企業ホームページ運営の心得

“レバ刺しナウ”規制をビジネスチャンスに変えるWeb担当者のひらめき

Webの力を使い、レバ刺し規制をビジネスチャンスへ
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の269

政権交代が落とす影

今週末を最後に「レバ刺し」が街角から消えます。各種報道にあるように食品衛生法が改められ、7月1日より生食用として提供することを、罰則付きで禁止したからです。牛レバーの内部からも食中毒の原因菌となる「O-157」が検出されたことが最大の理由ですが、禁止には「政権交代」が影を落とします。

かつての政権は「業界団体」や、飲食店をはじめとする「地域の声」に敏感で、こうした事態には「政治主導」による「先送り」で世論の沈静化を待ったものです。一方、現政権は政治主導を苦手とし、責任を遠ざけたがる「役人主導」で采配すれば結論が「禁止」となるのは自明です。また、発端となった焼き肉チェーンの経営者が、生肉の提供に関して「法に触れていない」と息巻いたことが、法律で縛ろうとするモチベーションを高めたことも見逃せません。

かくして「レバ刺し」は幻になります。しかし、まったく食べられなくなることはないでしょう。そして飲食店のWeb担当者向けのアイデアがひらめきます。

あります。レバ刺し

私が通う焼き肉店では10年以上前の食中毒騒動以降、牛刺し、ユッケ、センマイ刺し、そしてレバ刺しといった生食用のメニューの提供をやめました。衛生管理を万全にしていても、万が一、食後に腹痛を訴える客があらわれては一大事。精密検査の末に店舗側に原因がないと判明しても、一度報じられてしまえば「風評被害」は回復不可能なほど甚大になることからの決断です。特にネットが普及してからは、一度ついた「尾ひれ」を撤回するのは困難です。

規制が正式に発表された6月12日直後に「レバ刺し」を「ネットで検索」してみました。すると区内の飲食店が「レバ刺しあります!」と自身のホームページでうたっています。そして、

禁止になる前に食べにきて!

と誘いかけます。実際、産経新聞の報道によれば駆け込み需要による「特需」が起きているそうで、こうした「速報性」はまさに「Webの力」といえます。

ソーシャルメディアとの親和性

レバ刺しが「NG」とされる前の一瞬の好機を活かす、つまり「レバ刺し禁止」というネガティブな情報も商機に変える力がWebにはあるということです。私がこの飲食店のWeb担当者なら、即座にFacebookページを開設し、さらにTwitterのアカウントを取得しこうツイートすることでしょう。

レバ刺しなう。本日入荷新鮮レバー。間もなくご禁制。拡散希望 #rebasashinow

レバ刺し禁止は旬な話題です。嗜好品は連帯感を生み出します。そしてどちらもソーシャルメディアとの親和性が高いネタです。

ところでソーシャルメディアへの礼賛で「速報性」を挙げる人がいます。タレント本人のツイートや、関係者の証言が伝播していく拡散力を褒めそやすものです。しかし、それはWebが最初からもっていた特徴で、足立区在住の私のつぶやきが、ダマスカスのムハンマドさんに瞬時に伝わることは20世紀から知られていました。

禁止するほど高まる需要

本稿公開からレバ刺しが禁止になるまでわずか3日。飲食店のWeb担当者として、すでにFacebookやTwitterで積極的に活動しているならまだ間に合います。「レバ刺しナウ」です。しかし、そうでなくてもあきらめることはありません。

いまから「レバ刺しコンテンツ」を作ってください。「レバ刺しの歴史」「レバ刺しの美味しい食べ方」「レバ刺しが禁止になった理由」などなど。もちろん基本的な「SEO」を「地域名」と絡めて施します。すると「レバ刺し」が客を連れてくるようになります。レバ刺しをフックに客を呼び込み、興味を引くコンテンツを用意して待ち構えます。「レバ指し追悼会」などの企画も考えられます。

レバ刺しが禁止になったからといって、検索エンジンは「レバ刺し」というキーワードの収集をやめることはありません。そして禁止になれば、いま以上に「レバ刺し」をもとめて「ネットで検索」する人は増え、その結果、「レバ刺し」が客を連れてくるようになるのです。

「レバ刺し禁止だから意味がない」というのは学級会の結論です。

余白のある規制

レバ刺しを提供したときの罰則は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金です。はっきりいえば「レバ刺し」は「フカヒレ」や「キャビア」のような高級食材ではなく、庶民に手が届く「珍味」の部類で、それを提供する飲食店にとって罰金200万円は死活問題です。有り体にいえば「脅迫」のような罰則といえるでしょう。

しかし、規制当初は違反に対して「指導」して「警告」したうえで告発すると「余白」を持たせています。そこから厚労省の「苦肉の策」とみることもでき、冒頭で指摘したように政治がリスクを取っていれば、日本の政治の伝統芸でもある「先送り」になっていた可能性を否定しきれません。

そしてここからが飲食店のWeb担当者なら押さえておきたいところです。

いずれ、解き放たれるレバー

規制前からレバ刺しは品薄になっていました。ここ十数年、BSEなどにより牛肉を取り巻く状況は最悪で、厳密な品質管理が要求される生レバーの流通量は限られていたのです。一昨年、高齢化により廃業した近所の肉屋も、生食用のレバーが手に入らなくなったと嘆いていました。ここでいう流通量とは厚労省の基準を満たしているという意味ではなく実際に生食用として流通していたものです。

規制が開始されたとしても、今後、本当にレバ刺しは口に入らなくなることはないでしょう。たとえば、

新鮮レバーの瞬間焼き

と銘打たれた料理を注文すると、コンロと一緒に「レバ刺し風」のひと皿が供され、十分に焼くように店員が「指導」します。あとは客次第という、脱法ハーブのような「脱法レバ刺し」の可能性です。すでに業界では、闇レバ刺しが横行するだろうと噂されています。

厚生労働省のQ&Aでは、

飲食店事業者は、加熱用設備を提供し、中心部まで十分な加熱を要する等の情報提供を行い、消費者が加熱せずに食べている場合には、加熱して食べるよう注意喚起をする必要があります。

と説明されており、十分に加熱して食べることが徹底されていれば客の自己責任で提供可能との見解です。これをもって、密かに提供する店がでてくるだろうとの懸念です。そしてこれがなし崩し的に広まったときに、「レバ刺し」で上位に表示されているサイトが得るメリットは……と、これはあくまで思考実験。本稿の主旨は違法をすすめるものではありませんので、みなさんも思考実験にとどめてください。

今回のポイント

嗜好品の欲求は強い

規制はビジネスチャンスになることも

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