全コンテンツがフィードになればウェブサイトの作り方も変わる

全コンテンツがフィードになれば
ウェブサイトの作り方も変わる

小川氏の写真3

●安田 ポータルなどのニュース配信は、新聞社などからお互いに決めた何らかの形式でデータのやり取りを行っています。特定の人の間でやり取りする場合は、フォーマットさえ決まっていれば、FTPにデータを置いてもらうようなやり方でも問題はなかったはずです。

しかし、誰もが良質な情報が配信できる時代の中で「Web担当者フォーラム」などのサイトでは、一次情報を出すのがメディアの役割ではなく、良質な情報を取捨選択して特定のセグメントに整理するのがメディアの役割だと考えています。いつ出てくるか、誰が出してくるかわからない情報を整理する場合は、フィードを使うのが自然となってくるわけですよね。「Web担当者フォーラム」は現在制作中なのですが、市中のブログから情報をまとめこむといった作業は、やはりフィードを介しています。

●小川 ただし、市中のフィードには大きな問題があります。フルテキストのフィードが意外と少ないんですよね。アフィリエイトなどをやっていると、ブログに人を呼び込みたいためにフィードには概要だけを載せるといったことを始めてしまいます。読む側にとっては、フィードを読むだけでは内容がわからないので、ブログに行って読むという二度手間になっているのです。

安田英久の写真2

●安田 「Web担当者フォーラム」は画像も含めて全部出していますよ。そういえば、フィードに全文を掲載しているけど、改行をすべて取っ払って1行にしている人もいましたね。「読みにくいですよね」と言うと、やはりウェブサイトで広告をクリックしてほしいから故意に改行を取っているという話でした。

でも、それはそれでいいのではないかと思います。弊社でもフィードを出すことが広告の売り上げにどれだけの貢献があるのか、といった議論をしていた時期もありましたから。

●小川 しかし、われわれとしてはウェブサイトを持たなければならないということが、あまり意味がないと思っているのです。ウェブサイトを持たなくても、フィードにバナーやいろんなデータを入れて配信すればいいじゃないですか。この方向に進んでいくのが、正しいのだと思いますね。

●安田 これまでのウェブで不便だと感じるような部分を解決し、より便利にするような力をフィードが持っている可能性があるということですね。

「Newsweek」RSS登録ページの画面ショット

●小川 そうです。たとえば、「Newsweek」のウェブサイトでは、すべてのニュース別にフィードを置いています。1つ1つのニュースを取り出すことができるようにして、独自のフィードリーダーを提供し、IDとパスワードでユーザー個別のパーソナライズポータルをフィードリーダーベースで作っているのです。あらかじめプリフィックスされているページに「New York Times」や「Washington Post」のニュースを置くこともできます。ウェブサイトそのものをフィードリーダー化してしまって、データコンテンツをすべてフィードにしてしまうというやり方です。こうなると、ウェブの作り方が変わってくるはずです。

たとえば、HTMLレイアウトを持ったフィードを作ることも考えられるでしょう。SimpleFeedなどではチラシと同じようなリッチなフィードを配信することができるようになっています。サンフランシスコのスーパーのベストバイ情報も、リッチなフィードとして配信されているのです。重要なのは、データそのものがある程度スタンダードなものであって、流用性と汎用性が高く、再利用できるということです。われわれがこれから提供する方式が全体に普及しないとしても、部分的には使われるでしょうし、実際にはウェブサイトをクローリングして特定の場所を抜き出してフィード化するというサービスも行われています。これらはやり方次第で今後の応用が利くものだと思いますね。

一般的なユーザーは表現方法が何かを意識しない

小川浩の写真4

●安田 データ交換のフォーマットとしてXMLがスタンダードとなり、ウェブにかかわるコンテンツのやり取りはフィードがデファクトとなっています。しかし、以前から私は、3~5年後にコアな人たちはフィードを使っていても、一般の人はそれほど使わないのではないか、と考えてきました。現状でもほとんどの人はフィードが何なのかを知らないと思いますが、小川さんのお話を聞くと一般にも浸透していくのかな、と考えを改めているところです。

●小川 一般的なユーザーは、グーグルやヤフー!(MyYahoo!)などで知らないうちにフィードを使うようになってきていますね。たとえば、「glucose」などのフィードリーダーでは、クリックするとフィードを読み込んで、その先のhtmlを表示するようになっています。フィードを見ているようで、実際はHTMLを見ているわけです。表示されるものがHTMLであるか、HTMLではないリッチなフィードであるかということは、ユーザーは考えないですよね。データコンテンツを見ているときに、実体が何であるかは意識しないと思います。

フィードリーダーを登録またはインストールしなければ見られなかった時代から、FirefoxやSafari、IE7などのブラウザを使って誰でも見られる時代に変わってきました。個人的にはSafariのフィードリーダー機能が一番よいと考えていて、ブックマークする感覚ではなく、クリックするだけで読めていける感覚が一般的になれば、もっと状況は変わってくるでしょう。

ただし、メールマガジンと同じでフィードの最大の欠点は登録されないと読んでもらえないことです。基本的には検索されないので、フィードを登録できるようなものがウェブサイトの中にあることが必要となります。将来的にどうなるかはわかりませんが、現状ではウェブサイトで登録してもらって読んでもらうしかないのです。

●安田 現状では、グーグルなどもウェブサイトの更新情報としてフィードがあると考えているため、インデックス化しなくてもよいという判断をしているのでしょうが、フィードがコンテンツとなってくれば、インデックス化せざるを得ないことになるでしょうね。そうなってくれば、フィードの中に別のフィードへのリンクを入れると登録ボタンもいらなくなります。

●小川 あと、われわれがやろうと考えているのは、自社のサービスの中で複数のフィードを探せたり、関連情報を入れたりできるようなサービスの提供です。「modiphi」は、フィードを書くだけのサービスにしようとは考えていません。最初は書くことから始めなければなりませんが、それがおもしろくなればフィード自体のアグリゲーターがでてくるわけです。実際に米国ではエッジアグリゲーターといった世界が生まれていて、エッジフィーダーが分散して吐き出しているデータをアグリゲートするサービスが広がってきています。

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