2021年のNRF(全米小売業協会主催のリテール展示会「NRF Retail's Big Show」)では、コロナ禍により余儀なくされた迅速な対応、そこで何とか成果を出した米リテール企業の事例が多かった。NRF全体で焦点になっていたのは、ここ数年で小売り事業者が何をやってきたか、今何をするべきなのか――。NRFのセッションから、印象に残ったホームセンターチェーン「Lowe's(ロウズ)」、コストコの取り組みを紹介する。
コロナ禍で見えてきた“正しいDX”の形
印象深かったのはホームセンターチェーン「Lowe's(ロウズ)」のMarvin Ellison(マーヴィン・エリソン)代表取締役社長が、「The power of vision to reshape retail and the consumer experience(小売業と消費者体験を再構築するビジョンの力)」をテーマに語った内容だ。ロウズの2020年第3四半期(8-10月)の既存店売上高は、前年同期比で30%増だった。
ロウズのデジタル化の内容は、顧客が必要な商品を見つけるのに役立つ店舗ナビゲーションや、オンライン注文&店舗引き取り(BOPIS、Buy Online, Pick Up In Store)、カーブサイドピップアップ(車中受け取り)、使い勝手の良いロッカーピックアップ、そして24時間チャット対応のカスタマーセンターなど、特別新しいものではない。しかし、「それらが全て直感的にできる」ことに重きを置いている。
ドイツに本社を構えるソフトウェア会社「SAP」のセッション「Create a new retail world through experiences your customers value produced by SAP(顧客体験価値を通して新しい小売りの世界を創造する。Produced by SAP)」に登壇したメラニー・ノローニャ氏(エコノミストインテリジェンスユニット シニアエディター)は、コロナ禍による制限が緩和されても、新しいオンラインショッピング行動は続く可能性が高いとの調査結果を紹介した。
楽天は「楽天市場」出店者向けに、「Instagram」上のインフルエンサーと連携したマーケティング施策を行うための「MIHA Casting for Instagrammer」の提供を始めた。
「MIHA Casting for Instagrammer」は約5500人のインフルエンサーから適切な人材を選定し、自社の商品などに関する「Instagram」への投稿を依頼するまでをワンストップで行うことができる「楽天市場」出店者けマーケティングツール。利用料は月額5万円(税別)。依頼が成約した場合には、別途インフルエンサーに対する報酬が必要となる。
まとめると、
コロナの影響でリテールに大きな変化が起こっています。業界の区分が意味をなさなくなり、顧客体験の区分で競争が生まれます。これからは「異業種からの参入」は何の驚きもなくお隣にいる競合ということですね。さらに大きな変化としては購入後のデータを取ろうとしていること。これが取れると実際にどのように利用しようとしているのかがわかるので、商品とサービスの開発の参考になります。となると、サブスク的なつながりも必要になってきますよね。
「どんなにデータマイニングやデータ活用が優れていても、顧客にとってそれが快適なことであり信頼を得られなければ何の意味もない」。ウォルマートCOOのジェイニー・ホワイトサイド氏の言葉を忘れないようにしましょう。