今回は、2019年12月27日(金)12:30~2020年1月10日(金)12:30までの14日間、スポット計測ではなく、のべ15万回の計測を行い、95%タイルの平均値をとっています。
指標を把握しやすいように、Googleが推奨する「SpeedIndex」という指標を中心に個別ページの比較ではなく、トップページ、カテゴリページ、商品詳細の3つのページの平均数値を表しています。
TOP10の上位サイトは、SpeedIndexという指標では2秒台となっており、激戦状態が加速しています。Webサイトスピード研究会では、最適ラインの初段階をSpeedIndex5秒以内を目標値としていますが、これに適合したサイトが増えていることが明確になってきました。
今回の結果を見ると、全体的にSpeedIndexの数値水準は上がってきました。しかし、数値が変わっていなくても順位が下がっている、悪化している場合には大きく順位を落としていることがわかります。これは速いサイト、遅いサイトの2極化が進んでいる印象です。
SpeedIndexの上昇した数字を見てみると、TOP10サイトは平均1.67秒、TOP50サイトは平均1.25秒、TOP200サイトは平均0.87秒ほど上がっています。上位層になればなるほど高速化が顕著になっています。
Speed
Index(秒)① Backend
(秒)② Start
Render(秒)③ Size(MB)④ Request数⑤
平均値
(TOP10) 2.62
(前回
-1.67) 0.9
(前回-0.4) 2.12
(前回-1.25) 1.02
(前回
-0.55) 132
(前回
-61.70)
平均値
(TOP50) 3.46
(前回
-1.25) 1.15
(前回
-0.23) 2.65
(前回-1.67) 2.63
(前回
-0.62) 153
(前回
-25.02)
平均値(TOP200) 6.12
(前回
-0.87) 1.62
(前回
-0.36) 3.78
(前回-1.67) 3.62
(前回
-0.61) 210
(前回
-8.75)
昨今のSEO、UX施策として、理解している企業ほどWebサイトの高速化に積極的に取り組み、改善対策を進めていることが見受けられます。
その一方で、ファイルサイズが10MB以上、リクエスト数が300以上など、肥大化することで高速化のボトルネックとなっているサイトも散見されます。
調査メンバーの考察。事業会社視点で何が見えるか?
Webサイトスピード研究会の主要メンバーである、ゴルフダイジェスト・オンライン システムマネジメント室シニアプロダクトマネージャーの種村和豊氏、大日本印刷 hontoビジネス本部 ハイブリッドプラットフォーム開発ユニット 開発第一部の近藤洋志氏、IDOM Guliverマーケティングチーム デジタルマーケティングセクションの村田創氏は、今回の結果を以下のように分析しました。
IDOM 村田創氏(以下、村田氏):TOP10に関して平均で-1.67(秒)も上がっています。この数値は自然に上がったというよりも、各社が明確にWebサイトの高速化を意識してサイトの改善施策を行っていると考えるのが自然な数字です。それを裏付けるかのように、他の指標の数値が1年前の計測データより、数値が改善されています。これは、同業他社とのSEO競合を意識して、可処分時間の取り合いを考えた結果ではないでしょうか。表示速度は2秒台の戦いになっていますね。
大日本印刷 近藤洋志氏(以下、近藤氏):個人的には自社のサイトがランクダウンしているのがショックでした(笑)。弊社も高速化はかなり意識してWebサイト高速化のモニタリングなどを行っていますが、各社Webサイトが表示速度の高速化に想像以上に力を入れているということですね。
ゴルフダイジェスト・オンライン 種村和豊氏:GDOのECサイトも前回の10位から、23位にランクダウンしてショックでした。過去に表示速度の改善を実施して、「Amazonと同等レベルだ!」と安心していましたが……。継続的なモニタリングや改善が必要だと再認識しました。
今回のランキングを見て感じたのが、中堅・中小の家具や家電系のECサイトが「Amazon」よりも速いモバイルサイトの表示スピードを実現しているということ。大手もWebサイトの高速化を意識していく重要性を感じました。
今までのWebサイト高速化施策の実行経験上「Backendは1秒以内に!」という考えでしたが、今回のTOP10ではBackendが0.9秒となっています。この点をみなさんはどう考えていますか?
村田氏:Backend1秒以下は、システム改善としては確かにハードルが高いでしょう。お金も時間もかかります。ただし、表示速度2秒台を目指すならBackendは1.2秒以内が必達でしょう。
近藤氏:Webスピード研究会でも2秒台のベストプラクティスをテーマに研究、情報共有して、次のEC200計測でランクダウンしないように、今まで以上に頑張らないといけませんね(笑)。
統括
2018年7月にはじまった、Google社のスピードアップデート。この「モバイル検索においてページ速度をランキング要因とする」アルゴリズム変更をトリガーにWebサイトの表示速度を無視できない状態となりました。
今回の計測データを見ると、モバイルフレンドリーの完全シフト、5G対応、競合・SEO影響を背景に2020年「2秒台の表示速度での激戦」が起こっている様相が伺えます。
競合他社との比較/SEO強化を意識した「表示が速いサイト」「遅いサイト」の2極化は進み、表示が遅いサイトはビジネスにおけるマイナスインパクトが更に拡大するという認知も広がっている印象です。
昨今の新型コロナ感染症(COVID-19)による外出自粛という情勢も踏まえると、EC(オンライン)ビジネス・売り上げの強化、拡大は各企業の事業戦略上、重要な位置付けとなっています。売り上げ、顧客体験において大きなマイナスインパクトとなり得る、自社ECサイトのパフォーマンス課題については危機意識を強く持って、継続的なモニタリング・改善を実施すべきでしょう。
この調査について[
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従来の一般的な計測ではアイドルタイムと呼ばれる、購入客が少ない午後の時間に計測されることが多く、朝、昼、夜のピークタイムや、土日の計測がほどんどされていませんでした。例えば、メルマガやLINEなどでキャンペーン情報を送った時にサイトがどんな状態になるのかを、ほとんどのEC事業者が知らないのが現状です。
今回の調査では売れている時間帯のコンディションを把握するために、12:30、18:30、22:30の1日3回、比較的高負荷の時間で実施しました。1サイトにつきトップページ、リストページ(カテゴリページ)、商品詳細ページの3つのURLを計測対象としました。
表の見方
①「Speed Index」……Googleが発表したパフォーマンス指標。ブラウジング開始後、経過時間あたりのファーストビューが何秒で表示されるかを総合的に算出したもの。目標値 4.5秒
②「Backend」……サーバー、NW通信、DNS名前解決を含む、クライアントリクエストを処理するための時間。いわば反応スピード。目標値 1秒
③「Start Render」……空白ページからコンテンツが初めて表示されるまでの時間、ユーザが「Webサイト表示が速い」「遅い」と体感する指標。目標値 2秒
④「Size」……1ページに含まれるファイル(画像、動画、フォント、CSS、JavaScript、HTMLなど)の総量
⑤「Request」……1ページに含まれるファイル(画像、動画、フォント、CSS、JavaScript、HTMLなど)の読み込み個数
(各指標、表記の補足説明)
※上記①~⑤指標の数値について、最小の数値を青字、最大の数値を赤字で表記
※上記①~③指標の数は小数点以下第2位、⑤数値は少数点以下四捨五入で表記
※順位変動については、前回の調査結果からのランクアップ(↑)、ランクダウン(↓)、新規ランク入り(新)を表記
誤差や数値の違いについて
今回の計測は、12:30、18:30、22:30の1日3回という、ECサイトにおいて比較的高負荷とされている時間帯に行いました。従来の計測結果と乖離があるとすれば、この時間滞とアイドルタイムの違いが一番の違いとなります。
調査概要
調査期間:2019年12月27日(金)12:30~2020年1月10日(金)12:30までの14日間
調査対象:「月刊ネット販売 2019年10月号」(宏文出版・刊)の「第19回ネット販売白書」において、EC売上高上位200社に掲載されている企業。
三越伊勢丹ホールディングスの2サイト(三越、伊勢丹)は別サイトとしてそれぞれ計測。ログインや会員登録が必要、モール出店のみの場合などは計測対象から除外。計測後に正常な値が取得できなかった場合は除外、もしくは24時間の補正、追加、再計測を行っている。
調査範囲:1サイトにつき①トップページ、②リストページ(カテゴリページ)、③商品詳細ページの3つのURL(サイトの構成上、該当ページがなく測定できなかったサイトもあり、実際に計測したのは①184URL、②181URL、③182URLの計547URL)。当該サイトURLは、検索エンジンによる検索結果から移動できるURLを用いた。
計測時間:12:30、18:30、22:30の1日3回
測定プロファイル:iPhone 7(4G)、GalaxyS7(4G)、Chrome(cable) このうち掲載したのは「iPhone 7(4G)」
1回当たりの計測数:3 checks
計測回数:547URL × 1日3回 × 3checks × 3デバイス × 7日間 = 103,383回計測
エミュレート回線品質(4G):ダウンロード 8.8Mbps/アップロード 8.8Mbps/レイテンシー 170ms
前回の値について:「EC売上トップ200企業の「表示スピード」を大調査! 1位は「腕時計のななぷれ」!」記事掲載にあたり計測した結果を前回の値とする。
サイト調査実施:株式会社ドーモ 監修/種村和豊、協力/Webサイトスピード研究会(IDOM村田創、DNP近藤洋志)