「日本直販」「悠遊生活」を買収したギグワークス社長に聞くM&Aの理由と日本直販の今 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2023年6月13日(火) 07:00
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2022年7月に日本直販、悠遊生活を買収したギグワークス。代表取締役社長の村田峰人氏がめざす「EC事業者にはできない通販事業」など、今後の構想を聞いた

老舗通販企業の日本直販が昨夏にIT機器導入・運用支援、人材派遣、コールセンター運営などのBPO事業などを展開するギグワークスへ傘下入りしてから1年が経とうとしている。ギグワークスの社長で4月1日からは日本直販の社長にも就任した村田峰人氏に日本直販の現状の事業展開や今後の方向性などについて聞いた。

ギグワークス 代表取締役社長 兼 日本直販 代表取締役社長 村田峰人氏 ギグワークス 代表取締役社長 兼 日本直販 代表取締役社長 村田峰人氏
日本直販、悠遊生活を買収。「EC事業者ではできない通販事業を展開したい」

――2022年7月に老舗通販の日本直販と悠遊生活をそれぞれ買収、子会社化(同10月に存続会社を日本直販として合併)した。ギグワークスではそれまで通販事業を手がけていなかったわけだが、なぜグループに両社を傘下に加えたのか。

村田氏:当社では長らく、多くの通販企業からコールセンター業務を受託し、受注業務あるいはクロスセル業務などを手がけてきた。そういった意味では通販で必要なノウハウは少なからずあり、通販事業を自分たちで直接行うという流れは自然だった。

(買収先として)日本直販や悠遊生活を選んだのは老舗の通販企業として長年、商売をしてきたなかで、当社がターゲットとしたい層のお客さまを多く持っていたということが大きい。

また、日本直販と悠遊生活の2社を買収したことで倉庫やコールセンター、カタログ制作などの機能を一つに束ねられ、その分、コストの削減が可能になる。

紙媒体やテレビショッピングで以前から商売をしてきた老舗通販はEC事業者に押され、元気がないが、コストを下げて収益体制を改善し、そこに当社グループならではの付加価値を加えることでまだまだ戦うことができる。EC事業者ではできないような通販事業を展開したいと考えた。

ギグワーカーを活用した訪問サービスを運用

――EC事業者にはできない通販事業とは。

村田氏:ギグワークスにはBtoB事業のBPO業務に従事しているギグワーカーと呼ばれる人材が全国におり、このギグワーカーが稼働することで「商品+サービス」という付加価値をつけ、新しい形の通販ができるのではないかと考えた。

実際に2022年9月から日本直販で新たなサービス「訪問お手伝いサービス」を開始した。これはギグワーカーをスタッフとしてお客さまの自宅まで派遣し、家具など商品の組み立て・設置やスマートウォッチなどの初期設定や使い方サポートなど行う一律4980円の有料サービスだ。

日本直販で2022年9月から開始した「訪問お手伝いサービス」(画像は日本直販のWebサイトから編集部がキャプチャ)日本直販で2022年9月から開始した「訪問お手伝いサービス」(画像は日本直販のWebサイトから編集部がキャプチャ)

村田氏:あまり告知などをしていないにもかかわらず多くの皆さまにご利用頂け、お客さまからも非常に喜ばれている。世の中にはさまざまな商品があるが、使うまでに準備が必要だったり、使い方がよくわからないなどお客さまによっては買ったものの、持て余してしまう場合も往々にしてある。特に高齢層であればなおさらだろう。

お客さまへモノをお届けするだけではなく、必要なサービスも一緒に届けたい。

――現状の日本直販の業績は。

村田氏

倉庫やコールセンターなどの機能を一本化したことによるコスト削減は徐々にだが、目標としている数値の達成に向けて確実に効果が出てきており、手応えを感じている

村田氏:売り上げに関してはどの程度、広告宣伝費をかけるか次第というところだ。たとえば2022年12月に販売したカニや5月の「母の日」に合わせて販促を強化したマッサージチェアなどは非常に売れ行きが伸びてきている。

――4月1日から日本直販の社長に就任し、自ら同社のかじをとることになった。

村田氏:もともとグループ一体で通販事業を行いたいという考えがあったのだが、ChatGPTの登場などAIの急速な普及による危機感もきっかけとしてあった。当社が本業としているIT機器導入・運用支援、営業・販売支援、人材派遣、開発、コールセンター運営などのBPO事業はおそらくこれからAIに置き換わっていき、影響を受けるはず。

そういったなかでいうとAIの普及に左右されない自前のデータを持つビジネスは魅力的だ。当社グループで言えば、日本直販が持つデータだ。ここを中心に広げていきたいと考えた。

そのためにはグループのリソースを有効活用する必要があるため、私が日本直販の社長も兼務した方がスピードも早めることができるということもあり、そういった体制をとることにした。

クロスセル、LTVアップの施策に意欲

――今後の方向性は。

村田氏:今期はこれまでできていなかったクロスセルを強化していく。

たとえばマッサージチェアを購入されたお客さまは腰痛があるなど、何らかの問題を抱えられている方のはずで、健康食品や、姿勢を正して腰痛を緩和できるようなサポーターなどのニーズもあると思うが、これまではあまりそういった商品のラインアップは行ってこなかった。

そういったこともこれまで業績が安定しなかった要因だと思う。今後は売れ筋商品を中心に、関連するような商品を増やしたい。

売れ筋を中心とした関連商品のラインアップを増やしていきたい考え(画像は日本直販のECサイトから編集部がキャプチャ)売れ筋を中心とした関連商品のラインアップを増やしていきたい考え(画像は日本直販のECサイトから編集部がキャプチャ)

村田氏:また、お客さまから電話でご注文を頂く際に、これまではBtoB業務の一環として、他社の商品をお客さまにお勧めすることはあったが、自社のそういった商品もお勧めしていきたい。

あるいは「訪問お手伝いサービス」でお客さまのお宅に訪問した際に、ご提案や受注を取るような形をやっていき、LTVを上げていく施策を進めてきたい。今期(2023年10月期)の売上高は65億円程度を見込んでいる

通販企業の買収は「さらに数社を計画」

村田氏:中長期的な方向性としては物販にとどまらず、たとえば、先ほどの「訪問お手伝いサービス」の延長線上としてギグワーカーがお客さまの自宅に訪問して骨董品の買い取りを行なって商品の再流通を促したり、「訪問お手伝いサービス」で商品の設定や使い方サポートを行う仕事をお客さまに斡旋(あっせん)するような高齢者の社会参画促進のための雇用のお手伝いなどにも取り組んでいければと考えている。

通販事業に関しても今後、さらにいくつかの通販企業を買収していく方針だ。

高齢者層だけでなく、主婦層や子供向けなど特定の顧客層をターゲットに展開する通販企業を買収して、重複機能などを統合するなどして筋肉質にして付加価値をつけながら展開していくことで業績を高めていく。

当社とともに事業を強化していきたい通販企業はぜひお声がけいただきたい。

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