ネットショップ担当者フォーラム

送料、配送業者の選定、破損・汚損対策、禁制品の確認――国際配送で気を付けるべき4つのポイント | プロが解説! 越境EC運用ノウハウ

2 years 8ヶ月 ago
越境ECを行う上で重要な「国際配送」。梱包の工夫、送料コストの抑え方、配送業者の選び方など気を付けるべきポイントを解説します【連載1回目】

コロナ禍、歴史的な円安を経て、海外販路を積極的に拡大するために越境ECを始める企業数は大きく増えました。海外の越境ECモールへの出店、「Buyee(バイイー)」のような海外向け代理購入サービスの利用、越境ECサイト構築サービスを活用した自社サイト運営など、取り組みは多岐に渡ります。ただ、自社で越境EC対応を始めた企業のなかには、手探りで運用しているケースは少なくありません。ここでは、自社商品を海外に配送する上で重要なポイントを解説します。

プロが解説! 越境EC運用ノウハウ
  1. 送料、配送業者の選定、破損・汚損対策、禁制品の確認――国際配送で気を付けるべき4つのポイント

この連載では、長年海外向け代理購入サービス「Buyee(バイイー)」の配送、決済手段の追加、サイト機能の追加といった運用面を主導してきた筆者が、「越境ECの配送」「カスタマーサポート」「決済」について解説します。

国際配送のポイントは「破損対策」「禁制品の確認」

国際配送の留意点は、荷物の汚損・破損、紛失リスクの高さがあげられます。いくら発送前に責任を持って商品を丁寧に扱っても、配送業者に商品を託した後は商品の扱いをコントロールすることができません。

また、国際配送では、配送業者だけでなく税関や空港など、日本国内以上にさまざまな人の手で荷物が扱われます。その過程で、荷物は日本の丁寧かつ高品質な配送サービスに慣れた私たちからは驚くような過酷な状況にさらされる可能性があります。

そこで、梱包の段階でさまざまなリスクをできるだけ減らすことが重要となります。たとえば、破損対策では、緩衝材や箱の素材を工夫し、国際配送に耐えられる梱包にすると良いでしょう。「Buyee」でも、商品の品目が多い時や破損の危険性が高い商品に対しては、専用容器を用意するなどの対応を行っています。

一方、梱包を厳重にするほど重量が増増え、送料が高くなります。容積・重量をなるべく抑え、配送料を安くするための工夫も必要です。たとえば、衣類などは箱で梱包せず、防水性・耐久性のある袋などを利用し、配送コストを抑えるといった対応が考えられます。

越境EC 国際配送 破損・汚損対策 梱包の工夫 配送コストの削減 BEENOS Buyee

自社商品が禁制品でないか確認する

2つ目の留意点は、国によって配送できない禁制品が存在すること。国ごとに禁制品の対象は異なるため、自社の取扱商品が該当しないか把握しておく必要があります。

たとえばハンコ、ベルト類、バッグ、靴、ギターなどでは、ワシントン条約で国際取引が規制されている象牙や特定の皮革・植物が使用されていないか確認しておきましょう。特にこうした素材が規制されていなかった頃のアンティーク品、ヴィンテージ品を扱う場合には注意が必要です。

日本国内では問題なく取引されていても、国によっては禁制品の場合もあります。たとえば女性の写真集、特定の生産地の陶器、ゲームに登場する武器を模したおもちゃなども問題になるケースがあります。

こうした細かい規制に対し、すべての国の禁制品を確認することは現実的ではないでしょう。まずは、自社のECサイトにおいて購入者が多い国の禁制品をあらかじめ政府のWebサイトなどで確認しておき、海外発送時に注意すると良いでしょう。さらに細かいモノについては、事前に配送先のユーザーに禁制品かどうかを確認してもらうといった対策も考えられます。

越境EC 国際配送 禁制品 輸出できないもの BEENOS Buyee
万国共通の禁制品の一部(画像は「Buyee」サイトから編集部がキャプチャ)

手続きの違い、書類作成作業の負荷など考慮する

こうした配送に伴う留意点以外にも、国内と海外では手続き上の違いもあげられます。国際配送では通関のためにインボイスが必要になります。また、航空機に載せられない商品もあるため、品目のチェックが必要で国内配送よりも煩雑になります。

海外からの注文が増えてきた場合、手動で行う作業が増え、負担が大きくなってきます。そのため、海外配送の物量がある程度見込める場合は、書類作成作業がスムーズになるようにシステム対応をしておくことが理想的です。配送業者によっては、システム連携のメニューが用意されていることもあります。

海外ユーザーの懸念点は「送料」「配送業者の選定」

国際便の運行回復が進む一方、ウクライナ情勢の影響などにより空輸コストが増加しています。また、温室効果ガス削減の世界的な取り組みも大きな影響を与えています。

航空各社はサービス料金を値上げすることで、環境負荷の低い設備への投資を強化したり、持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel:サフ)の導入を進めたりしています。温室効果ガス削減は各企業が連携して解決すべき重要な課題であり、こうした取り組みが送料に影響を与えることは避けられません。

一方で、海外ユーザーが越境ECを利用する上で最も気にしているのが「送料」です。少し古いデータですが、「Buyee」がユーザーに行ったアンケートでは、商品を購入する際に最も気にすることは「送料」という結果が出ています。

越境EC 国際配送 日本の商品購入時に気にすること 送料 アンケート調査 BEENOS Buyee
2021年7月に「Buyee」ユーザーへ行ったアンケートより

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」の過去データでも、配送において「購入前における配送料金の情報提示」「一定額以上の配送料金の無料化」をとても重視している割合が高く、越境ECを利用する海外ユーザーが国際配送料を非常に重要視していることがわかります。

越境ECでは購入したい商品があっても、送料がネックで購入をためらうユーザーは少なくありません。購入の機会損失を減らすためにも、送料の課題には向き合う必要があるでしょう。

「Buyee」では、物流事業者の選定・組み合わせで、さまざまな国際配送サービスを開発し、この課題に向き合っています。たとえば、2023年5月には米国向けに軽量帯の荷物がお得になる「Buyee Economy Air」を開始しました。 

送料の値下げは自社でコストを負担する、配送業者と交渉を行うなど、複合的な要因によるものなので簡単には実現できないかもしれません。

しかし、たとえば海外ユーザーが「到着までに時間がかかっても問題ない」と判断できるような商品であれば、船便を選べるようにすると送料を抑えることにつながります

直接的な送料の値下げが難しい場合でも、配送手段の選択肢を複数用意することで、結果的に「送料を安く抑えたい」というユーザーのニーズに応えられるのではないでしょうか。

自社に合う配送業者を選定する

日本から海外に商品を発送する場合、一般的に信頼性などの観点から日本郵便を選ぶ人が多いかもしれません。

しかし「配送コストを抑える」という観点から見て、複数の配送業者から自社にベストな業者を検討することも必要です。配送業者を選ぶ上で、配送業者によって配送できる商品に違いがある国によっては中古品が運べないということがポイントになります。

配送業者独自で配送のクオリティチェックを行っているか、といった点も参考になります。先述したように、商品を発送するまでは自社で商品の扱いに責任を持てますが、発送後は配送業者のクオリティに左右されるためです。

また、先ほど紹介したアンケート結果から「購入前に配送料金の情報を明示すること」も重要視されていることがわかります。特に国際配送の場合、ユーザーの安心感のためにも送料・関税を含めトータルでいくらコストがかかるのかを明示することは重要です。

なるべくコストを抑えられる配送業者の選定、ECサイト側で購入前にトータル金額を明示する、配送手段を選べるようにするなどで、国際配送に対するユーザーの不安を解消し、購入の後押しにつなげることができるでしょう。

ユーザビリティ向上を実現した、台湾の事例

配送におけるユーザビリティ向上事例として、ローカルの習慣に対応した配送手段をご紹介します。

台湾では、ECで購入した商品の受け取り方法として、コンビニ受け取りが主流です。そこで、国際配送でもコンビニ受け取りができるサービスを開発しました。この配送方法は台湾ユーザーのライフスタイルに合わせた配送方法の提供だけでなく、ユーザーの自宅まで運ぶ「ラストワンマイル」の配送費がかからないため、結果として送料負担の軽減にもつながりました。

こうした配送方法のローカライズも、利便性とコスト両方の観点からユーザビリティ向上の手段の1つと言えるでしょう。

コロナ禍、ウクライナ情勢、SDGs――世界情勢の影響を考慮した対応策を講じる

新型コロナウィルスの感染拡大により、国際物流が大きく混乱したことはまだ記憶に新しいでしょう。世界的な外出自粛を背景にEC利用が飛躍的に増加した一方で、国際便の減少による輸送スペース不足が続く状態でした。日本から海外への越境ECにおいては、「海外からの需要が増えていても発送ができない」という状況だったといえます。

「Buyee」でも、当時主力の配送方法だった「EMS(国際スピード郵便)」の配送が停止し、それに変わる配送手段として船便も検討していました。しかし通常の配送方法より時間がかかり、場合によっては商品到着まで数か月かかることもあります。膨大な種類の商品を扱い、商品をなるべく早く手に入れたいユーザーのことを考えると、ユーザビリティの観点からも他の手段を検討する必要がありました。

そこで、自社で国際航空機を保有している国際配送会社との契約を締結。さらに、国・地域によっては「ラストワンマイル」を結ぶために現地業者と新たに契約することで、航空機の減便による影響が少ない配送手段の確保に努めました。

コロナ禍に限らず、国際配送は世界情勢による影響を大きく受けるため、それまで利用していた配送手段が使用できなくなる可能性もあります。そうした場合に備えて、複数の配送手段を持っておくことや、通常時には配送手段・配送会社を1つだけ利用していたとしても、非常時に備えて複数の選択肢を持っておくことが重要になってきています。

西尾 里美

年間700トン以上のCO2排出量を削減する大日本印刷の環境配慮型「ラベル伝票」、通販・物流・宅配業者に提供開始

2 years 8ヶ月 ago

大日本印刷は、宅配・通信販売・物流の事業者などに提供している「ラベル伝票」を、CO2排出量を削減する環境配慮型の「ラベル伝票」に切り替えていく。

製造工程で有機溶剤を使わない剥離(はくり)紙に切り替えることでCO2を削減するラベル伝票を開発した。環境配慮型ラベル伝票への切り替えを進めることで、2025年時点で年間700トン以上のCO2排出量の削減が期待できるという。

段ボールに貼った、ラベル伝票のイメージ
段ボールに貼った、ラベル伝票のイメージ
ラベル伝票から剥離紙をはがすイメージ
ラベル伝票から剥離紙をはがすイメージ

ラベル伝票のように、異なる用紙を複数の層に重ねて貼り合わせる製品は、一般的に反りやゆがみが発生しやすいという課題があった。材料の構成や工程を工夫することで、従来品と同等の品質で環境配慮型のラベル伝票を製造できるようになったという。

今後は大日本印刷グループで製造する大半のラベル伝票を環境配慮型に切り替えていく。このほか、ラベル伝票以外の製品でも、環境配慮型の製品への切り替えを検討する。

EC利用拡大に伴いラベル伝票も増加。CO2削減は喫緊の課題

昨今のデジタル化、コロナ禍の巣ごもり需要などが理由でECの利用が拡大。配送量の増加に伴い、荷物に貼付するラベル伝票も増加している。従来は剥離紙の製造工程で有機溶剤が使われていたため、剥離紙の製造時に揮発(きはつ)した有機溶剤を回収して燃焼処理する工程でCO2が排出されていた。

大日本印刷は環境問題への対応を重要な経営課題の1つとしている。特に「脱炭素社会」の実現に向けて、2050年度(2051年3月期)までに自社拠点での事業活動に伴うCO2などの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。

高野 真維

【機能性表示食品で初】にさくらフォレスト措置命令を下した背景+変わる消費者庁の調査体制 | 通販新聞ダイジェスト

2 years 8ヶ月 ago
消費者庁はさくらフォレストが展開する機能性表示食品に対し、景表法の優良誤認があるとして措置命令を下した。機能性表示食品の届出表示そのものを不当表示と判断した消費者庁。この処分は業界内で混乱と反発を招いている

消費者庁は6月30日、さくらフォレストの機能性表示食品に、景品表示法に基づく措置命令(優良誤認)を下した。届出の「科学的根拠」に踏み込み違反とした。初の事例。制度を所管する食品表示企画課の所掌を侵し、表示対策課が断行した処分は、混乱と反発を招いている。

消費者庁の主張は「根拠に合理性欠く」

処分は、機能性表示食品の根拠に踏み込んだ点でこれまでの処分と異なる。過去に機能性表示食品を対象にした処分は、「葛の花事件」(17年)の1件。「広告」の届出表示からの逸脱が対象だった。

今回、厳密に届出表示の逸脱から問題になった広告表示は、血圧低下をめぐる「グーンと下げる」のみ。それ以外は、届出表示の裏づけとなる根拠が合理性を欠くとの判断から、届出表示そのものを不当表示と判断した。

さくらフォレストの措置命令をめぐる行政対応
さくらフォレストの措置命令をめぐる行政対応

対象は、「きなり匠」「きなり極」の2商品。「きなり匠」は、中性脂肪低下(機能性関与成分・DHA/EPA)、血圧低下(同・モノグルコシルヘスペリジン)、LDLコレステロールの酸化抑制(同・オリーブ由来ヒドロキシチロソール)を、「きなり極」は中性脂肪低下(同・DHA/EPA)を表示していた。

措置命令の対象となった「きなり匠」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)
措置命令の対象となった「きなり匠」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)
同じく措置命令の対象となった「きなり極」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)
同じく措置命令の対象となった「きなり極」(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)

SRと届出表示不一致を問題視。さくらは機能性の届出撤回

消費者庁の合理的根拠の提出要求(不実証広告規制)を受け、さくらフォレストは、DHA・EPAで30報を超える論文など根拠資料を提出。モノグルコシルヘスペリジンでは、トクホの許可論文も提出している。だが、消費者庁は、研究レビュー(SR)と届出表示の不一致を問題視。根拠と認めず「優良誤認」と判断した。

「きなり」2商品は、DHA・EPAを4~500ミリグラム配合(総量)していた。一方、提出論文の多くは、その倍近い量で検証したものが大半を占めた。医薬品、トクホも成分量は、860~1800ミリグラム(同)配合するものが中心。

一部論文は少量で機能を示す評価もあったが、同量で機能を否定するものも同程度あり、「SRは肯定・否定の両側面から評価する必要があるが、適切な評価と認められない」(田中誠ヘルスケア表示指導室長/取材時点)とした。

モノグルコシルヘスペリジンは、減塩しょうゆを対象に提出論文を評価。論文は、「成分+減塩」による効果を確認したものであり、「成分単独の使用の効果を裏付けるものではない」(同)とした。ヒドロキシチロソールは、摂取群とプラセボ群の有意差の評価手法を不適切と判断した。

さくらフォレストは、「処分は仕方がない。真摯(しんし)に受け止める」(西尾和剛取締役)とコメント。同日、届出を撤回した。

同種のSR製品88件、表示の根拠を再検証へ

制度を所管する食品表示企画課は、処分を受け、(1)2商品と同一の根拠(SR)を使用したもの (2)DHA・EPAは、とくに「きなり」の配合などを下回るもの――をメルクマール(編注:指標のこと)に、同種の届出を行う事業者に対し、根拠に基づく表示かを確認。7月17日を期限に回答を求めている。

さくらフォレストの違反事実
さくらフォレストの違反事実

対象数は、DHA・EPAは31件、モノグルコシルヘスペリジンは12件、オリーブ由来ヒドロキシチロソールは47件(2成分の重複4件を含む)の計88件。

今後の対応は、「確認を求め、回答に応じて個別案件による」(食品表示企画課・蟹江誠保健表示室長/取材時点)と話す。加えて、業界団体に届出の再検証を通知した。

「合理性欠く」と判断する理由は不透明

「根拠」に踏み込み、他の届出企業を巻き込んだ今回の処分は反発を招いている。

消費者庁は、処分にあたり、不実証広告規制を適用している。規制は、企業に表示の裏づけとなる合理的根拠の提出を求め、これを認めない場合、優良誤認とみなすことができる“みなし規定”。

だが、機能性表示食品は、そもそも届出の根拠が事前に提出・公開される建付けだ。「あえて規制を適用して否定する意味がわからない。根拠の問題に踏み込み、“根拠がなかった”と説明するための適用」(業界関係者)との指摘がある。消費者庁は、根拠が合理性を欠く理由を「評価の一部」(田中室長)として詳細を明らかにしないが、説明責任を尽くすべきだろう。

「事後チェック指針」は機能せず

機能性表示食品は、「葛の花事件」、処方薬と同一の表現から複数社の届出撤回に至った「歩行能力の改善問題」など、制度育成の障害となる諸問題を解消するため、20年に「事後チェック指針」を策定した。

業界と協調的に届出の根拠の疑義、広告上の問題に対処し、景表法上のリスクを避ける調整が図られた。ただ、今回、さくらフォレストが調査以前に指導はなかったとみられる

外部から一体に見える消費者庁だが、実際は、各省庁からの出向で構成する寄合所帯。公正取引委員会の出向を中心にする表示対策課、農林水産省からの出向を中心とする食品表示企画課の連携も密ではない。

届出根拠の精査など「事後チェック指針」の運用は、食表課傘下の保健表示室の所掌。ヘルスケア表示指導室は、疑義のある根拠について有識者に意見を求めるセカンドオピニオン事業などを担う。「根拠」の問題は制度を所管する保健表示室が食表法で対応するのが筋だが、表対課がこれを侵し処分に至っている

措置の公平性が不均衡になる懸念も

さくらフォレストは中核商品に打撃

措置の公平性の問題も生じる可能性がある。

さくらフォレストは、景表法による措置命令の公表、今後、課徴金調査も受ける。同社の売上高は、63億円(22年3月期、民間調査機関調べ)。取り扱う約40品目のうち、「きなり」は、「新規獲得に使う商品の一つ」(同社)。中核商品であり、「半分までいかないが、相当量を販売していた。半分近く占めるのでは」(OEM関係者)という者もいる。

届出表示そのものを対象にしているため、違反表示は「容器包装=販売期間」におよぶ。表示期間は、「きなり匠」が約1年半、「きなり極」は少なくとも約3年。課徴金が課されれば億単位が予想される。根拠を否定する処分の影響は甚大だ。

「不公平感が強い」「指導で済んだのでは」――。措置に疑念の声

一方、同種の届出製品に想定される他社への措置は、行政指導のほか、食表法に基づく撤回の指示・命令。業界関係者からは、「単独での処分公表と課徴金、かたや指導、撤回ではあまりに影響が違う」「不公平感が強い」「指導で済んでいた案件ではないか」との声がある。

発売以降、国民生活センターのPIO―NETに寄せられた2商品の相談も約4年で「取引関連」が32件、効果に関する苦情は4件だった。

課徴金は、事業者が「相当の注意」を払っていれば免責される。指標は、表示管理体制の整備。表示管理責任者の配置や表示根拠の確認などがある。免責されるかも今後のポイントになる。

◇◇◇

制度を所管する食表課保健表示室は、処分に「非常に遺憾。届出者は関係通知をよく理解して届出してもらう。絶えず見直すことを周知したい」と話すが、本来、「事後チェック指針」が適切に運用されていれば避けられた処分。消費者庁内の連携不足からくる怠慢が招いた処分ではないか。

消費者庁・田中誠室長が離任。10年にわたり影響力

消費者庁表示対策課・ヘルスケア表示指導室の田中誠室長が7月1日付で同職を離任した。公務員の異動が一般的に2年周期とされるなか、約10年にわたり同課に籍を置き、事件調査で影響力を行使してきた。

田中 誠 氏
田中 誠 氏

「トクホの初勧告かな」。ライオンに対する健康増進法での初の勧告を、最も思い出深い事件にあげる。事件は16年。通販を拡大していたライオンは以降、勢いを削がれ、今年5月、日清食品に機能性表示食品事業の譲渡を発表した。

以降も機能性表示食品の初処分となった「葛の花事件」(17年)、認知機能関連の機能性表示食品に対する一斉監視(22年)など大型事件を手がけた。最後の置き土産が、さくらフォレストの処分だ。

事件による業界の動揺を背景に、「事後チェック指針」「切り出し表示」の業界自主基準への反映など、規制強化も求めた。長期期間の在職は組織において職務の専門性を高める一方、裁量行政のリスクをはらむ。一人の行政官の思想信条が、業界に影響を及ぼすことこそ、裁量行政そのものだろう。

今後は、消費者教育推進課食品ロス削減推進室長専任として、食品ロス削減法の改正作業にあたる。

業界に対しては、「機能性のエビデンスは努力されている。一方、根拠に問題がなくとも広告には配慮が必要。これは制度の育成が進んでも変わらない」との言葉を残す。離任にあたり、「公正競争規約の策定が道半ばという思い。トクホも規約策定以後は1件の指導・処分もない。ルール化されればリスクはぐっと減る」と提言する。

後任は、今年4月、食品表示対策室長に就任した農水省出身の綾戸隆英氏が兼任する。

◇◇◇

一難去ってまた一難となるか。もう一つ、業界に影響を与えそうな人事が7月3日付、同庁食品表示企画課保健表示室・蟹江誠室長の離任だ。

後任は、厚労省の今川正紀氏。昨年、同省新開発食品保健対策室長として、機能性表示食品を含む「いわゆる健康食品」について、因果関係が不明確なままで健康被害情報を公表すると政策を仕掛けた人物だ。かつて、消費者庁で食品表示法の策定に携わったこともある。

着任後、初めて担当するのが、田中氏が置き土産として残したさくらフォレスト関連の届出製品の再検証。届出企業に根拠の確認を求め、食表法に基づく撤回の指導等を判断する。健康被害情報の公表をはじめ、安全性管理を軸にした健食の制度化に意欲を持つ。今後どのような判断が飛び出すか注視する必要がありそうだ。

同種SR88件の根拠「確認」、届出撤回の可能性も

同様のSRを行う企業を巻き込み燃え広がる「根拠」に踏み込む処分は、業界に混乱を招いている。制度自体が大きく揺らいでいると言えよう。制度を所管する消費者庁食品表示企画課の担当官(課長補佐)に、88件に対する今後の対応を聞いた。

――――調査の理由は。

「機能性表示食品は、『根拠がある』ことを前提に自己責任で表示できるもの。根拠がないことが明らかになったので確認している」

――――どのような確認を行っているか。

「『表示の根拠を十分説明できているか』という確認を行っている」

届出の段階では「1つひとつ見ていない」

――――制度は食表課が所管する。届出の段階で根拠は確認していないのか。

「制度は、事業者責任が前提。1つひとつの論文まで見ているわけではない」

――――届出から公表まで時間を要しているのはかねてからの課題だ。確認していないのであれば、時間をかける必要もない。

「内容確認はそれなりに時間がかかる。SRの記載内容と届出表示の齟齬(そご)がないかを確認している。たとえば血圧関連の根拠で中性脂肪の表示を行っていては問題なので形式的に確認している」

――――届出が不備事項の指摘で受理されないことがある。形式的な確認であれば、記載漏れがなければ受理すればよいのではないか。

「SRと届出表示が正しければ受理する。一定の根拠は見るが、詳細までわからない」

――――処分は、食表課が受理したものを表示対策課(以下、表対課)が問題視し、処分を受けて食表課が企業に確認する構図だ。職分に踏み込み、食表課が窓口に見える。

「見えてしまうということはあるかもしれないが、それぞれの所掌がある。制度は一定の根拠があれば届出できる。表対課は、表示を調査する。今回は、その内容が根拠にまで及んでしまったため当課が対応することになった」

――――食表課の保健表示室は、「事後チェック指針」の運用を担う。処分に至らないための指針ではないのか。

「一義的に届出者が注意してもらう必要がある。問題ないようにしてもらいたい」

撤回の指示は「あり得る」

――――確認後の法律上の措置の可能性は。

「食品表示法上は、撤回の『指示』、これに従わない場合の『命令』がある。いずれも公表される。命令に従わない場合は、300万円以下の罰金もしくは3年以下の懲役という罰則がある」

――――撤回の指示はあり得るか。

「そうなる」

――――指導は。

「やり取りを行うなかで企業側が気づかれて自ら撤回するかもしれない」

――――根拠を問題視する点は同じだが、景表法の処分と措置の影響が大きく異なる点はどう考えている。

「法律が異なる。食表法の範ちゅうで確認、対処するのが限界といえばそうなる」

――――対応が異なるのも仕方がないと。

「そうなる」

――――根拠に問題が見つかった際に表対課と連携して対応しないのか。

「別になる。88件に対応して従わないからといって景表法違反にはならない。これと別に景表法に基づく調査がされれば、判断されることもある」

――――情報提供など緊密な連携はとらない。

「広告関連の情報提供があれば担当課が異なるので伝えることはあるが、今回の対象は根拠。当課としても今回の商品以外に調査しているかはわからない」

――――互いの動向は関知しない。

「というより関知できない」

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通販新聞

【台風6号の配送への影響】ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便は沖縄・鹿児島の一部地域宛て荷物の預かりを停止

2 years 9ヶ月 ago

大型で強い台風6号の影響で、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便は8月3日までに、沖縄県全域と鹿児島県の一部地域宛ての荷物の預かりを停止したと発表している。

ヤマト運輸

荷物の預かりを停止している地域

  • 全国から沖縄県全域、沖縄県全域から全国
  • 全国から鹿児島県の島しょ部

配送に遅れが生じている地域

  • 全国から沖縄県全域

佐川急便

荷物の預かりを停止している地域

  • 全国から沖縄県全域、沖縄県全域から全国
  • 全国から奄美市(奄美大島)・大島郡(徳之島・沖永良部・与論島・喜界島)・西之表市・熊毛郡・鹿児島郡

配送を停止している地域

  • 沖縄県の石垣市・宮古島市・八重山郡・宮古郡
  • 鹿児島県の大島郡(徳之島・沖永良部・与論島・喜界島)

配送に遅れが生じている地域

  • 沖縄県の那覇市・浦添市・宜野湾市・沖縄市・うるま市・名護市・糸満市・豊見城市・南城市・中頭郡・国頭郡・島尻郡
  • 鹿児島県の奄美市(奄美大島)・西之表市・熊毛郡・鹿児島郡

日本郵便

荷物の預かりを停止している地域

  • 全国から沖縄県全域、沖縄県全域から全国
  • 全国から鹿児島県の奄美市全域と大島郡全域
  • 鹿児島県の奄美市全域と大島郡全域から全国

配送に遅れが生じている地域

  • 全国から沖縄県全域、沖縄県全域から全国
  • 全国から鹿児島県の西之表市・熊毛郡(種子島、屋久島)、奄美市・大島郡
  • 鹿児島県の西之表市・熊毛郡(種子島、屋久島)、奄美市・大島郡から全国
瀧川 正実

ヤフー社長でeコマース革命旗振り役の小澤社長が退任、「LINEヤフー」では顧問に

2 years 9ヶ月 ago

Zホールディングスは9月30日付で、ZHD取締役でヤフーの「eコマース革命」を推進した現社長の小澤隆生氏が退任すると発表した。小澤氏は、ZHD、ヤフー、LINEが10月1日付で合併し発足する「LINEヤフー」の顧問に就く。

ヤフーは2022年4月1日付で、新たな代表取締役社長CEO(最高経営責任者)に小澤隆生専務が就任すると発表
退任する小澤氏

小澤氏は2012年にヤフーへ入社。2013年10月、ヤフー執行役員ショッピングカンパニー長(当時)として出店料や手数料などを無料にする「eコマース革命」を導入。アスクルやZOZOの連結子会社化などを実現し、ヤフーのショッピング事業に関する事業構造変革を進めてきた。

ヤフーの社長に就任したのは2022年4月1日。「新生ヤフーでは、『!(びっくり)』や『おもしろさ』にもこだわりたいと考えています。情報技術を通じて、人々や社会の課題を解決する良いサービスや、日本をもっと便利にする良いサービスの提供に加えて、『!』や『おもしろい』と思ってもらえるユーザー体験を提供し、さらなるヤフーの成長を実現してまいります」と抱負を語っていた。

瀧川 正実

佐川急便が始めた海外向けECをトータルサポートする「SAGAWAの海外通販まるごとサポート」とは

2 years 9ヶ月 ago

佐川急便は、海外向けECに課題を抱えている事業者に対して、海外向けビジネスをトータルでサポートする「SAGAWAの海外通販まるごとサポート」の提供を開始した。

「海外通販まるごとサポート」専用のシステムは、複数の海外モールやカートとAPI連携することで、受注管理から出荷処理までの業務を1つの専用システムで完結できる。

海外向けECでは、モールやシステムごとにさまざまな管理が必要となり、多くの煩雑な作業の発生、業務の非効率化が課題にあがっている。これを、API自動連携によって、「SAGAWAの海外通販まるごとサポート」専用システム内で一元管理する。

マーケティング面では、市場調査や販促施策、出品先の国・モールの紹介、出品までのプロセスなどの提案・サポートを提供。倉庫での在庫保管・管理から国際輸送までを提案・サポートを手がける。

佐川急便は、海外向けECに課題を抱えている事業者に対して、海外向けビジネスをトータルでサポートする「SAGAWAの海外通販まるごとサポート」の提供を開始した
「SAGAWAの海外通販まるごとサポート」について

経済産業省調査によると、世界の越境EC市場は2026年に4兆8200億米国ドルに達すると予測されている。海外向けECを新たに始める事業者の課題には、最適な商材や販売国、海外モール、国際輸送手段などの選定などがある。

また、拡販をめざす海外向けEC実施事業者の課題には、新たな販路の開拓、モールごとの在庫管理、出荷手続きなどの煩雑な作業があげられる。

佐川急便は、海外販売やマーケティングなどに精通している複数のパートナー企業と連携し、海外に向けた商品輸送のほか、マーケティングサポートや販路紹介などトータルでサポートしていく。

瀧川 正実

大塚商会が愛知県に「中部物流センター」を開設/ドコモ「dポイント」「d払い」加盟店を拡大【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

2 years 9ヶ月 ago
2023年7月28日~2023年8月3日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?
  1. 大塚商会、愛知県に物流センター「中部物流センター」を開設、ロボット導入で1.5倍の出荷に対応できる作業効率を実現

    現在の中部物流センターから最新の大型物流センター「中部物流センター」へ移転。中部圏における新たな物流拠点として物流ネットワーク体制を強化する

    2023/7/31
  2. ドコモが「dポイント」「d払い」加盟店を拡大、「カクヤスネットショッピング」などが導入

    NTTドコモは、実店舗やECでポイントがたまる・使える「dポイント加盟店(街のお店)」「d払い加盟店(街のお店)」「d払い加盟店(ネット)」を拡大している

    2023/8/1
  3. 「Amazon」「楽天市場」に引けを取らない自社ECになる! 売れているECサイトが必ずやっているカゴ落ち施策と入力フォーム改善策を解説

    EC向けMAツール「EC Intelligence」を展開するシナブルが、今日からすぐに実践できるECサイト改善策を解説

    2023/7/31
  4. 「カクヤスネットショッピング」の一部商品の販売価格を平均11.7%値上げ

    販売価格の調整は、仕入先の出荷価格値上げへの対応策

    2023/8/2
     
  5. まさに魔法!「Shopify Magic」がEC事業者の悩みをスッキリ解決してくれるかも【ネッ担まとめ】

    ネットショップ担当者が読んでおくべき2023年7月24日~7月30日のニュース

    2023/8/1
     
  6. EC物流のプロが解説、宅配クライシスの再来「2024年物流問題」+通販業界に与える影響

    【エキスパートが教えるEC物流最前線:前編】EC物流支援のスクロール360の高山取締役が、2024問題に関連する諸問題をやさしく解説。物流事業に精通する有識者へのインタビューも交えつつ、EC事業者が検討するべき施策まで指南する

    2023/7/31
     
  7. 「売れるハッシュタグ」を自動生成するAIツールとは?

    awooは、通販サイトの回遊率や購入率アップにつながるAI活用を提案。cookie情報や個人情報がなくても実現できるという、AIが作る効果的なハッシュタグの活用法とは。

    2023/8/1
     
  8. ネット広告の不当表示対応を強化する東京都が「東京デジタルCATS」発足、小池都知事「悪質事業者への対策のギアを一段と上げる」

    東京都は不当なインターネット上の広告を調査するための助言員チームを発足。助言員のアフィリエイト協議会・笠井代表理事やECネットワーク・原田理事のコメントをまとめた

    2023/7/31
     
  9. 「楽天市場」のクーポンシステム利用料、無料キャンペーンを2024年3月末で終了

    「楽天市場」出店店舗向けの戦略共有会(2023年8月2日実施)で発表。ーポン機能の強化に向けた取り組みを行っており、安定的なシステム稼働に向けた投資が必要となったため、無料キャンペーンの終了を決めた

    2023/8/3
     
  10. カクヤスグループが従業員の基本給を月額7%アップ、新卒入社者の初任給は最大7%引き上げを実施へ

    人材への積極的な投資を行うことで、従業員の満足度向上、人材の定着、優秀な人材の獲得につなげる

    2023/8/2
     

    ※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

    藤田遥

    Hamee、自社ECサイトにカスタムオーダー機能を導入できる「CustoMee(カスタミィ)」のベータ版を提供

    2 years 9ヶ月 ago

    Hameeは、自社ECサイトにカスタムオーダー機能を無料で導入できる「CustoMee(カスタミィ)」を開発した。ECサイト、実店舗、イベントなどを手がける事業者向けに、ベータ版を8月4日から提供する。

    「CustoMee(カスタミィ)」とは

    ECサイトや実店舗、イベントに導入できるカスタムオーダーのサービス。ベースとなる商品に、ユーザーがイラストや画像などを選んでカスタマイズできる。カスタマイズした画像はデジタル印刷し、オリジナル品として消費者に販売できるようになる。

    1点から注文可能で、ベースの商品は導入企業の商品または「カスタミィ」が提供するOEM商品から選べる。

    Hamee ハミィ CustoMee カスタミィ カスタマイズサービス
    カスタマイズサービス「CustoMee(カスタミィ)」について

    ECサイトでは、カスタムオーダー機能を最短5分で導入することが可能。導入費用、基本利用料はかからず、カスタマイズ販売の売り上げに対する手数料を、Hameeが導入企業から徴収する。

    実店舗では、店舗内で製造してその場で渡す、または工場で製造して後日渡すことができる。イベントの場合、その場でユーザーにカスタムオーダー体験から商品提供までを完結することもできるという。

    まずは、8月4日に東京都・原宿にオープン予定の実店舗「iFace Lab(アイフェイスラボ)」でサービスを導入する。「自分がデザインした商品を購入できる」という購買体験をユーザーに提供していく。

    ベータ版提供に合わせて、先行利用企業の受付を開始した。導入前に「カスタミィ」を体験したい企業は、「アイフェイスラボ」での体験も可能。

    Hamee ハミィ CustoMee カスタミィ カスタマイズサービス ベータ版の受付開始
    サービスのベータ版の申込みを開始した

    Hameeは、サービス導入で次のようなメリットが得られると説明する。

    • ユーザーに好きなモノを好きなデザインで作れる購買体験を提供できる
    • 最小ロットの制約なく、商品ラインアップを拡充できる
    • どのようなデザインが売れるのか、実売数の情報を得られる
    • 売れるモノを売れる分だけ作れる
    藤田遥

    千趣会が「ベルメゾン」ユーザーに宅配クリーニングサービス「せんたく便」を提供

    2 years 9ヶ月 ago

    通販ブランド「ベルメゾン」の千趣会は、ECサイトの「ベルメゾン」を利用する顧客向けに提供している宅配クリーニングサービスにおいて、ヨシハラシステムズとの提携を始めた。

    ベルメゾン 千趣会 ベルメゾンネット せんたく便 クリーニング 宅配

    提供する宅配クリーニングは、重い洋服や布団を店舗に持ち込まず、「ベルメゾン」上で完結できる。「ベルメゾン」上で必要情報を入力して注文すると、洋服や布団をヤマト運輸が集荷する。

    宅配クリーニングサービスを手がけるヨシハラシステムズが持つネットワークを通じ、工場でクリーニングを実施。後日、ユーザーの自宅へ商品を届ける。この仕組みは、ヨシハラシステムズの宅配クリーニング専用クラウド管理システムを活用するネットワークを通じて提供する。

    千趣会は「せんたく便」との提携で、使用中・使用後のサービスも組み合わせた価値を指す「使用価値」を顧客に提供したい考え。

    千趣会はECサイト「ベルメゾンネット」で宅配クリーニングサービスを提供している(画像は「ベルメゾンネット」から編集部がキャプチャ)
    千趣会はECサイト「ベルメゾンネット」で宅配クリーニングサービスを提供している(画像は「ベルメゾンネット」から編集部がキャプチャ)
    高野 真維

    DM三井製糖が食のD2C企業「マッスルデリ」を買収、拡大するアクティブシニア市場を開拓

    2 years 9ヶ月 ago

    DM三井製糖ホールディングスの連結子会社で国内製糖メーカー最大手のDM三井製糖は、食のD2C事業を手がけるMuscle Deli(マッスルデリ)の株式を取得し、連結子会社化したと発表した。

    DM三井製糖の素材・研究開発力、マッスルデリのスピード感やマーケティング力を掛け合わせ、ライフ・エナジー事業(LE事業)のバリューチェーン強化。タンパク質など機能性素材を用いた総合的なフードサービス領域を開拓する。

    LE事業は、DM三井製糖が事業拡大を進めている重要事業領域。素材から食品事業を含むサービス分野まで消費者のライフスタイルに適した商品を提案している。

    DM三井製糖ホールディングスの連結子会社で国内製糖メーカー最大手のDM三井製糖は、食のD2C事業を手がけるMuscle Deli(マッスルデリ)の株式を取得し、連結子会社化した
    LE事業の成長戦略

    マッスルデリが展開する冷凍宅配弁当事業は成長領域で、DM三井製糖にとって消費者接点となるフードサービス領域における事業拡大の核になると位置付ける。

    今後、DM三井製糖はマッスルデリと新商品の開発、新規事業の立ち上げを通じて、拡大するアクティブシニア市場を開拓するとしている。

    DM三井製糖ホールディングスの連結子会社で国内製糖メーカー最大手のDM三井製糖は、食のD2C事業を手がけるMuscle Deli(マッスルデリ)の株式を取得し、連結子会社化した
    資本提携について

    マッスルデリは2016年の創業。ボディメイクやダイエットに取り組むユーザー向けに、タンパク質など最適な栄養バランスの食を届るサブスクリプションサービス「Muscle Deli」ブランドを展開。2022年には1人ひとりの目的や好みに合わせた食事を届ける「YOUR MEAL」ブランドを始めている。

    瀧川 正実

    ZETA、リテールメディア広告エンジン「ZETA AD」にハッシュタグ連動広告機能を搭載

    2 years 9ヶ月 ago

    ZETAは、リテールメディア広告エンジン「ZETA AD」に「ハッシュタグ連動広告機能」を搭載した。

    ハッシュタグ検索に対応

    「ZETA AD」の新メニューとしてハッシュタグへの対応を開始。ECサイト内のハッシュタグをクリックして表示された検索結果一覧に広告を掲載できるようにした。

    ZETA ZETA AD ハッシュタグ連動広告機能 ハッシュタグ検索に対応
    「ZETA AD」が新機能としてハッシュタグ検索に対応

    ハッシュタグは、商品説明やUGCのテキストを解析して自動生成するホットなキーワード。これをきっかけにページへ流入したユーザーに対してダイレクトにアピールできる「ハッシュタグ連動広告機能」は、より高いPR効果を生み出すことが期待できるという。

    機能を利用するためには、ハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」を導入する必要がある。

    ZETAは2015年6月から「ZETA AD」を提供しており、2019年4月にプロモーションサーチに対応するなど機能を強化している。

    「ZETA AD」とは

    検索クエリを分析することで消費者心理を捉えた広告を実現するマーケティングソリューション。

    「サイト内検索クエリ」を分析して広告を最適化することで、リアルタイムでユーザーニーズに合う広告を掲出する。EC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」やそれ以外のサイト内検索エンジンにも連携が可能。

    ZETA AD サイト内広告エンジン
    「ZETA AD」の基本機能(画像は「ZETA CX」サイトからキャプチャ)
    藤田遥

    メルマガのブロックで配信成功率・開封率の低下に陥ったEC企業の打開策+エンゲージメントUPのメールマーケティング事例 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

    2 years 9ヶ月 ago
    米国のレディースアパレル事業者の事例から、Eメールの配信成功率が突然低下してしまったときの原因、対策まで詳しく解説します

    米国でレディースアパレルの小売業を手がけるJ.Jill(ジェイ・ジル)のメールマーケティングに関する事例をお伝えします。J.Jillは、Eコマースの販売促進につながる重要なEメールの配信成功率が低下したため、早急に対応しなければならないという課題を抱えていました。どのような施策を打ち、この危機を脱したのでしょうか。開封率アップにつながった取り組みを含めて解説します。

    記事のポイント
    • Eメールシステムの移行後、J.JillのEメールにおける消費者エンゲージメントは99.7%から96.8%に低下
    • GoogleやYahooのスパムブロックから解除されるために、最も熱心な顧客にメールを送り、IPアドレスの「ウォームアップ」を実施した

    IPアドレスが突如、ブロックされた理由とは

    米国のEC専門誌『デジタルコマース360』が発行する「北米EC事業 トップ1000社データベース 2023年版」で245位にランクインされているJ.Jill。Eメールの運用・戦略担当シニアマネージャーを務めるマイケル・カブラル氏は「Eメール関連の指標にはすべてに目光らせていますが、EメールからWebサイトにアクセスするトラフィックは最も注視しています」と話します。

    J.Jillは2022年7月に3回目のメールシステム移行を実施した後、メールの配信成功率が低下しました。カブラル氏によると、何らかの原因によって7月4日にメールIPアドレスがブロックされたことが理由だそうです。これにより、J.Jillのメール配信における消費者エンゲージメントは、従来の99.7%から96.8%に下がりました

    それほど大きな数字ではないように見えますが、メールからECサイトへの訪問数が多いJ.Jillにとってはかなりの打撃と言えます。

    J.Jill Eメール運用・戦略担当シニアマネージャー マイケル・カブラル氏
    J.Jill Eメール運用・戦略担当シニアマネージャー マイケル・カブラル氏

    EメールはJ.Jillのオンライン販売の“非常に大きな部分”を担っている」とカブラル氏は付け加えています。

    受信者にとって迷惑メールと思われない工夫とは

    J.JillからのEメールにあまり興味がない場合、消費者の受信ボックスをJ.JillからのEメールであふれさせたくないですし、迷惑メールボタンを押してほしくありません。消費者の手によって迷惑メールに分類されるより、そもそも受信しないように設定してもらった方が良いのです。(カブラル氏)

    特定の送信者から受信したメールを迷惑メールに分類する人が多い場合、その送信メールアドレスは、自動でブラックリストに登録されます。ブラックリストとは、スパム、すなわち迷惑メールを送信しているとみなされたIPアドレスの集まりです。

    ブラックリストに登録されたメールアドレスは、ブロックされるか、受信者のメールボックスのスパムフォルダに自動で分類されるようになります。

    この仕組みを踏まえると、消費者がEメールをクリックすればするほど、消費者は多くのEメールを小売事業者から受け取ることになります。一方、受信拒否などインタラクションが少なくなれば、その消費者にJ.Jillが送るEメールの数は少なくなります。

    迷惑メールに分類されると事業者の不利益につながりやすい
    迷惑メールに分類されると事業者の不利益につながりやすい

    J.Jillは、データの品質保持とメールマーケティングプラットフォームを運営するValidity社が提供するツール「Everest」を使い、どういったEメールが承認され、問題がないかを確認したそうです。

    カブラル氏とValidityのアカウントマネージャーは、J.Jillが全てのメールアドレス登録者に向けて、あたかも全員が定期的にメールを開封する熱心なファンであるかのように想定してEメールを送っていることを突き止めました。それはなぜか?

    「Apple社のiOSアップデートでメールのプリキャッシュの仕組みを変更したため、メールが開封されなくても、メールが開封されたと誤認されることが発生していました」とカブラル氏は言います。プリキャッシュとは、ソフトウェアが消費者のWebブラウザデータを事前に保存またはキャッシュすることで、消費者に電子メールをより速く配信できるようにする仕組みです。

    「良い」IPアドレスを築くためのウォームアップとは

    2021年初頭、AppleのiOS 14のアップデートにより、ユーザーはWeb上のアクティブトラッキングをオプトアウトできるようになりました。これにより、企業のマーケティング担当者はWebユーザーを追跡し、その分析結果を踏まえてパーソナライズした広告やキャンペーンを作成することが難しくなりました。

    J.Jillは過去にメールを開封した受信者にメールを送りました。しかし、「AppleのiOS 14へのアップデートにより、メールが開封されたかどうかを正確に把握することができなかった」とカブラル氏は振り返ります。

    J.Jillなどの小売企業が新しいメールマーケティングベンダーを活用したEメール配信に移行した場合、小売企業は「良い評価」を得るIPアドレスを築き上げなければならないとカブラル氏は気付きました。

    そのため、J.JillはEメールのIPアドレスの「ウォームアップ」を実施しました。「ウォームアップ」は、専用IPアドレスで送信するEメールの量を、数週間かけて徐々に増やしていくことを意味しており、カブラル氏によると、これによって「良い評価を得る」ことができるそうです。

    良い評価を得るためには、自社のIPアドレスが信頼できる送信元であることを示すために、メールを受信した消費者がメールを開封したり閉じたりする必要があります。(カブラル氏)

    メールの大手キャリアGmailとYahooは、受信者がスパムメッセージを受信していないことを確認するため、EメールのIPアドレスを監視しています。ブラックリストに載るのを避けるため、カブラル氏はまず最もエンゲージメントの高い顧客にメールを送りました。

    J.Jillの顧客がメールをクリックし、メールを開封すると、IPブロックは解除されたとカブラルは言います。「クリックしたり、メールを開いたりする人がどんどん増えていきました」(カブラル氏)

    開封率の高いメールを送るために

    Eメールが意図した読者に届くようになった今、カブラル氏は「J.Jillは値引きよりも商品の“新しさ”をアピールすることをより重視して訴求している」と言います。それがメールを受信する顧客にとって有益な情報なのだそうです。

    カブラル氏はEメールの開封率を追跡しているので、開封率の高いメールにするには何が適切なのかを理解しています。

    J.Jillは受信する人の視点に立ったメールマーケティングを実施している
    J.Jillは受信する人の視点に立ったメールマーケティングを実施している

    一番の人気は、新商品、あるいは新入荷の商品を知らせる内容で、開封率が高い傾向にあります。J.Jillはその傾向を踏まえたEメールの配信をしています。(カブラル氏)

    同一商品は訴求内容に変化をつける

    カブラル氏はこう言います。「同商品について訴求するときは、Eメールを一度送信したあと、2週間後にもう一度送ります。そうすることで、顧客の購買意欲を持続させることができると考えています」

    J.Jillの顧客のなかには、J.JillからのEメールが届かない場合、なぜ自分に届かないのかをカスタマーサービスにメールで問い合わせることもあるそうです。

    J.Jillのお客さまは、お送りしているEメールをとても熱心にチェックしてくれていると思います。(カブラル氏)

    また、新商品や売れ筋商品の入荷が遅れた場合、J.Jillはその旨をメールで顧客に知らせています。入荷が遅れている商品をチェックした顧客には、その商品の在庫が入荷された時点でそれを知らせるメールも送っています。

    先述の通り、iOSの変更以来、J.JillではWebサイトの訪問者数は減少しているそうです。その一方で、ユーザーによるWebサイトの滞在時間は長くなっています

    J.Jillの熱心なファンはまだWebサイトに来てくれています。その証拠に、Webサイトの売り上げは以前よりもアップしています。(カブラル氏)

    この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

    Digital Commerce 360

    「楽天市場」のクーポンシステム利用料、無料キャンペーンを2024年3月末で終了

    2 years 9ヶ月 ago

    楽天グループは、「楽天市場」出店店舗向けの「戦略共有会」において、「RaCoupon(ラ・クーポン)」のクーポンシステム利用料の無料キャンペーンを2024年3月末で終了すると発表した。

    「ラ・クーポン」開始時からクーポンシステムの利用は無料で展開していた。無料キャンペーンは2024年3月末で終了となり、2024年4月から利用量に応じて料金を徴収する。見直し後の料金体系などの詳細は、8月末頃に「サポートニュース」で詳細を配信する予定。

    無料キャンペーン終了の大きな要因は、クーポン利用の受注件数の急拡大があげられる。利用数が増加するにつれて、クーポンサービスを支える費用が増大。クーポン機能の強化に向けた取り組みを行っており、安定的なシステム稼働に向けた投資が必要となったため、無料キャンペーンの終了を決めた。

    クーポンの利用状況が拡大

    「楽天市場」におけるクーポン利用状況を見ると、クーポン発行店舗数の年平均増加率は8.8%、クーポン利用購買割合の年平均成長率は14.7%と増加している(いずれも2018年から2022年の推移)。また、クーポン利用の受注件数も、2013年から10年で約20倍に急拡大している。

    クーポンは、値引き金額を最大99%まで設定でき、「○○個以上で利用可能」などのまとめ買い促進、最短5分から設定できる有効期限など、販促キャンペーン設計の自由度が比較的高いことから店舗の支持を得ていた。

    また、クーポン対象の商品ページでのポップアップ表示でユーザーにクーポンを見付けてもらいやすいこと、店舗メルマガ・バナーなどでの告知、検索結果へのクーポン表示など、ユーザーとのコミュニケーションとしての役割を果たしていた部分もあった。

    ユーザーとしても“今だけ”“自分だけ”といったお得感を感じられることにつながっていることも、クーポンが支持される理由という。

    楽天グループ 楽天市場 ラ・クーポン クーポンシステムの無料キャンペーン終了
    楽天グループで利用できるクーポンサービス「RaCoupon(ラ・クーポン)」(画像は「楽天市場」のサイトからキャプチャ)

    2024年にクーポン機能を強化

    クーポン機能は店舗、ユーザーから支持を得ているため、機能強化を進める。出店店舗からの要望を受け、ユーザー基本属性・購入履歴に基づいてセグメントができるユーザーセグメント機能の拡充、上限設定商品数の拡大、クーポン発行後の表示範囲の変更を可能にするといった機能強化を行う予定だ。

    また、クーポンキュレーションメディア「わくわくクーポンランド」を「楽天市場」ユーザー向けへの露出強化を予定しており、ユーザーがクーポンを見つけやすい環境を整備していく。

    楽天グループ 楽天市場 ラ・クーポン クーポンシステムの無料キャンペーン終了 わくわくクーポンランド
    クーポンメディアのイメージ
    藤田遥

    「無理のない高LTV」をめざす。 老舗企業の富澤商店が仕掛ける“日本人の特性にあった次世代ソーシャルコマース”とは?

    2 years 9ヶ月 ago
    富澤商店は、特許AI技術を持つAIQと業務提携し「次世代ソーシャルコマース事業」を開始した。創業103年の老舗企業がAI技術を駆使して構築する新しい購買体験の全体像と、PoC(Proof Of Concept:概念実証)から得られた考察を聞く

    富澤商店はデジタルシフトとデジタルコミュニケーションの変化に対応し、Cookieの終焉、LTV向上、SNSでの体験価値向上などさまざまなマーケティング課題に挑戦している。ソーシャルメディアによる人と人の「興味・関心」のつながりから、LTVの高い潜在・顕在顧客を獲得する取り組みを、スマイルエックス代表・大西理氏の進行のもと、富澤商店 マーケティング部の岩井一紘氏と、ソーシャル・メディア・マーケティング支援を手がけるAIQ(アイキュー) 代表取締役社長の渡辺求氏が語る。※記事の内容、肩書きは2022年11月の講演時点のものです

    創業103年の富澤商店と特許AI技術のAIQが業務提携

    日本最大級の製菓・製パン材料、器具専門店である富澤商店は、1919年に東京都町田市で乾物屋としてスタートした。今では全体のSKUが約9000、特にお菓子やパン作りの材料がメインで、小麦粉だけでも約350種類もの商材を取り扱っているなど、他店にはない品ぞろえを誇っている。コロナ禍の「おうち需要」の拡大を背景にECの売り上げが急伸。成長領域として「ECを今後どう伸ばしていくかが課題」(岩井氏)。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース
    順調に拡大を続ける富澤商店だが、次の100年を見据えた改革を進めている

    一方、業務提携を締結したAIQは、AIによるコンテンツとユーザーを最適化するソーシャルメディアマーケティングの支援を行っている。得てして担当者のセンスに頼りがちになるマーケティングだが、AIQは独自の特許AI技術を活用し、データドリブンで「再現性」を持たせることを強みとしている。共同事業では3つの特許AI技術を活用し、コミュニティ・コマース・プラットフォーム「Moribus Community & Commerce」を提供している。

    業務提携の狙いとは?

    ECの強化にあたり、まずSNS領域から取り掛かった。

    富澤商店はもともと100年企業としてブランドの潜在的認知度と信頼度が高く、一度利用されるとロングテールで簡単に離れない顧客が多い。特にSNSのフォロワーは“料理を作る楽しさによる共感”でつながっており、富澤商店に対するロイヤリティは高い。

    自社SNSを強化した結果、フォロワー数は約1年で大幅に増加。UGC数や言及数の推移からも同社の事業とSNS領域との親和性の高さを確認できた。

    順調に拡大を続ける富澤商店だが、次の100年を見据えた改革を進めている SNSでの取組をいかにEC売上につなげるか
    SNSでの取り組みをいかにEC売り上げにつなげるかが課題

    こうした特長を生かし、新規顧客との出会いや既存顧客との接点を強化、ECの購買につなげるべくソーシャルコマース事業に着目。ソーシャルメディアマーケティング支援サービスを提供するAIQとの業務提携に至った。

    現状のソーシャルコマースの問題点

    近年日本でも注目されているソーシャルコマース(あるいはライブコマース)だが、大西氏は「いろいろな企業がチャレンジしているものの、なかなかうまくいっていないのが実態」と話す。

    その背景には、モノを売ることが前面に出てしまっており、広告色のない生の声が尊重される日本人の国民性には合わないという点がある。

    共同事業ではこの点を踏まえ、日本人の特性に合った新しい購買体験をめざした。

    スマイルエックス 大西理代表
    スマイルエックス 大西理代表

    富澤商店が提供する新しい購買体験

    富澤商店のカスタマージャーニーは下の図の通り。左から「買う」「作る」「SNSへ投稿する」それを見た人が「自分事として行動」し購買につながる。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース インタレストグラフからプライベートグラフへ
    インタレストグラフからプライベートグラフへ

    共同事業ではこの流れのさらなる活性化を狙うが、同時に重視したのは「必要なものを自然に買える状態を作ること」だ。

    お客さまに「要らないものを買ってしまった」と思われた瞬間、次は買われなくなってしまう。そうではなく、何かに悩みやあるいは課題を持っている方が「富澤商店」で課題解決をして、そのまますんなりと買い物ができれば、長くお客さまに利用いただける「無理のない高LTV」が実現できると考えた。(岩井氏)

    富澤商店 マーケティング部 部長 岩井一紘氏
    富澤商店 マーケティング部 部長 岩井一紘氏

    そのためには商品の価値がきちんと顧客に伝わり、理解してもらえることが必要。その点、たとえば「こういうお菓子を作るのにどの小麦粉がいいか? という問いに、350種類もある小麦粉の知識をもとに明確に答えられる、『小麦粉のことならなんでも聞いてくれ』というスタッフが当社にはいる」(岩井氏)といい、こうしたスタッフの存在は大きな強みとして活用できる。

    知識豊富なスタッフが実店舗と同じように双方向コミュニケーション(接客)を通じて顧客の買い物課題を解決し、顧客の好きな時にスムーズに買い物ができる環境を構築する。この新しい購買体験により高LTV顧客を獲得し、販売へとつなげる基盤確立をめざした。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース SNSから販売につなげる SNS上の影響力の強化
    SNSから販売につなげる⇔SNS上の影響力の強化

    次世代ソーシャルコマース共同事業への取り組み

    新しい購買体験を実現する次世代ソーシャルコマース共同事業の全体像は次の通り。

    SNSから「販売につなげる」

    「Moribus Community & Commerce」にはSNSでつながっている人たちのデータが蓄積され、顧客同士のコミュニケーション、スタッフの投稿や双方向のコミュニケーション(接客行為)による買い物課題の解決などを通し、顧客の目線を「興味・関心」から「実際に買いたい(欲しい)」につなげていく。さらにEC機能を同じ場に置き、好きな時に「すぐ買える」シームレスな購買を可能とした

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース コミュニティでの双方向コミュニケーション 購買データから潜在顧客の発掘
    コミュニティでの双方向コミュニケーション→EC→購買データから潜在顧客の発掘

    注意すべき点は「このコミュニティに価値観や嗜好が異なる人が入ると、コミュニケーションが活性化しなくなる」(渡辺氏)こと。そのためソーシャルデータを分析し、富澤商店のコミュニティに親和性の高い顧客候補、潜在顧客をソーシャルメディアから洗い出してコミュニティにつなげることが重要になる。

    さらに購入者については、いつ、どういうコミュニケーションの結果、購入に至ったのかをトレースできる。「ECの顧客基盤とソーシャルアカウントは意外と連動していないので、これができるのは我々にとっても悲願」(渡辺氏)。

    AIQ 代表取締役社長 渡辺求氏
    AIQ 代表取締役社長 渡辺求氏

    富澤商店のSNSの影響力の強化

    公式アカウントに加えて、富澤商店の強みである知識豊富な「スタッフ」や、同社の熱心なファンである「アンバサダー」のアカウントの発信力を強化し、それらのアカウントを通じて潜在顧客を発掘、「Moribus Community & Commerce」につなげる。

    AIQの技術の活用

    この事業を構築するにあたり、AIQが保有する3つの特許AI技術が使われている。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース 3つのAI技術
    SNSとソーシャル・コマース・プラットフォームをつなぐ3つのAI技術

    特許AI技術「プロファイリングAI」

    「Moribus Community & Commerce」で使われている特許AI技術「プロファイリングAI」は、属性や最近の投稿、どのような人とつながっているかなど、そのアカウントが発信した画像やテキストなどのさまざまな情報を複合的に解析し、富澤商店に親和性の高い顧客、顧客候補を洗い出す技術である。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース プロファイリングAI分析の解析情報
    プロファイリングAI分析の解析情報
    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース プロファイリングAI分析 アカウント毎に可視化
    分析した結果をアカウントごとに可視化

    また、アカウントを時系列で追いかけることでライフスタイルやライフステージの変化がわかる。たとえば子供が生まれるとお菓子を作る機会が増える傾向にあるので、富澤商店のユーザー像に近づいてくる。そのタイミングを逃さないように、手前から接点を持つことで意図せず富澤商店のユーザーになる人も捕捉することができる

    SNS上のコミュニケーションで“欲しい”は醸成でき、購入に至るのか

    「Moribus Community & Commerce」のPoC(Proof of Concept:概念実証)は、お菓子やパン作りが好きな富澤商店のアンバサダーである「ファミリー」と、同社のスタッフの計40名が参加し、1か月間実施した。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース PoCの概要
    PoCの概要

    PoCで検証したかった項目は次の2点だ。

    1. SNS上のコミュニケーションで“欲しいが醸成”されるか?
    2. 欲しい気持ちを持ったまま“購入”に至るか?

    「PoCに際して障壁になるのでは?」と想定していたことは、結果として見受けられなかった。その理由として「参加者がアンバサダーとスタッフというそもそもの関係性や、さらにAIによってコミュニティに親和性の高い組み合わせが成されていたためではないか」と渡辺氏は語る。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース 障壁になると想定していた事項
    障壁になると想定していた事項

    また、コミュニティの投稿数、トーク数、スタンプ数のログデータからコミュニケーションの活性化が見受けられ、アンケート結果を見ても好評価が得られたと考えている。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース コミュニケーションの活性化
    コミュニケーションの活性化
    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース 参加アンケートの結果
    参加アンケートの結果

    PoCを通して得られた考察は次の通り。

    1. 最初に誰を巻き込むか、コミュニティへの参加者の選定が非常に重要。それにはセンス、感性ではなく、データ分析の結果に応じてソーシャルメディアから顧客候補を見つけてくることが必要
    2. 欲しい気持ちを醸成するには、コミュニケーションの頻度だけでなく、スタッフがどういうタイミングで、どういう言葉をかけたか、という点が重要

    ソーシャルコマースを強化していく上でのポイント

    改めて「接客」の重要性が認識された。一般的なレコメンド機能ではまだ人が持つ知識や経験値は補完できない。また、人が持っている膨大な知識はコミュニケーションのなかでこそ、より的確に活用されるものである。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース ソーシャルコマースでの接客
    ソーシャルコマースでの接客

    その意味で接客を担うスタッフの育成は重要課題である。たとえば、接客行為は店舗スタッフであれば問題なく行えると考えたが、「ソーシャル上で接客するのは意外と難しい」という声があがった。

    また、SNSの特性上、時間を問わない業務となるため会社として労務環境や、出てきた数字をどう評価につなげるか、といった整備が必要となる。

    富澤商店 AIQ スマイルエックス オムニチャネル OMO ソーシャルコマース ソーシャルコマースでの強化ポイント
    ソーシャルコマースでの強化ポイント(人材・組織)

    こうした課題に対するポイントは次の3点だ。

    1. デジタルでの接客に慣れているスタッフ(主に20代、30代といった若手)と、商品知識が豊富な経験値の高いスタッフとの共存を図っていくこと
    2. 成功事例を積み重ねることで活躍人材を可視化すること
    3. 社内だけでなく、アンバサダーなど社外人材の活躍を図っていくこと

    老舗企業の「ヒト」×AI企業の「技術」のハイブリッド

    ちまたで言われるソーシャルコマースは、イコール「ライブコマース」的なイメージがあり、インフルエンサーの力で集客しその場で欲しいと思ったものを瞬時に買わせる、というような流れがあるが、この売り方は日本人の特性には合わないのではないか?

    対して富澤商店のめざす「無理のない高LTVを実現する」というコンセプトは一線を画す。AI技術により買い物の導線を変え、知識豊富なスタッフと顧客の双方向コミュニケーションを通して「納得ずく」で買ってもらう次世代ソーシャルコマース。老舗企業の「ヒト」と最先端AI企業の「技術」のハイブリッドによって生み出される新しい購買体験に今後も注目だ。

    大谷 秀吾

    カクヤスグループが従業員の基本給を月額7%アップ、新卒入社者の初任給は最大7%引き上げを実施へ

    2 years 9ヶ月 ago

    カクヤスグループは、平均で月額7%のベースアップ(ベア)を実施すると発表した。対象はグループ3社の従業員で、実施期間は2023年10月から。

    カクヤスグループは、グループ3社の従業員を対象に平均で月額7%のベースアップ(ベア)を実施すると発表
    カクヤスグループのベアや人事制度改定のお知らせ(画像はリリースからキャプチャ)

    あわせて新卒の初任給も引き上げる。2024年4月にグループ3社へ入社する新卒入社者の初任給を最大7アップする。

    従業員満足度の向上と定着、優秀な人材の獲得を目的としている。

    人事評価制度も見直す。「等級」「賃金」「評価制度」を見直し、若手や中堅層のモチベーション維持、成長実感を高める制度にする。

    多様な働き方の推進として、定年を65歳まで引き上げる。個人のライフスタイルに合わせ、60歳以降は定年年齢を選択できる仕組みを採用する。

    瀧川 正実

    「カクヤスネットショッピング」の一部商品の販売価格を平均11.7%値上げ

    2 years 9ヶ月 ago

    カクヤスは8月1日から、ECサイト「カクヤスネットショッピング」で扱う一部商品の販売価格を値上げした。

    仕入先の出荷価格値上げへの対応策で、値上げは平均11.7%。対象商品は一部のアルコール飲料、つまみ類の食品など35商品。

    瀧川 正実

    ZOZOの商品取扱高は1319億円で3.1%増、「Yahoo!ショッピング」店は3.4%増の116億円【2023年1Q】

    2 years 9ヶ月 ago

    ZOZOが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績によると、商品取扱高は前年同期比3.1%増の1319億2000万円だった。

    商品取扱高の事業別内訳は、ZOZOTOWN事業が前年同期比7.2%増の1082億7000万円。内容は、受託販売が同6.6%増の1032億2000万円、買取・製造販売は同24.7%増の12億1000万円、USED販売が同17.5%増の38億3000万円。

    「Yahoo!ショッピング」の商品取扱高は同3.4%増の116億円、BtoB事業は同6.4%増の34億4000万円、その他は85億9000万円だった。

    ZOZOが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績 四半期ごとの商品取扱高の推移
    四半期ごとの商品取扱高の推移(画像はZOZOのIR資料からキャプチャ)

    平均出荷単価は同6.2%増となる8177円、平均商品単価は同4.9%増の3726円となっている。

    ZOZOが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績 平均出荷単価の推移
    平均出荷単価の推移(画像はZOZOのIR資料からキャプチャ)
    ZOZOが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績 平均商品単価の推移
    平均商品単価の推移(画像はZOZOのIR資料からキャプチャ)

    「ZOZOTOWN」に出店しているショップ数は2023年4-6月期が1562件で、前四半期(2023年1-3月期)と比べて2件の増加だった。内訳は受託販売が28件、買取・製造販売は1536件。

    2018年に開始したリテールメディアの広告事業は拡大傾向。2023年4-6月期の売上高は21億7900万円で前年同期比24.4%増。新しい広告のテスト運用も初めて位いる。

    2023年4-6月期連結業績は、売上高が同7.7%増の458億7100万円、営業利益が同10.8%増の158億6200万円、経常利益は同11.5%増の159億4300万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同12.5%増の112億400万円だった。

    ZOZOが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績
    2023年4-6月期連結業績の概要(画像はZOZOのIR資料からキャプチャ)

    今期(2024年3月期)の連結業績予想は、商品取扱高が前期比6.7%増の5808億円、売上高は同9.4%増の2007億円、営業利益は同6.3%増の600億円、経常利益は同5.8&増の600億円、親会社株主に帰属する純利益は同6.3%増となる420億円を予想している。

    ZOZOが発表した2023年4-6月期(第1四半期)連結業績 通期連結業績予想
    通期連結業績予想(画像はZOZOのIR資料からキャプチャ)
    瀧川 正実

    ハルメクに学ぶシニア世代の意識と行動のギャップを捉えるデジタル誘導施策と成功術

    2 years 9ヶ月 ago
    長年、シニア世代に特化して事業を展開しているハルメクグループ。シニア世代が抱える意識と行動のギャップを捉えた対策によってデジタル誘導比率を大幅に増やせることを、独自の調査結果や事例を通して解説する

    ハルメクグループは、30年以上、シニア世代に特化して事業を展開する独立系の企業群だ。「ハルトモ」という約4300(2023年3月末時点)人のモニターを抱える独自のシンクタンクを軸としたマーケティングにより、最新のトレンドを踏まえたシニア世代向けのコンテンツ提供などを行い、成長を続けている。

    一般的にデジタル誘導が難しいシニア世代に対し、独自の調査・分析を行い、独特の意識と行動のギャップを踏まえた対策によりデジタル誘導でも高い成果をあげている。近年では、そのノウハウを生かし、他社のマーケティング支援にも注力している。こうした取り組みについて、ハルメク・エイジマーケティング代表取締役の木船信義氏と、ハルメクホールディングス生きかた上手研究所所長の梅津順江氏が解説する。

    シニア世代に特化したハルメクグループ

    ハルメクホールディングス(以下、ハルメクグループ)の成長の鍵を握るのは、「独自のシンクタンク」と「顧客回遊型ビジネス」である。

    事業の鍵を握るのは「独自のシンクタンク」

    ハルメクグループは、1989年創業のシニア世代の女性を対象として事業を展開する独立系の企業群。50代から70代までのプレシニア、アクティブシニア層向けに、出版、通信販売、文化事業(旅行・講座提供)を行うハルメク、70代以上の女性向けに通販事業を行う全国通販をはじめ、6つの会社がある。

    ハルメクグループの事業領域
    ハルメクグループの事業領域

    生きかた上手研究所という自社独自のシンクタンクを持ち、「ハルトモ」という約4300人のモニターからシニア世代の幅広い情報を入手して、コンテンツ提供などに生かす体制をとっている点が特徴だ。最近では、長年、シニア世代を顧客として事業を営んできた経験を生かして、シニア世代をターゲット顧客とする企業に対するマーケティング支援にも力を入れている。

    リサーチを基盤としたマーケティング体制を構築している(数値は2022年3月時点)
    リサーチを基盤としたマーケティング体制を構築している(数値は2022年3月時点)

    「ハルトモ」は、自社のみならず他社のマーケティング支援にも活躍の場を広げている。事例の1つとして、シニア世代への「ポケモンGO」の利用促進があげられる。

    協業先から、「ポケモンGO」の発売当初、「シニア世代に『ポケモンGO』の利用促進をしたい」との相談があった。そこで、「ポケモンGO」を利用している全国の「ハルトモ」(読者モニター)を集め、ワークショップ形式で調査を実施。調査では、利用する理由として「キャラクターがかわいいから」「孫と話が合うから」ということ以外に、「外出や運動のきっかけとしているから」という新たな「健康軸」というものを導き出すことができた。

    その調査結果を踏まえて、シニア世代向けに「ポケモンGO」のウォーキングイベントを東京・六本木で開催。その後も全国各地で開催が続く人気のイベントとなった。

    「ハルトモ」が他社との協業で活躍した事例
    「ハルトモ」が他社との協業で活躍した事例

    売上増加のポイントは「顧客回遊数ビジネス」

    ハルメクグループは、シンクタンクを軸にマーケティングを行い、シニア世代向けに多様な事業を展開して、シニア世代が多様な事業を回遊することで、売上増加につなげるビジネスモデルだ。

    雑誌「ハルメク」は、販売部数を伸ばし続けている。日本ABC協会が発行したレポート(2022年1月~6月)では、月間発行部数が約44.2万部となっており、全雑誌販売部数でナンバーワンとなっている。50代後半から70歳代まで幅広い年齢層が読者となっており、通販のみで販売しているため読者の属性を正確に把握できる点も特徴だ。

    デジタルコンテンツの提供にも力を入れており、「ハルメク365」というWebサイトの運営を行っている。月間PV数は、約410万PV(2022年3月時点)。雑誌社が運営するシニア女性誌のコンテンツサイトとしては、国内最大規模を誇る。月間約200本もの読みごたえのあるコンテンツを配信しており、LINEのエンゲージメントランキングの女性媒体52媒体中で1位(2022年4月実績)となるほど、人気のWebサイトだ。

    通販事業では、シニア世代に特化した「ハルメク おしゃれ」「ハルメク 健康と暮らし」という2つのカタログ通販を行っている。雑誌「ハルメク」の読者に自動的にカタログが届くという仕組みだ。

    いわゆる説得型の通販を行い、商品を購入したその先の価値を販売するという点にこだわって、プライベートブランド商品を数多くそろえることで、顧客単価やカタログ注文率は業界最高水準を達成している。

    顧客がハルメクグループの多様な事業を回遊する仕組みを構築している
    顧客がハルメクグループの多様な事業を回遊する仕組みを構築している

    シニア女性の意識と行動のギャップ

    シニア女性には、独特の意識と行動のギャップが存在する。企業はそのギャップを知り、攻略することで、ビジネスチャンスにつなげることができる。

    シニア女性の意識と行動の間に存在するギャップを知る

    シニア女性は自分のことをシニアだとは思っていないのだ。ある70代のシニア女性が「私たち中年向けのファッションはない」と無意識に発言し、周囲にいた同年代のシニア女性もうなずくという機会があった。驚くべきは、70代の女性は、自分のことをシニア、高齢者ではなく中年と捉えているということだ。

    また、「年齢に関する自己認識調査」(生きかた上手研究所/65~75歳の女性211人/2017年10月)によると、実年齢と知覚年齢(自分は何歳くらいだと思っているか)、他者知覚年齢(自分は周囲から何歳くらいに見られているか)には大きな乖離(かいり)があり、シニア女性は、自分のことをシニアとは思っておらず、まだ若いと考えていることがわかった。

    シニア女性の実年齢と知覚年齢・他者知覚年齢のギャップ
    シニア女性の実年齢と知覚年齢・他者知覚年齢のギャップ

    さらに、「敬老の日にお祝いされる対象と感じる年齢は何歳だと思うか」とのアンケート(生きかた上手研究所/敬老の日に関する調査/55~84歳の女性300人/2021年7月30日~8月2日)に対する回答の平均値は、70.7歳。60代のシニア女性の多くは、自分を高齢者とは思っておらず、敬老の日に祝われる側ではなく、祝う側と考えていることがわかった。

    しかし、「働き続けたいけれども、疲れやすくて昔のような馬力はない」「1つ覚える、1つ忘れてしまう」というように、意識と行動にはギャップが生じており、多くのシニア女性はこのような矛盾した悩みを抱えている

    このことは、ライフエンド(End oflife)消費の後回し化を生んでいる。具体的には、約8割のシニア世代は、終活をすべきだと思っているが、実際に終活を実施している人は38.3%(生きかた上手研究所/「終活」に関するWebアンケート調査/60~74歳のシニア男女1008人/2021年3月2日~3月3日)にとどまっている。

    この傾向は、コロナ前後で大きく変わらなかった。一方で、若いと思っているだけで、身体は追いついておらず、平均寿命と健康寿命の差(不健康期間)は、男女とも時代の変化とともに縮まっているわけではない。

    フレイル(健康状態と要介護状態の間の段階)予防が注目されるのは、「不健康期間を短くしたい」というシニア世代の気持ちのあらわれであろう。シニア女性の意識と行動のギャップを攻略するシニア女性が、意識と行動にギャップを抱えていることは明らかだ。

    企業は、このギャップを埋めるにはどうするか考えることで、コンテンツや商品開発、顧客コミュニケーションのヒントを得ることができるのではないか。ライフエンド消費のニーズが到来することをただ待つのではなく、端境期(意識と行動にギャップのある期間)消費を今ゴト化することで、ヒット商品を生み出すことができるのではないか。(梅津氏)

    ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所所長 梅津順江氏
    ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所所長 梅津順江氏

    この考えのもと、ハルメクグループは白髪染めを「プラチナグレイカラー」というおしゃれな商品名にした。補聴器は、音楽を聴いているかのようなデザインにして「耳かけ集音器」という名称で販売した。シルバーカーは、旅行時に使用するようなデザインにして「キャリーバッグ」として販売した。

    これらは、「自分にはまだ早い」とあらがう意識が働きやすいシニア女性に対して、言葉の使い方やデザインなどを工夫することで、意識と行動のギャップを埋めて購買を促し、ハルメクグループのヒット商品につながった事例である。

    シニア女性の意識と行動のギャップを踏まえたヒット商品
    シニア女性の意識と行動のギャップを踏まえたヒット商品

    シニア世代のデジタルリテラシーギャップ

    シニア世代は、デジタルを使いこなせていないと思っているが、実はそうではない。一人の中でもできること、できないことがあり、一筋縄ではいかないのだ。シニアをデジタルで攻略、デジタルへの誘導を実現するためには、行動を観察したり、つまずきポイントを把握したりすることが重要なのである。

    シニア女性の「使えると思っているけど使えない」デジタルリテラシーギャップを知る

    シニア女性のデジタルリテラシーの自己認識と行動実態にはギャップがある。実に74.4%(ハルメク・エイジマーケティング/500人に調査/2022年6月)ものシニア女性が「LINE を使いこなせている」と感じているが、8人に対して、同社が2022年1月にヒューリスティック分析(自らの経験・体験を基に、Webサイトやアプリを専門的な観点で分析・評価する手法)を実施したところ、実際はそうではなく、シニア女性ならではのつまずきポイントがあることがわかった。

    まず、QRコードを読み取り、友だち登録を行うというプロセスだ。QRコードを読み取り、認証画面を通過して、友だち追加画面まではたどりつけるのだが、その後、友だち追加ボタンを押すことができない人が多いことがわかった。

    シニア女性によると、娘や息子に友だち登録を依頼するケースが多く、まれに自分でできることはあっても再現性がないというのが実態であった。

    LINEの友だち追加におけるシニア女性のつまずきポイント
    LINEの友だち追加におけるシニア女性のつまずきポイント

    次に、会員登録のためのフォーム入力だ。デジタルネイティブ層と比べて、5倍程度の時間がかかるうえに、大文字小文字変換やパスワード入力などでつまずき、途中で諦めてしまう人が多いことがわかった。デジタルネイティブ層が感覚でわかるようなことがシニア女性に当てはまるとは限らないのだ。

    会員登録のためのフォーム入力におけるシニア女性のつまずきポイント
    会員登録のためのフォーム入力におけるシニア女性のつまずきポイント

    加えて、シニア女性は、個人情報の漏洩に敏感だ。たとえば、雑誌「ハルメク」も、申し込みはインターネット経由だが、支払いは口座振替や代引きとなっているケースが多く、クレジットカードは少ない。なぜなら、クレジットカード情報を、インターネット上に登録することを恐れているからだ。

    以上のつまずきポイントはごく一例であり、シニア女性には、他にもたくさんのつまずきポイントがある。デジタルネイティブ層が当たり前と思うようなことも当たり前ではないのである。

    シニア世代のデジタルリテラシーギャップを攻略する

    企業は、このようなシニア世代の特性を踏まえ、最適なWebサイトのランディングページの作りこみをどのようにすれば良いか、Webサイトを使いやすくするためにはどのようにすれば良いかなどを考える必要がある。

    特に、シニア世代をデジタルに誘導するためには、オフライン(説明用紙・コールセンターなど)の活用が必要だ。(木船氏) 

    ハルメク・エイジマーケティング 代表取締役 木船信義氏
    ハルメク・エイジマーケティング 代表取締役 木船信義氏

    ハルメクの通販は、まだ電話受注比率が高いが、ここ数年で、デジタル受注比率が大きく増加した。その要因は、丁寧な解説を加えたためである。利用ガイドを作成し、かなり細かいマニュアルを作りこむことで、デジタル受注比率を大きく増加させることができた。

    ハルメクグループでは、このようなノウハウを活用して、他社のマーケティング支援を行っている。先般、シニア系の総合通販大手企業のデジタル誘導支援を実施した。Webサイトでの注文フローをすべて画面キャプチャし、徹底的に丁寧に解説をしたマニュアルを作成。半年程度で、デジタル受注比率が約2倍となったうえに、全体の売上増加も実現した。

    我々が当たり前と思うことが、シニア世代にとって当たり前とは限らない。シニア世代には意識と行動にギャップがある。企業は、そのギャップを知り、攻略することで、ビジネスチャンスを得ることができる。

    デジタル時代において、デジタルリテラシーのギャップを抱えるシニア世代のデジタル誘導を成功に結びつけるには、オフラインの活用と、徹底的に丁寧な解説が必要となるだろう。

    関谷 由佳理

    ユーズドセレクトショップ「ラグタグ」がクリーニングの白洋舍と提携。異業種へ買取窓口を拡大

    2 years 9ヶ月 ago

    ワールドグループ傘下でユーズドセレクトショップ「RAGTAG」のティンパンアレイは8月から、クリーニング事業大手の白洋舍と提携し、衣料品の買取窓口を異業種に広げる。

    ユーズドセレクトショップの運営で培ったノウハウを生かし、白洋舍経由での買い取りサービスを展開。これまで「RAGTAG」を利用したことがない顧客への認知を広げていく。また、循環型社会の実現にもつなげる。

    ユーズドセレクトショップ「RAGTAG(ラグタグ)」を運営するティンパンアレイと白洋舎が提携

    白洋舍がリペア、ティンパンアレイが査定・二次流通

    白洋舍に衣類・靴・バッグといった買い取り対象アイテムを持ち込こんで受付を実施、その後ティンパンアレイが査定・買い取り・買取金の振込を行う。

    両社の提携による買い取りの流れ
    提携による買い取りの流れ

    着用済衣類を白洋舍のクリーニング・リペア技術で修繕し、古着買取サービスで二次流通。持続可能な衣料品のライフサイクルを推進する。買い取りはまず白洋舍溜池サービス店から始め、今後取り扱い店舗を広げていく方針。

    衣類のライフサイクルフロー
    衣類のライフサイクルフロー

    実施店舗

    • 白洋舍溜池サービス店
    • 受付開始日:8月16日
    • 住所:107-0052 東京都港区赤坂1-3-1
    • 営業時間:平日 8:00~19:00、土日祝日 10:00~19:00
    高野 真維

    ユニクロの「レジ待ち解消」「精算時間の短縮」を実現した新技術「RFID」とは?【EC物流の専門家が解説】 | 通販新聞ダイジェスト

    2 years 9ヶ月 ago
    2024年問題を筆頭にさまざまな課題が持ち上がっている物流業界。そんななか、物流や店舗で大きな省力化の役割を果たし、オムニチャネルに必要不可欠と言われる「RFID」が注目されている。EC物流支援のスクロール360の高山取締役が解説

    「物流2024年問題」が1年後に迫っている。ドライバーの賃金アップのため、配送業者が荷主や利用者に転嫁することによる運賃値上げが懸念されており、EC事業者が受ける影響は甚大だ。また、物流・配送周りの自動化・効率化も進んでおり、EC事業者が取り組むべき課題は山積している。EC物流の最新事情や、これからEC事業者が取り組むべき施策について、200社を超えるEC事業者のフルフィルメントに携わってきた筆者(編注:スクロール360 取締役の高山隆司氏)が明かす。

    高山隆司氏。1981年スクロール(旧社名ムトウ)入社以来、42年にわたり通販の実戦を経験。2008年、他社のネット通販事業をサポートするスクロール360設立に参画、以後200社を超えるネット通販事業の立ち上げから物流受託、システム受託を統括

    物流最新アイテムがユニクロのレジ待ち行列を解消

    精算時間が有人レジの3分の1に! 「RFIDタグ」とは?

    最近、ユニクロのレジ待ち行列が少なくなったと感じた方も多いのではないだろうか。これはRFID(Radio Frequency Identifi cation)タグという物流最新アイテムが使われていて、一瞬で商品IDを読み取るシステムが採用されているからだ。今回は店頭から物流現場まで活用されるようになった、このRFIDタグを取り上げてみる。

    ユニクロのレジカウンター
    ユニクロのレジカウンター

    RFIDタグとは、電波を用いてタグのID情報を非接触で読み取るシステムだ。Suicaよりも電波が遠くに届き、さらに複数点を一括で読み取れるところが秀逸なところだ。このタグを採用することによって、これまで1点1点バーコードで読み取り確認していたものが、一瞬で複数点を読み取ることができるようになった。

    ユニクロではセルフレジに商品を投げ込むと、一瞬で商品点数と会計金額が表示される。これによって精算所要時間が有人レジと比較して最大約3分の1に短縮されるという。

    ユニクロのタグ表面は普通のタグと見分けはつかない。中にはRFIDタグが内蔵されている
    ユニクロのタグ表面は普通のタグと見分けはつかない。中にはRFIDタグが内蔵されている

    店舗:「入荷検品」「レジ精算時間」「棚卸」を省力・短縮

    RFIDタグに書き込まれている商品コードにはすべて連番が振ってあり、個品管理になっている。同じ商品(色、柄、サイズも同じ)であっても、リーダーに載せれば1点1点の識別が一瞬で完了する。これにより店舗側には、①商品入荷検品の省力化 ②レジ精算時間の短縮化 ③棚卸時間の短縮化などのメリットが生じる。

    以前は、店舗に商品が到着すると1人が納品明細書の商品名を読み、もう1名が商品をカルタ取りしていたことを思うと、夢のような時代が訪れたことになる。

    万引き減少にも貢献

    そしてもうひとつ「万引き防止」というメリットがある。RFIDのシステムはデータ読み取りに加えてデータの書き込みができる。

    商品がレジを通過したときには、「レジ通過番号」が追加で書き込まれる。たとえば、万引きした商品をポケットに隠して持ち出しても、その商品タグに「レジ通過番号」がなければ、店外に出るときに、盗難ブザーが鳴る仕組みだ。これにより、万引きそのものが大幅に減少された。

    店舗の出口に設置された盗難防止用リーダーが、全商品のコードを瞬時で読み取る
    店舗の出口に設置された盗難防止用リーダーが、全商品のコードを瞬時で読み取る

    このように、入荷検収が素早く正確になり、さらに万引きが減ることで、商品の在庫精度が大幅に向上することもメリットだ。

    在庫が正確になると、店舗と倉庫の両方から確実な在庫引き当て・正しい発送ができるため、アパレル関係者はRFIDについて、「オムニチャネルには必要不可欠なモノになっている」と口をそろえて言う。

    物流倉庫:検品も棚卸も一瞬で可能に

    次に物流倉庫側のメリットを見てみよう。弊社(編注:スクロール360)物流センターでもRFIDタグを採用しているクライアントがある。当初は読み取りの感度調整にかなり苦労したが、現在は非常に効力を発揮している。

    RFID読み取りリーダーは他の商品の電波も拾ってしまうため、アルミシートで隔絶するように設置
    RFID読み取りリーダーは他の商品の電波も拾ってしまうため、アルミシートで隔絶するように設置

    メーカーから入荷する商品のすべてにRFIDタグが貼付されるため、入荷検収も出荷検品作業も、数十点を一瞬で完了することができる。

    ただし、RFIDタグが重なっていると読み取れない時があるため、商品が入った袋やカゴを揺すると、正確に読み取ることができる。そしてRFIDタグは棚卸でも威力を発揮する。1点1点数える必要がないのだ。

    スチール棚だと電波が反射してしまうためダンボール棚での保管が必須
    スチール棚だと電波が反射してしまうためダンボール棚での保管が必須

    現在はまだ、商品タグの重なりなどが障害で、棚の外からのリーダー読み取りでは精度が悪く、ひと棚ごとに棚卸を行っているが、将来は無人の陸走ドローンが夜のうちに倉庫を回って朝には棚卸が完了する日も近いと思っている。

    このように最新の物流では商品調達先のRFIDタグ貼付から始まり、物流センターでの入荷~保管(棚卸)~出荷~店舗側の省力化といった「サプライチェーン全体を俯瞰(ふかん)したシステム構築」が重要ということだ。

    現在は1枚10円前後と言われるRFIDタグだが、物流倉庫への入荷から出荷、そして店舗での入荷、レジ、棚卸までの人件費を考えると、コストダウンのメリットの方が多いのは明確だ。

    今後もますますRFIDタグを活用する店舗が増えていくと感じている。

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