化粧品ECがユーザーのリアルな声を有効活用する方法とは? 薬機法の課題をクリアするレビュー活用と可能性をDECENCIAとZETAが語る
この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
購買行動の一連の流れにおいて、商品やサービスの購入検討前に口コミやレビューを確認するという消費者行動が一般化しつつある。ロングテール系のECサイトはもちろん、定期購入が売り上げの多数を占める商材でもレビュー活用が進み、さらなる拡大が見込まれるだろう。記事の前半では、敏感肌向け化粧品を展開するDECENCIAのビジネスモデル、薬機法を順守したレビュー運用の裏側などを解説。記事後半では、「自社ECサイトに蓄積されたレビューは人々の購買を後押しするだけでなく、ブランドの認知度拡大やECと実店舗の連携に相乗効果をもたらす」と話すZETA、レビュー活用を積極化するDECENCIAが、自社製品にもたらすECサイトのレビューの有益性や今後の可能性などについてディスカッションした記事を紹介する。
敏感肌向け化粧品市場で成長を続けるDECENCIAがレビュー機能を導入
ポーラ・オルビスホールディングスグループで、敏感肌向け化粧品を販売するDECENCIA。アトピー性皮膚炎に悩む家族を持つポーラの研究員が、敏感肌への切実な悩みを解決したいという思いで始めた研究がブランド誕生の発端になったという。
2007年の会社設立以降、一貫して肌の美しさの本質を根幹に据えて、敏感肌向けのブランドでありながらエイジングケアや、ホワイトニングケアにもアプローチする製品を展開している。2022年10月には、エイジングケアの「アヤナスシリーズ」を「DECENCIAシリーズ」へとリブランディングした。販路はECを主軸としつつ、伊勢丹新宿店にも実店舗を出店している。
敏感肌向け化粧品の市場に新規参入する企業が続々と増えるなかで、DECENCIAの売上高が数十億円規模にまで成長を続けてきた理由は、商品力と的確な訴求力が大きいと考えられる。
肌に悩みがあるとき、自分に合う化粧品を何とか探そうとネットで検索する人は多く、そのような悩みを持つユーザーに対して、求めている情報をユーザーの元へしっかりと届けられるようにECでの情報提供を常に心がけているという。
しかし、自社の力だけで情報発信するコンテンツを迅速に制作するには、ある程度の限界があると感じていた。さらに、肌の悩みを感じているユーザーがターゲットであるからこそ、サイトを訪れる人々は企業が発信する製品情報だけでなく、他のユーザーからのリアルな声、すなわちレビューや口コミでの評価が購入を検討する上で重要な要素になると考えていた。
このような背景から、DECENCIAは公式ECサイトにZETAが提供するレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入し、商品詳細ページなどでユーザーが提供するレビューを掲載するようにした。
「ZETA VOICE」は機能が随時アップデートされるほか、導入各社のさまざまな要望に合わせた拡張機能にも対応できるため、自社でレビュー機能を開発するよりも柔軟性や負担軽減の面でメリットが大きい。UGC(ユーザーが生成するコンテンツ)が他のユーザーの購買に多大な影響を与えるようになった今、商材や業態を問わず、幅広い業界で「ZETA VOICE」の導入が進んでいるようだ。
化粧品通販の場合、注意しなければならないのは薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や景品表示法に抵触しない表現に配慮することだ。しかしながら、ユーザーからは「肌荒れが治った」など、素直かつ企業にとってポジティブな感想が投稿されることも少なくない。
せっかく投稿してもらったレビューが、ユーザーの意図せぬ形で法律に触れてしまうことは防がなければならない。一方で、他のユーザーが参考になる情報の充実化と、商品の透明性を向上することを考えると、レビューを削除したり未掲載にしたりという判断も企業として避けたいところだ。
そのため、DECENCIAでは自社でレビューを編集できる機能を利用し、懸念される表現が含まれたレビューはユーザーの感想を忠実に捉えつつ、薬機法に触れない表現に編集している。
また、サイトの閲覧者にはDECENCIAの編集が加わったレビューだとわかる形式で掲載し、多くのユーザーの声を掲載できるよう工夫を凝らしている。蓄積されたユーザーの声を無駄にすることなく他のユーザーにしっかりと情報を届けていく上で、レビューを編集できる機能は有効に作用しているようだ。
法の順守は当然のことながら、顧客の肌に寄りそうブランドとして成長し続けるDECENCIAにとって、レビュー活用で実現したい世界観はますます広がるばかりだ。自社ECサイトのレビューがもたらす効果と、ブランド発展への貢献についてDECENCIAとZETAによるディスカッションを見てみよう。
DECENCIAが「ZETA VOICE」を選んだ理由とレビュー活用の将来性
自社ECサイトにレビュー機能を導入するにあたり、「ZETA VOICE」を選ぶ企業はどういった理由や期待を持っているのか。レビューを運用する上での課題を解決し、効果を最大化するために「ZETA VOICE」ができることとは何か。そこで、レビュー機能を提供するZETAとDECENCIAの両社によるディスカッションを実施。今後期待する機能、そしてレビュー活用の将来性などについて語ってもらった。
ディスカッションメンバー
DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏
DECENCIA ブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏
ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏
ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏
ZETA マーケティングG. マネージャー 村上あすか氏
購入前にネットで深く調査する傾向が強まり、レビューが重要な判断材料になった
ZETA 村上氏(以下、村上):一消費者の視点として、コロナ禍になった当初は、アイブロウやアイメイクなどを気にする人が多くいましたが、長引くマスク生活が肌の負担になっていることもあり、昨今はスキンケアに力を入れる傾向が強まっているように思います。そうした動きはDECENCIAさんでも感じるところはありますか?
DECENCIA加田氏(以下、加田):DECENCIAにもマスクによる肌悩みがきっかけで、商品を購入いただいたお客さまがたくさんいます。コロナ禍ではリップなどのメイクアップ商品は売り上げが厳しかったと聞きますが、DECENCIAはスキンケア商品が主軸なので、コロナの影響をほとんど受けず、むしろ需要が増加しネットで検索される機会が多くなったように思います。
ZETA 出張氏(以下、出張):ZETA製品の導入企業からは、コロナ禍前後でユーザーの行動が変化したとよく聞きます。実店舗でのお客さまの滞在時間が減少し、それに代わって事前にネットで深く調査する傾向が強まっているそうです。たとえばアパレルでは、「Instagramで⾒たこの服がこの店にあると思うのですが、試着できますか?」と商品を指定し、⽤事が終わればすぐ店を出るといった具合に、消費者は事前調査により時間をかけるようになっているようです。
店舗に行きづらい時期が1年以上も続いているうちに試着しないとサイズや質感など自分に合っているのか、詳細がわからなかった服をどうすれば試着せずに知れるかという考えからレビューの活用が活発化しています。化粧品も同じように、YouTuberやインフルエンサーの感想だけでなく、ECサイトのレビュー情報も積極的に活用して、購買の判断材料として使うようになったのだろうと思っています。
自社ECサイトだからこそ、信頼性のある質の高いレビューが収集できる
――DECENCIAの自社ECサイトにはどういった課題があり、「ZETA VOICE」の導入に至ったのでしょうか。
加田:DECENCIAは実店舗が少ないため、お客さまとコミュニケーションを取る場所がほぼECだけに限られてしまうことが1つの課題でした。ECでもより多くの情報を伝えていく上で、ほかのお客さまの声も伝えられれば、私たちが語る以上の情報が提供できるのではないかと考え、自社ECサイト内にレビュー機能を導入しました。
DECENCIA 星野氏(以下、星野):レビューはまさに、お客さまとのコミュニケーションとファン化促進のための施策です。ツールの選定では、導入のしやすさ、薬機法の改正など化粧品通販を取り巻く環境の変化に合わせて細かな対応をしていただけることを重視しました。その結果、「ZETA VOICE」の導入に至りました。
ZETA 市川氏(以下、市川):DECENCIAさんは導入前の打ち合わせで、「ファンは多いけど、見える化ができていない」とおっしゃっていました。そこで、 まずはお客さまにレビューを投稿してもらい、ブランドと同じ発信側になっていただくことで情報の発信サイクルを発⽣させることをめざしました。ゆくゆくはレビューをフォローするような機能やコロナ禍での非接触対策として実店舗でのレビュー活用が接客に寄与するような世界観を作りたいといった構想も膨らみ、そういった将来性も含めて共感いただいたので、「ZETA VOICE」を選んでいただけたと思っています。
化粧品では従来はポータルサイトのレビューを参考にする消費者が多かったようですが、そういったサイトは商品を複数回、使用していないユーザーのレビューも多いため、質があまり高いとは言えないようです。そのため、ブランド各社からはロイヤルカスタマーのレビューを自社でしっかり集めて情報発信したいという声がZETAにも多く寄せられています。モールやポータルサイトがあっても、自社でレビューを収集する価値はとても高いですよね。
出張:モールやポータルサイトだと他社商品の情報も目に入ってしまいますし、価格比較ができるサイトであれば安価な商品に流れてしまう可能性もあります。自社ECサイト内のレビューであれば、自社商品だけと向き合ってもらえますし、レビューやQ&Aが掲載されることで、ほかのお客さまの購買を後押しするようにもなっていきます。また、多くの導入企業からは「もっとこうしてほしい」など、商品の開発・改良につながる意見も寄せられるようになったと伺っています。
加田:確かに、DECENCIAもレビューを商品やサービスに生かすことはよくあります。改良点を気付かせてくださるお客さまの声は、とても貴重ですね。
村上:DECENCIAさんのECサイトを見ると、数百件のレビューが1つの商品に対して投稿されているものもあり、さらには購入履歴が複数回あるようなロイヤルカスタマーのレビューが多く投稿されているので、ファン化が進んでいる様子が目に見えます。
加田:売上高の多くを定期購入のお客さまが占めていて、DECENCIAはまさにロイヤルカスタマーの方々に支えられているブランドだと実感しています。やはり、スキンケアは「これが肌に合う」と一度決めたら、ほかの製品を冒険しにくいものです。一方でリブランディングによって商品もリニューアルしたので、新しいシリーズももっと知っていただいて、よりファンになっていただき新しいファンを獲得できるように努めていきたいです。
市川:DECENCIAさんは従来からキャンペーンなどでロイヤルカスタマーからのレビュー収集を積極的に行われていたと聞いていますが、その理由や効果があればお聞かせいただけますか?
加田:商品をよく知っているロイヤルカスタマーであれば、内容の信憑性など質の高いレビューを投稿していただけると考えたからです。また、レビューが1つも付いていない商品に対して、お客さまがレビューを書くことはハードルが高いと思うのでロイヤルカスタマーの皆さまから徐々にレビューが集まっていけば、多くのお客さまにとって投稿しやすい状況が醸成できるだろうと期待しました。リブランディングが完了したので、今後はまたレビュー収集に力を入れて、レビューを活用した面白い取り組みができればと考えています。
薬機法改正で全レビューを再度見直し。時代の変化に適応できる機能が求められた
――2021年施行の改正薬機法(改正薬機法は、医薬品や医薬部外品、化粧品の「虚偽・誇大広告」の抑止を図るため新たに課徴金制度を導入した)で、レビューにも何か影響があったでしょうか?
加田:商品詳細ページにレビューを掲載しているため、たとえお客さまが投稿したものだとしても表現に配慮しなければならず全てのレビューを見直す必要がありました。見直しが終わるまでは公開済みのレビューもクローズ状態にし、なかには少し手を入れたレビューもありました。
星野:規約には「一部修正することがある」と記載しており、それを了承いただいた上でレビューを投稿する仕組みにしています。しかし、せっかく投稿したお客さまの心情を察すると修正されるのは複雑な気持ちになるのではと思います。また投稿いただいたレビューは毎回チェックしてから公開しているので、時間を要してしまうのも、もどかしい気持ちになりました。社内でもレビューの中に法律への抵触が懸念される部分を判断できるAI(人工知能)があれば、と話していたほどです。
出張:公開までのタイムラグと作業負担削減のために、レビューの編集前後の差分を取り出してどう編集したかを「ZETA VOICE」が学習機能として備えていれば、レビューの原文で懸念される文言や修正案が提示できるようになるのではないかと考えています。今後追加していく機能にも、ぜひ期待してほしいと考えています。
加田:化粧品はどうしても薬機法の課題があるため、お客さまの声をそのまま紹介できない場合があります。悩ましくもありますが、それでもレビュー機能を導入したことでお客さまの安心感や信頼感、商品の透明性は向上しています。加えて、ツール側でも法改正など要望に合わせて細かく変化に対応していただけることは私たち事業者にとって非常にありがたいことです。
SEO対策や実店舗との連携など、レビュー活用が役立つシーンは広がる
――DECENCIAの今後の展望と、それに対する今後のZETAのサポートについてお聞かせください。
星野:リブランディング前に販売していたシリーズの「アヤナス」はすでに認知度が高かったため、今は「DECENCIAシリーズ」の知名度向上に力を入れていきたいと思っています。そのためには充実したコンテンツがお客さまにとって有効に働くと思うので、今まで以上にレビューの収集が重要になってくると考えています。
出張:ユーザーに知ってもらう1つの手段としてSEO対策があげられますが、実のところレビューはSEO対策にも役立つコンテンツとなります。Googleなどで検索するときは「肌荒れ 化粧品」のように、悩みを軸に単語で入力することが多いと思いますが、レビューを集めればそうしたワードが蓄積され、ユーザーと共に作り上げたコンテンツをサイト内で実現できると考えられます。「ZETA VOICE」ではレビューとSEOを掛け合わせた新たな施策も計画しているので、認知度を拡大させるためのUGC活用という観点でも、今後ますます貢献していきたいです。
加田:あとは、お客さまが自発的に投稿してくださる環境をいかに整えるかですね。定期購入されているお客さまは商品詳細ページまで辿り着かずに購入されることが多いので、レビューを書くきっかけに工夫が必要だと考えているところです。
出張:ロイヤルカスタマーの声を集める施策はもちろん、1人のお客さまの中でも使用回数を重ねるごとに感想が変化していくことは十分考えられます。「ZETA VOICE」でもその変化を他のユーザーにお伝えできるようにレビューを投稿した人がリピートしている商品など、特性に合わせたレビューの収集方法や表示方法をシステム上で実現できるよう、試行錯誤していきます。
村上:ECだけではなく実店舗でも、よりレビューを役立てていくことができたら良い効果が生まれると思います。DECENCIAさんの実店舗に足を運んだのですが、肌測定の「Potential Finder」を用いたカウンセリングへ多くの方が訪れている様子を目にしました。自分に合うスキンケアを知りたいと主体的に動くお客さまはたくさんいらっしゃると思うのでレビューから肌測定に誘導したり、製品を探したりできる施策にも取り組んでいきたいですね。
市川:そのほか、実店舗はお客さまの悩みがたくさん集まるという強みを持つ場所ですのでカウンセラーとお客さまのやり取りを資産化できるとより面白そうだとも考えています。ZETA製品を導入しているアパレル店舗ではスタッフレビューが多く活用されていて、たとえば「このワンピースをマタニティーのお客さまが購入されました」など、ほかのお客さまの参考になるような情報が投稿されています。このように、お客さまとDECENCIAさんの双⽅にとって有益なレビューの仕組みを今後も開発・提案していく予定です。
オリジナル記事はこちら:化粧品ECがユーザーのリアルな声を有効活用する方法とは? 薬機法の課題をクリアするレビュー活用と可能性をDECENCIAとZETAが語る(2023/01/17)
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