LINEが当たり前の新社会人。ビジネスの常識は時代によって書き換えられる
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の448
一番に気になるのは色
若者のパソコン離れ、「新たなデジタルデバイドに」橋元良明・東京大学大学院情報学環教授に聞く(日経新聞Web版2016年3月13日)
日経新聞Web版の記事が、2ちゃんねるで話題になっていました。若者のパソコン離れについて、橋元教授は「多くの若者にとってほとんどの用途はスマホだけで足りてしまうので、あえてパソコンを持つ必要がなくなっている
」と指摘します。同意する意見が多く、掲示板では次のようなエピソードが紹介されていました。
電気屋で「大学に受かった娘が使うPC買いにきた」って親子3人が15.6インチノート見てた。
店員 「学校で使用されるそうですが、どんなのがいいですか?」
娘 「白がいい」 ※一部編集
機能ではなく色を希望。事実かどうかはわかりませんが、若者の本質に触れたようで、なるほどと頷きます。そしてスマホ利用による変化は、Web担当者でも確認されます。
メーラーを使わない世代
「成果報酬型Webリニューアル(仮称)」をうたう某社の自称Web担当者は、各企業サイトにある「お問い合わせフォーム」を利用して営業をかけています。ツラツラと語るその内容は、具体性どころか論理性もなければ、改行もありません。
パソコンのメーラーを想定するなら、適時改行が求められます。ましてや営業メールです。目を通してもらうためには、読みやすさはなにより大切ですが、これを送った某社の社員にその常識はないようです。一方で、スマホの小さな画面では、パソコン向けに改行した文章が読みづらくなることがあります。
つまり、日常的にスマホを多用し、パソコンのメーラーを使っていない可能性が高いと見ることができます。すでにパソコンメールの常識を持たないのかもしれません。
「mailto:」は常識ではない
先日、ある企業の若手担当者がホームページの相談をしたいというので、名刺を渡し携帯電話の番号を伝えます。数日後、携帯電話にSMSで「メールが送れないんです。ドコモが不正な文字を使っているといってきます。どうしましょうか?」と焦る気持ちの滲み出たメッセージが届きます。出先なのでサーバーの稼働状況を確認することもできず、試しに自分宛てに名刺に記載しているアドレス宛てに送信すると受信できます。
しばらくすると続報が届きます。
mailto:info@example.comに送れません
うかつにも5分ほど考えてしまいました。名刺にあったメールアドレスを意図した「mailto:」まで含めて宛先にしていたのです。これについては、「メールアドレスの仕組みぐらいだれでも知っている」というおごりがあった自身が悪いと反省。早速、名刺を作り直しました。
LINEの活用は止まらない
続いてLINEです。すでに違和感がないのかもしれませんが、あるコンテンツの更新で、画像撮影を担当したWeb担当者が「LINEで入稿していいですか?」と確認してきます。スマホで撮影し、そのままLINEにアップロードするから、ダウンロードしてほしいというリクエストです。
Facebookで原稿のやり取りをしたことはありますが、LINEの申し出は初めて。若者にとってのLINEは、個人間のコミュニケーションツールではなく、情報インフラの1つなのでしょう。
たびたびネット世論を賑わせている「LINEで欠勤、遅刻の連絡の是非」に通じます。すでに2015年1月18日のYOMIURI ONLINEの投稿サイト「発言小町」で確認されており、その他の媒体でもたびたび議論の対象にされています。しかし、これは新しいツールが登場する度に繰り返される古典的なテーマです。
電話はビジネスマナーか
LINEを業務連絡に使うことを、「ビジネスマナー」から否定する主張は数多く、欠勤や遅刻の連絡は電話でするものだと主張します。しかし、ビジネスマナーは時代とともに変わるものです。なぜなら、電話がなかった時代にもビジネスは存在し、当時は「電話がない」ことを前提としたマナーがあったはずだからです。「はず」とするのは、さすがに当時を知らないから。
ですがメールのない時代なら知っています。当時の緊急時の連絡方法は電話だけで、ビジネスマナーが電話を前提としていたのは当然のことでしょう。しかし、FAXの普及によって、これを使った病欠の連絡がワイドショーで話題になったことを覚えています。声の調子がわからないFAXでは、本当に病気かどうかがわからないと批判していました。しかし、ハスキーボイスの私にとって、風邪をひいた感じの声を演ずるのは容易く、バカな指摘だと笑ったものです。
かわらない、いつまでも
メールの普及期に話題となったのは「メールで退職届」です。
当時は非常識と話題となりましたが、いまは話題にすらなりません。新たなツールが登場すれば、新たな使い方をするのが若者です。作法や手順よりも結論だけを求めるからで、柔軟な発想と称賛したいところですが、常識が身についていないことの裏返しでもあります。
そんな若者を叱るのは簡単なことですが、「常識」は時代によって書き換えられるということをベテラン世代は留意しなければなりません。すっかりビジネスツールとして認知され、「作法」まで存在するメールが雄弁に語ります。
業務におけるLINE使用の是非は、社内のルールで決めるべきです。そもそも、若者に指導すべきは、遅刻の連絡は就業開始前にし、欠勤の際は業務に支障がないように指示や伝達を過不足なく行い、しかるべきタイミングで非礼を詫びるということで、これこそが「ビジネスマナー」。ツールは手段であり目的ではありません。
20世紀の話です。20代前半女性の部下が「iMac」を買いました。iPhoneなど影も形もない時代、Windowsの天下を苦々しく思っていたApple信者の私とデザイナーは狂喜乱舞。うら若き乙女が、Mac OSの優位性を語るシーンを期待し、購入理由を尋ねます。答えは「オレンジが可愛かった」。カラーバリエーションから選ばれたiMacでした。いつの時代も「若者」は、それほど変わってはいません。
今回のポイント
ビジネスの常識はツールの普及で書き換えられる
若者の感性はいつの時代も変わらない
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