カゴ落ちメールの導入が本格的に進むのはまだこれからだが、このような新しい施策が普及していく背景には、「解消したい課題」が必ず存在する。今回はカゴ落ちメール普及のきっかけとなった「解決したい課題」とは何なのかについて触れたい。
“そこそこ”売れるメルマガが生み出すジレンマ
今配信しているクーポンメールやキャンペーンオファーメールは、“その時”に“そのお客様”が本当に必要としているのだろうか? 送られてきて嬉しい情報だろうか? そのメールを見てそのお客様は「おっ!」と思うだろうか?
もしかしたら喜んでくれるかもしれないし、運が良ければサイトへ流入し購入してくれるかもしれない。しかし、そのような運任せのメールを送り続けている限り、自社の顧客ロイヤリティは下がる一方だ。お客様のニーズやステータスを確認せずに「○○の商品は今10%オフです!」「今月の新着商品はこれですよ!」と話してくる店員と同じだ。
顧客ロイヤリティを損なうリスクがあるにも関わらず、具体的な施策として実行されないのはなぜだろうか。
確かに大なり小なり新たなシステム投資が必要にはなるが、問題はそこではない。真の問題は、従来のメルマガでも「そこそこ売れてしまう」ことにある。
"そこそこ"売れるメルマガをやめてしまうともちろん売上は減ってしまう。だから顧客ロイヤリティを損なうリスクがあることが分かっていてもやめられない……これが問題の本質で、多くのECサイトが抱える「メールマーケティングにおけるジレンマ」だ。
メールでのコミュニケーションは今も最適か
メールマーケティングの課題を語る上で避けて通れないのは、スマートフォンなどのモバイルデバイスの普及によって引き起こされたコミュニケーションスタイルの変化だ。
FacebookやTwitterなど、ソーシャルネットワークの利用が爆発的に拡大したことによって、情報の主体や発信方法が多様化し、人々の判断基準も大きく変化したのはご存じの通りだ。また、LINEなどのメッセージアプリは日常生活に深く浸透し、人々の会話(コミュニケーション)のあり方も変えてしまった。
このようなコミュニケーション環境の変化が訪れた今、消費者に対するメッセージングの方法として、PCのメールアドレスに配信するメルマガは果たして「最適な接客方法」と言えるのかという疑問が生じてくる。その答えはもちろん「最適ではない」ということになるだろう。
キーワード①「タイムリー性」
EC市場全体の売上が堅調に推移し、20歳以上でECを利用している人は全体の72%にもおよび、市場は成熟しつつある※1。
EC事業者間での競争が激化することで、良くも悪くもユーザーの選択肢やオプションが増え、ECに対するリテラシーも高まってきている。
そのような状況の中で、競争優位となる重要な要素の1つが「タイムリー性」だ。
消費者の行動をできるだけ早く、リアルタイムでつかむこと。そして、それに対してできるだけ早く反応することが重要になってきている。グズグズしていたらユーザーは購入するのをやめるか、他のサイトで購入してしまうだろう。
キーワード②「One to One性」
さらにもう1つの重要な要素が「One to One性」だ。
メールマーケティングは一斉配信の時代からセグメントメール、ステップメールなどに進化してきた。しかし「接客」という視点で考える時、セグメントされたメールで十分な接客ができていると言えるだろうか。
それは実世界の店舗で言えば「このようなカテゴリーの客には、大体こういう風に接客すればいい」という対応をしているのと同じこと。そのような店には客が付かないのが常識だ。来店者の一人ひとりの服装や態度を観察し、さらに声をかけてみて情報を引き出し、接客方法を考える、というのがあるべき接客の姿と言えるだろう。
ノンセグメントからセグメント化へ進化はしてきたが、現時点でのメールにおける接客は残念ながら「その程度のレベル」と言わざるを得ない。メールマーケティングにおいても、実店舗と同じレベルの接客を行わなければやはり客は付かない。必要なのは、「メールコンテンツのOne to One化」だ。これは実店舗のように相手の状態によって最適な接客をすることを意味する。
ジレンマを解消する「カゴ落ちメール」への期待
従来型のメールが生むジレンマを解消し、顕在化したタイムリー性とOne to One性の課題を解決できるのが「カゴ落ちメール」だ。
この連載の第1回でお伝えしたように、カゴ落ちメール1通あたりの獲得売上は、通常のメルマガの50倍にもなり、全メール配信数のうち、カゴ落ちメールの配信はわずか0.3%だったにも関わらず、売上はメール経由売上全体の13.8%を占めるようになる。しかもユーザーの行動を反映した接客なので、開封率・クリック率などの反応が非常に高く、オプトアウト率は低いとうデータもあるため、ロイヤリティを損なう恐れも極めて少ない。
また前回ご紹介したとおり、北米トップ1,000サイトのうち35.2%がすでにカゴ落ちメールを導入しており、主要小売業者100社では2013年から2015年の2年で3倍、全体の41%が導入しており、国内でもここ半年間で普及率が1.5倍に伸びている。このことから見ても、今後、顕在化したタイムリー性とOne to One性の課題を解決する手段として「カゴ落ちメール」がさらに普及していくことはまず間違いないだろう。
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次回(第4回)は、ユーザーが離脱する理由を整理した上で、カゴ落ち対策をすることでどれくらいの売上アップが期待できるのか、より具体的に触れていきたい。
※1:参考資料「総務省 平成27年版 情報通信白書」(インターネットショッピングの利用状況)
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:リスクがあるのにやめられない!? ECサイトを悩ませる「メールマーケティングのジレンマ」 | カゴ落ちメールが変えるECサイトの新しい“接客”のカタチ
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