母親へのカスタマージャーニーを考える

テクノロジーはどこまで非デジタルネイティブ世代を取り込めるのか?
※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿です:
  • 編集部の見解や意向と異なる内容の場合があります
  • 編集部は内容について正確性を保証できません
  • 画像が表示されない場合、編集部では対応できません
  • 内容の追加・修正も編集部では対応できません

「note」でも執筆中!

進化する購入体験

顧客がどのチャネルでブランドを認知し、商品に興味をもち、最終的に購買に至るのか。はたまた、一度購買した顧客を、いかにしてロイヤルカスタマーへ成長させるのか。そのプロセスを旅に例えて、業界では「カスタマージャーニー」という。

テクノロジーが進化し、スマートフォンが当たり前となった時代、消費者のライフスタイルや購買スタイルは確実に変わった。いつでもどこでも、24時間、好きな商品をインターネット上で買えるのだから。

確かに、僕自身の購買スタイルは昔と比べ全然違う。今では当たり前だけど、洋服を買うのは以前はショップに行くしかなかったが、いまではオンラインで自宅や移動中に購入できる。しかも翌日に商品が届くケースも多く、流通もかなり発達していて不便はない。

誰のためのカスタマージャーニー?

じゃあ、ちょっと異なる視点で考えて、「僕の母親」はどうだろうか?

当然スマートフォンは持っていない。
いまだに旧式のガラケーだ。
ネットはもちろん触ったことがない。
天気を調べるツールは、テレビのDボタンだ。

それも、「ディー」ではなく「デー」と発音する。

どうしてもなにかインターネットで検索・購入したい時は、
息子(僕)に電話で「ねえいまからこれを調べてくれない?」と言うか、
インターネットができる友人に調べてもらうか、どちらかだ。

極め付けには、僕が直接調べるときは、「検索したよ、これこれこういうもので、料金はいくらだよ」っていうと、おもむろに老眼鏡をカバンから出して、「どれどれ」とブルーライトを覗き込む。

そんな母親に対するカスタマージャーニーとはいかなるものなのだろうか。
正直、その言葉自体、僕の母親のことはターゲットになってないと感じる。

カスタマージャーニーという言葉、特にデジタルを活用した場合は、あくまでスマートフォンを使いこなしているユーザー、ネットリテラシーが高いユーザーが対象となる。つまり、僕の母親の世代、60代以上の消費者は、そこまで意識されないのが通例なんだろう。

でも、本当の意味でカスタマージャーニー、言い換えれば、「購買という経験を通してその消費者が得られるワクワク感や高揚感」を企業が求めているのであれば、決してその世代(僕の母親は60代後半だ)を無視してはいけないんじゃないかと思う。

デジタル非ネイティブ世代を無視できない理由

先日こんなことがあった。
とある休日、僕の妻、娘たち(双子)、そして僕の母親と一緒に街でショッピングをしているとき、

「せっかく一緒に買い物しているから、⚪︎⚪︎ちゃんと⚪︎⚪︎ちゃんにコートでも買ってあげようかしら」
「ありがとう。じゃあどこで買おうかな」

僕はそこでネットを検索し、最寄りにあるブランドを検索。
思い当たったのは、「ベビザラス」と「next」と「H&M」。
H&Mが本当は一番良かったけれど、近くになかったので断念。

最終的に「next」にした。

僕たちはnextの店内でコートを物色し、結果、ピンクのダウンコートを購入。すると店員さんが、「いまLINEの友達登録すると、⚪︎%OFFでお得ですよ」と妻にお勧めする。

妻はLINEで友達登録。少し安く手に入る。娘たちもかわいいコートにご満悦。家に帰ると、早速試着して写真撮影会が始まる。家に帰ると、早速試着して写真撮影会が始まる。おそらく600万画素程度の旧式のデジカメで、一生懸命、孫のコート姿を撮影する母親。

そして優しい顔を孫に向けながら一言。
「帰ったら現像してラミネートして飾ろうかしら」

おそらく、残った顧客データには、こうした家族のストーリーは描かれていないはずだ。

単に、next⚪︎⚪︎ 店で女性客がコートを2点購入し、LINE友達登録を行った
。ということしか残っていない。
しかもその登録ユーザーは母親ではない。うちの妻だ。

これからどのようなカスタマージャーニーが僕たちに待っているのだろうか。当然ながら、僕の母親にメッセージが届くことはない。僕の妻にクーポンやキャンペーンのお知らせが来て、そのストーリーから母親が抜けることになる。本当にそのコートを買いたかった消費者には、直接企業からのメッセージは伝わらない。

つまり、マーケティングが、カスタマージャーニーのアプローチが、そしてブランド自身が、接点をもつ消費者全員とアタッチすることはできない。

大切なのは、消費者(ここでいう僕や妻)自身が「チャネル」になりたいと思ってくれるようなブランドでいることだと思う。

そのためには、消費者ひとりひとりの購入体験をブランド側が想像し、
コンテンツに落としていくことだろうと思う。

かくして、僕はnextのチャネルのひとつになった。

しかし、そのチャネルが生かされるのは、
あくまで、またそのショッピングの機会があって、
かつ洋服を買ってあげたいと母親が思って、発言し、
かつそのときにnextが近くになければ僕のチャネルは活用されず、
そのとき近くにnextがなければ、
違うブランドのチャネルとしてあっさりと僕はくらかえするだろう。

カスタマージャーニー。聞こえはかっこいいが、こうした消費者の購入体験をどこまでマーケティングは生かしてくれるのだろうか。

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

Discover
「Discover(ディスカバー)」とは、Chromeブラウザとスマートフォンの ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]