AI活用が進むほど「独自性」と「人材」が毀損される --先進企業ほど気づく“AI活用の罠”

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ローランド・ベルガー
日本の上場企業CxO・経営企画責任者向け第6回 意識調査結果を発表

ローランド・ベルガー(東京都港区、代表取締役:大橋 譲)は、日本の上場企業CxO・経営企画責任者200人を対象に、企業としてのAI導入・活用の進展度、AI導入を阻む要因、さらにAIの使い過ぎや依存による組織能力への影響について「第6回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」を実施いたしました。

なお、前回「第5回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査 <全4回>」については、下記をご覧ください。
(1)|経営課題の重心は「策定」から「実行」へ
(2)|戦略実行を止めるのは「決められない組織」
(3)|鍵は「アジャイル組織」への移行
(4)|外部協力会社を「加速装置」として使いこなす
調査結果の主なポイントは5点です。
1. AI導入は広く進展している一方で、AIを前提とした業務・組織への転換はなお途上にあり、7割弱が初期導入フェーズにとどまる。

2. AI導入のボトルネックは資金や技術ではなく、トレーニング体制やスキル不足といった「人」に起因している。

3. AI活用の進展に伴い、約43.5%の経営者が「使い過ぎや依存が生じている」と認識しており、特にアイデアや企画立案といった本来人が担うべき領域での依存が最も問題視されている。

4. AI依存による独自性低下のリスクは約半数の経営者が認識しており、特に好業績企業ほど、こうしたリスクを早期に捉えている。

5. AI依存は思考力・判断力の育成にも影響を及ぼす可能性があり、過半の経営者がリスクを認識している。特に好業績企業では、既に影響が顕在化しているとの認識が顕著である。

*本調査における好業績企業とは、本調査において、競合と比較した時の自社の売上成長率に対する認識を「競合より良い」と回答した企業、業績不振企業は「競合より悪い」と回答した企業を指します。

1. AI導入は広く進展している一方で、AIを前提とした業務・組織への転換はなお途上にあり、7割弱が初期導入フェーズにとどまる。



企業としてのAI導入・活用段階を見ると、最も多いのは「一部部署での初期導入」で43.3%、次いで「部門横断的な本格導入」が24%となっています。

PoCに近い初期導入フェーズにとどまる企業が多い一方で、AIをコア業務に統合し、AIによる業務の自律実行を前提に業務や組織を再設計する段階まで進んでいる企業は2割弱にとどまります。



企業間の差を見ると、好業績企業では約3割が、AIを前提に業務や組織を再設計する段階に踏み出しています。一方、業績不振企業では約3割弱が、依然としてAI導入に向けた情報収集段階にとどまっています。

これは、AI導入そのものは広がっている一方で、AIを前提に業務プロセスや組織構造を作り変える段階では、企業間で明確な差が生まれ始めていることを示しています。

AI活用は、既存業務へのツール導入だけでは十分ではありません。AIを使って既存業務を効率化する段階にとどまるのか、それともAIを前提に業務そのものを再設計する段階へ進めるのかが、今後の企業間競争力を分ける要因になると考えられます。
2. AI導入のボトルネックは資金や技術ではなく、トレーニング体制やスキル不足といった「人」に起因している。



AI導入・活用の妨げとなる要因を見ると、トレーニング・教育体制やスキル・ケイパビリティの不足は、投資予算・資金不足の約1.3倍に上っています。これは、AI導入のボトルネックが必ずしも「予算」や「セキュリティ」ではないことを示しています。

むしろ、AIを使いこなす人材や、組織として学習・定着させる教育体制の不足といった「人」に起因する課題が、AI活用の本格化を妨げています。AI導入はシステムの問題であると同時に、組織能力の問題でもあります。

ツールを導入するだけでは成果にはつながらず、AIを業務や意思決定にどう組み込むかの設計が不可欠です。そのためには、どの業務でAIを活用し、どの判断を人が担うのかを明確にし、現場の業務プロセスに組み込むことが求められます。
3. AI活用の進展に伴い、約43.5%の経営者が「使い過ぎや依存が生じている」と認識しており、特にアイデアや企画立案といった本来人が担うべき領域での依存が最も問題視されている。



AI活用の進展に伴い、約43.5%の経営者が「使い過ぎや依存が生じている」と認識しています。



特に、アイデア・企画立案といった本来人が担うべき領域での依存が顕著であり、同領域での依存を問題視する声は44.6%と最も多くなっています。

AIは情報収集や初期ドラフト作成において有効な支援ツールですが、その出力を前提に思考や判断を委ねる状態が続くと、企業固有の文脈や価値判断に基づく思考が弱まる可能性があります。問題はAIの活用そのものではなく、「AIに任せる領域」と「人が担うべき思考」の線引きが曖昧なまま進んでいる点にあります。
4. AI依存による独自性低下のリスクは約半数の経営者が認識しており、特に好業績企業ほど、こうしたリスクを早期に捉えている。



AI依存による独自性低下については、約半数の経営者がリスクを認識しており、すでに低下を実感しているとの回答も一定数存在します。



特に好業績企業では18%が「すでに独自性が低下している」と回答している一方、業績不振企業では同回答が0%と、リスク認識に大きな差が見られます。

AIは短時間で一定品質のアウトプットを生み出す一方、同一のツールと問いを用いるほど、アウトプットは標準解に収束しやすくなります。その結果、企業固有の経験や顧客理解に基づく独自性が薄れるリスクが高まります。重要なのは、AIの提示する標準解をそのまま受け入れるのではなく、自社の文脈でどう編集し、超えていくかにあります。
5. AI活用の成否は、AIと人の役割を再設計し、それを組織能力として定着させられるかによって決まる。



AI依存による思考力・判断力への影響については、すでに影響が出ているとの認識が11%、今後のリスクを含めると過半の経営者が懸念を抱いています。

特に、人材育成への影響は独自性低下以上に深刻なリスクとして認識されています。AIがアウトプットを担い、人が確認にとどまる状態が続くと、試行錯誤を通じて思考力を磨く機会そのものが失われます。

これは単なる個人のスキルの問題ではなく、将来の事業や組織を担う人材が育たなくなるという「組織の空洞化」につながるリスクです。短期的な生産性向上と中長期的な人材競争力はトレードオフとなり得る点に、経営として向き合う必要があります。


これまでの分析を総合すると、本調査からは3つの構造的特徴が浮かび上がります。第一に、各社で個別の取り組みは進展しているものの、それらは全体最適として結びついていません。すなわち、「部分的な前進」と「全体としての停滞」が同時に生じています。第二に、その結果、方針と実行、設計と運用の間に明確なギャップが生じています。この乖離は単なる進捗差ではなく、組織の実行構造に起因しており、個別施策の改善では解消できません。第三に、その背景には、変革を横断的に推進する主体の不在と、意思決定および実行責任の曖昧さという構造的制約があります。問題は個別企業の取り組みの優劣ではなく、変革を前進させる共通のボトルネックにあります。

以上から明らかなのは、変革が前進しない要因は施策ではなく、構造にあるという点です。本調査は、その所在を特定しています。


本調査の結果を受け、ローランド・ベルガーの企業変革支援チームの責任者でシニアパートナーの田村誠一は、次のように述べています。

「AI活用の本質的なリスクは、AIに仕事を奪われることではありません。問いの設定や価値判断、責任を伴う意思決定といった人間が担うべき領域まで、設計されないままAIに委ねてしまうことにあります。経営に求められるのは、AIをどれだけ導入するかではなく、AIと人の役割を再定義し、組織能力として設計し直すことです。AI活用は、ツール導入ではなく、業務・人材・組織の再設計そのものです。」

ローランド・ベルガーの企業変革支援チームでプリンシパルの神谷洋次郎は、次のように述べています。

「AIは人材の成長を加速させる一方で、思考力や判断力を弱めるリスクも持っています。違いを生むのは、AIに思考を委ねるか、思考を拡張するかです。そのためには、例えば情報収集やドラフト作成はAIに任せつつ、論点設定や最終判断は人が担うといった形で、役割を明確にすることが重要です。AI活用能力を個人の工夫にとどめず、組織として共有・定着させられるかが、企業全体の競争力を左右します。」

調査概要

- 調査時期:2026年5月
- 調査機関:ローランド・ベルガー
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:全国、男女、20~70代、上場企業に属するCxO・経営企画責任者(CEO等の経営者/役員、または経営企画本部長/部長クラス)
- 有効回答数:200名

企業変革は、企業や組織が将来に対応できるよう導くことを目的とするものですが、変革を統括することに加え、組織、人材、およびステークホルダーとのコミュニケーションといった、企業変革に密接に関連する現場における豊富な専門性が求められます。ローランド・ベルガーは、引き続き、あらゆる経営手法を活用しながら、継続的な企業価値の向上に繋がるよう日本の企業を支援してまいります。

著者

田村 誠一(シニアパートナー)
- 変革参謀として、経営層と協働する企業変革支援に精通。
- 官民ファンドで投融資責任を負い、投融資先企業の再生と変革を主導。
- 経営実務を経験(元JVCケンウッド代表取締役副社長、元ニデック専務執行役員)。JVCケンウッドではCSO/CFOとして中長期戦略策定と実行、事業COOとして事業再構築と実行を主導。ニデックでは買収事業(欧米中)の成長を現地経営陣とともに主導。


兼子 佑樹(シニアプロジェクトマネージャー)
- 変革参謀として、経営層/現場メンバと協働する企業変革支援に精通
- 京都大学卒業後、日系シンクタンクを経て、ローランド・ベルガーに入社
- 通信/IT、電子電機、製造業等を中心に、新規事業開発、事業戦略立案・実行支援など多様な機能軸でのご支援経験を保有

コンサルティングに関するお問い合わせ

ローランド・ベルガーの企業変革支援チームは、事業構造や財務構造の再構築、抜本的な収益改善、企業再生・変革を手掛ける業界横断型専門チームとして、クライアント企業の変革に向けた各種支援を行っています。

弊社お問い合わせ、または、お電話(03-4564-6660)にてご連絡ください。

ポッドキャスト配信

■ローランド・ベルガーは、ポッドキャストの音声によるビジネス番組「変革参謀 -当事者が語るリアル-」の配信を2025年6月に開始いたしました。経営コンサルタントながらも変革をリードしてきた『当事者』としての視点を持つ田村、野本(非常勤)の2人が「企業変革とは何か」「企業変革のリアルとは」について語り合うトーク番組です。
■大企業からスタートアップまで、すべての企業経営者、ビジネスリーダーを支えビジネスの手助けとなる発見や示唆を提供することを目的としています。詳細はこちらからご確認ください。

配信予定
- 毎週木曜 7:00 AM
配信先
-
Spotify
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ローランド・ベルガーについて

ローランド・ベルガーは、世界有数の経営コンサルティングファームとして、幅広い業界と手法に対応するサービスを提供しています。本社をドイツのミュンヘンに置き、1967年の設立以来、あらゆる業界における、変革、イノベーション、そしてパフォーマンス向上における専門性と実行力に高い評価と信頼を得ています。すべてのクライアント支援でサステナビリティを両立させる理念を持ち、持続的な企業・経済の発展に向け取り組んでいます。
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"その決意、前へ" 
ローランド・ベルガー日本法人は、クライアントの現場と共に「変革参謀」となり、企業変革・PMI/バリュークリエーションが進んでいく状態を醸成し、日本企業の経営と変革の実現を支援しています。
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