検索マーケティングの権威ハムレット・バティスタ氏とのインタビュー(前半)
私が活気溢れるドミニカ共和国の首都サントドミンゴに到着したのは、気温30度のさわやかな金曜日、午後遅くのことだった。ドミニカ共和国の人口はおよそ1000万人で、世界193か国中の第82位だ。
今回の旅の目的は、ハムレット・バティスタ氏にお会いしてインタビューすることだった。バティスタ氏は、検索マーケティング企業の創設者であると同時にブロガーでもあり、業界に関して明確なビジョンを示してくれる人物だ。同氏は、自身のブログだけでなくSEOmozなど業界のコミュニティサイトに、多くの記事や刺激的で示唆に富む解説を投稿して、技術に関する深い知識やすぐれた洞察力を示し、またたく間に検索業界の「アルファブロガー」としての地位を確立した。
SEOmozのコミュニティに記事やコメントを多く寄せている人物としてご存じの読者も多いだろうが、先ごろリリースされたSEO自動化ソフトウェア「RankSense(ランクセンス)」の開発元NEMediaの社長兼CEOであることはあまり知られていない。
元々、SEO自動化の現状と業界の方向性について意見を伺いたいということでインタビューをお願いしていたのだが、最終的には期待していた以上の収穫を得ることができた。バティスタ氏はインタビューに応じてくれただけでなく、サントドミンゴにあるNEMediaのオフィスを案内してくれたし、さらに週末には、カリブ海に面したリゾート地カサ・デ・カンポの広大なゴルフ場付き高級別荘地内にある別荘に、個人的な客として招いてくれた。
さまざまな話題に及んだインタビューの一部をお届けする。話し方は穏やかで謙虚だが、極めて集中力が高く、大きな成功を収めたハムレット・バティスタというビジネスマンについて、少しでも知ってもらえればと思う。
では、インタビューを楽しんでくれ!
●SEOmoz バティスタさん、まずはこの週末にお招きくださったこと、それに検索業界、特にSEO自動化の方向性についてどうお考えか、お話を聞かせていただけることにお礼を申し上げます。
●バティスタ いろいろとお忙しい中、このインタビューのためにわざわざおいでいただきありがとうございます、マグワイアさん。あなたをお招きできて大変嬉しく思っています。
●SEOmoz バティスタさん、あなたがドミニカ共和国を拠点にしていることは、最初にお話しを伺うまで知りませんでした。メジャーリーグのファンなら知ってのとおり、ドミニカ共和国は昔から一流のメジャーリーガーを輩出してきました。ほんの少し名前を挙げただけでも、ペドロ・マルティネス、ブラディミール・ゲレーロ、サミー・ソーサ、それに伝説のフアン・マリシャルらがいます。
しかし、検索マーケティング企業の経営者となるとどうでしょう? これには非常に驚きました。
●バティスタ そう。わが国にはメジャーリーガー以外にも人材がいることに驚く人がいますね。ドミニカの企業は、ちょうど電子商取引に手を広げ始めたところです。SEOやSEMに関して言うと、当社は地元市場の少なくとも数年先を進んでいます。当社のSEOソフトウェア事業を国内の銀行に説明しなければならないときは、特に愉快ですよ。
ですが、インターネットは国際的な市場ですし、私は起業家として、すばらしいソフトウェアを開発することをいつも夢見ていました。しかし間もなく、成功する製品を作るためには、技術的知識だけでは不十分だということに気が付きました。開発資金を調達しなければなりませんし、製品のマーケティングを学ぶことも必要でした。早い時期にアフィリエイトマーケティングに出会えたことは幸運でした。おかげでオンラインマーケティングについて多くのことを学べましたし、同時にソフトウェア会社を作る資金を貯めることもできました。ご存じのとおり、RankSenseは3年以上をかけて開発したものです。
アフィリエイトマーケティングを手掛けてみて、検索エンジンがトラフィックやコンバージョンを生み出す源泉として最適なのはすぐにわかりました。キーワード広告(PPC)を数か月行って利益を得た後、オーガニック検索とSEOを学んで試してみることにしました。すると、SEOとPPCでは見返りに格段の差があったのです。そこで、SEOとリンクビルディングにより多くの時間と労力を集中させなければならないと考えました。PPCにこだわっていたら、きっと今のような地位からは程遠いことになっていたでしょうね。
SEOをやりながら、自前のスクリプトを作成して、繰り返し作業の多くを自動化することも日常的にやっていました。もちろん、有能な人材も雇いましたよ。効率的なリンクビルディングのように、人的交流が必要な部分もあるからです。RankSenseに取り組む開発チームを立ち上げることができたのは大きな誇りでもあるし、とても幸運であったとも思います。
●SEOmoz では、私の理解が正しければ、初期の段階であなたが成功を収められた大きな要因は、アフィリエイトマーケターとして取り組んだキーワード広告(PPC)だったということになりますが、それでよろしいですか?
●バティスタ そのとおりです。アフィリエイトについて一から十まで教えてくれたケン・イーボイ氏には感謝しなければなりません。彼の著書の中には賛成できない部分もあります(たとえば、私がテストしてみたところ、2層目や3層目のティアでキーワード広告に取り組んでも、あまり有効なトラフィックを得られないことがわかりました)が、概して言えば彼の本を読んだおかげで正しい方向に進めました。
ビジネスでも人生でもそうですが、うまくいくかいかないか、たいていは自分で試してみなければ確かなことはわかりません。キーワード広告から教わることはたくさんありますから、SEOを手がける人は誰でも時間を取って学ぶべきです。キーワード広告をやって得られる最大の効用は、ウェブサイトにトラフィックを呼び込むだけでなく、そこから利益を上げることに力を注ぐということを教えてくれる点です。どのようなトラフィックや広告コピー、ランディング・ページが、無駄にアクセス数を増やすだけではなく、コンバージョンに結びつくのかがわかりますし、どういったキーワードが一番重要かも学べます。
私も最初のうちは、競争率の高いキーワードを狙っていました。バイアグラ(Viagra)、ペイデイ・ローン(payday loan、短期の小口ローンサービス)、不動産(mortgage)、生命保険(life insurance)、アフィリエイトプログラム(affiliate programs)といったキーワードでは、自分のサイトをいくつか、なんとか検索結果の上位に表示させられました。残念ながら、そういうキーワードの単価は5ドルから15ドル、あるいはそれ以上しましたから、そのサービスや商品を自社で扱っているいるところでなければ儲かりませんでした。アフィリエイトではだめでした。自前のネットワーク構築とアフィリエイトの募集へとビジネスを広げたのは、そういう理由もあったのです。
もう1つ、こういう競合が激しくて多くのトラフィックを呼び込めるキーワードで勝ち抜こうとしているときにわかったのは、規模を拡大して成功を手にするには自動化が鍵になるということです。競合相手は、何から何まで自分が手作業でやるか、あるいは多くのスタッフを雇って作業させていましたが、私はプロセスの自動化と改善に時間を費やしていました。私がソフトウェアを開発しようという最初の目標を立てたのは、こういうことがあったからなんです。もっと有効で使いやすいSEOプログラムを書くのは、私の中ではまったく理に適ったことでした。
前編はここまでだ。今回は、アフィリエイトマーケティングにおけるハムレット氏の経験や、ソフトウェアの開発を思い立ったきっかけなどについてお伝えした。後半では、いよいよSEOの自動化と、NEMediaのSEO自動化プログラムRankSenseが話題となる。→「「使える」SEO自動化ツール登場か?――バティスタ氏インタビュー(後半)」を読む
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