企業ホームページ運営の心得

スマホなんていらない。というための理論武装序説

ガラケーで十分だ、とWeb担当者が口にしづらい「スマホなんかいらない……」という言い訳を用意しました
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百参十弐

ガラケーへの退化

満を持してスマホに機種変更したのが今年の6月下旬。かつてのTU-KAユーザーは、強制的にauに組み込まれ、20年来のアップルファンとしては「iPhone」への憧れは強く、MNPによるソフトバンクモバイルへの回線会社の引越しも考えました。しかし、au+KDDIという囲い込みから逃れられません。

いまから7~8年前、居住地でもっとも早く利用できた光回線は「TEPCOひかり」で、東電の通信事業撤退にともないKDDIに事業譲渡され、au+KDDIという囲い込み割引の対象となり、KDDIの「思うつぼ」にはまっています。私も経営者の端くれ、固定経費の圧縮は至上命題。そしてAndroid OS搭載の国内メーカーの端末を購入しました。

こぞって「スマホ」を煽る風潮があるなか、いちユーザーとしてあえて断言します。スマホは不便です。スマホをゲットしてから10日後、アマゾンドットコムで白ロムのガラケーを注文しました。だいたい「スマホ定額」とさりげなく基本料金を嵩上げしておきながら、ヘビーユーザーが現れ、回線容量がひっ迫すると、規制を始める回線会社の姿勢が気に入りません。

今回はWeb担当者が口にしづらい「スマホなんかいらない……」という言い訳を用意しました。ただし、あくまでも端末利用者の視点であることにご注意ください。Webのスマートフォン対応となると、話は別です。

エキスパートには不用

不便さの筆頭は「タッチパネル」。スマホ信者は「慣れ」と片付けるでしょうが、テキスト入力時、ブラインドタッチとの差は歴然で、「web担当者forum」と入力するのに、スマホの予測変換機能を併用しても25秒、キーボードならフル入力で6秒です(緊張してミスタッチが多かったと言い訳しておきます)。最近の記者会見では、ノートパソコンを拡げて「速記」をしている記者は珍しくありませんが、ここでスマホやタブレット端末を見ないことからも速度の違いは明らかです。

Windows以前から仕事でコンピュータを操作しているものにとっては、ブラインドタッチは「たしなみ」で、考えるのと同じくらいのスピードでキーボードを叩けます。そこで「スマホに退化することはできない」といってやりましょう。

多汗症で不感症

そもそもタッチパネルの「慣れろ論」はおかしな話です。「フリック入力」にしても便利さを追究しての機能ですし、ユーザーの感想を汲み上げ、評論家はメーカーに苦言を呈すべきなのですが、IT業界では往々にして「慣れ」ですべてを解決しようとします。それはまるで、支給した靴のサイズが合わないと不平を漏らした新兵に、「靴に足のサイズを合わせろ」と命令していた軍隊と同じです。

室内や、建物のなかでの操作はまだマシです。私が難儀したのは「モバイル環境」。朝夕の愛犬の散歩時、スマホを親指で操作すると「誤タッチ」が増え、駆け出す愛犬にふるえる指先ではまともに操作などできません。加えて多汗症の私の指先は、静電容量式のタッチパネルとの相性は最悪で、勝手にストライキをはじめます。また、散歩中はワンセグでニュース番組をチェックしているのですが、ポケットに入れたタッチパネルは勝手気ままにチャンネルを替えてしまい、肝心な箇所を見逃すことも多く、はっきりいって役立たずです。

アクティブなおいらにはフワフワとしたタッチパネルは性に合わない。ガチッとボタンを押せるガラケーがお似合いなのさ

と、夕日に眼を細めながら言い訳をすれば、言葉に深みが増すかもしれません。

懐かしい「MacOS」の世界

決定的に、私がスマホを見限ったのは「フリーズ」です。動作が重くなり、動かなくなります。画面をタッチしても動かず、機械的な操作ボタンすら受け付けなくなることもあります。ひたすらに待てば動き出すこともありますが、携帯端末はしつけのできていないペットではなく、機嫌しだいで動かなくなる機械など論外です。

これはiPhoneでも確認されており、インストールした「アプリ」の相性により起こるといいます。とても懐かしいMac OS(漢字トークからMaxOS Xまでの間にリリースされたOS)時代の「コンフリクト」です。

ケータイに手間暇かける

コンフリクトとは衝突、対立を意味し、別のソフトがメモリの同じ場所を参照したりすることでおこり、Mac OS時代には日常茶飯事でした。OS Xが登場して10年以上が経ち、ほぼ解消されているコンフリクトの心配を、スマホでしなければならないのはイヤ。そこでこういいます。

過去に戻りたくない

インストールしたソフトやドライバを1つひとつ外していき、それでも解決しない時はOSの再インストールしなければならなかった記憶が、スマホで蘇っていると耳にしたのも、ガラケーを再購入した理由です。

スマホを持つと月々の代金が高くります。出先でメールを確認するぐらいしか使わなくても、スマホ用の定額プランに加入しなければならず、毎月3~5千円程度の「値上げ」を覚悟しなければなりません。逆に定額プランに入らずスマホを利用すれば、目玉が飛び出るほどの請求書が届けられることでしょう。通信回線を遮断し、宅内の無線LANに接続していたのですが、たった3日間のわずかな接続時間で4万パケットを越えていたのには驚きました。

ガラケー化は歴史の必然

通信量が増大する理由は2つあります。ダウンロードした「アプリ」がそれぞれ勝手に通信していることと、通信速度の高速化により大容量のデータをやり取りしても「一瞬」で、気がつかないうちにパケット量がかさんでしまうことです。

不便なタッチパネルを強制され、コンフリクトの解消までさせられ、その上で高額の通信料(ケータイ代)を支払うことに私は我慢できませんでした。だいいち、ガラケーの方が便利です。ガラケーは日本人の要望を搭載する形で進化した「モバイル専用機」です。一方の、スマホは、拡張性において圧勝しますが、それはかつての

コンピュータ、ソフトなければただの箱

と呼ばれた時代と同じく、「カスタマイズ」という不便を利用者に押しつけているからです。だから、「アクオスフォン」のようにスマホのガラケー化が起こっているのは歴史の必然。スマホとガラケーの線引きがなくなるまで待っている……というのが最後の言い訳です。

今回のポイント

スマホに不満を抱えている人は少なくない

ちまたでは(専門家として)スマホの悪口を言うと意外と……ウケる

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