当社(プランオン)が運営するBtoBのノベルティ通販サイト「万来ドットBiz」は2年ほど前に、リニューアルを実施し、いまでは増収増益を続けています。数年前までは他社さんが運営していたのですが、立ち行かない状況に陥り、3年前に当社へ運営移管されました。お世辞にもうまくいっていない状態でしたが、それをどのように克服し、限られたごくわずかな予算でどうやって軌道に乗せたのか。少ない予算で通販サイトを活性化させることに成功した3つのポイントを紹介します。BtoBの事例ですが、BtoCのECサイトにも応用できるはずです。
- 今月は大きな注文がないので、ちょっと実績悪いです……
- 今月は見込み客が少ないです……。どうしよう……
- 広告代理業を行う企業を中心とした販売になるので、提案や売り上げは多いが受注が安定しないです……
3年前を振り返ると、「万来ドットBiz」がプランオンに移転された当時の運営スタッフからこんな絶望的な声が聞こえてきました。
運営している「万来ドットBiz」
その時の「万来ドットBiz」は、サイトの力というよりも、代理店さん向けの対応力やサポート力で勝負しているような状況でした。
そんな状況で「万来ドットBiz」を引き取ったわけですが、当社は当時、組織が立ち上って5年ほどのスタートアップ。本業の利益は出ていましたが、決して資金が潤沢でない状況だったのです。
お金が潤沢にないプランオンでしたが、お金をかけずにECサイトを軌道に乗せることができました。お金がなくてもECサイトをどのように活性化したのか。そんなお話です。
採用した3つのアプローチ
- 運営するECサイトの方向性を決める
- ECサイトの成長は組織作りにあり
- 採用した戦略は「絞り込む」
リニューアル前に取りかかったこと
引き受けた状況のサイトで1年ほど、改善とテストマーケティングを実施。その後、システムやサイトデザインの変更など、大規模なリニューアルを実施しました。
ECサイトのシステム初期費用(減価償却)、ランニングコスト、人件費などはリニューアル前の状況と比べて倍近くのコストが、毎月、毎月、必要となりました。早い段階で投資回収しないと、本業にも影響してきてしまう状況です。
そんななか、絞った行動は2つ。
- 「サイト運営のチーム力」を上げる
- すぐにNO.1になれること」に絞って強化をする
決断の背景
新規事業を数多く立ち上げた経験から、「早く成果を上げる」「費用対効果を上げる」には、さまざま「販促施策」や「流行施策」よりも、「人」や「チーム」にフォーカスした方が、事業成長が早いと実感していました。事業立ち上げ当初は、チーム作りを意識し、役割や実施事項を調整し、行動していきます。
2つ目は、当社の主要事業は広告関連ビジネスであり、かつ弱者なので、なるべく競争をせずに商売ができるポジショニングを意識したこと。
一般的な広告会社は、さまざまな業種を相手に広告ビジネスをするケースが多いのですが……当社はズバリ、「カーディーラー」に絞って活動をしています。まさに一点特化型!
プランオンの本業は特定業界の企業に対しての戦略的販促の提案
対象業種を絞り込むことで、より相手を深く知り、競合他社と違った提案をすることが可能になります。顧客の販促費を「100%」とした場合、70%程のシェアまで、取引開始から短時間で引き上げていく営業です。
対象を特化していますので、商材も通常の広告媒体やDMだけではなく、店頭商談ツールやノベルティグッズ、店頭ディスプレイ、事務ツールなど、カーディーラーで利用する商品をラインナップし、リピートや追加提案をどんどんできる状況を作り、営業活動を実施します。
ポジショニングを意識すると、他社にはできないこうした提案ができるようになるのです。
サイト運営力を上げるためにやったこと
サイト運営の実務に本格着手する前に、“ミッション”を意識したチーム作り着手しました。その理由はなぜか? 売上、収益、規模といった数値的なことも大切ですが、数字中心の事業活動に終始すると、うまくいかなくなった時に軌道修正しにくくなるといった経験があったからです。ミッションを決めること、これはとても重要です。ECサイトの方向性を左右するものになりますから。
私は「我々のビジネスは、このサイトはどのような人達に役立つサイトになるのか?」と、あるべき姿をスタッフと徹底的に話し合いました。
ネットショップを初めて利用する人は今後も増えるだろうと推測し、「万来ドットBiz」は「初めてノベルティをネット注文する人に親切なサイトであろう」と、ミッションを決定しました。
ミッション決定の次に行ったのが調査。前提として、ネットショップ経験者が主要顧客になると、購入側の比較ノウハウが高くなり低価格や最安値でのオーダーが多くなると予測できましたので、対象層がどういった心理でネットショップを利用していくかを考え、調査を実行しました。
まずは、商品について調査。「価格」「「アイテム数」「競合サイトと当社の比較」など、競合の状況をよく把握しました。
以前のサイトは、サポート力を重視した運営をしていたのですが、当社は以下の順序で対策を実施していきました。
商品×サイト×集客×サポート対応=実績
4つの力を掛け算していき、実績を上げていきます。
プランオンの組織作り
「商品」「店舗」は「No.1」活動として、「集客」「対応」はブランド営業活動として、それぞれ役割を分けてサイト運営を実行しています。
会議議事録、報告書もすべて上記項目(有効な施策の実行の部分)のみで作成し、改善活動を実施していきました。
ECサイトの運営では、いわゆる数字的な結果以外に、数値化しにくいものもあります。当社では独自の自社指標を作り検討をしていきました。それが次の指標です。
実績=「お客様理解」×「自社の方向性精度」×「サービス対応精度」×「提案精度」
数値化できないものも独自に見える化することで、何が不足しているのかが見えてきます。当社ではそんな取り組みをスタッフとの協議で積み重ねていきました。
プランオンが独自に設けているKPI
結局は取り組んできたことを数値化し、足りない部分を改善。その繰り返しになります。現状では、業績は以前より250%程のアップを実現しています。
絞り込み戦略でやったこと
充分な販促予算はありませんでした。サイトコンテンツ、ネット広告にしても、使い方がシビア。「100円も無駄にしない」が合言葉です。
少しずつまんべんなく実行すると力が分散してしまうので、以下の2つに絞って、サイト開発や準備を実施しました。
- 戦略①「ノベルティ 商品カテゴリーNo.1」を獲得する。
- 戦略②「ターゲットをしぼり」、顧客に届くコンテンツを準備する。
No.1活動
求めている顧客のニーズにより近づき、良い提案をする――これが基本で、当社の「No.1活動」となります。当たり前のことですが、流行のノウハウを追ってしまうと、こういった基礎的な事がおろそかになってしまいます。
ブランド営業
お客さまのことを考えると、より自分に近い情報でサイトが構築されていれば、親和性も高くなり、「ここで買おう」という状況が発生します。これが「ブランド営業」となります。
戦略①「ノベルティ 商品カテゴリーNo.1」を獲得する
扱う商品のノベルティは多種多様です。お菓子もあれば、文房具、雑貨など種類は膨大。当社のECサイトは基本的に、ノベルティを商品カテゴリーで分けて、商品掲載をしています。
しかし、資金力がないので、今でも5品種程度。リニューアル当初は、ノベルティ内でも「バッグ」というカテゴリーに絞り、サイト構築やSEO対策を実施して、検索順位、直帰率を改善。関連検索キーワードで5位以内に入れていくことに終始しました。
扱う商品は絞っています
なぜ、「バッグ」という商品を選択したのかというと……
- 検索ボリューム
- 現状のSEO順位
- 競合と当社の価格差
- リピート発生の可能性
4項目を評価して、まず優先的に強化するジャンルと判断しました。少予算、少労力で実施するには、絞り込みがとっても重要。このように「カテゴリーNo.1」を獲得できれば、次のアイテムの強化を実施していき、業績アップを図っていきます。
戦略② 「ターゲットをしぼり」顧客に届くコンテンツを準備する
カーディーラーに特化している経験から、業種ごとに深くさまざまなニーズが隠れていることを把握しています。
対象業種は、カーディーラーや官公庁、福祉関連などさまざまなターゲットとなる業種向けのページを用意して、顧客ニーズに近づけたコンテンツ作りを実施しています。
当社の位置付けでは、「ブランド営業」=「よく分かっているね~」という状況を作っていくことです。
ここで、絶対外してはいけないのは「リピート性」。予算がない場合は、リピート性のある顧客の獲得を強化した方が効果的。そんなお客さんを、「どうやって見つけていくの?」と疑問がわくでしょう。思い付きではうまくいかないので、ウェブ解析を活用しました。
ニーズを徹底的に深堀りするためにウェブ解析を活用
まずは、リニューアル前のサイトでアクセス解析ツールを活用し、業種・業態のキーワードや閲覧ページを1年近くに渡り分析してきました。わかったことは……
- ノベルティという呼称は、業種によっては「プレミアム」と呼ばれる
- 官公庁は、エコ関連ニーズが高い
- 福祉関連は、ノベルティはサプライズのおまけ。サプライズ商品を同時に探している
などなど、アクセスデータから想像・妄想できることを拾い集め、それを実行に移していきます。そして商品を企画し、顧客ニーズ、仮説を立てテストマーケティングを実施してきました。
当社では、こうし活動を「PDCA」ではなく、「CAPD(キャップドサイクル)」活動と位置付けています。
「CAPD(キャップドサイクル)」
- C ― まずは、現状把握
- A ― 仮説を実行
- P ― 目標を立て、投資と回収時期を示す。
- D ― 本格的に実行
当社は広告会社なので、Webばかりにこだわっているわけではありません。実際のユーザーは、ネットショップとリアル店舗を、自身のニーズやメリット合わせて、使い分けているからです。
そのため、当社のECサイトは、ネット広告だけではなく、顧客にDMも送ります。
その際は、実行前に注文の多い業種・業態を整理し、顧客ニーズをきちっと把握します。ウェブ解析や注文データだけでは、分からないときは、スタッフが聞き取り調査に伺います。
そうすると見えてくることが結構あるんです。同じようなケースを見つけることができれば、あとは、どう最大化していくかを検討するだけです。
徹底的にこだわれば見えてくるものがあります
実際にお客さまを訪問してみると、「今回はネットで注文したけで、実はPCが事務所に1台しかなく、順番で使っている」といった業種もあるんです。
こんな方には、SEO対策やネット広告より、カタログを送付した方が有効ですよね。
まとめ
当社の事例は、大規模サイトの事例ではないですが、中小企業など少ない予算で成果を上げるためのケースとして有効でしょう。アクセス数やサイト品質であるコンバージョン率向上だけではなく、顧客ニーズを意識して今後も活動していきたいですね。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
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