企業ホームページ運営の心得

ブラック・クチコミサイトがステマを誘発。ステマが生まれる構造的課題

ブログの普及やクチコミ活用ビジネスの台頭がステマの背景にあります
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Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百四十九

盲目的礼賛に唾

黒田治さんがMCを務める、FMラジオ局 Nack5の人気番組「夕焼けシャトル」で「ステルスマーケティング(ステマ)」の解説をしました。「ステマ」とはWeb業界的には古いネタなのですが、一般的にはあまり知られていなかったようです。

前回も述べたように、マーケティングにおいては「古典」に属する手法が爆発的に広まった背景には「ブログ」の普及があります。だれもが手軽に情報発信できるツールを手にしたことで、「やらせ」の敷居が下がり、「サクラ」要員が爆発的に増えたのです。いうなれば「ソーシャルメディアの徒花」。

光が影を生み出すように、便利なツールは悪用する側も便利に使えます。私が盲目的なネット礼賛を唾棄する理由でもあります。そして「ステマ」の周辺を追いかけていると、黒とグレーのまだら模様が浮かんできます。

世界の潮流と日本の動向

本題に入る前に議論を整理します。ステマの定義は、報酬を得ていたり、販売側の人間である事実を隠したりして商品やサービスを推奨する行為を指します。EUが真っ先に動き、それに準じる形で英国が法整備をしました。このことはすでに4年前に「SEOmoz」で報じています。

ステルスマーケティング手法を禁止する新しい英国の消費者保護法(前編)

続いて米国の米連邦取引委員会(FTC)が2009年12月に施行した「推奨広告と証言広告の利用に関する指針」で規制し、罰金刑まで準備されました。具体的には「アマゾン」のレビューに筆者が匿名で推奨コメントを寄せたり、著名なブロガーがプレゼントされた事実を隠して絶賛コメントを述べたりすることを禁ずる「クチコミの販促・宣伝規制」です。

一方、我が国では、消費者庁が「ガイドライン(PDF)」を発表しただけで事実上は野放しです。本来「消費者庁」は、こうした問題に機動的に対処するために発足された組織ですが、政治の鈍感さが消費者を傷つける構図は、政権交代後も変わらないようです。

グレーとブラックの境界

来店したことのない店のサービスについて、自らが体験したように「クチコミ」することは「虚偽」ですからグレーではなくブラック、国内基準でもアウトです。しかし、国内のステマでは珍しいことではありません。そしてこの「ブラック」に悪意は希薄です。

代表的なブラックの入り口は「モニター」や「アンケート」です。マーケティング会社の募集に応じ、企業が望む設問やお題に回答して、現金やポイントを入手します。ここまでは罪ではありません。往々にして実際に得る報酬はすずめの涙で、いわゆる「食べログ」に寄せるコメントのような文章で、回答するものでも500円に手が届くかどうかです。500円では交通費にもなりません。そこで「創作活動」に手を染めるのです。

報酬が少ないことは免罪符になりません。しかし「モニター」をしているブラックレビュアー……もとい、主婦に話を尋ねると、マーケティング会社側の問題も見えてきます。

クチコミサイトが結果を誘導

主婦によれば、創作したレビューが疑われたことは一度もなく、いまでも毎日のように数多くの「レビュー依頼」が届くといいます。マーケティング会社の多くは、クチコミを依頼した企業から報酬を受けとっており、その金額は主婦に支払う謝金の比ではありません。投稿内容を精査せずに「クチコミ」として利用していれば、結果的に「ステマ」を量産している道義的責任があるのではないでしょうか。

さらにあるクチコミサイトでは「レビューを書くとポイントゲット」と、クチコミ投稿で報酬を得るキャンペーンが恒常的に行われています。ただし、すべてのクチコミに対して謝礼のポイントを付与するのではなく、「キャンペーン対象店」という区別が存在します。謝礼の有無によって差別化を行い、投稿を操作しようという意図があれば、サイト自身がステマを誘導しているとも捉えられます。実際に投稿された「クチコミ」を見る限り、先の主婦のようなポイント狙いのブラックレビュアーを完全に排除できているのかにも疑問が残ります。

報酬を提供することのすべてが悪いというわけではありません。しかし、主催者側がやらせ行為や虚偽のクチコミを推奨しているとしたら問題です。それは依頼した企業やクチコミサイトだけでなく、クチコミした人のブログやSNSの炎上につながるリスクもあります。

かかるバイアスは

違法性が議論される「ステマ」が、それでも根絶されないのは「クチコミ」のもつ販促効果です。効果があるなら利用したいと思うのが人情です。サイトの品位を汚すので「黒」については紹介しませんが、現時点で明らかに「白」と考えられるクチコミを集める方法の代表は「ブロガーイベント」です。

ブロガーイベントとは、建前上は有名無名を問わずブロガーを集め企業広報をするイベントですが、実際には招待する「ブロガー」を選別することができます。エントリーをチェックし、主催者が求めるものに近いエントリーを書いてくれそうな、いわゆる「空気の読めるブロガー」をチョイスするのです。参加者のエントリーを丹念に読んでいくと「●●さんから声をかけてもらった」「××社からメールが来た」と告白しているブロガーは少なくありません。

また、こうして発言に「バイアス」をかけることは違法ではなく、「イベント」だと情報を公開しているのですから「ステルス」にあたりません。

ステマとクチコミの不可分

企業の広報担当者からすれば「良いクチコミ」をする招待客の選別は当然のことです(悪評もきちんと受ける企業もあります)。あるブロガーイベントでは「モニター」として、市販価格5万円を超える最新デジカメがプレゼントされていました。もちろん、ブロガーも主催者も「利益供与の事実」を公開しているので「ステルスマーケティング」の定義から外れます。さらにギャラを支払い、著名人を招聘し、トークセッションで議論を誘導したとしてもそれは「イベント」であり「ショー」の要素が含まれるもので「やらせ」ではない、と理論武装。

ブロガーイベントはいわゆる「白」ですが、もっと強いバイアスをかけた「グレー」のマーケティング手法は沢山あり、意図的に「クチコミ」を集めようとすれば、ステマと重なる部分が多くなるのは事実です。そして法規制のない日本においては「良心」が最後の砦です。しかし、Webに関わる人間としてこれだけは覚えておいてください。「クチコミ」の信頼性がゼロになったとき、

インターネットは便所の落書き

と再び呼ばれるようになることを。

今回のポイント

バイアスをかけてクチコミを誘導することは……できる

しかし、その先に待つのはWeb全体への不信感

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