ライオンの通販に勧告の衝撃 消費者庁が指摘したトクホ商品は何が問題だったのか? | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

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消費者庁から勧告を受けた「トマト酢生活トマト酢飲料」は、15年6月から16年1月までに約4億7000万円を売り上げていた

消費者庁は3月1日、ライオンが販売する特定保健用食品(トクホ)に対し、健康増進法に基づく勧告を行った。トクホに対する運用も初めてだが、健増法の勧告も初めて。今回の措置は、消費者庁が健増法の運用を変えてきたことを示している。だが、国の許可を得たトクホに対する社名公表を伴う措置は、そのハレーションがあまりに大きい。業界内外からは早くもこの判断に「過剰規制でやりすぎ」との声があがっている。事業者へのインパクトの大きさだけを求めた無理筋ともいえる規制は、議論を呼ぶことになりそうだ。

消費者庁判断に「過剰規制」 「勧告」も初 「トクホ」も初

勧告は、通販で展開していたトクホ飲料「トマト酢生活トマト酢飲料」の広告が対象。広告では、ヒト試験結果のグラフとともに「臨床試験で実証済み!これだけ違う、驚きの『血圧低下作用』」などと表示。昨年6月から今年1月末までに約4億7000万円を売り上げていた。

ただ、トクホとしての許可表示は、「血圧が高めの方に適した食品」という範囲。あたかも血圧を下げる効果があると許可を受けているかのように表示していたことや、薬によらず改善効果が得られるかのように表示していたことを許可表示の“逸脱”と判断した。景表法を含めトクホへの措置は初めてとみられる

ライオンが通販で展開する特定保健用食品(トクホ)商品に消費者庁が、健康増進法に基づいて勧告①
「トマト酢生活トマト酢飲料」
措置内容は景表法を踏襲

初の勧告であるため、今回のケースは事業者、行政双方にとってメルクマールになる。勧告の内容は、消費者と役員・従業員に対する違反行為の周知、今後、同様の表示を行なわないことと再発防止策の実施。これを受け、ライオンでは全国紙2紙に社告を掲載。ホームページでも勧告に至る経緯を説明した。広告は制作部門と品質保証部門のダブルチェック体制を敷くが、今後、健増法の理解促進に向けた社内教育、自社の広告出稿基準見直しを検討する。具体的内容は「検討中」とした。

一方、これまで実績のない勧告がなぜ行えたのかという疑問が残る。

「勧告」が行えない理由は一つ。要件となっている「国民の健康に重大な影響を及ぼす」の認定が難しいことだ。極端なイメージでいえば、その広告のためにがん患者が治療を受けない、といったことがあてはまるとみられる。今回、消費者庁は、判断基準として健増法の運用指針(=表)の「重篤な疾病を持つ患者が(略)診療機会を逸する」という解釈を持ちだした。「高血圧」は、薬による治療等が必要な病気だが、ライオンの広告を見た患者が診療機会を逸すると判断した。

ライオンが通販で展開する特定保健用食品(トクホ)商品に消費者庁が、健康増進法に基づいて勧告③
「トクホ制度の意味なし」

ただ、判断を巡っては批判的な声が多い。一つは、ようやく知名度が高まってきたトクホ制度を揺るがす措置であるため。「血圧低下をヒト試験で実証したのに『著しく誤認』で社名公表ではトクホの意味がない」、国が許可したものであるにもかかわらず、「指導をしたのに直さないなら分かるが、一足飛びの勧告はあまりにひどい」「健食の方がやりやすい」といった声だ。

「高血圧」を重篤な疾病とした判断にも「高血圧や糖尿病は『生活習慣病』の範囲。血圧は食生活の改善によっても下がる」「確かに『驚きの血圧低下作用』と書いている。ただ、グラフも事実、下がっているのも事実。事業者も開き直って争えばよかった」といった指摘がある。こうした意見は業界だけでなく、行政関係者からも聞かれた。それも今回の勧告が招くハレーションがあまりに大きすぎるためだ。

機能性表示食品規制への布石

消費者庁の狙いの一つは、機能性表示食品へのけん制だろう。企業の自己責任を前提とする新制度の導入で、すでにさまざまな表示が氾濫している。これより上位に位置するトクホの表示を規制することで、“聖域”がないことを実例をもって示せる。「何人も」を対象にする健増法は、考査を行う媒体社へのプレッシャーとしても有効に働く。

加えて、健増法の執行強化は、消費者庁創設来の課題。2013年、表示対策課所管の景表法と、食品表示課(当時)所管の健増法の“一体的運用”を目指し発足したのが表示対策課に設置した「食品表示対策室」でもあった。

根拠資料の「報告」を依頼?

ただ、調査の流れをみると、対策室が目指した“一体的運用”には違和感を覚えざるを得ない。

手元に「報告書」という表題の書面がある。記載前のものだが昨年末、消費者庁からライオンに送られた報告依頼の文書とみられる。独自に入手したものだ。これによると、対策室は、ライオンに「事業別売上高」から「『トマト酢生活』の販売実績」「商品の開発経緯」「表示状況」などに至る詳細の報告を求めている。

注目すべきは新聞広告(=画像、昨年11月27日付朝日新聞掲載)について、「50・60・70・80代の方におすすめします!」「ライオンの『トマト酢生活』が上の血圧と下の血圧の両方に作用!」など13表現の“根拠資料”を求めていることだ。

ライオンが通販で展開する特定保健用食品(トクホ)商品に消費者庁が、健康増進法に基づいて勧告②

健増法の運用に戻る。同法では「表示通りの効果がないことを行政が立証しなくてはいけない」(13年1月当時、消費者委員会における片桐一幸表示対策課課長の説明)。ただ、認められた権限は、「収去」のみ。収去とは、「商品を無償で提供してもらうこと」だ。「報告書」の要求はその範疇を超えていることになる。ライオンにも提出資料を問い合わせたところ、調査のあった11月、「新聞広告を提出した」との回答はあった。

ライオンが通販で展開する特定保健用食品(トクホ)商品に消費者庁が、健康増進法に基づいて勧告④
事業者を欺く一体的運用?

対策室の三上伸治室長は一体的運用の詳細の説明を避ける。一方で、元執行担当官が話す。

「景表法の案件であれば不実証広告規制がある。そうであれば、例えば『命令書』といった形で根拠を要求できる。書面にも『○○の規定に基づき』と記載すればよい。ただ、事業者側は(健増法で根拠の要求権限がないことなど)事情を知らない。特にそのことを説明せず、法的根拠によらず『報告書』と“任意”で求めても、素直に提出してくる事業者はいる」。

地方自治体の元執行担当官も「昔、景表法の指示に関する調査でよくやっていた手法。地方には、合理的根拠の提出要求権限がない(注・当時)ため提出依頼、報告依頼といった形でやる。本来、出す必要はないが、事業者が拒否する覚悟を持つのは難しい」と話す。

今回のケースがこれと同様かは分からない。「健増法の指導案件として着手したものに対し、景表法が適当と判断するものもある」(前出の担当官)という判断もある。だが、「食品は健増法の適用が妥当」(三上室長)と法律に定める趣旨に沿って案件を振り分けながら、運用面で各法の“いいとこ取り”をするのが対策室が目指す一体的運用なのか。これには「アンフェア」(前出関係者)と身内からも非難がある。

「容器包装」と「広告」同一視

「容器包装」と「広告」の同一視も進む。昨年末には消費者向けにキャッチコピーだけでなく、パッケージの確認を求めるチラシを配布。会見でもこれに言及した。

最近でも機能性表示食品の広告の解釈で、「○○の健康に」といった省略表現を「省略し過ぎると誤認を招く。容器包装に表示した内容は、広告でも求められる」(表示対策課)との見解を示した。だが事業者からは「『容器包装』と『広告』は異なる。一致を求めると広告は味気ないものになる」と怨嗟の声があがる。

◇◇◇

機能性表示食品制度は始まったばかり。トクホを含め消費者に浸透するか、成否は定まっておらず重要な時期にある。にもかかわらず、現在行われている積み残し課題の検討会では、政府方針を無視して制度の再設計すら持ちだす委員すらいる。加えて、残るのが景表法や健増法の規制強化だけ、となれば市場は規制緩和と執行の両輪どころか間違いなく冷え込む。健増法を巡る今回の判断は、議論の余地を残す。

消費者庁「食品表示対策室」・三上室長との一問一答 勧告要件「診療機会の逸失」

勧告の会見に臨んだ消費者庁表示対策課「食品表示対策室」の三上伸治室長に勧告の経緯を聞いた。(聞き手は本紙記者・佐藤真之)

ライオンが通販で展開する特定保健用食品(トクホ)商品に消費者庁が、健康増進法に基づいて勧告⑤
消費者庁表示対策課「食品表示対策室」の三上伸治室長

――勧告には「国民の健康に重大な影響を及ぼす」という要件の認定が必要。今回、どの表現がこれにあたると判断したのか。

「健増法の運用規定に定める勧告要件の解釈に『疾患を抱える患者が(略)診療機会を逸してしまう場合』というものがある。高血圧は、薬物治療を含む医師の診断・治療が必要な疾病。(前出の)解釈に十分当てはまる」

――対象となった表示は景品表示法上も問題となるか。

「対象になりうるが、景表法はさまざまな商品・サービスを対象にするのが特色。対する健増法は、食品を対象に『健康の保持増進効果』の表示を規制する。今回はトクホ。それらを踏まえ健増法が適当と判断した」

――ダイエット対応の健食はこれまで景表法で処分されてきた。何が異なる。

「広告は50~80代に訴求している。年齢が高いほど、高血圧の割合が増え、中には病気ではないかという人もいる。そうした人に『薬に頼らず下がる』と広告すると適切な診療の機会を奪う。(健康に重大な影響を及ぼす案件であるため)健増法が適当と考えた」

――機能性表示食品も健増法規制の対象になるか。

当然(届出表示を逸脱した広告を行えば)なる」

――過去に勧告の実績はない。これまでは勧告となるような問題がないとの認識か。

「正直な話、世の中にある全ての広告を見ているわけではない。接したものを法令に基づき判断している。(問題の有無ではなく)これまではその実績がなかったということ」

――調査の流れを聞きたい。今回、勧告に至る前に(消費者庁設置法に基づく)行政指導を行ったか。

「行っていない。行政指導か、健増法に基づく勧告のいずれかを判断する」

――健増法上の権限として、検査、収去がある。具体的な中身は。

「収去権限は、(企業が)扱っている食品を国が無償で検査のために引き受けるもの」

――合理的根拠の提出要求権限がある景表法に基づいて調査に着手し、健増法で措置を行うケースもあるか。

「一体的な運用を行うが、テクニック的な部分もあるので(回答は控えたい)」

会見の最後、三上室長は、「トクホや機能性表示食品にキャッチコピーがつけられているケースがある。国民の皆様にはパッケージの機能が表示されている部分をよく読んでもらいたい」と、消費者に呼びかけ、会見を締めくくった。

「通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
ライオンのトクホに初の勧告 健増法「誇大広告」初適用の衝撃(2016/03/03)

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