[コラム]長谷川恭久のCGM海原と共に

ユーザーが作り上げる取扱説明書

変化の早い家電の世界では、より使いこなしたいと考えている人たちにも満足してもらえる説明書が必要になってきているのかもしれません。
CGM海原と共に

電化製品を買うと付いてくる取扱説明書ですが、最近では取扱説明書をオンラインで公開しているところも増えて来ており、検索すれば欲しい情報をすぐに見つけられるようになってきました。また、最近はソフトウェアのアップデートや仕様変更のように、発売してから変動する情報が増えてきています。年々複雑になってきている家電の操作に関する疑問に応えるには、印刷媒体のみでは不十分になってきています。

いっぽう、取扱説明書に書かれているような基本的な操作方法を理解しただけでは“使いこなしている”とはいえない場合もあります。携帯電話やパソコンをはじめとした「ガジェット」と呼ばれる種類によく見られる傾向ですが、こういった製品は、自分のライフサイクルに取り込み、自分なりにアレンジして使うことによって、取扱説明書を超えた、ガジェットのもつ隠されたポテンシャルを引き出せるものです。しかし、こうしたTipsは、メーカーのサイトでではなく、ブログやユーザーグループのメーリングリストで見かけるのがほとんどで、探すのにも手間がかかり、せっかく書かれた情報も多くの利用者と共有されにくいのが現状です。

変化の早い家電の世界では、カスタマーサービスを柔軟な形で利用者に提供するだけでなく、より使いこなしたいと考えている人たちにも満足してもらえる説明書が必要になってきているのかもしれません。こうしたケアは通常メーカー側のみが行っていたわけですが、最近Motorolaで実験的な試みがされています。

Moto Q
Moto Qの製品ページには豊富な情報が掲載されていますが、Wikiによってより利用者が求める情報を提供できる可能性を作り上げています。
Motorola Q
Moto Q Wiki
Wikiのメリットとして、履歴機能を使うことによって、ページがどのように変更されてきたのか確認できる点もあります。
Moto Q Wiki

Moto Qという機種がありますが、ここのサイトは他のどの製品ページのように基本的な製品情報だけでなく取扱説明書のオンライン版が掲載されています。さらにユーザーフォーラムもあるのですが、Moto Qがユニークなのは、それに加えて「Wiki」が用意されているところです。Wikiは、だれでも新しいページを追加したり、書かれている情報を編集したりできる、利用者主導のサイトの仕組みの名前です。Moto QのWikiには、すでに取扱説明書の情報が書かれていますが、利用者(要登録)はページを編集できるだけでなく、Moto Qを使ったTipsがあれば、自由にWikiに書き込んで他の利用者と共有できるのです。

メーカーが利用者に使い方を呼びかけたり、意見を求めたりすることは新しいことではありません。Moto Q Wikiがユニークなのは、利用者の情報もメーカーが出す情報と同等のものとして扱っているところでしょう。Moto Qの利用者は、製品といつも接しながら生活しているということもあり、メーカーに劣らない知識を持っています。それこそ、利用者のほうがよく理解している部分も少なくありません。こうしたオープンな環境を作ることはメーカーにとってリスクを負うことになるのかもしれません。しかし、Wikiのようなオープンなシステムを使うことにより、製品を中心としたコミュニティの形成を可能にし、さらに、機械的な取扱説明書ではない、利用者が本当に必要としている情報を利用者自身が掲載するような取扱説明書の制作、公開を可能にしてくれるのではないでしょうか。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.2』 掲載の記事です。

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