ネットショップ担当者フォーラム

佐川グループと台湾大手EC「PChome」グループが提携、台湾向け越境ECサービスを提供

4 years 9ヶ月 ago

SGホールディングスグループの国際貨物事業、物流倉庫事業を担うSGHグローバル・ジャパンは、台湾最大のECモール運営会社であるPChomeグループ傘下の比比昂(bibian)と組み、台湾向け越境ECサービスの提供を始めた。

「bibian」と2月4日、台湾への販売と物流を一体化するサービス「BBチェックアウト」の提供を目的とした覚書を締結。日本企業に向けた「BBチェックアウト」の提供を開始した。

台湾最大のECモール運営会社であるPChomeグループ傘下の比比昂の羅薇琳(Lo Wei-Ling)社長、SGHグローバル・ジャパンの小山彰社長
左から比比昂の羅薇琳(Lo Wei-Ling)社長、SGHグローバル・ジャパンの小山彰社長

PChomeグループが運営する「PChomeオンライン」の会員数は1200万人超。注文後24時間以内に届けるショッピングサイト、オークションサイト、電子決済などのサービスを提供する台湾最大規模のECモール。

PChomeグループの「bibian」は台湾の消費者が手軽に日本製品を購入できる新サービス「BBチェックアウト」を開設。日本から台湾までの輸送を、SGHグローバル・ジャパンが担う。

また、SGHグローバル・ジャパンは台湾向け越境ECを検討している日本企業に「BBチェックアウト」を活用した販売支援を行っていく。

これまでは、日本や米国のモール型ECサイトなどの代理購入先を通していたため、リードタイムが課題になっていた。「BBチェックアウト」を利用することで手続きが簡素化でき、台湾消費者の手元に商品が届くまでのリードタイムを短縮することが可能になる。

石居 岳
石居 岳

【2020年の広告費】ネッ広告は2.2兆円でプラス成長、マスコミ四媒体広告は前年割れ。ECプラットフォーム広告は1321億円

4 years 9ヶ月 ago

電通が2月25日に公表した「2020年 日本の広告費」によると、2020年1~12月における日本の総広告費は前年比11.2%減の6兆1594億円だった。マイナス成長は、東日本大震災があった2011年以来、9年ぶり。

世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響による各種イベント、広告販促キャンペーンの延期・中止などが響いた。

電通の「2020年 日本の広告費」によると、2020年1~12月における日本の総広告費は前年比11.2%減の6兆1594億円だった
日本の総広告費の推移

一方、インターネット広告費はデジタル化の加速が追い風となり、同5.9%増の2兆2290億円。新型コロナによる消費低迷、広告出稿減少の影響はあったものの、他のメディアよりも回復基調が早かったという。

新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアのマスコミ四媒体広告費、プロモーションメディア広告費は前年割れ。インターネット広告のみプラス成長だった。

総広告費の内訳

電通が公表した「2020年 日本の広告費」総広告費の内訳 媒体別広告費(2018年~2020年)
媒体別広告費(2018年~2020年)

インターネット広告費

インターネット広告費のうち「運用型広告」は同9.7%増の1兆4558億円。巣ごもり需要でSNSやEC、動画配信サービスへの接触機会が増え、大手プラットフォーマーを中心とした運用型広告の需要が増加。マスコミ四媒体由来のデジタル広告における運用型広告の活用も進んだという。

マスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)の事業者が主体となって提供するデジタル広告は803億円。「新聞デジタル」が173億円(前年比18.5%増)、「雑誌デジタル」が446億円(同10.1%増)、「ラジオデジタル」が11億円(同10.0%増)、「テレビメディアデジタル」が173億円(12.3%増)。

「物販系ECプラットフォーム広告費」は同24.2%増の1321億円。「Amazon」や「楽天市場」といったECプラットフォームに出店している事業者がプラットフォーム内で投下した広告費となる。2019年の「物販系ECプラットフォーム広告費」の金額は1064億円だった。

マスコミ四媒体広告費

前年比13.6%減の2兆2536億円で、6年連続の減少。「新聞広告費」「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」はすべて大きく前年割れした。

「新聞広告費」は3688億円(同18.9%減)、「雑誌広告費」が1223億円(同27.0%減)、「ラジオ広告費」が1066億円(同15.4%減)、「テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)」が1兆6559億円(同11.0%減)。)

プロモーションメディア広告費

前年比24.6%減の1兆6768億円。各種イベントや従来型の広告販促キャンペーンの延期・中止に加え、外出・移動の自粛が影響し、通年で減少した。特に「イベント・展示・映像ほか」「折込」などが大幅に減少した。

「屋外広告」は2715億円(同15.7%減)、「交通広告」が1568億円(同24.0%減)、「折込」が2525億円(同29.1%減)、「DM(ダイレクト・メール)」が3290億円(同9.7%減)、「フリーペーパー」が1539億円(同27.1%減)、「POP」が1658億円(同15.8%減)、「イベント・展示・映像ほか」が3473億円(前年比38.8%減)。「その他、広告関連市場」の「商業印刷市場」は1兆7500億円(同12.1%減)だった。

なお、巣ごもり需要の増加で通販・ECの販促で利用される「DM」は、堅調に推移したという。

瀧川 正実
瀧川 正実

アフィリエイト市場は3,258億円(5.2%増)/ツーステップマーケティングのメリットとは?【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

4 years 9ヶ月 ago
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    2021/2/24
  8. サイト表示スピードの新指標「コアウェブバイタル」が5月スタート! GDO、ショップジャパン、IDOM、DNPが語るECサイトの対策

    表示スピード改善の新指標「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」が2021年5月からスタート。3つの新指標の内容やEC事業者が対応すべきこと、表示スピード対策は防衛予算だと考える理由について、ECサイトの表示スピード担当者が解説します

    2021/2/25
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    2021/2/25
  10. 「TikTok」が「2021年よりEC連携を本格的に強化」。「Shopify」と連携し、アプリストアに「TikTokチャンネルアプリ」を公開

    「Shopify」利用企業は「TikTokチャンネルアプリ」をインストールすると、「Shopify」のダッシュボード上から「TikTok For Business」の主要機能にアクセス、「TikTok」への広告出稿が可能になる

    2021/2/25

    ※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

    内山 美枝子

    「TikTok」が「2021年よりEC連携を本格的に強化」。「Shopify」と連携し、アプリストアに「TikTokチャンネルアプリ」を公開

    4 years 9ヶ月 ago

    ECプラットフォーム「Shopify」を運営するShopify Inc.とショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」は、日本市場での提携を始めた。

    「Shopify」アプリストアに「TikTokチャンネルアプリ」を公開。「Shopify」利用企業はこのアプリをインストールすると、「Shopify」のダッシュボード上から「TikTok For Business」の主要機能にアクセス、「TikTok」への広告出稿が可能になる。

    「Shopify」の管理画面から「Sales channels(販売チャネル)」→「TikTok」メニューを選択。掲示された手順に従うと「TikTok For Business」アカウントを開設できる。「TikTok For Business」アカウントを開設している企業は、そのアカウントを活用してひも付けすることが可能。

    ECプラットフォーム「Shopify」を運営するShopify Inc.とショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」は、日本市場での提携を始めた
    「Shopify」ダッシュボードのイメージ(画像は「Shopify」のブログからキャプチャ)

    「TikTokチャンネルアプリ」の主な機能は次の通り。

    TikTokピクセル

    コンバージョンのトラッキングをより迅速かつ簡単に行うことができる機能。ワンクリックでインストールし、接続することが可能。開発者によるセットアップは不要。

    TikTokキャンペーンのワンストップで実行

    「Shopify」ダッシュボードを離れることなく、「TikTokチャンネルアプリ」内で広告キャンペーンの作成、オーディエンスの設定、パフォーマンスのトラッキングが可能となる。

    クリエイティブ制作のサポート

    「Shopify」利用事業者が商品画像や動画をアップロードし、自動カスタマイズされたサンプルの中から選択するだけで、「TikTok」ユーザーに適した広告クリエイティブを制作することができる。

    ターゲティング機能(Advanced Matching)

    「TikTokピクセル」機能で、「TikTok」広告からのコンバージョンを効果的にトラッキング。それをベースにリターゲティングすることも可能となる。

    ECプラットフォーム「Shopify」を運営するShopify Inc.とショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」は、日本市場での提携を始めた
    「TikTokチャンネルアプリ」の利用イメージ

    「TikTok For Business」は、2021年よりEC連携を本格的に強化

    Shopifyの地域統括マネージングディレクターであるショーン・ブロートン氏と、TikTok For Business Head of Global Business Solutions, Japanの西田真樹氏は今回の連携に関し、以下のようにコメントしている。

    ショーン・ブロートン氏のコメント

    昨年、2030年に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)のトレンドが10年前倒しとなったことを実感しました。私たちは、eコマースブームの一翼を担う地元に根付いた事業者(マーチャント)が、消費者が好むプラットフォームやチャネルで簡単にそして楽しく交流できることを嬉しく思っています。

    西田真樹氏のコメント

    「TikTok For Business」は、2021年よりEC連携を本格的に強化していきます。その一環として、昨年の米国での提携に続き、日本においてもShopifyとの提携を開始いたします。

    2020年に実施しましたTikTokユーザー白書調査によると、昨今の生活様式の変化に伴い、購買行動は従来のように「認知」「興味」「比較・検討」「購入」というファネルを順に辿るのではなく、「興味」からダイレクトに「購入」へとつながる「興味突破」へシフトしていくと考えられます。

    今回、「Shopify」と「TikTok」との提携により、「Shopify」を利用する事業者が「TikTok For Business」のプラットフォームを活用し、新たなオーディエンスとつながることで、更にビジネスを成長させていくためのチャンネルを提供できることを嬉しく思います。

    瀧川 正実
    瀧川 正実

    トライベックのMAツール「HIRAMEKI XD」と「Shopify」がAPI連携をスタート

    4 years 9ヶ月 ago

    デジタルマーケティング支援のトライベックは2月24日、マーケティングオートメーション(MA)ツール「HIRAMEKI XD(ヒラメキクロスディー)」と「Shopify(ショッピファイ)」をAPI連携し、顧客情報や商品情報を自動でインポートするオプション機能の提供を始めたと発表した。

    「HIRAMEKI XD」は、リテンション施策やエンゲージメント分析などBtoC-EC領域に特化した「XD.COMMERCE(クロスディーコマース)」、BtoB領域でも活用できる基本機能を搭載した「XD TARGET(クロスディーターゲット)」で構成。目的や用途に応じた企業のOne to Oneマーケティングをサポートしている。

    「Shopify」で運営しているECサイトが「HIRAMEKI XD」を活用するためには、会員情報や商品マスターのインポートといった編集・連携作業が必要で、マーケティングやCRM施策をスタートさせるための初期設定などに時間がかかってしまうという課題があった。

    連携オプション機能を利用すると、マーケティング担当者やシステム担当者の作業を必要としていた領域での作業負荷を軽減。システム導入に関する費用、マーケティング施策を実施するまでの期間短縮が実現できるという。

    デジタルマーケティング支援のトライベックは、マーケティングオートメーション(MA)ツール「HIRAMEKI XD(ヒラメキクロスディー)」と「Shopify(ショッピファイ)」をAPI連携し、顧客情報や商品情報を自動でインポートするオプション機能の提供を始めた
    「HIRAMEKI XD」と「Shopify」の連携イメージ

    「HIRAMEKI XD」と「Shopify」のAPI連携オプションを利用する企業は、次の3つのデータを指定して連携することができる。

    • 会員マスター連携
      「Shopify」に登録されている会員情報を日次でMAツールに自動連携
    • 商品マスター連携
      「Shopify」に登録されている商品情報を日次でMAツールに自動連携
    • 購買情報連携
      「Shopify」で作成したサイトで発生する日々の購買履歴情報を日次でMAツールに自動連携
    瀧川 正実
    瀧川 正実

    アスクルが通販売上の一部を東北3県の事業者に出資、持続可能な支援をめざす新たな東日本復興支援

    4 years 9ヶ月 ago

    アスクルはBtoB通販で展開する特定商品の売り上げの一部を、東日本大震災で被災した岩手県・宮城県・福島県の事業者へ出資に充てる新たな東日本復興支援を始める。

    「ASKULサービス」で販売するオリジナルデザイン商品の半年間における売上高の1%を東日本復興支援に回すが、0.5%は対象商品の製造メーカーが寄付金、アスクルは0.5%を出資金に充当する。

    売り上げの一部から捻出したアスクルの出資金は、インパクト投資プラットフォーム「セキュリテ」(ミュージックセキュリティーズが運営)を通じ、インパクト投資(社会課題解決をしながら投資のリターンをあげる投資行動)として対象事業者を公募。個人投資家からも出資を募る。

    アスクルはBtoB通販で展開する特定商品の売り上げの一部を、東日本大震災で被災した岩手県・宮城県・福島県の事業者へ出資に充てる新たな東日本復興支援を始める
    新たな東日本復興支援のスキーム

    持続可能な支援をめざすため、寄付に加えインパクト投資での支援も加えた。出資、寄付を通じた支援を事業者に対する新たな復興支援策として展開。これまでアスクルが実施してきた東日本復興支援企画における過去実績から500~700万円(寄付とインパクト投資合計)程度を見込む。

    アスクルとミュージックセキュリティーズは、現地の活性化や社会課題解決をめざす事業を支援する。“必要なところに必要な支援”を届けるために、支援先の決定は公募の上、審査を実施。公募期間は2月22日~4月30日。6月30日には支援先を決定し、11月上旬にも支援を実施する。

    支援対象事業は以下の通り。

    • 岩手県・宮城県・福島県で実施する事業であること
    • 地域活性化に貢献する事業や社会課題の解決に資する事業であること
    • 資金調達の募集開始以降に資金を使用する事業であること
    • 支援事業による地域や社会課題への成果についてモニタリングを実施し、出資者への報告を実施すること

    「セキュリテ」は1口数万円の少額から出資できるインパクト投資プラットフォーム。経済的なリターンだけではなく、創業や中小企業支援による産業振興・地域創生、インディペンデントな創作活動と研究開発、環境問題の解決、震災からの復興など、地域で抱える社会的な課題に対し、出資を通じて解決しようとする経済的な価値と社会的な価値の両方を追求する新しい投資の仕組み。

    アスクルとミュージックセキュリティーズはそれぞれ、東日本大震災発生以降、被災地復興のための支援活動を実施してきた。東日本大震災の発生から間もなく10年が経過する。地域に根差し、これからの東北3県を築いていく役割を担う事業者へ、寄付とインパクト投資による資金の提供を新たに協力して開始することにした。

    石居 岳
    石居 岳

    サイト表示スピードの新指標「コアウェブバイタル」が5月スタート! GDO、ショップジャパン、IDOM、DNPが語るECサイトの対策 | 勝手にスピードテスト Powered by SpeedCurve

    4 years 9ヶ月 ago
    表示スピード改善の新指標「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」が2021年5月からスタート。3つの新指標の内容やEC事業者が対応すべきこと、表示スピード対策は防衛予算だと考える理由について、ECサイトの表示スピード担当者が解説します

    Googleが2020年に発表した表示スピード改善のための新しい指標「コアウェブバイタル」。2021年5月から検索のランキング要因に組み込まれることになり、EC関係者の関心は急激に高まっています。

    「コアウェブバイタル」についての解説を踏まえ、表示スピードにおいて「抜群に速い」とされるECサイト、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)、IDOM、ショップジャパン、大日本印刷(DNP)の担当者4人と「コアウェブバイタルとは何なのか」「どのように取り組んでいるのか」についてディスカッションしました。

    ■今回の疑問・課題

    • 新しい指標として登場した文字記号は何を意味しているのか?
    • 本当に検索結果の表示順位に影響するのか?
    • 様子見は許される? 今すぐに対応すべき?
    • コアウェブバイタルの情報感度が高いEC事業者の担当者は何を考え、どう対応しているのか?

    ディスカッションに参加したのは種村和豊氏(GDO シニアプロダクトマネージャー)、村田創氏(IDOM Webマスター)、福崎真生氏(ショップジャパン)、近藤洋志氏(大日本印刷・honto)と、筆者の占部雅一(ドーモ)の5人。事業会社の4人は自負を持って表示スピード対策に取り組んでいるECサイトの表示スピード担当者です。

    「コアウェブバイタル」とは何か?

    「コアウェブバイタル」のSEOランクへの対応というGoogleの計画は、2018年7月の「スピードアップデート」以来、3年ぶりの大きな動きとなりそうです。今までの指標だった「Backend」「Startrender」「SpeedIndex」から、新たな3つの指標「LCP(Largest Contentful Paint)」「FID(First Input Delay)」「CLS(Cumulative Layout Shift)」に変わります。

    また、今回のSEOランクの対象はスマートフォンで、デスクトップサイトは対象外となっています。ほぼモバイルにシフトしているため、妥当だと感じます。

    新たな指標を設けた背景には、GoogleがWebサイトに対して「速いだけではなく、本質的に使いやすいUX」を追求したいという意図があるようです。

    Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
    3つの新指標「LCP(Largest Contentful Paint)」「FID(First Input Delay)」「CLS(Cumulative Layout Shift)」
    • LCP(Largest Contentful Paint):メイン画像の表示の速さ
    • FID(First Input Delay):最初にアクションを起こしてから、どれくらい反応が鈍いのか?
    • CLS(Cumulative Layout Shift):レイアウトのずれ、特に高さ

    バイタル(Vitals)の意味は「重要なもの、本質的なもの」を表します。つまり「Webの本質とは何か?」という意味です。

    「わかりやすいサイト」がGoogleとユーザーに必要

    IDOM 村田創氏(以下、村田):「コアウェブバイタル」が登場した意味を考えていましたが、3つの新指標を向上させるということは、Googleとユーザーにとって、アクセシビリティと同じくらい重要なんですよね。

    それは、「Webサイトが秩序のある動きでなければ、検索を利用したときの体験が良くない」からです。つまり、GoogleのBotがWebを読みに行ったときに、さらにわかりやすいサイトが必要なんですよ。Googleもユーザーも求める方向は同じです。

    ドーモ 占部雅一氏(以下、占部):LCP(Largest Contentful Paint)は、メイン画像の表示の速さ。たとえばECだとイチオシの商品を売りたいので、画像を大きく表示します。しかし、メイン画像が遅いと売り上げにも直結しそうなので、早く表示されないといけません。

    ショップジャパン 福崎真生氏(以下、福崎):FID(First Input Delay)は初回入力の遅延の具合。つまりスマホのボタンを押した後に、どれくらいで反応できるかです。

    今回、インタラクティブ性の対策の対象がTTI(Time To Interactive、インタラクティブになるまでの時間)からFIDになりました。これまでは、TTIを改善するならページロードにおける最後のロングタスク(初期段階に起こる重たい処理)から潰していけば良かった。さらに言うなら、ロングタスクに手を加えなくても結果としてTTIが改善することがあったんです。

    しかし、FIDになると「ロングタスクの総時間」となります。そのため、部分的な対策や小手先の対策ではなく、しっかり全体最適を行う必要があります

    ゴルフダイジェスト・オンライン 種村和豊氏(以下、種村):サイト運用者側からすると、「Page Speed Insight」のスコア評価と比べて、よりごまかしが効かない指標になったと感じています。操作性を表す指標として、前よりも厳密に対応しないといけない。

    ユーザーと向き合って対応しなければならない

    大日本印刷 近藤洋志氏(以下、近藤):もう1つの見方ですが、昔は他社と比べて速く表示させることに注力してきました。しかし、今回のアップデートで「使ってくれるユーザーに対してどう対応させるか?」ということを、ユーザーと向き合って対応しなければならないユーザーの実体験の性能が、今回の指標に組み込まれていると考えます。

    占部「Page Speed Insight」「サーチコンソール」「Lighthouse」などの表示スピード計測ツールは、「コアウェブバイタル」という指標を入れてきています。これだけでもGoogleの本気度の高さがわかります。

    村田「無視するな」というシグナルなんでしょう。TTIやFIDは「Lignthouse」でも測れる。ただ、その評価値ですがLCPは25点、CLSは5点、FIDには点数がない!

    検索エンジンは、クローラーがWebサイトを回遊し、インデックスでランクづけします。クローラーがアクセスした時に、レンダリングの性能が悪いサイトページは「次回以降レンダリングしなくて良い」と判断されてしまいます。その先のインデックス化まで辿り着けなくなるわけです。

    Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
    写真左上から時計回りに、種村和豊氏(ゴルフダイジェスト・オンライン シニアプロダクトマネージャー)、村田創氏(IDOM Webマスター)、福崎真生氏(ショップジャパン)、近藤洋志氏(大日本印刷 ・honto)

    CLSは「高さのズレ」を表す

    占部:CLS(Cumulative Layout Shift)のレイアウトずれ、がやや難解ですよね。直訳すると「累積レイアウトシフト」ですが、よくわかりません(笑)

    村田:レンダリングするときに高さが変わることですね。たとえば、スマホでボタンを押したつもりがもっと上を押していたという経験です。わかりにくいけど、たくさん発生している。

    種村:CLSは操作性と言って良いのでしょうか。僕なりに解釈してみましたが、CLSはスコアリングではないと思っています。

    Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
    カルーセルでのCLS可視化観点の例(Amazon)
    JS(JavaScript)によるカルーセル実装の場合、ユーザ操作性は良好だが、ページで「要素が変更する範囲が大きい」のでCLSスコア影響は悪い。CSSの要素変更で対応するアニメーションだとレイアウトシフトは最小限と判断、スコア低下を回避できる

    計測ツール「SpeedCurve」を使った比較ですが、左のサイトはJS(JavaScript)を使ったカルーセル(画像などのコンテンツを横にスライドさせる表示方法)の場合です。レイアウトのズレが大きいので、警告メッセージが出ます。

    しかし、右のサイトは同じカルーセルですが、CSSで書き換えた場合は警告が出ません。カルーセルはユーザーにとって操作性は良さそうですが、Googleは「レイアウトのズレという観点では良くない」と考えているようですね。

    村田:IDOMは2020年末から外し始めました。とにかくJSに頼ると良くないです。

    福崎:「ショップジャパン」のサイトはレスポンシブWebデザインですから、CLSの対策をする上でどうしても非効率になってしまうところがあります。また、JSもところどころネックになっています。

    「FlexSlider」などのライブラリー(汎用的な複数のプログラムを1つにまとめ、他のプログラムから利用できるようにしたもの)で作ったパーツなどは、スクリプトの処理自体に非常に時間がかかっています。もちろんCLSにも影響があり、困りました。

    種村:これもロングタスクと関わってきますが、クライアント側に処理させているから負荷が大きい。不動産サイトなどは、特にスマホでやり過ぎている状況です。

    占部:そんなに多いのですか?

    村田:CLSは頻繁に起こっています。アドセンスがわかりやすいですが、最初に表示されて後から平気で下がる。これが発生するのは広告ですね。元々広告を表示する想定になっていないページだと、後から穴を空けることになるから確実にずれます。

    占部:解決方法はあるのでしょうか?

    村田:手っ取り早いずるですが、下駄を履かせること。つまり、テンプレートで高さを固定してしまうのです。実装すると、結局後から表示されるけど高さは変わらない。

    近藤:私もやってみましたが、スコアは良くなりますね。領域を明示的に確保してCLSスコアは良好になります。

    レスポンシブWebデザインは圧倒的に不利になる

    種村:コアウェブバイタルは、レスポンシブWebデザインにとって圧倒的に不利です。CLS対策をレスポンシブで実際にやるとなると、高さの固定は実装ハードルが高い。たとえば、母数の多いサファリだけ固定して他のブラウザは放置する、どこかのデバイスを諦めるなど、何かを諦めないといけない。

    占部:大規模なECならともかく、SMB(Small and Medium Business、中小企業のこと)では多くのサイトがレスポンシブWebデザインで作られています。また、ECカートも標準でレスポンシブWebデザインで対応しているところが多いですよね。SalesForceの「コマースクラウド」もレスポンシブです。

    種村:レイアウトシフトが起こるカートがたくさんありますね。だから、SalesForceはSPA(Single page application)化しようとスマートデバイス最適化サービスのMobifyを買収したのかもしれません。

    占部:Googleは、かつてレスポンシブWebデザインをモバイルファーストの推奨Webとしていましたが、今になって駄目だと言っている。

    福崎:「ショップジャパン」のサイトはレスポンシブWebデザインなんです。2018年ごろはまだ推奨ムードがありましたが、今になっては制約が多いやり方になってしまった。

    占部:レスポンシブWebデザインは元々スピードに課題があったし、今回はスコアが悪くなる。Googleは、レスポンシブWebデザインを完全に葬ろうとしているのでしょうか?

    村田:そこでAMP(Accelerated Mobile Pages)です。

    種村:モバイルシフトはほぼ完了しているから、レスポンシブWebデザインの役目は終わりつつある。今後、大規模ECサイトはセパレート、もしくはSPA化です。

    占部:もし、レスポンシブWebデザインのサイトのSEOランクが大幅に下がってくると、多くのサイトは大変ですね。

    カルーセルは効果ある? 見た目だけのギミック?

    占部:少し話がそれますが、JSで動くカルーセルは効果があるからやっているのか、それとも見栄えが良いからやっているのか、どちらなんでしょう?

    種村:日本のEC、Webサイトはカルーセルが多い印象です。海外のEC、Webサイトを調べた限りではカルーセルがそこまで多用されている印象がなくて、日本の慣習なんでしょうかね。

    福崎:「ショップジャパン」のサイトはA/Bテストをたくさん行い、効果があるところはカルーセルにしています。ただし、CSSでできるシンプルなデザインのカルーセルにするなど、実装の仕方は工夫しないと、と思ってます。

    近藤:DNPも効果があった場所は採用しています。コンバージョンが取れているところには入れていますから、やはり使い分けです。

    村田:ライブラリーはたくさんあるし、JS以外の方法でもやり方はありますよ。しかし、エンジニアは新しいやり方にチャレンジしようとしない、これが問題。

    種村:8~9割のサイトは少し古いJSライブラリー、JQueryなどを多く作っているのではないでしょうか。

    CLS的には、実際にどうなるか見てみたい。ただ、「JSの処理時間をクライアントブラウザ側で増やすことは、CPU処理速度の点でも不利なのは間違いないので、マイナス要素はあってもプラスはない」。これは断言できると考えています。

    5月までに対策を間に合わせて、様子をみたい

    占部:コアウェブバイタルの対応状況を教えてください。コアウェブバイタルのアラートはどんどん迫っている感じがしますが、対策はどの程度まで進んでいますか?

    近藤:今はCLSがほとんど真っ赤(不良)なので、ここを改善する予定です。2020年末に一部対応して効果が見込めたので、ステップをつなぎながら対応していく予定。クローラーに読み込まれるのに1か月かかるので、4月中には終わらせたい。

    福崎:2020年度の下期から対策を始めたばかりですが、ほぼクリアしている項目もあります。まずは、3項目すべてにおいてオレンジ(改善が必要)にするよう改善に努めています。

    LCPはほぼクリアしていますが、CLSは赤、FIDは赤が多いので対策を進めています。

    Google コアウェブバイタル 表示スピード SEOランク ドーモ 新しい指標 LCP FID CLS
    「LCP(Largest Contentful Paint)」「FID(First Input Delay)」「CLS(Cumulative Layout Shift)」の合格基準

    村田:IDOMは常に表示スピード改善を行い続けています。コアウェブバイタルへの特化は2020年秋から始めています。少なくとも各指標の赤を減らす、ライバルよりも赤を減らすことです。

    種村:(IDOMの)「ガリバー」のサイトは、こちらが見なくてもライバル企業がしっかりモニタリングしていますよ(笑)。だからこそ、赤の放置はない。対策の目安としては、落としどころはオレンジで赤は駄目です

    表示スピード改善は、防衛予算として組むべし!

    占部:5月にどれだけ変化が訪れると予想していますか? 今までのアップデートのようにじわりと始まって、どんどんアクセルを踏んで来ると思えます。

    福崎同じくらいの評価のサイトがあった場合のタイブレーカーとして機能するなら、すぐに大がかりな影響は出てこないと思います。

    むしろ危惧しているのはその先で、SEOロジックだけでなくブラウザやSERP(Search Engine Result Page)のアップデートを加えた一連の流れとして表示スピード改善を迫られる可能性が高いと考えています。

    近藤:今回のアップデートのアナウンスは、早い段階で新指標や実施時期などの情報公開がしっかりありました。今までのアップデートと同じか、それ以上だと考えています。

    そのため、様子見の部分もありますが、自社サイトにネガティブ要素として捉えられるものはなくしたい。

    村田:僕は「ランクに影響しないわけがない」と考えています。

    タイブレーカーの話がありましたが、我々は同じレベルのライバルと戦っていて、その相手が何もしないわけがない。プラスで考えるのではなく、アルゴリズム対応は、対応しなければ下がるだけと考えています。だから表示スピード改善の予算は、防衛予算としてしっかり取るべきと考えています。

    占部:ライバルが対策することを想定して、ライバル以上の対策を考えるわけですね。コアウェブバイタル対策は、絶対指標へのチャレンジや数値目標ではなく、駆け引きの相対の対策として考えないといけないわけですね。

    まとめ

    今回のディスカッションで、大手ECサイトの担当者に最前線の対策について貴重な話を聞くことができました。思った以上に真剣に取り組まれているのは、SEOランクに影響が考えられることが1つの理由ですが、それ以上に「サイトを良くしてくいく=UXを良くしていく」ことが、Googleのめざす方向とサイト担当者の理想が同じ方向を向き始めているからだと言えます。

    今後は小手先のSEO対策がほぼ消えて、まっとうなサイトをコンテンツ・Webともに作ることが勝負の分かれ目になってくる。コマがまた1つ進んでいることを感じました。

    占部 雅一
    占部 雅一

    スターバックスなどの事例に学ぶ、顧客獲得とリピート化に役立つ4つのマーケティング手法 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

    4 years 9ヶ月 ago
    ブランドが新しい戦略で新規顧客を引きつけ、その後もリピートしてもらうためにはどうしたらいいのでしょうか? 海外事例からその手法を見ていきます

    競争が激化し、どのブランドも新規顧客の獲得に苦戦していますが、顧客の定着化はさらに困難になっています。顧客を惹きつけリピート客になってもらえるような、新たな戦略を立案できる革新的な企業だけが今後も生き残れるでしょう。ブランドが顧客獲得とリピート化においてよりクリエイティブにならざるを得なくなってきている環境下、さまざまなアイディアを実践している事例を見ていきます。

    新規顧客獲得に向け、テクノロジーを取り入れる

    顧客を獲得し、リピート顧客になってもらうことは、小売業の収益性を高める上で非常に重要です。すべての小売事業者にとって新しい顧客は必要ですが、飽和した市場で新しい顧客を獲得するには創造力が欠かせません

    ブランドは毎日、さまざまなマーケティングチャネルを使って顧客にアピールするための新しい方法を試しています。しかし、インバウンドマーケティング&セールスのソフトウェアを提供する「Hubspot」によると消費者の71%はソーシャルネットワーク上のスポンサー広告をもう信用していないそうです。

    • 81%が企業からのアドバイスよりも友人や家族のアドバイスを信頼している
    • 55%が以前と同じように購入先の企業を信用しなくなった
    • 65%が企業のプレスリリースを信用していない
    • 69%が広告を信用しておらず、71%がソーシャルネットワーク上のスポンサー広告を信用していない

    つまり、興味喚起できていなければ、お金を無駄にしていることになります。

    消費者の目を引く1つの方法は、テクノロジーを取り入れることです。顧客獲得にテクノロジーを取り入れることが、重要なマーケティングトレンドになっており、多くのブランドが最新技術を使い始めています。2021年に役立つ、クリエイティブな顧客獲得と囲い込み戦略を紹介します。

    動画マーケティング:ブレンダーD2C「Blendtec」の事例

    動画マーケティングは、ここ数年で増加傾向にあります。コンピュータネットワーク機器開発の「Cisco」によると、2022年までに、オンライン動画は消費者のインターネットトラフィックの82%以上を占めるそうです。

    動画を適切に利用して新規顧客や売り上げを獲得している企業の1つが、ブレンダーを製造するD2Cブランド「Blendtec」です。このブランドの動画マーケティング戦略は、基本的でありながらも大変クリエイティブです。「Will it Blend?」の動画シリーズを通して、彼らのミキサーがどれほど効果的かを消費者に知らせています。

    ブレンダーを製造するD2Cブランド「Blendtec」のサイトトップページ
    ブレンダーを製造するD2Cブランド「Blendtec」のサイトトップページ(画像:サイトよりキャプチャ)

    クルマの鍵や携帯電話など丈夫なモノも混ざるかどうか? つまり、ブレンダーがそれらを破壊できるかどうかも実験しています。Blendtecは2006年からこの動画施策を行っていますが、このマーケティング戦略は今でも効果的です。彼らのアプローチはシンプルで、商品に関するストーリーを伝えることでエンゲージメントを高める、というものです。動画は、より良いストーリーを伝えるのに役立ちます。

    「Will it Blend?」の動画シリーズ。クルマのカギを使った実演動画

    消費者のトレンドを鑑みると、動画マーケティングの重要性は、今後数年間でより重要になるでしょう。動画コンテンツは魅力的で消費しやすく、より多くの顧客を引き付けることができます。

    紹介プログラム:グループ注文の「Ritual」のサービス例

    紹介プログラムはコストを低く抑えられ、質の高い顧客につなげるための、ベストな顧客獲得戦略の1つです。消費者は、多くの企業が使用しているスポンサー広告に辟易しています。研究によると、消費者の92%は知人・友人からの紹介を信頼しています。興味深いことに、企業の新しい取引の65%は紹介によるものです。

    特に2021年は、より多くのブランドが有料広告にお金をつぎ込むようになるため、どの企業も顧客獲得により真剣に取り組む必要があります。

    「Ritual」は、ユーザーが友人や同僚のためにグループ注文をすることができる紹介プログラムです。ユーザーは、アプリを使って注文をするたびにポイントを獲得できます。これらのポイントは、地元のレストランで1ドルランチなどに交換可能です。そして紹介するたびに、ユーザーは1000ポイントを獲得できます。

    「RItual」のサービス内容
    「RItual」のサービス内容(画像:サイトからキャプチャ)

    「Ritual」のプログラムを魅力的にしているのは、顧客の利便性に配慮していることです。オフィスやコワーキングスペースにいる人にとっては特に、グループ注文機能が大変便利です。

    顧客の定着化:シニア向けD2Cブランド「Because Market」の事例

    既存顧客を維持することが、ビジネスの要です。顧客の定着化は、ビジネスにより多くのお金と安定をもたらします。現代の消費者はとても洗練されているので、企業はクリエイティブでなければなりません。

    「Because Market」は、尿漏れやその他特殊なニーズを持つ高齢者の支援に焦点を当てたD2Cブランドです。「Because Market」の特筆すべきポイントは、顧客が購入プロセスで直面するストレスを軽減したことです。

    「Because Market」のサイトトップページ
    「Because Market」のサイトトップページ(画像:サイトよりキャプチャ)

    彼らは、最も繊細な顧客のニーズもキャッチするため、機械学習アルゴリズムに人的サポートを加えた、“ソーシャルでインテリジェントな”カスタマーサービスを構築しました。通常、小売事業者は繊細で重要な情報を、日常的なカスタマーサービス業務の中で忘れてしまいます。「Because Market」はデータから読み取れる、それらの貴重な顧客ニーズを基にして商品を設計しているのです。

    顧客は、自宅にいながらにして商品を選ぶことができます。そして、「Because Market」が膨大な数の商品を、目立たないように届けてくれます。少額の手数料は発生しますが、顧客は複数の商品やサイズを試してみて、最適なモノを選ぶことができます。

    このシンプルな戦略により、「Because Market」は2017年の創業以来、20万人の顧客に8,000万点以上の商品を販売しています。

    データに基づいたロイヤルティプログラム:スターバックスの事例

    ロイヤリティプログラムは、顧客維持のための最も確実な方法の1つです。研究によると、強力なロイヤルティプログラムを導入している企業は競合他社の2.5倍のスピードで収益を伸ばし、株主に100%から400%の高いリターンをもたらしていることがわかっています。

    ロイヤルティプログラムをさらに効果的にするためには、データを活用する必要があります。消費者データを利用することで、顧客にパーソナライズされた体験を提供することができるのです。

    「STARBUCKS」のリワードプログラムは、売り上げの40%を占めていると言われていますが、その仕組みは以下の通りです。顧客は、1ドルごとに2つの星を獲得。25ポイントに到達すると、お好みの特典を受け取ることができます。

    「STARBUCKS」のリワードプログラム案内ページ
    「STARBUCKS」のリワードプログラム案内ページ(画像:サイトよりキャプチャ)

    「STARBUCKS」は、顧客の誕生日にはパーソナライズされたメッセージを送り、購入したばかりの商品と似たような商品もおススメします。また、モバイルアプリを使って簡単に特典を交換できるようにしています。

    ◇   ◇   ◇

    2021年以降は既成概念にとらわれず、顧客を第一に考えて戦略を展開するブランドには、良い結果が待っていることでしょう。ご存じの通り、顧客を引き付けることと、顧客に定着してもらうための施策は別物です。

    1つの戦略だけでは十分ではありません。現代の消費者は、自分たちのペインポイントを解決するための完成された商品、優れたショッピング体験、そして使い続けるためのインセンティブを求めています。簡単ではありませんが、それらに取り組めばEC業界で勝つことは可能です。

    この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

    Digital Commerce 360
    Digital Commerce 360

    「カラーミーショップ」で簡単にライブコマースが行える「ライコマ for カラーミーショップ」提供開始

    4 years 9ヶ月 ago

    月額制ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」のGMOペパボとThe Unit、Liver Bankの3社は、2月17日から「カラミーショップ」利用店舗用アプリケーションプラットフォーム「カラーミーショップ アプリストア」にて、ライブコマースパッケージ「ライコマ for カラーミーショップ」の提供を開始した。

    「ライコマ for カラーミーショップ」とは

    The UnitとLiver Bankが共同で提供するライブコマースパッケージ「ライコマ」を「カラーミーショップ」利用店舗向けに提供するアプリ。

    The Unitがツールの提供と企画・配信などを行い、Liver Bankが運営する育成型ライバープロダクション「pino live」に登録しているライバーやインフルエンサー、タレントなどをキャスティングする。

    ライブコマースに必要な機能をパッケージ化しているため、ライブ配信に詳しくない、企画経験がない店舗でも簡単にライブコマースを行うことができ、集客力や売り上げ向上を図ることができるという。

    GMOペパボ カラーミーショップ ライブコマース ライコマ for カラーミーショップ The Unit Liver Bank
    「ライコマ for カラーミーショップ」の提供を開始

    同アプリ導入で利用できる主な内容は下記の通り。

    • 運用中のカートとの連携
    • ライブコマース配信画面上でカートへの商品追加
    • リアルタイムでのチャット機能
    • 配信画面へのポップアップや通知の表示
    • いいね投稿機能
    • 視聴者の行動データ収集

    利用金額は月額3万3000円(税込)で、「視聴人数×平均視聴時間(分)×1.5円」の従量課金が発生。また、動画内容の企画提案、インフルエンサーやタレントのキャステイング、PR・広告戦略を利用する場合は別途料金が発生する。

    藤田遥
    藤田遥

    特定のECサイトで買い物すると最大15%の現金を還元する「C」とは? レシート買取サービスのWEDが手がける新サービス

    4 years 9ヶ月 ago

    レシート買取アプリ「ONE」を提供するWEDは2月17日から、特定のECサイトで買い物すると購入額の最大15%を現金で還元する買い物サービス「C」(シー)を開始した。

    「C」と提携する買い物サイトで商品を購入した場合、購入商品価格に対して最低で2%、最大で15%を現金で還元する。

    「ファッション」「お出かけ」「ギフト」「グルメ」「家具/家電」の5つのカテゴリーで31のブランドと提携(2021年2月10日時点)。「宅麺」「紀文」「cake.jp」「小僧寿し」「ANAP」「L'OCCITANE」「アルペン」「スーパースポーツゼビオ」「Combi」などが「C」に参加している。

    レシート買取アプリ「ONE」を提供するWEDは2月17日から、特定のECサイトで買い物すると購入額の最大15%を現金で還元する買い物サービス「C」(シー)を開始
    「C」(シー)のサービス内容

    消費者は「C」に電話番号を登録、「C」経由で提携サイトに移動し商品を購入すると、現金を還元するアフィリエイトの仕組みを採用している。自動的にサービス上でポイントではなく、現金を還元する。サービスの利用や出金などにかかる手数料は無料。会員制サービスだが、会員費用などは発生しない。

    サービス利用で現金がたまっていく仕組みは、WEDが提供するレシート買い取りアプリ「ONE」の系譜を継ぐものになる。「ONE」は2018年6月にサービスを開始。アプリ上のカメラでレシートを撮影すると、それをWEDが最大10円で買い取っている。

    レシート以外の画像買い取り、「ONE」上の残高を使って商品の引き換えチケットと交換できる「ONE TICKET」などの機能を追加。2020年11月にはアプリインストール数が100万件を突破した。

    レシート買取アプリ「ONE」を提供するWEDは2月17日から、特定のECサイトで買い物すると購入額の最大15%を現金で還元する買い物サービス「C」(シー)を開始
    100万DLを超えた「ONE」

    2020年12月には、ECアプリでの買い物時に発行される領収書データを買い取るサービスもスタート。ショッピングアプリ、デリバリーアプリで注文した領収書や購入明細画面のスクリーンショットを、1枚につき最大10円で買い取っている。対象は、ショッピングアプリが「Amazon」「楽天」「ZOZOTOWN」。デリバリーアプリが「Uber Eats」「出前館」「Wolt」「Chompy」「menu」。

    石居 岳
    石居 岳

    デジタルシフトで買い物行動はどう変わる? 6つのトレンド予測と音声コマースが加速させる非接触購買の未来 | 顧客時間が見たCES & NRFレポート2021

    4 years 9ヶ月 ago
    顧客時間のスタッフそれぞれの視点で紹介する2021年の「CES & NRFレポート」。第1回は、チーフプランナー 風間公太氏による考察

    この1年で我々を取り巻く生活環境は、デジタルへと大きくシフトした。そのことは当然ながら、顧客と企業がつながる「場」にも変化をもたらしている。緩やかに進んできた業種を問わないデジタルトランスフォーメーション(DX)、デジタルシフトはこの流れを急激かつ不可逆的に推し進めることになった。コロナ禍がもたらした環境変化が次の時代のビジネスやお客さまとのつながりに、どのような変革をもたらすだろうか。オンラインで行われた世界最大のテクノロジー展示会「CES」のセッションから、「環境変化が買い物行動に何をもたらしているのか」を有識者たちからの指針と合わせて考察する。

    コロナ影響が顕著なDigital Health領域の拡大

    2021年のCESを俯瞰する上で重要なキーワードが、主催団体であるConsumer Technology Association (CTA)が発表した6つのトレンドだ。

    Consumer Technology Association (CTA)が発表した6つのトレンド
    Consumer Technology Association (CTA)が発表した6つのトレンド(画像:「CES 2021 Tech-Trends Briefing」よりキャプチャ)

    最初に「Digital Health」が並んでいることが2021年を象徴している。体調管理関連のヘルステックだけでなく、メンタルヘルス領域も含めて多くの企業が出展。また関連セッションも多数用意された。その状況はコロナ禍の世相を映し出している。

    自動運転技術などの「Vehicle Technology」、都市機能のDXともいえる「Smart Cities」などはCESではお馴染みのキーワード。しかし、例年のような無人運転の技術向上のアピールよりも、電気自動車の活用や物流への配慮など、SDGs文脈とも言える環境への対応を、ゼネラルモーターズ(General Motors)などの企業が伝えていたことが印象的だった。

    ここからは、筆者が所属する顧客時間の専門領域の1つとも呼べる、小売りや顧客行動の観点でCESを紐解いていきたい。

    買物意識変化の理解と、迫られるリアル店舗の環境変化対応

    アリババグループのトニー・シャン氏(Tmall Globalの米国事業責任者)らが登壇したセッション「Retail Trends: The New Shopper(リテールトレンド:消費行動の新潮流)」では、リアル店舗における健康関連のテナント需要の拡大、モノづくりの過程でこれまで以上にサスティナビリティの取り組みが欠かせない潮流になることなどに言及。また、環境や買い物行動の変化の視点で6つのトレンド予想が示された。

    「Retail Trends: The New Shopper」の冒頭で紹介された2021年の6トレンド
    「Retail Trends: The New Shopper」の冒頭で紹介された2021年の6トレンド(画像:「Retail Trends: The New Shopper」よりキャプチャ)

    上記の日本語訳は以下の通り。

    1. 消費者のコスト意識が変化する
    2. 新しい技術が店舗やモールを“再構築”する
    3. 体験に寄り添ったオンラインフォーマットが小売業の成功のカギを握る
    4. 良いビジネスを生み出すのは、良い行いに他ならない
    5. 小売事業者は顧客との新たな取引方法を模索する
    6. 不確実性の高い世界では、柔軟でしなやかな臨機応変型のサプライチェーンが重要な資産となる

    コロナウイルスは、顧客の買物行動にも大きな影響をもたらしている。2020年に顧客時間が三井住友カードと共同実施した買物行動/意識変化の調査(三井住友カードが保有するキャッシュレスデータの分析や顧客インタビューなどを組み合わせた調査)からも、買い物に対する価値観の変化やオンラインシフトといった傾向は、世代を問わず如実に表れた。前述の6大トレンドは、このような変化が世界規模での事象であることを示している。

    セッション「Retail Trends: The New Shopper」のようす
    セッション「Retail Trends: The New Shopper」のようす
    (画像:「Retail Trends: The New Shopper」よりキャプチャ)

    リアル店舗を有する小売業からは、カーブサイドピックアップ(車中受け取り)や、BOPIS(Buy Online Pick up In Store/オンラインで購入し、店頭で受け取る)への迅速な対応がコロナ前後のビジネスの明暗を分けたと繰り返し強調されたことも、2021年を象徴していた。

    小売りの新たな活路となる「Contactless Shopping」

    続いて、「Contactless Shopping(非接触購買)」をテーマにした「Retail's New Look – Shopper's Little Helpers(リテールの新しい姿―買い物客の“お手伝いさん”)」のセッション内容を紹介する。

    セッション「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」のようす
    セッション「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」のようす(画像:「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」よりキャプチャ)

    現在、小売業にとっての「Contactless」は、決済の“非接触”に留まらず、店舗内でのスタッフと顧客、顧客同士の非接触など、物理的な人と人との接近・接触までも考慮せざるを得ない状況になっている。

    こういった状況下で、決済関連のContactlessサービスも進化を遂げている。セッションに登壇したOV Loop, Inc.のウィル・グレイリンCEOは、自社プロダクトの「OV Loop」を紹介。専用のモバイルアプリやBluetooth内蔵デバイスに、クレジットカードや銀行口座をひも付けることで、非接触決済を安全・迅速に実現するテクノロジーとなっている。

    「OV Loop」
    「OV Loop」(画像:CES2021「Retail's New Look–Shopper's Little Helpers」セッションよりキャプチャ)

    グレイリン氏は、顧客が複数のクレジットカードを持ち歩く必要が無い利便性の高さ、非接触であることからスキミング被害を受けにくい安全性について説明。特に、物理カードでのやり取りが多い小売りや飲食店でのクレジットカード決済の現場でニーズがあると語った。

    また、決済大手VISAとも共同で、人と人の非接触を考慮したサービスを提供。同サービスは、決済ターミナル端末を使わず、スマホとスマホ、スマホとクレジットカード、KIOSK端末とクレジットカードなどの組み合わせで非接触決済を実現するというものだ。

    音声コマース市場、2022年までに40億ドルへ

    小売りの未来が垣間見えるContactless Shopping関連の展示やセッションのなかで、筆者がもっとも注目したのが、Voice Commerce(音声コマース)関連のサービスだ。

    音声コマースに関するセッション「The Future of Contactless Shopping」のようす
    音声コマースに関するセッション「The Future of Contactless Shopping」のようす(画像:「The Future of Contactless Shopping」よりキャプチャ)

    「Alexa」や「OK Google」と呼びかけて始めるVoice Commerceは、日本国内ではまだ普及しているとは言い難いが、AIスピーカーが出始めた当初と比較すれば珍しい光景ではなくなりつつある。対してVoice Commerceの市場が拡大しているアメリカでは、「2022年には40億ドルまでに拡大する」と、音声インターフェイスを提供する「Jetson AI」のCEOで、セッション「The Future of Contactless Shopping」(非接触購買の未来)に登壇したピーター・ペン氏が予測を示した。

    セッションに登壇した「Jetson AI」は、ブランドの規模感にかかわらず、会話インターフェースを通してサービスや商品を売ることができる「voice- first」マーケットプレイスを提供
    セッションに登壇した「Jetson AI」は、ブランドの規模感にかかわらず、会話インターフェースを通してサービスや商品を売ることができる「voice- first」マーケットプレイスを提供(画像:「The Future of Contactless Shopping」よりキャプチャ)

    ここ最近話題の音声版Twitterとも呼ばれる「Clubhouse」の盛り上がり方も、Contactlessな買い物体験である声×EC、声×オンラインの親和性の高さを予言するような出来事と言えるかもしれない。

    音声コマース成長のカギは、ライブコマースにあり?

    ここで改めてリアル店舗での購買行動を想像してみよう。リアル店舗で接客を受け、購買の気持ちが定まった際に、顧客が「これ買います」と意思を言葉で伝えること。これは、店舗における購買行動の中で“自然な行為”だ。

    この“購買行動中の自然な行為”であることが、Voice Commerce普及の鍵となる。「これ買います」を、いかにオンラインの購買行動に組み込めるか。筆者はインスタライブに代表される、ライブコマースとの相性の良さの可能性を感じている。

    インスタライブは、顧客と企業がリアルタイムで双方向のやり取りを行える場だ。しかし現在のインスタグラムの仕様では、インスタライブで気になった商品を顧客が購入するには、一度インスタグラムを離れ、Webブラウザ(ECサイト)やアプリで購買の操作をしなければならない。

    購買までの導線を最適化するようなインスタグラムの仕様変更にも期待したいが、ここにVoice Commerceの機能を導入し、顧客による「これ買います」のような一言でECサイトのカートボタンが押下されたらどうだろうか。ライブコマースが有する“高い熱量”を保った状態で、顧客を購買に導くことができるかもしれない

    このようにContactlessなテクノロジーは、感染拡大に配慮した安心・安全を提供するだけでなく、オンラインでの購買体験を向上させる一面も存在する。原始的かつ身近な「音声」の活用は、デジタルを媒介しながらも顧客との関係性に温もりや手触りを与え、顧客との対話を深める新たな活路になるかもしれない。

    ◇   ◇  ◇

    「最先端技術の祭典」と称され、「未来への先見の明」を体感する場であったCES。2021年は、世界が未曾有の事態と対峙する中、機能性や効率性を追求する“乾いたテクノロジー競争の場”では無く、半強制的な環境変化を強いられている状況下でCESが何を示唆してくれるかは、筆者の参加モチベーションでもあった。そして、Voice Commerceに代表される、“望まずして分断された”企業と顧客との繋がりを補うような体温を感じられるテクノロジー活用の兆しと出合えたことは、CES 2021からの大きな学びであったと言える。

    ※文中の翻訳は、ネットショップ担当者フォーラム編集部 公文紫都によるものです。

    風間公太
    風間公太

    無計画なカスタマイズはダメ! Shopifyのプロが語る失敗しないカスタマイズ【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

    4 years 9ヶ月 ago
    ネットショップ担当者が読んでおくべき2021年2月15日〜21日のニュース
    ネッ担まとめ

    IT全般に言えますが、無計画なカスタマイズは将来の負債になる可能性があります。Shopifyも同じ。簡単にカスタマイズできるからこそ慎重に。

    Shopifyのカスタマイズは簡単だけど将来的に足を引っ張ることも

    Shopifyテーマのカスタマイズについて 基本的な話 ~ マニアックな話【Shopify エキスパート2社対談 】 | ECのミカタ
    https://ecnomikata.com/column/29291/

    まとめると、

    • Shopifyでカスタマイズが必要な理由は「何を伝えたいのか」というデザイン面と、「どう行動してほしいのか」という体験面のどちらかを改善したいとき
    • Shopifyはデザインとシステムがきちんと分かれているところが使いやすい。プログラマーであるCEOが作りたいと考えたことが反映されているので、カートシステムの理想的な形がエンジニア視点でも盛り込まれている
    • カスタマイズは容易だが、コードが肥大化して読み込み速度が遅くなる可能性がある。直接コード編集は肥大化を避けられるが専門スキルが必要

    有料テーマで構築したものの、その段階で自分たちで手に負えなくなり、構築会社に依頼するということもあると思います。カスタマイズの内容によっては有料テーマをベースにゴリゴリいじるよりも、オリジナルで作り直す方が良かったりもします。
    ─non-standard world CMO兼アートディレクター 佐藤昭太氏

    そのあたりは昔から思う事があります。有料テーマで作成するとURLもそこに依存するので、URL構造が有料テーマに依存することになるじゃないですか?これを別テーマに変えようとするとURLも変わるので、インデックスも変わるんですよね。
    ─コマースメディア 代表 井澤孝宏氏

    何でも自由にカスタマイズできそうなShopify。しかし、何も考えずにカスタマイズしてしまうと後になって痛い目に遭うこともあるようです。基本的には無料のテーマも問題ないので、そこから自分たちのやりたいことに合わせて専門業者を探すのが良さそうです。Shopify自体も進化しますし、アプリも進化していきますので、その変化を追いかける必要もあります。作っただけで終わりではないことを覚えておきましょう。

    関連記事

    3大モールも成長していますがShopifyはそれ以上の成長率

    【Zホールディングス2020年4-12月期】ショッピング取扱高は54%増の約1.1兆円、eコマース取扱高は28%増の2.4兆円 | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/8450

    楽天の国内EC流通総額は約4.5兆円で、伸び率は約20%増【2020年度の実績まとめ】 | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/8458

    Amazonの2020年売上は3860億ドルで37%増、日本円で41兆円。直販ECは4割増の1973億ドル、第三者販売は5割増の804億円 | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/8420

    Shopify、2020年売上高は驚異の「86%増」。ECシェアは米国2位“巨人”アマゾンの4分の1規模に | Business Insider Japan
    https://www.businessinsider.jp/post-229914

    Strong Consistent GMV Growth

    Shopifyの流通取引総額(GMV)。2016年〜2020年通期の推移(左)、右が2020年10月〜12月期(右)

    出所:Shopify Investor Deck Q4-2020
    https://www.businessinsider.jp/post-229914より編集部でキャプチャ

    流通取引総額(GMV)は、2020年通期が前年比「96%増」の1196億ドル(約12兆5600億円)。10~12月だけで見ても、前年同期比「99%増」の411億ドル(約4兆3200億円)。同じ10~12月の楽天の国内EC取扱高は約1兆4100億円、比べると規模感が分かる。

    こちらは記事タイトルだけででも状況がわかると思います。既存の巨大モールは20%~40%ほど伸びている中で、Shopifyは売上高が86%増で取扱高が99%増。ECの市場シェアはAmazonに次いで2位で8.6%となっています。関連記事にあるようにAmazonも自社ECサイト構築サービスを買収していますので、AmazonとShopifyの競争はますます激化しそうです。

    関連記事
    • Amazon、自社ECサイト支援のSelzを買収と報道 ブランドのオムニ化やマーケティングまで支援する狙いか | 日本ネット経済新聞|新聞×ウェブでEC&流通のデジタル化をリード
      https://netkeizai.com/articles/detail/3039

    巨大モールへの規制は強まる流れ

    マゾンの敗訴確定<景表法処分取消訴訟>「場の提供者」の表示責任で初判断 | 通販新聞社
    https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=5662

    まとめると、

    • 東京高裁は不当な二重価格表示を行った責任はアマゾンにあるとの一審判決を支持した。アマゾンは訴えを取り下げ、判決は確定。2月10日、自社サイトのほか、日刊紙2紙にお詫び社告を掲載した
    • 販売する「クリアホルダー(1000枚入り)」で「参考価格9720円(90%オフ)」など、5商品で実際の販売価格と比較して安いかのように表示。サイトで表示した「参考価格」は、製造業者が社内管理上、便宜的に定めたものであるなど根拠のないものだった
    • 判決は「アマゾンが価格を決め、安さを強調して顧客誘引するために参考価格、割引額、割引率の表示によって大幅に割引された商品と消費者が誤認するならば、不当な表示をした事業者に該当する」と結論づけた

     アマゾンの表示責任を認める判決にある公正取引委員会OBは、「シンプルに考えれば当然の結果。システム構築といってもそのシステムを使い、販売しているのは自分。消費者からしたら当然アマゾンが売っていると見る。売り値をよその事業者に入力させるほうが無責任。責任を持って確認しないといけない」と感想をもらす。

     別の公取OBは、「責任はゼロではなく、プラットフォーマー規制と同じで自律性を持ちなさいということ。チェックの仕組みを作らないと、二重価格表示に限らず、景表法の優良誤認、薬機法、PL法などでも規制の対象になりうる」と指摘する。

    こちらでもお伝えしたように巨大ITモールに対する規制はどんどん強まっています。楽天では過去に二重価格問題があって、今ではガイドラインで決められていますので、違反点数を課せられてしまう可能性があります。とはいえ、そもそも消費者が勘違いしやすいような価格表示すること自体が問題なので、売れるからといって悪徳手法を使うのは絶対にやめましょう。

    関連記事

    EC全般

    【ニュース】Google、価格表示の正確性を欠いた広告主のGoogle Merchant Centerアカウント停止措置を開始へ | Unyoo.jp
    https://unyoo.jp/2021/02/gmc_price_enforcement/

    こちらも二重価格というか価格を誤認させるようなことはダメ、ということですね。

    コロナ禍でECは「天下一武道会」、勝ち目は「人間味あるデジタル」にあり ハイフィットの吉村さんに聞く | ECzine
    https://eczine.jp/article/detail/8791

    「天下一武道会」はものすごく納得。知らないところから競合というか強豪がやってくる時代です。

    「レディー・カガ」「旅館で音楽フェス」などのアイデア、ファンやアイドルとのつながりを生かした体験+物販のECサイト「かいねや加賀」のスゴイ取り組み | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/8412

    地域全体でどういったマーケティングをするのか?がスタートです。ECはその一部。

    ECのエキスパート7人に聞く!2021年最新ECトレンド | Printful
    https://www.printful.com/blog/jp/ec-trends-2021-according-to-experts/

    最後にある「共通する7つの重要なキーワード」を見ておきましょう。

    【社長インタビュー】流通額2.8倍、1100億円突破の「STAFF START」。デジタル×販売員の力でめざす「カリスマ店員新時代」とは | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/8408

    上記に関連して。ライブコマースとオンライン接客は2021年のトレンドですね。

    チャージバックを未然に防ごうーー不正利用の疑いがある注文のお知らせ表示を開始しました | BASE U
    https://baseu.jp/19299

    BASEも利用者が増えて安心・安全の部分に力を入れるようになってきました。

    今週の名言

    効果的な子育て支援施策を打てば、子育て世代の移住件数や出生率は当然、増加する。

    そうして人口が増えると、街がにぎわい活性化し、税収も増えていく。税収が増えればその財源で、より手厚い行政サービスができ、街への愛着が高まる。

    こうした好循環を意識した施策展開を続けると、街はどんどん豊かになってくるわけです。

    市民のわがままを政策に生かすには、「きれいごとと本音」の両立が必要だった──明石市長 泉房穂×サイボウズ 青野慶久 | サイボウズ式
    https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005932.html

    ネットショップが儲かるようになるのもこのサイクル。魅力的な商品やサービスがあってお客さんが増えればファンも増えて自然と成長します。

    森野 誠之
    森野 誠之

    【読者プレゼント】『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革』を5名様にプレゼント!

    4 years 9ヶ月 ago

    ビジネス用コラボレーションツール「Slack」を活用した企業のデジタルシフトの手法や事例を紹介する書籍『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革(できるビジネス)』がインプレスから発売されました。

    『EC通販で勝つBPO活用術 ─最強のバックヤードが最高の顧客体験を生み出す』表紙
    この本をAmazonで購入

    本書では、Slackを導入している10の企業・団体の事例を掲載。さまざまな業種や規模、課題を持つ組織が、どのようにSlackを取り入れ、組織の働き方を変えているかを紹介します。

    これらの事例はすべて2020年8~9月に取材しており、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言以降の、まさにコロナ禍を踏まえたワークスタイル変革事例から学ぶことができます。

    事例として登場する企業・団体

    • NTTドコモ(通信)
    • マスヤグループ(製造)
    • リバネス(教育)
    • SOMPOシステムイノベーションズ(システム開発)
    • 近畿大学(大学)
    • アスクル(物流)
    • カクイチ(製造)
    • 三菱重工(製造)
    • Code for Japan(NPO)
    • コープさっぽろ(小売)
     

    筆者プロフィール

    長谷川 秀樹(はせがわ ひでき)氏
ロケスタ株式会社 代表取締役社長

    長谷川 秀樹(はせがわ ひでき)氏
    ロケスタ株式会社 代表取締役社長
    1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。100%AWS化、自社開発にてコスト削減とスピーディーな開発体制を構築。
    2013年、ハンズラボ株式会社を立ち上げ、代表取締役社長に就任(東急ハンズの執行役員と兼任)。初年度から任期中、売上、営業利益率とも2桁成長を達成。2018年、株式会社メルカリの執行役員CIOに就任。領収書レス、新しい電子契約の仕組みを考案。
    2019年、ロケスタ株式会社を立ち上げ代表取締役社長に就任。「プロフェッショナルCIO/CDO」として、生活協同組合コープさっぽろCIOなど複数社のCIOに従事。

    内容は「できるネット」で無料公開されています。

    この『Slackデジタルシフト 10の最新事例に学ぶ、激動の時代を乗り越えるワークスタイル変革 (できるビジネス)』の書籍版を5名様にプレゼントします。

    ご希望の方は下記のフォームにご記入の上、お申し込みください。締め切りは3月12日(金)です!

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    • メールアドレスには株式会社インプレスからのお知らせを送らせていただくことがあります。
    • 賞品の当選は発送をもって代えさせていただきます。抽選結果のお問い合わせにはお答えしかねます。
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    内山 美枝子

    アフィリエイト市場は3258億円の見込み(2020年度)、ITPによるクッキー制限、ヤフーの広告出稿厳格化など環境変化の1年

    4 years 9ヶ月 ago

    矢野経済研究所が発表した国内のアフィリエイト市場調査結果によると、2020年度の市場規模は前年度比5.2%増の3258億円に拡大する見通し。2019年度の国内アフィリエイト市場規模は同8.0%増の3098億6000万円だった。

    アフィリエイト市場拡大の背景としては、広告主におけるアフィリエイト広告への予算シフトや、スマートフォン経由での商品やサービスの売上増によるEC分野の拡大があげられるという。

    アフィリエイト市場について

    市場環境の変化について

    外部環境に関し、ITP(Intelligent Tracking Prevention、サイトトラッキングの抑止機能)によるクッキー制限、Googleアルゴリズムのアップデートによる検索順位変動、ヤフーの広告出稿のレギュレーションの強化によるアフィリエイトサイトの広告出稿の厳格化実施など、アフィリエイトサイトにとってネガティブと考えられるレギュレーションの変更があった。

    Twitterなどのソーシャルメディア(SNS)に関してもレギュレーションの厳格化があり、アフィリエイトメディアに対してもネガティブなインパクトを与えている。

    プラットフォーマーによるレギュレーションの厳格化に関し、景品表示法(景表法)や薬機法などの法規制を順守しないといった一部のアフィリエイトパートナーや代理店に対して大きな影響を与えているが、優良なアフィリエイトメディアにおいてはほとんど影響を受けていないという。

    今後の市場について

    アフィリエイト市場は今後も拡大を続け、2024年度の国内アフィリエイト市場規模は4951億円まで拡大すると予測している。

    ナショナルクライアントのインターネット広告への出稿が増加。ダイレクトレスポンス系広告において、ECサイトなどでの広告出稿増加につながる可能性が高く、アフィリエイト市場においてもプラスに影響すると分析している。

    さらに、広告主へのアフィリエイト提案による広告出稿効果が確実に出てきており、アフィリエイトへの評価が高まっていることも市場拡大の要因になるという。

    また、EC化率の拡大やECにおける決済サービスの導入障壁が低くなっていくことも成長要因の1つ。加えて、VOD(ビデオ・オン・デマンド)など映像配信を中心に、サブスクリプション分野の拡大が進んでいることも寄与する。

    また、キャッシュレス化の進展による金融分野の拡大のほか、新型コロナウイルスの影響によるEC取引の急拡大、インターネット利用ユーザーの増加、アフィリエイト市場への新規参入事業者の増加なども、市場成長の促進要因としてあげている

    調査概要

    • 調査期間:2020年11月~2021年1月
    • 調査対象:アフィリエイトサービス事業者(ASP:アフィリエイトサービスプロバイダ)、業界有識者
    • 調査方法:当社専門研究員による直接面接取材およびアンケート調査併用
      ※本調査におけるアフィリエイト市場は、アフィリエイト広告の成果報酬額、手数料、諸費用(初期費用、月額費用、オプション費用等)などを合算し算出した
    石居 岳
    石居 岳

    「PayPayモール」で商品画像“シンプル化”のルール。「テキスト要素20%以内」「枠線なし」「写真背景か単色白背景のみ」など | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ

    4 years 9ヶ月 ago
    「PayPayモール」出店企業は、商品画像で「テキスト要素の占有率20%以内」「枠線なし」「画像背景は写真背景か単色白背景のみ」「アニメーションGIF」の使用が2021年4月20日から不可になる

    ヤフーは「PayPayモール」の商品画像に関し、テキスト要素の占有率を20%以下などのルールを設けた「PayPayモール商品画像登録ガイドライン」の運用を始める。商品画像に関する主なルールは「テキスト要素の占有率20%以内」「枠線なし」「画像背景は写真背景か単色白背景のみ」など。運用スタートは4月20日(火)から。「PayPayモール商品画像登録ガイドライン」の主な商品画像に関するルールを解説する。

    新たに設けられる商品画像に関するルール

    「PayPayモール」出店企業は、商品画像に関して「テキスト要素の占有率20%以内」「枠線なし」「画像背景は写真背景か単色白背景のみ」「アニメーションGIFの使用不可」を4月20日から順守しなければならない。

    4月19日(月)までを画像準備期間とし、4月20日から「PayPayモール商品画像登録ガイドライン」の運用を始める。6月に一部店舗へのヒアリング、アンケートを実施。2021年10月からガイドライン違反に関するペナルティーの運用を始める予定。

    ガイドラインの対象について

    「PayPayモール」の商品画像欄の「商品画像」が太陽。「商品詳細画像」「追加画像」は対象外。

    ファッションカテゴリ以下の商品でバリエーション画像を掲載している場合、バリエーション画像も対象になる。

    テキスト要素について

    商品画像内に配置するテキスト要素占有率20%以下について、テキスト要素は、

    • ブランドロゴ、企業ロゴ、メーカーロゴ
    • 商品のスペック情報や特徴
    • 画像クレジット
    • 「No Image」の文字、イラスト
    • 商品が掲載されていない画像
    • 商品以外のイラスト

    次の項目は、禁止表現として画像入力不可とする。

    • ストア名(ロゴ含む)
    • 商品名
    • 送料
    • 価格
    • ポイント
    • 値引き情報
    • 配送情報
    • 他社ECモールのランキング順位

    画像表現について

    枠線については、枠線なしの商品画像登録を求める。枠線は画像の4辺を囲む線のほか、L字、帯状などの要素を含む。

    商品画像の背景は「写真背景」か「単色白背景のみ」の使用を求める。

    写真背景の定義は「商品と一緒に撮影した背景」。単色白背景の定義は「カラーコード #FFFFFF(R255、G255、B255)」。

    「販売商品と関連性のない物画像」「人物画像」「背景」の登録、商品画像と写真背景の合成、白以外の背景色ベタ塗り、グラフィック表現は禁止する。

    また、商品画像のアニメーションGIFの登録も不可とする。

    カテゴリ商品別ガイドラインについて

    「PayPayモール」で扱うカテゴリ商品別の画像登録におけるガイドライン「カテゴリ商品別ガイドライン」も順守事項とする。

    「カテゴリ商品別ガイドライン」について(出店者が提供)
    ◇◇◇

    商品画像のシンプル化に関し、楽天は2018年に「テキスト要素20%以内」「枠線なし」「画像背景は写真背景または単色白背景のみ」への対応をスタートしている。Amazonが行っていた「シンプルな商品画像」が、「PayPayモール」にも波及した格好だ。

    瀧川 正実
    瀧川 正実

    単品通販(D2C)を成功させる「ツーステップマーケティング」。5つのメリットとは?

    4 years 9ヶ月 ago
    「ワンステップマーケティング」と「ツーステップマーケティング」の違いを加藤公一レオが解説

    単品通販(D2C)のビジネスモデルには大きく分けて「ワンステップマーケティング」と「ツーステップマーケティング」がある。売上100億円以上の単品通販(D2C)企業の多くが実施しているのは「ツーステップマーケティング」だ。単品通販(D2C)で売上高と利益を上げて成功するためには、「ツーステップマーケティング」の攻略が不可欠と言い換えても良い。

    なぜ「ツーステップマーケティング」を実践している会社が成功しているのか? 「ツーステップマーケティング」の5つのメリットとともに、その秘密を明かしていこう。

    「ツーステップマーケティング」とは?

    「ワンステップマーケティング」は、新規のお客さまに対していきなり本商品の定期コース(サブスク)をオファーするビジネスモデルのこと。「ツーステップマーケティング」は、無料モニターや500円モニターを入口として、まずは見込客を集め、その後本商品の定期コース(サブスク)に引上げるという2段階のビジネスモデルである。

    図:ワンステップマーケティングとツーステップマーケティングの違い
    「ワンステップマーケティング」と「ツーステップマーケティング」の違い

    「ツーステップマーケティング」は一見まどろっこしいが、売れるネット広告社が1,000回以上繰り返してきたA/Bテストの結果、「ワンステップマーケティング」よりも「ツーステップマーケティング」の方が、広告の費用対効果が良くなることがわかっている

    加えて、一時期、記事型広告とともに即定期(サブスク)の「ワンステップマーケティング」が大流行したが、最近ではさまざまな規制や外部要因により崩壊寸前に追い込まれている。そう、これからは「ツーステップマーケティング」の時代なのだ。

    私から見れば「ワンステップマーケティング」が崩壊し、「ツーステップマーケティング」が勝ち残るのは当然である。言ってみれば、「ワンステップマーケティング」は合コンで知り合った初対面の女性にその日のうちにプロポーズするようなもので、「ツーステップマーケティング」は合コンで知り合った女性をまずはデートに誘い、一度付き合ってから結婚を申し込むようなものである。

    「ワンステップマーケティング」では商品の良さを必要以上に“盛って”伝える必要がある一方、「ツーステップマーケティング」の場合は、お客さまにとって経済的リスクがほとんどないため、商品の良さを必要以上に“盛る”必要がない。まずは見込客を集めてモニター商品を試してもらい、その見込客に本商品の定期コース(サブスク)を申し込んでもらう「ツーステップマーケティング」は、ビジネスモデルとしてはるかに合理的だし本質的なのである。

    「ワンステップマーケティング」と「ツーステップマーケティング」の違いがわかったところで、ここからはより具体的に「ツーステップマーケティング」のメリットを見ていこう。

    ①「ツーステップマーケティング」は潜在層のニーズを顕在化させることができる

    「ワンステップマーケティング」は、需要が顕在化している層しか商品を申し込まない。美容液であれば「そろそろ美容液使おうかな」と思っている人、青汁であれば「一度青汁を飲んでみたいな」と思っている人が、たまたま見つけて買ってくれるのである。広告戦略としてはリスティング広告やリターゲティング広告をコツコツ続けるくらいしかできない。

    一方、「ツーステップマーケティング」は、潜在層のニーズを強引に顕在化させることができる。どういうことかと言うと、「そろそろ美容液使おうかな」などとは思っていなかった人も、無料モニターや500円モニターの広告を見ると「無料(または500円)だったら試してみようかな」という気持ちになりやすいからである。

    図: 新規顧客獲得のためのファネル 既存顧客管理のためのファネル 認知興味・関心検討購入リピートアップセル・クロスセル ロイヤルカスタマー化
    新規顧客の獲得と既存顧客の管理におけるファネルの違い

    「試してみる」というのは、最高の認知であり最高のブランディングだ。「ツーステップマーケティング」は、お客さまのニーズが顕在化していなくても、モニター商品を入口として、「認知」から「興味・関心」「検討」「購入」まで一気通貫で持っていけるビジネスモデルなのである!

    ②「ツーステップマーケティング」はCPO効率が良い

    「ワンステップマーケティング」よりも「ツーステップマーケティング」の方がCPO効率が良い。なぜなら、値段の高い本商品の定期コース(サブスク)に比べ、無料モニターや500円モニターの方が圧倒的に申し込みのハードルが低いため、「ツーステップマーケティング」の方がはるかに多くの見込客を集められるからだ。

    初回のオファーを無料モニターや500円モニターにして、入口のハードルを下げてあげることで、ニーズが顕在化していない潜在層の見込客を獲得することができる。「ツーステップマーケティング」の場合、集められる見込客の数が圧倒的に多いため、本商品の定期コース(サブスク)への引上率が10%や15%ぐらいでも、最終的に「ワンステップマーケティング」よりもCPO効率が良いのだ。

    図:ツーステップマーケティングとワンステップマーケティングのCPO

    ③「ツーステップマーケティング」で定期(サブスク)獲得件数が最大化する

    件数ではどうかというと、定期(サブスク)獲得件数が最大化できるのもやはり「ツーステップマーケティング」である。なぜなら、入口のハードルが高い「ワンステップマーケティング」は合コンで出会ったその日に結婚を申し込むようなものなので成功率が低いが、まずはデートを申し込む「ツーステップマーケティング」であれば圧倒的に成功率が高いからだ。

    「ワンステップマーケティング」に比べて「ツーステップマーケティング」はレスポンスが10倍くらいあるので、まずはモニター商品をフックに見込客を集め、その後定期(サブスク)に引上げる「ツーステップマーケティング」の方が定期コース(サブスク)の獲得件数が増えるのである。

    図:サブスク(定期)獲得件数

    ④「ツーステップマーケティング」はLTVが高い

    繰り返しになるが、「ワンステップマーケティング」は、合コンで出会った初対面の女性に対し、その日のうちに結婚を申し込むようなビジネスモデルである。仮に合コンで知り合っていきなり結婚したカップルがいたとしても、すぐに別れがやってくることは想像できるだろう。

    対照的に、「ツーステップマーケティング」は、初対面の女性をまずはデートに誘い、一度付き合ってから結婚を申し込むようなビジネスモデルである。一度付き合ってお互いのことを知ってから結婚した方が、圧倒的に長続きする可能性が高い。単品通販(D2C)も恋愛や結婚と同じで、モニター商品を試して納得したうえで本商品の定期コース(サブスク)に申し込んでもらった方が継続回数が増え、LTVが上がるのである。

    図:LTV

    ⑤「ツーステップマーケティング」は初回価格目的や転売のターゲットになりにくい

    最近、単品通販(D2C)会社の方と会うと、初回価格目的や転売目的の不正注文に悩まされているケースがものすごく多い。個人情報を少しずつ変えて何度も初回割引価格で申し込むユーザーや、初回割引価格で手に入れた商品をフリマアプリなどで転売するユーザーが後を絶たないのである。最近では、転売が組織化してきていて、転売屋による利益の目減りは単品通販(D2C)会社にとって深刻な問題になっている。

    特に「ワンステップマーケティング」は、誰でも見られる広告専用ランディングページで「初回半額」「初回78%OFF」といった大胆な初回割引をしていることが多いので、初回価格目的・転売目的のユーザーの目に留まりやすく、被害が大きくなりがちだ。

    図:誰でも見られる広告専用ランディングページで本商品をオファー

    一方、「ツーステップマーケティング」はその仕組み上、初回価格目的や転売目的などの不正注文の被害を受けにくい。初回価格目的や転売目的のユーザーが狙うのは、主に初回割引率が高い商品である。定価と初回割引価格の差が大きければ大きいほど、何度も同じ商品を申し込んだり、転売したりしたときのメリットが大きいからだ。

    ところが「ツーステップマーケティング」の場合、入口は本商品ではなく無料モニターや500円モニターである。個人情報を少しずつ変えてこれらを何度も手に入れても、メリットはそれほど大きくないし、転売したとしても大した利益にならない。

    図:誰でも見られる広告専用ランディングページで500円モニターをオファー

    従って、「ツーステップマーケティング」よりも「ワンステップマーケティング」の商材の方が、初回価格目的や転売目的のユーザーに目を付けられやすいのである。

    もちろん、「ツーステップマーケティング」でもアップセルや引上で本商品の定期コース(サブスク)をオファーするし、初回特別価格を設定することも多い。ただし「ツーステップマーケティング」では、初回特別価格での本商品のオファーはアップセル画面やフォローメールといった閉ざされた場所で行われるため、不正なユーザーの目に留まりにくい

    図:フォローメールからアクセスできる引上専用ランディングページで本商品をオファー

    つまり、不特定多数の目に触れる広告専用ランディングページでいきなり本商品の定期コース(サブスク)をオファーする「ワンステップマーケティング」に比べ、クローズドな場所で本商品の定期コース(サブスク)をオファーする「ツーステップマーケティング」の方が、不正注文のターゲットになりにくく、優良な見込客に自社の大切な商品を届けることができるのである。

    ◇◇◇

    このように、「ツーステップマーケティング」のメリットは潜在層の獲得から転売対策まで多岐にわたる。あなたも多くの100億円企業が行っている「ツーステップマーケティング」を実行して、「勝ち組通販(D2C)」の仲間入りをしてほしい。

    加藤 公一 レオ
    加藤 公一 レオ

    ecbeingが「LINEミニアプリ」開発・提供のSaaS型サービス、EC事業者の簡単なミニアプリ導入を支援

    4 years 9ヶ月 ago

    ecbeing(イーシービーイング)は2月18日、LINEアプリ上で使えるEC事業者向けのWebアプリケーション「ecbeing LINEミニアプリ SaaS Edition」の開発・提供を開始した。

    「LINEミニアプリ」を企業や店舗が利用することで、消費者のライフスタイルにおけるさまざまなニーズに応えるサービスをLINE上で提供できるようにする。

    LINEミニアプリについて
    LINEミニアプリについて

    「ecbeing LINEミニアプリ SaaS Edition」は、EC事業者が簡単にLINEミニアプリを導入、ECに関連したサービスをユーザーに提供することができる自動バージョンアップ機能を備えたSaaS型のサービス。ecbeingが提供するマイクロサービスの1つとして提供するため、自動的に機能が追加されていく。

    マイクロサービスは、従来型のすべての機能を1カ所にまとめるシステムに対して、各サービスをそれぞれ独立して構成するもの。世の中の時流に合わせて常に新しい最適なサービスが利用できるようになる。

    ecbeing(イーシービーイング)はLINEアプリ上で使えるEC事業者向けのWebアプリケーション「ecbeing LINEミニアプリ SaaS Edition」の開発・提供を開始
    LINEミニアプリで実現できること

    特徴的な機能は以下の通り。

    • 自動バージョンアップ
      ecbeingが提供するマイクロサービスの1つとして提供するため、自動的に機能が追加されていく
    • 簡単LINEミニアプリ追加
      ユーザーはLINEアプリトップから2タップで簡単にLINEミニアプリを追加、各LINEミニアプリのサービスを利用することが可能
    • LINE公式アカウントでの友だち登録
      ユーザーがLINEミニアプリを追加すると同時に、企業側は「LINE公式アカウントの友だち」の獲得やLINEユーザーIDの取得が可能
    • 会員登録機能
      LINEミニアプリからアクセスできる画面上から、ユーザーのメールアドレスや名前などのユーザー情報の取得が可能
    • ECサイト購入
      LINEミニアプリ上からECサイトにすぐにアクセス、購入が可能
    • ECキャンペーン
      ECで行うキャンペーンをLINE公式アカウント上でお知らせして集客し、メッセージをタップすることでLINEミニアプリ上からキャンペーンページを閲覧・キャンペーンに参加することが可能
    • LINEからの通知
      LINE公式アカウントを「友だち追加」したユーザーに向けて一括配信や、さまざまなセグメント配信が可能(別途ecbeingの提供するマイクロサービスの1つMessaging Serviceの契約が必要)
    • 店頭クーポン配布
      ECサイト構築パッケージ「ecbeing」管理画面で店舗、ECサイトで使えるクーポンを発行。店頭でLINEミニアプリを表示し、クーポンの利用も可能(別途ecbeingの提供するマイクロサービスの1つMessaging Serviceの契約が必要)
    ecbeing(イーシービーイング)はLINEアプリ上で使えるEC事業者向けのWebアプリケーション「ecbeing LINEミニアプリ SaaS Edition」の開発・提供を開始
    「ecbeing LINEミニアプリ SaaS Edition」の主な機能

     

    石居 岳
    石居 岳

    楽天2020年度実績まとめ/4月スタートの消費税総額表示義務でやるべきこと【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

    4 years 9ヶ月 ago
    2021年2月12日~18日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?
    1. 楽天の国内EC流通総額は約4.5兆円で、伸び率は約20%増【2020年度の実績まとめ】

      「楽天市場」単体では流通総額が3兆円を突破しているという。新規購入者、1年以上「楽天市場」を使っていなかったユーザーの復活購入、加えて、1人あたりの月間購入額の増加、ユーザーの定着率(リピート購入)などが成長要因

      2021/2/16
    2. 消費税の「総額表示義務」は2021年4月から。適用時期や事業者がやるべきことまとめ

      2021年4月1日から義務化される消費税における「総額表示義務」。実店舗だけでなくECサイトも対象です。適用開始までに事業者がやるべきことなどをまとめました

      2021/2/17
    3. 「レディー・カガ」「旅館で音楽フェス」などのアイデア、ファンやアイドルとのつながりを生かした体験+物販のECサイト「かいねや加賀」のスゴイ取り組み

      加賀温泉郷(石川県)の商品を購入でき、旅館や地域を支援できるECサイト「かいねや加賀」。コロナ禍で誘客が難しい中、加賀温泉郷の旅館やお店を広く支援できる仕組み作りのために行った施策とは

      2021/2/15
    4. ECサイトを狙う2大詐欺ボットの最新手口とダークウェブの今、悪質事業者への対抗策

      ブランドや小売事業者は、機械学習技術を活用してボットの行動を分析することで、詐欺ボットから身を守ることができます。

      2021/2/12
    5. ECサイトの表示速度が早くなるとどんなメリットがあるの? ショップジャパンさんの事例【ネッ担まとめ】

      ネットショップ担当者が読んでおくべき2021年2月7日〜14日のニュース

      2021/2/16
    6. ルイ・ヴィトンも参入したソーシャルコマース。世界のトレンドと中国の先行事例に学ぶ小売業者が注目すべき理由

      コロナ禍でより一層ソーシャルコマースに注目が集まっています。先行する中国での事例からソーシャルコマースの可能性を探っていきます

      2021/2/18
    7. 顧客体験を成功に導くコンタクトセンターとは?【顧客対応業務のアウトソーシング例】

      『EC通販で勝つBPO活用術』(高山隆司/佐藤俊幸 著 ダイヤモンド社 刊)ダイジェスト(第8回)

      2021/2/17
    8. 【川添隆氏が解説】オンライン接客の始め方と基礎知識。相談タイムあり(2/22 12時〜Clubhouseで生配信)

      ECエバンジェリストの川添隆さんがオンライン接客の始め方や基礎知識などを解説(2/22 12時〜Clubhouseで生配信)

      2021/2/16
    9. コロナ禍で世界の消費行動はどう変わった? 30の国・地域のECデータ&市場概況などをまとめた『海外ECハンドブック2020』とは

      世界のEC市場規模予測や地域別EC市場データ、越境EC市場規模およびEC利用者の推移、EC市場データランキング、各国のEC市場環境比較表などを掲載した海外進出・越境ECに必見の1冊

      2021/2/18

      ※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

      内山 美枝子

      コロナ禍で世界の消費行動はどう変わった? 30の国・地域のECデータ&市場概況などをまとめた『海外ECハンドブック2020』とは

      4 years 9ヶ月 ago
      世界のEC市場規模予測や地域別EC市場データ、越境EC市場規模およびEC利用者の推移、EC市場データランキング、各国のEC市場環境比較表などを掲載した海外進出・越境ECに必見の1冊

      新型コロナウイルス感染症がグローバルで拡大する中、海外の消費者が日本製品を越境ECで購入する動きが増加、海外マーケットに目を向ける日本のメーカーやEC実施企業なども増えています。そんな企業の海外ビジネスに役立つ書籍として『海外ECハンドブック2020』(トランスコスモス:著、インプレス:刊、定価:2,500円+税)をインプレスが発行しました。各国・地域のデータを収集し、記事を執筆した著者のトランスコスモス 調査部の皆さんに話を聞きました。

      『海外ECハンドブック』について

      海外進出、越境ECによる海外市場の攻略で重要となるのが現地市場や消費動向などの調査。『海外ECハンドブック』は、アジア太平洋、北米、中南米、欧州、中東・アフリカなど、主要30の国・地域のECデータ、消費動向、法律の動きなどを1冊の書籍にまとめています。

      世界のEC市場規模予測や地域別EC市場データ、越境EC市場規模およびEC利用者の推移、EC市場データランキング、各国のEC市場環境比較表をはじめ、アジア太平洋、北米、中南米、欧州、中東・アフリカなど、主要30の国・地域について市場概況および消費者トレンドや有力事業者の動向、また規制関連の注目トピックスを掲載しています。

      海外ECハンドブック2020 各国のEC市場規模
      各国のEC市場規模(画像は『海外ECハンドブック2020』から)

      特徴は、各国の重要な法制度の動向、各国・地域のEC市場を定量データとしてまとめている点。データは各国・地域の政府が発表したもの、主要な調査会社や企業が公表しているものを用いています。

      海外ECハンドブック』は、グローバルECにおいて豊富な経験を持つトランスコスモスが、世界30の国と地域におけるECの現状と将来展望について、最新データを集約・整理した一冊
      『海外ECハンドブック2020』について
      • [巻頭特集]
        • 中国の最新買い物事情~トランスコスモスチャイナからの現地リポート~ ※最新の中国EC市場について解説しています。
      • [主要国のECの現状と将来展望]
        • 世界のEC市場規模予測
        • 地域別EC市場データ
        • 30の国・地域のEC市場ポテンシャル
        • 越境EC市場規模およびEC利用者の推移
        • アジア10都市EC利用動向調査
        • EC市場データランキング(TOP10)
        • 各国のEC市場環境比較表2019年
        • グローバルトピックス

      『海外ECハンドブック2020』を通じて感じる市場の変化

      ライブコマース、オンライングローサリー、SDGsなどコロナで変わるネット通販

      2019年のグローバルB2C-EC市場は前年比19%増。引き続き高い成長を見せ、約4兆1,272億ドル(約435兆円)に達しています。CAGR(年平均成長率)は11.8%で拡大し、2029年には約12兆2,565億ドル(約1,290兆円)規模になると推計しています。

      トランスコスモス 調査を行ったサービス推進総括デジタルテクノロジー推進本部 調査部 佐藤ひろこさん
      調査を行ったサービス推進総括デジタルテクノロジー推進本部 調査部 佐藤ひろこさん

      地域別では、アジア太平洋地域が引き続きグローバルEC市場をけん引。現在、グローバルシェアで約6割を占めているアジア太平洋地域は、今後10年で約7割にまで拡大すると見られています。中国市場の規模・成長率は引き続き世界最大となる見通しですが、成長著しいASEAN各国やインドにもグローバルな注目が集まります。

      『海外ECハンドブック2020』の大きなトピックは新型コロナウイルス感染症拡大への対応でしょう。30の国・地域の状況をまとめたページの前半部分では、コロナ禍での取り組みをまとめています

      地域別のEC市場規模
      地域別のEC市場規模(画像は『海外ECハンドブック2020』から)

      リモートでどのように商品を販売していくか、顧客体験をどのように向上させるのか、実店舗の小売企業がどのような非接触の取り組みをしているのか――。各国の取り組みを見ていくと、自社の取り組みに生かすヒントにもなるはずです。

      新型コロナウイルス感染症拡大によって、オンライングローサリー(オンラインでの食品や消費財の購入)が急増したことはグローバルでの共通点。特にロックダウンが厳しい国や地域は、生鮮食品などのオンライン購入が増えています。

      グローバルで注目が集まっているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)に近い事象では、欧米企業を中心としたゼロエミッションの取り組みです。たとえば、返品率の減少はCO2排出量の削減につながる一方、利益率の向上にも寄与しますゼロエミッションに取り組むことで、最終的には自社のビジネスにもつなげていく――。このような取り組みに注力する企業が増えてきたと感じています。

      アジア圏でも起きている変化

      中国や台湾、東南アジアといった国と地域の変化も注目しておきたいところです。

      台湾では2020年、当局が中国系企業への圧力を強めており、締め出しなどが始まっています。こうした動きがECにも影響していく可能性があります。法律や投資の面で変化が起きる可能性があります。

      トランスコスモス サービス推進総括デジタルテクノロジー推進本部 調査部 金山桜子さん
      サービス推進総括デジタルテクノロジー推進本部 調査部 金山桜子さん

      たとえば、勢力図の変化。現在、台湾ではシンガポールに拠点を置くECプラットフォーム「Shopee」が急速に拡大しています。また、「Shopee」は東南アジアでの利用者も急増しており、中国勢に変わって台湾や東南アジアで「Shopee」が台頭。越境ECを行う日本企業の出店戦略にも影響が出てくるでしょう。

      『海外ECハンドブック2020』では、30の国・地域における市場や消費行動の変化、主要プレイヤーの動向、経済環境などについてまとめていますので、特にコロナ禍の状況を把握する上でとても参考になる書籍だと思います。2019年に発行した「ECハンドブック2019」を合わせて読むと、定点調査から細かい変化、環境の変化などがより詳しく理解できるはずです。

      中国の市場や消費行動の変化についてまとめたページ。30の国・地域について詳しくまとめています(画像は『海外ECハンドブック2020』から)

      各国の変化を見比べること面白い傾向もわかります。

      たとえば米国と中国。オムニチャネルやO2Oといった施策は最先端ですが、アプローチが異なります。米国では「BOPIS」(Buy Online Pick-up In Store、店頭受け取りサービス)に代表されるような物流面、そして店頭在庫とECのデータ連係などデータからのアプローチ。一方、中国はアリババグループの「ニューリテール」に代表されるサプライチェーンの整備にまずは注力しました。中国ではアリババ、JDのようなプラットフォームがメーカー、小売、物流までのサプライチェーンを整備し、顧客体験の向上につなげています。

      『海外ECハンドブック2020』では各国の定量データ、法律の動向などだけではなく、こうした最先端の取り組み、その変化なども読み取ることができます

      『海外ECハンドブック2020』の活用方法について

      れから海外市場への参入、もしくは越境ECのスタートを検討している企業には、各市場のデータなどを集めたデータ集、世界30の国と地域のマーケット調査に役立つでしょう。

      参入済みもしくは越境ECを実施している企業は、新型コロナウイルス感染症拡大による市場の変化、ライブコマースや非接触販売などを把握するのに役立つと思います。

      瀧川 正実
      瀧川 正実

      ワークマン、吉野家、バロックジャパンなど300社超が行うインスタグラム活用したUGC施策とは

      4 years 9ヶ月 ago

      ecbeingの子会社で、デジタル施策におけるビジュアル活用支援を手がけるvisumoによると、Instagram(インスタグラム)の写真や動画をECサイトで活用する企業が増えている。

      Instagramの写真や動画をECサイトで活用し商品訴求力を高めるビジュアルマーケティングツール「visumo social curator(ビジュモソーシャルキュレーター)」を導入した企業が、このほど300社を突破した。

      Instagram(インスタグラム)の写真や動画をECサイトで活用する企業が増えている 「visumo social curator」導入企業
      「visumo social curator」を使ってInstagramのコンテンツをECサイトなどに活用する企業が増えている

      「visumo social curator」は、インスタグラム上の写真・動画・IGTVをECサイトやブランドサイト、オウンドメディアに活用し、さまざまなコンテンツマーケティングを展開できるソリューション。

      ワークマン、吉野家、バロックジャパンリミテッドなど、導入実績は国内300社を突破。デジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策の一翼としてInstagramを活用したスタッフ投稿、動画などをUGC(User-generated-content)マーケティング、ECサイトやオウンドメディアにおけるコンテンツマーケティングを推進する目的でサービスが活用されているという。

      「visumo social curator」導入企業の業種内訳は、「ファッション」で約36%。続いて「インテリア・雑貨」が20%。「食品・ギフト」が17%、「美容・コスメ」が16%。

      「visumo social curator」導入企業の内訳は、「ファッション」で約36%。続いて「インテリア・雑貨」が20%。「食品・ギフト」が17%、「美容・コスメ」が16%
      「visumo social curator」導入企業の業種内訳

      バロックジャパンリミテッドの活用例

      ECサイト「SHEL'TTER WEBSTORE」では、「visumo social curator」を動画コマースプラットフォームとして活用し、インスタライブを使った動画コマースを配信。コンテンツ化した写真や動画には販売商品をひも付け、インスタライブ動画や接客動画を見ながら、商品を購入できるようにしている。

      バロックジャパンリミテッドのUGCマーケティング
      バロックジャパンリミテッドの活用イメージ

      ジョンマスターオーガニックグループの活用例

      オーガニック由来の成分を使用したライフスタイルコスメブランド「ジョンマスターオーガニック公式オンラインストア」では、製品の使い方やケア方法を発信する動画コンテンツ「meet up! CHANNEL」のプラットフォームに「visumo social curator」を採用。LIVE配信や過去のアーカイブ動画を発信している。

      動画の内容はスタッフによるジョンマスターオーガニック製品の使い方から、美容に精通した特別ゲストによるスタイリング提案など、ユーザー以外も楽しめるコンテンツとなっている。

      ジョンマスターオーガニックグループのUGCマーケティング
      ジョンマスターオーガニックグループの活用イメージ

      ワークマンの活用例

      「ワークマン公式オンラインストア」はユーザー投稿を活用したコンテンツ「workmanフォト」を展開。「#ワークマン」「#ワークマン女子」「#ワークマンプラス」など自社ブランドに関連したInstagramの投稿写真を活用し、コンテンツマーケティングを実施している。

      ワークマンのUGCマーケティング
      ワークマンの活用イメージ

      吉野屋の活用例

      吉野屋は、中心顧客が「男性」というイメージが強いが、「家庭で吉野家を楽しんでいる」ファミリーが増加しているという。Instagramを中心としたSNS上では、「家庭で吉野家を楽しんでいる」写真が多数投稿されおり、顧客層のさらなる拡大のためにUGCを活用している。

      吉野屋のUGCマーケティング
      吉野屋の活用イメージ
      ◇◇◇

      「visumo social curator」は、インスタグラムの写真や動画をECサイトのコンテンツに活用できる「social curator」と、ECサイトに活用して動画制作が行える「video maker」の2つのラインアップで構成している。

      「social curator」はInstagram上の写真検索や投稿者への利用許諾、直感的なCMS機能、クリエイティブを分析する機能などを備え、次世代のクラウド型ビジュアルマーケティングツールとして機能拡張を進めている。

      石居 岳
      石居 岳
      確認済み
      4 分 11 秒 ago
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