「売れている店舗はより“えこひいき”する」~ヤフーの「eコマース革命」、1年間の成果と今後
この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
ヤフーが2013年10月に発表した「eコマース革命」から1年が経過した。革命前後でヤフーショッピングはどう変わったのか、1年が経過した現状は気になるところ。ヤフーショッピング幹部が上位店舗の優遇を鮮明にする方針を明らかにするなど、「eコマース革命」後の動向は目が離せなさそう。この1年間の成果と今後の対策などをまとめてみた。
流通総額の伸びは出店者の期待よりも低い?
「ヤフーショッピングはどう変わったのか? 大きく変わりました」。ヤフーが10月29日に開いた2014年4-9月期(中間期)の決算説明会。宮坂学社長は「eコマース革命」から1年が経過したその成果をこう力説した。
大きく変わったのがお店の数は10倍に増え、19万を超えるアカウント数になった。ヤフーショッピングは14年間事業をやってきたが、日本No.1になれるものがなかった。1年間で少なくとも、売り主としてはNO.1となった。
販売店の増加で商品数も増加。1年間で5割以上増え商品点数は1.2億点を超えた。「来年にはおそらく日本で一番商品数が多い会社になれるのではないかなと思う」(宮坂社長)。
「注文数は増加し、取扱高(流通総額)も回復基調。消費増税の外部環境は抜きにして、(流通総額は)2ケタ成長を回復した」。宮坂社長がこう指摘するように、2013年の1-3月(第4四半期)、4-6月(第1四半期)、7-9月(第2四半期)と流通総額は3四半期連続で前年同期比割れが続いていた。
だが、「eコマース革命」後は一転して、ヤフーショッピングの流通総額の伸び率はV字回復を遂げる。「eコマース革命」を始めた2013年10-12月(第3四半期)から、流通総額は4四半期連続で前年同期の実績を上回っている。
ただ、出店者数の増加に対し、流通総額の伸び率が低いという意見もある。前年同期比では、約3%~約20%の伸び率で各四半期の流通総額は増加しているものの、「当初期待していた爆破的な大きな伸びは感じられない」と複数のEC事業者は指摘する。
ちなみに、出店料、ロイヤルティなどの無料化を受け、ショッピングなどの事業「コンシューマ事業」の売上高は4半期連続で前年同期比割れが続いている。
上位5~10%の出店者にはしっかりとしたサポート体制をつける
こうした状況を踏まえ、執行役員ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏は出店者の満足度について、「出店者は多数いて、モールという構造上、スーパーロングテールになる。売れない商品を販売している人を含めて、全店舗が売れるようになることはない」と言及。ヤフーショッピングを成長させるために必要なこととして、「上位5~10%の出店者にはしっかりとしたサポート体制をつけて、前年度よりも売上高を伸ばすためのサポートをしていく」と説明した。
店舗数が急増したため、この1年間で1店舗あたりの流通総額は減少している。全店舗のなかで売れているショップはごく僅か。その上位5~10%の企業がヤフーショッピングを退店せずに、売り上げを伸ばすためのサポートを充実していく考えを小澤氏は断言した。
ヤフーは「売り主、商品数の数で圧倒的NO.1になって流通総額を伸ばし、それから広告売上高を伸ばしていく」(宮坂社長)というビジネスモデルの構築を目指している。上位企業を手厚くサポートし、より売れるための施策として広告露出などを提案していくとみられる。
売れている店舗を優遇しているたとえとして挙げられるのが、2013年に従来の「おすすめ」から「売れている順」へ変更した、ヤフーショッピングの検索結果表示だろう。
ECコンサルタントなどによると、「売れている順」で上位表示するための条件として、「在庫の有無」「販売個数」「アクセス数」が重要視されている。ショッピングの検索結果に表示される検索連動型広告「ストアマッチ広告」などで集客し、一気に“売れる商品”を作って上位表示するという施策を実施する店舗も少なくないという。
つまり、広告などで大きなアクセスと購入者数を生み出せば検索結果の上位に表示される確率が高くなるということ。売れている店舗を優遇することは、広告収入も自然と増えていくという算段もあるのかもしれない。小澤氏はこうはっきりと宣言した。
露出の部分で優遇していくなど、売れているところにはより“えこひいき”をしていく。
ヤフーショッピングが目指すのは「何でもあって安い商品売り場」
「(これまで)ヤフーショッピングのブランドは地に落ちていた。」。小澤氏の目にこのように映っていたヤフーショッピングは「eコマース革命」を経て、大きく変わってきた。「課題だらけだが、無料化というのは一番正しい戦略」と小澤氏は手応えを感じ説明しながら、2つの戦略を披露した。
1つは「多くの出店者がいて、なんでもある」というショッピングモールの創造。楽天市場やアマゾンにはないが、ヤフーショッピングにはある……店舗数と商品数が急増していることを踏まえ、こんなショッピングモールを最速で作っていくという。
ただ、品ぞろえが充実しているだけではなく、数千点のコモディティ商品については、「一番安い」(小澤氏)を目指す。目指すのは「何でもそろっていて安い」(同)。手数料などの無料化に踏み切ったのはこうした方針があるためで、出店店舗にはこの方針を伝えているという。安いコモディティ商材がそろったとき、それが「お客さまに対しての明確なポイントになる」(同)
もう1つはヤフーの検索の利用者に対する、広告を使った導線作り。小澤氏は「ヤフーの検索はニーズの塊」と説明し、検索からの広告収入を将来的に増やしていきたい意向を表明。ただ、「検索の売り上げの落ち込みに対し、全部ヤフーショッピングの広告にしてほしいというオーダーはできない」と、ジレンマを抱えている現状を吐露した。
小澤氏は2014年、都内で開いた「ストアカンファレンス」で「集客はまだまだ頑張るところがあるのかなというのが1年の振り返り」と述べている。「(ヤフーショッピングの流通総額などを)30%上げたいと思ったらやり方はある。これは経営側との相談になる」として、ショッピングに関する広告商品の拡充を臭わせた。
「集客」は多くの出店者が気にする点だ。小澤氏は「ヤフーでモノを欲しがっている方をヤフーショッピングにしっかりと誘導するということをやる。ヤフーショッピングで売れさえすればヤフーの検索の上位に出てくる。単純にこう思っていただければ結構」とも説明している。
ちなみにヤフーではショッピングに関し、検索結果対策のほか、買い物に特化した「NAVERまとめ」のようなキュレーションサービスのリリースなども予定しているという。
オリジナル記事はこちら:「売れている店舗はより“えこひいき”する」~ヤフーの「eコマース革命」、1年間の成果と今後(2014/11/10)
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