)。

    しまむらのEC売上高は、自社ECサイトの立ち上げに伴い終了したスマホで商品を注文し店頭取置が行えるアプリ「しまコレ」経由と、「しまむらオンラインストア」の売上高の合算数値。

    商品の受取方法は店舗受け取りが約9割、自宅配送が約1割。「当初の想定よりも高く、オンラインストアと実店舗との相互送客に大きな効果を発揮している」(しまむら)。

    ECサイトでは、インフルエンサー企画やキャラクター商品、大きいサイズなどオンラインストア限定の商品が売れ筋だったという。

    「しまむらオンラインストア」の初年度について
    「しまむらオンラインストア」の初年度について(2021年2月期の決算説明会資料からキャプチャ)

    店舗受け取り9割のワケ

    「しまコレ」は2020年2月期で売上高9億5000万円を計上。2020年3-8月期(中間期)で約10億円の売上高となっており、ネットで注文し店舗で商品を受け取るといったユーザーが一定層、存在していた。

    「しまコレ」はスマホ専用アプリで、「しまむらオンラインストア」はWebベース。しまむらのスマホアプリ、もしくはパソコンやモバイルのブラウザからアクセスする形式だが、「しまコレ」ユーザーが順調に「しまむらオンラインストア」へ移行していったと考えられる。

    「しまむらオンラインストア」の開設に伴い「しまコレ」は9月で終了る
    「しまむらオンラインストア」と「しまコレ」の比較(2021年2月期中間期の決算説明会資料からキャプチャ)

    商品の配送料金設定とビジネスモデルも、店舗受け取り9割の要因の1つと見られる。ECサイトでの注文商品は、実店舗の物流・配送網を使って商品を送る店舗受け取りは「送料無料」、個人宅配送は「ゆうパック」の場合は全国一律送料550円(税込、大物の場合は税込1100円)「ゆうパケット」は対象商品1点注文の場合のみ全国一律税込220円。

    欲しい商品を低価格で提供する、しまむら事業の2021年2月期の客単価は2672円、1点単価は864円。送料を事業者が負担する送料無料バーは設定していない。

    ショッピングカート内では、商品合計価格の下に「店舗受け取りなら送料0円!」と表示し、店舗受け取りの「お得さ」を強調している。

    「しまむらオンラインストア」のショッピングカートの画像。赤枠内で「店舗受け取りなら送料0円!」と表記している
    「しまむらオンラインストア」のショッピングカートの画像。赤枠内で「店舗受け取りなら送料0円!」と表記している(画像は「しまむらオンラインストア」からキャプチャ)

    今後の計画

    しまむらは「各事業で商品力と販売力の強化をさらに推し進め、加えてEC事業をしまむら事業以外にも展開することなどで、既存店1店舗あたりの売上高を向上させる」と説明。ECによる店舗送客の効果を期待する。

    2024年2月期でEC化率2%を目標に掲げており、国内売上高目標5950億円から換算するとEC売上高目標は120億円。2022年2月期は50億円を目標に掲げる。

    「しまむらオンラインストア」のECの今後の取り組みについて
    ECの今後の取り組みについて(2021年2月期の決算説明会資料からキャプチャ)

    2022年2月期の後半にもアベイル、バースデイ、シャンブルといった事業でもECビジネスを拡大。店舗受け取りを全国約2200か所の実店舗に広げ、「EC事業とのシナジー効果を最大限に発揮する」(しまむら)。

    人気集中による売り切れのチャンスロスを防止するため、2020年12月から予約販売をスタート。新サービスも追加し、売り上げと会員数の拡大につなげる。

    事業拡大に合わせてECセンターの物流機能も強化・拡大する。しまむらのEC事業は、実店舗の物流・配送網を使いコストを抑制、「ローコストEC」を事業構造の根幹としている。

    埼玉県の東松山商品センターを増築し、増設部分をECセンターとして稼働。サプライヤーが東松山商品センターに納品後、隣接するECセンターで検収し在庫として保管、店舗受け取りはしまむらの物流網で配送し、個人宅配送の場合は宅配業者に配送を委託している。そのため、リードタイムは店舗受け取りで通常3~9日、個人宅配送は通常2~5日間。

    EC事業の拡大には西日本地域での配送拠点が必要不可欠。東松山のECセンターのキャパシティーは年間売上高50~60億円程度を想定している。関西センターの開設を予定しているが、完成までは3PLを活用しながら事業拡大を進めていく方針。

    瀧川 正実
    瀧川 正実

    美容の「DX」どう進める? 先進事例の花王に見る、DX推進の出発点が「UX」になる理由 | パーフェクト ブログ 〜美容×DXの最新トレンドを紹介〜

    4 years 8ヶ月 ago
    美容業界のDX推進を支援するパーフェクト日本法人・磯崎順信代表取締役が、花王の事例からDX推進のポイントを解説

    小売業における「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は待ったなしの状況です。美容業界も同様ですが、DXを推進するためのソリューション導入で、「すぐにEC売上が伸びる」「実店舗の売上減を補填できる」と期待する企業は少なくありません。重要なのは、DXは魔法の杖ではないと認識すること。デジタル活用で、どのようにブランドが持っている資産を生かしユーザーに還元できるか――。まずは「ユーザー体験(UX)」に目を向け、そこから具体的なアクションを考えることが出発点になります。こうしたポイントを花王の事例から解説していきます。

    「何ができるか」すぐに伝わるサービスは、利用されやすい

    コロナ禍になり、デジタル化を推進する美容関連企業の間で、バーチャルメイクソリューションを導入検討いただくまでの意思決定スピードが明らかに早まりました。日本の美容業界においてもDXの波が来ていることを実感しています。

    ただ、最新のテクノロジーを導入すればいいというわけではありません。ユーザー体験が良くなければ、いくら最新のテクノロジーを活用しても、それは消費者にとって使い勝手の良いサービスとはいえないからです。DXはあくまで手段であり、目的は「UXを向上させること」にあります。

    私が日本法人の代表を務めるパーフェクトでは、Webサイト向け、スマホアプリ向け、実店舗向けなど、ブランドのニーズや目的に合わせ、バーチャルメイクやバーチャルヘアカラー、AI肌診断などのさまざまなソリューションを提供しています。その中で、実際に導入を進める各社で共通しているのは、消費者に「それで何ができるのか」がすぐに伝わるサービスは利用され、消費者の頭の中に「?」がたくさんできるものは使われないということです。

    パーフェクト社のバーチャルメイクソリューション活用のようす
    バーチャルメイクソリューション活用のようす(画像:パーフェクト提供)

    「SOFINA iP」、複数タッチポイントでエンゲージメント向上

    花王の人気スキンケアブランド「SOFINA iP」が2019年9月にリリースした「肌id」は、Webサイト、店頭QR、LINEなど、いろいろなタッチポイントを用意したことで、消費者のエンゲージメントが向上した好例です。

    花王が提供する肌診断サービス「肌id」
    花王が提供する肌解析サービス「肌id」(画像:パーフェクト提供)

    このサービスは、当社の肌チェック機能を搭載した「SOFINA iP」のWebサイト上で、消費者が自身のスマホで顔写真を撮影すると、すぐに肌状態が解析され、結果に応じて最適な商品を提案されるというものです。さらにLINEアプリと連携しているので、「SOFINA iP」のLINE公式アカウントと友だちになると、繰り返し肌解析しログを残せたり、定期的に美容情報を受信したりすることができます。

    ドラッグストアなどの店頭にもQRコードを設置しているので、新規の消費者でも、その場でQRコードを読み取って自分の肌状態を知ってから、最適な商品のレコメンドを受けられます。

    AR利用でサイト滞在時間約2倍に

    また、花王の白髪用ヘアカラーシリーズ「ブローネLumiést(ルミエスト)」でも、AR技術を活用したユニークなアプローチでエンゲージメントを高めています。花王は、2020年10月3日の発売に先立ち、当社のARヘアカラーシミュレーション技術を導入した「髪色シミュレーション」搭載のブランドサイトをオープンしました。

    花王の白髪用ヘアカラーシリーズ 「ブローネLumiést(ルミエスト)」が提供している髪色シミュレーション
    花王の白髪用ヘアカラーシリーズ 「ブローネLumiést(ルミエスト)」が提供している髪色シミュレーション(画像:パーフェクト提供)

    ”明るい髪色”にこだわったラインである「ブローネルミエスト」は、「明るい髪色を楽しみながら白髪染めをする」という提案をしています。このメッセージを発信するために、ARによる髪色シミュレーションを導入しました。

    ヘアカラーを購入される消費者の多くは、店頭の毛束プッシュインを参考にしてはいるものの、人気の色や、明るすぎず暗すぎない真ん中の色を選ばれるそうです。しかし、すべての色味をチェックしたいというニーズも当然あります。

    色選びやコロナ禍における非接触ニーズなど、消費者へのメリットを提供するため、花王はARによる色選びを選択しました。消費者もARであれば負担無く、楽しみながら新しいカラーにチャレンジできます。また毛束プッシュインの廃止につながり、プラスチックゴミを削減できるなど、企業側のメリットもあります。さらに、商品が出るたびに毛束プッシュインの準備をしなければならない売り場の負担も軽減すると考えられます。

    従来花王が店頭で利用してきた「毛束プッシュイン」
    従来店頭で利用してきた「毛束プッシュイン」(画像:パーフェクト提供)

    2020年11月1日週から地上波のテレビCMを放映しましたが、そこでもARヘアカラーシミュレーションを訴求しました。その結果、サイト内平均滞在時間が導入以前に比べて約2倍(約3分から約6分)、さらには、1週間あたりのARシミュレーショントライ数が100万回を超えました。これは一般的なメイクブランドのトライ数の20倍に相当する値です。

    DX推進において、UXを中心に据えることがいかに重要性はこうした結果からもわかるでしょう。

    花王の白髪用ヘアカラーシリーズ 「ブローネLumiést(ルミエスト)」のテレビCM

    状況によって異なる「最善のUX」。消費者目線で考える

    バーチャルメイクは遊び心があるサービスなので楽しめる一方、その様子を他の消費者から見られたくないと思う方もいるかもしれません。そうした消費者にとっては、バーチャルメイクを体験できるタブレット端末が店内の目立つ位置に置かれていたら、「試したい」という気持ちよりも「恥ずかしい」気持ちが強くなり、試すことへの心理的ハードルが高くなります。

    プロモーションイベント会場では、タブレットを目立たせる装飾が効果的な一方、実店舗では設置方法もユーザー目線に立ち、物理的にも心理的にもハードルを下げる環境構築が消費者エンゲージメントを高めるキーとなります。タッチポイントやシチュエーションによって最善のUXは異なりますし、履き違えると残念な結果となってしまいます。

    パーフェクトが提供する実店舗向けのバーチャルメイクソリューション

    バーチャルメイクは、数十秒で何十色も試せるので、消費者は日頃試したことのないカラーやテクスチャー、ブランドを使うことができます。こうした新たな商品との出合いが、結果的に本商品購入へとつながりますが、消費者に「恥ずかしそうで使いたくない」と思われてしまっては意味がありません。

    長期的に繰り返しエンゲージを維持するUXは、派手である必要はなく、「便利!」「助かる!」「楽!」という言葉で形容されるようなことです。このようなUXが、“本当に強い体験”になれるのです。

    特に今はコロナ禍で、「安心・安全」のために非接触型のバーチャルメイクを利用したいと考える消費者もいるはずです。こうした消費者のニーズを捉え、企業・消費者双方にとってメリットの大きいサービスを提供するために、何が最適解なのか。ぜひ「UX」に着目しながら、DX推進を検討いただけたらと思います。

    バーチャルメイクを使ったカウンセリング、実店舗の客単価を1万5,000円上回る

    最後に、コロナ禍ならではのUXについて考えてみます。消費者は買い物を楽しみたいと思っている一方、まだお店に行くこと自体怖いと思っている方も大勢います。しかしECで購入したいと思っても、化粧品の場合、その色味が本当に自分に合っているのかは、実際に試してみないことにはなかなかわかりません。

    パーフェクトが提供する1対1のカウンセリング型サービス

    上記の動画で紹介しているのは、美容部員と消費者がスマホ越しに対話をする1対1のカウンセリング型サービスにバーチャルメイク機能を搭載したものです。消費者の肌色や好みに応じて美容部員が化粧品を提案し、遠隔操作で消費者の顔面にバーチャルメイクを施し、EC購入を促進するというサービスになります。

    実際にこのサービスを利用している国内の化粧品ブランドのなかには、消費者の平均購入単価が、実店舗を1万5000円上回るところもあります。まるで実店舗で美容部員と話しているような丁寧なカウンセリングを受けながら、実店舗よりも多くの色味を試せるので、消費者にとっても発見があり、アップセル・クロスセルにつながっているのではないかと考えています。

    ◇   ◇   ◇

    パーフェクトは、顔認証技術、AI(人工知能)、AR(拡張現実)を活用したバーチャルメイクアップ技術を開発・提供。グローバルで累計9億ダウンロードを超える、一般ユーザー向けのARビューティアプリ「YouCam メイク」や、同アプリを搭載したバーチャルメイクアップサービスを、ビジネスソリューションとして美容企業向けに提供。現在60か国以上、300以上のコスメブランドがパーフェクトの技術を採用している。

    「パーフェクト ブログ」のオリジナル版はこちら:美容業界における「DX」とは?(2021/3/17)

    ※本稿は『パーフェクト ブログ』の記事をネットショップ担当者フォーラム用に編集した記事です
    ※所属・役職はオリジナル記事公開当時のものです
    磯崎順信
    磯崎順信

    休業者が直接申請できる「休業支援金」の中小企業向け申請期限を5月末まで延長

    4 years 8ヶ月 ago

    新型コロナウイルス感染症の影響で勤務先から休業させられたものの、勤め先から休業手当を受け取れないといった労働者が直接、生活資金を申請できるようにする労働者向けの給付制度である「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(休業支援金)に関し厚生労働省は、中小企業向けの申請期限を5月31日(月)まで延長すると発表した。

    申請期限延長の対象は2020年4月~12月の休業分。2021年1~4月の休業分は現行通り7月31日(土)まで受け付ける。

    「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(休業支援金)に関し厚生労働省は、中小企業向けの申請期限を5月31日(月)まで延長すると発表
    「休業支援金」の延長について

    中小企業の選択によって雇用調整助成金を活用しない企業から休業手当を受け取れないといった労働者が直接現金を申請できる「休業支援金」は、中小企業・大企業の被保険者(労働者)に対し休業前賃金の80%(1日上限1万1000円)を、国が休業実績に応じて支給している。

    中小企業での日々雇用やシフト制で、実態として更新が常態化しているケースにおいて、事業主が休業させたことについて労使の認識が一致した上で支給要件確認書を作成すれば支給対象としている。

    大企業については、シフト労働者など(労働契約上、労働日が明確ではない労働者)が対象。

    なお、厚労省は5月以降の「休業支援金」の運用について、助成額を段階的に縮減していく方針。5月と6月の2か月間、原則的な措置について1人1日あたりの助成額上限を9900円まで減額する。

    感染が拡大している地域(まん延防止等重点措置対象地域の知事による基本的対処方針に沿った要請)については、地域特例を設け、助成額の上限を1万1000円にする予定。

    5月以降の「雇用調整助成金」特例措置、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(休業支援金)」についての運用方針
    5月以降の運用について
    瀧川 正実
    瀧川 正実

    横浜DeNAベイスターズの観客動員数を1.8倍にしたマーケティング戦略

    4 years 8ヶ月 ago
    2019年シーズンの年間来場者数228万人と過去最高を記録した「横浜DeNAベイスターズ」。観客動員数やグッズ売上を大きく伸ばしたベイスターズがこの先に描く成長戦略とは?

    DeNAグループに入って以来、2019年まで右肩上がりで成長を続けていた「横浜DeNAベイスターズ」。2019年の来場者数は過去最高の228万人と、グループに入る前に比べて観客動員数を約2倍に伸ばした。「球場は野球好きが集まる場所という固定概念を捨てて、家族や友だち、同僚と気軽に集まって楽しめる場づくりを徹底した」と語るのはDeNAベイスターズ 事業本部 MD部部長の原惇子氏。観客動員数を伸ばすために取り組んできたことや、ビジネス成長をけん引したグッズ販売の事例を解説する。

    チケット完売でなく球場に来てもらうことがゴール

    DeNA横浜ベイスターズ(以下、ベイスターズ)はチケットの完売でなく、実際に球場に足を運んでもらうことをゴールに、さまざまな施策に取り組んでいる。来場者が増えることで球場に熱気が生まれることはもちろんだが、理由はそれ以外にもある。原氏は次のように説明する。

    プロ野球の収益源は、①チケット収入②放映権販売③選手のユニフォームや球場内への広告④グッズや飲食による売り上げ――の4つに大別でき、観客数が増えると自ずとグッズ売上や広告価値も高まる関係にある。観客数にひも付いて各種の売り上げが増えるビジネス構造のため、観客動員数が非常に重要になる。(原惇子氏)

    横浜DeNAベイスターズ 事業本部 MD部 部長 原惇子氏
    横浜DeNAベイスターズ 事業本部 MD部 部長 原惇子氏

    2020年はコロナ禍の人数制限により観客動員数が伸び悩んだが、2019年シーズンは年間の座席稼働率が98.9%と極めて高い水準を維持している。

    ただ、ベイスターズが実施した神奈川県在住者を対象にした調査では課題も浮かびあがっている。

    回答対象者のうち横浜ベイスターズのファンと回答したのは15%。一方で応援しているチームが特になく、横浜スタジアムを訪れたことも、今後訪れる意向もない方は実に56%にもなった。神奈川県の人口は900万人と恵まれた環境ではあるものの、過半数以上がベイスターズや野球に全く接点がない層。この数字に対し危機感を持っている。(原氏)

    その打開策の1つとしてベイスターズが長年取り組んでいるのが、「『コミュニティボールパーク』化構想」だ。

    野球に興味がない人にも足を運んでもらえる球場に

    「『コミュニティボールパーク』化構想」とは?

    一言でまとめれば、横浜スタジアムを、「単なるプロ野球観戦の場」から、「プロ野球に興味がない人でも楽しめる場」へと変革する計画ということになる。

    たとえば、2019年に誕生した「NISSAN STAR SUITES(日産スタースイート)」もその一環だ。個室で食事を楽しみながら試合観戦できる特別席で、専用のバルコニーからは横浜の街を一望できる。ビジネス用途としても好評だという。

    スタンドエリアではより多様なニーズに応え、友人や家族などグループ観戦向けのボックスシート席やビールサーバー付きの席、靴を脱いで観戦できるボックスシート席なども設けられている。

    「NISSAN STAR SUITES(日産スタースイート)」
    「NISSAN STAR SUITES(日産スタースイート)」©YDB

    このほか、オリジナル料理の提供やイニング間のプレゼント投げ入れ、試合勝利時の花火打ち上げなど、野球のルールを知らなくても楽しめる企画を多数用意している。

    また、試合がない日には早朝にグラウンドを解放し自由にキャッチボールする場所を提供したり、横浜スタジアムの外周でオフィシャルパフォーマンスチームやマスコットによるイベントを催したりと、試合以外での接点づくりにも取り組んできた。

    集客に苦戦する春先ナイターが“大入り”のワケ

    前述した取り組みに加え、より集客効果を狙ったスペシャルイベントも行ってきた。とりわけ4月~5月の平日ナイターは、新年度の始まりと重なることや、ナイター観戦するには肌寒い時期であることから、客足が鈍る傾向にある。そのような状況を払拭する取り組みとして2017年にスタートしたのが、「BLUE☆LIGHT SERIES」だ。

    このイベントは、春先の平日ナイター3試合で大入りを達成するために立ち上げた企画。既存ファンかつ30~40代の働く男女をターゲットとして、翌年以降の集客につなげるため、SNSでの情報拡散を狙ってイベントの中身を設計していったという。

    横浜ベイススターズ 「BLUE☆LIGHT SERIES」
    「BLUE☆LIGHT SERIES」©YDB

    話題性を重視したゲストを招き、観客にはLEDで青く光るライトを配布。試合後にはステージイベントに合わせて観客もライトを振って一緒に歌って楽しめるようにした。その様子はSNSで次々と拡散。春先の平日ナイターにおける、集客の起爆剤として恒例イベントになった。(原氏)

    このほか、ベイスターズでは年間10種類ほどのスペシャルイベントを開催。女性に特化した企画を実施する「YOKOHAMA GIRLS☆FESTIVAL」や、“横浜・夏の一大イベント”として、球団創設初年度の2012年より実施している「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」など、短期的な動員効果や中期的なマーケティング効果を狙ったイベントを繰り返し開いているという。

    観戦価値を高める商品開発。グッズ売上は3倍に

    そのような取り組みだけでなく、グッズ販売などを展開するMD事業の強化も忘れてはならない。MD事業の売り上げは、9年間で3倍に増えた。これは、観客動員の伸び率をも上回る成果だ。

    好事例の1つとして、2017年に日本シリーズ進出を懸けた試合での取り組みがある。その試合で、来場者に青いタオルマフラーを配り、「ベイスターズと言えば青いタオルマフラーを持って応援」というスタイルが定着。以後、試合観戦に必須のグッズとしてタオルマフラーの売り上げが飛躍的に伸びた。

    横浜DeNAベイスターズのタオル
    横浜DeNAベイスターズのタオル ©YDB

    このほかにもMD部では、試合の象徴的な写真を販売する「BAY☆LIVE PHOTO」や、その日の選手のコメントをモチーフにしたTシャツやタオルをECで販売する「ハイライトグッズ」や、選手がデザイン・企画した「PLAYER PRODUCE」商品などを展開。さらにオフシーズンにはチームの裏側を描いたドキュメンタリー映像作品の映画放映・ディスク販売するなど、手掛ける内容は多岐に渡る。

    横浜DeNAベイスターズのハイライトグッズ例
    ハイライトグッズ例 ©YDB

    試合後の熱量冷めやらぬうちの商品を届ける。試合日以外にもベイスターズを身近に感じてもらう。オフ期間中次のシーズンが待ち遠しくなるような映画を提供する。これらすべてに共通しているのは、「目先の売り上げだけでなく、ファンとのコミュニケーションツールとなることだ。結果的に、中長期的なファン愛の形成にも貢献してきた」(原氏)。実際、売り上げ増の原動力となっているという。

    また、横浜スタジアム以外にも接点を作れるMD事業の特性を活かし、既存ファンに対する取り組みだけでなく、新規顧客開拓の役割も担っている。ベイスターズの選手やマスコットがパッケージになったスーパーマーケット向けのタマゴやLINEのスタンプなどを通じ、野球に関心のない層に対して意識的にアプローチしているという。

    守りから攻めに転じたデジタルの取り組み

    在庫リスクなくタイムリーに商品を投下

    EC事業においては、受注販売にも力を入れている。グッズ販売は試合の勝敗や選手の記録達成などに左右されるが、それを事業者側で把握・コントロールすることはできない。そこで在庫リスクを抱えず、大きな記録達成や突然の引退イベントなど熱量の高いタイミングで商品を投下できるよう、商品の性質によって受注販売に舵を切っているものもあるという。

    今のところMD売上におけるEC比率は約30%だが、「攻めのEC」(原氏)に転じ、売上比率を伸ばしていく考えだ。検討しているのは、チケット購入者とID連携を進め顧客の来場履歴に応じたグッズのリコメンド機能や、試合日に混雑する店舗ではなく、事前にECで注文した商品を球場内で受け取れる専用ブースの設置などだ。

    EC事業だけでなく、観戦体験のデジタル化も進めている。2020年はコロナ禍で観客動員に制限がかかるなか、ZOOMを利用したオンラインでの観戦イベント「オンラインハマスタ」を展開し、多い日で1000人の視聴があった。

    「オンラインハマスタ」のようす
    「オンラインハマスタ」のようす ©YDB

    今後、ベイスターズがさらなるビジネス成長を遂げるには、試合の日や球場内のみで売り上げを作る従来の発想から抜け出す必要がある。そこで近年私たちが進めているのが、球場内と球場外、試合日と非試合日を掛け合わせたそれぞれの領域で市場を作ることオンラインハマスタは、横浜スタジアム以外でもプラスの興行収入を得る新たな取り組みの一つになった。(原氏)

    さらに、KDDIとの「ビジネスパートナーシップ」の一環としてバーチャル空間上で横浜スタジアムを構築し、スマートフォンやパソコン、VRデバイスを使って球場の雰囲気を味わえる観戦体験「バーチャルハマスタ」の企画にも昨年度より取り組んでいる。これは5G×VR時代を見据えたトライアルでもある。

    スポーツビジネスが完全な状態に戻るには時間がかかるのではと不安もあるが、コロナ禍という逆風の中だからこそ始められる挑戦や発見もある。ここから新たな10年に向けて、新たな市場の開拓に挑戦していきたい。(原氏)

    清水美奈
    清水美奈
    確認済み
    1 時間 4 分 ago
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