海洋生物多様性マップの「成熟度」を新指標で数値化

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シンク・ネイチャー
- 3,500万件のビッグデータから、自然リスク評価の信頼性を可視化する新指標を開発 -

株式会社シンク・ネイチャー(本社:沖縄県浦添市、代表取締役CEO:久保田 康裕、取締役社長COO:舛田 陽介、以下「当社」)のサイエンスチームは、世界規模の海洋生物多様性に関する知見がどの程度「成熟」しているか(十分なデータに基づき安定しているか)を客観的に評価する新指標を開発しました。本研究は、ネイチャーポジティブやESG投資、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)など、確かなデータに基づく意思決定が求められる海洋ビジネスにおいて、利用する空間データの「確からしさ」を判断する科学的指針となります。



1. 生物多様性可視化における「情報の成熟度」という新たな尺度
現在、企業活動が自然に与える影響の評価や、持続可能なブルーエコノミー(海洋経済)の推進において、生物多様性マップの活用が不可欠となっています。しかし、従来のマップは「データの偏り(調査不足の海域や種)」という課題を抱えており、「そのマップをどの程度信じてよいか」を判断する基準がありませんでした。ビジネスの文脈では、不確実なデータに基づく意思決定は、環境リスクの見落としや、投資判断の誤りにつながる恐れがあります。生物多様性保全においては、保全上重要な地域の見過ごしにもつながります。

2. 分析の規模:3,500万件超のビッグデータと主要13分類群を網羅
本研究では、海洋生物多様性情報システム(OBIS)から取得した3,500万件以上の出現記録という、かつてない規模のビッグデータを整備(規格化・強化・浄化)し、マクロ生態学的な解析を実施しました。
- 対象分類群: 魚類(条鰭綱・軟骨魚綱)、サンゴ、海藻(褐藻、紅藻、緑藻)、甲殻類、軟体動物(二枚貝、腹足綱、掘足綱、多板綱)、海洋哺乳類、爬虫類の計13の主要な海洋分類群を網羅しています。
- 網羅性: 例えば、条鰭綱で約1.4万種、甲殻類で約1.8万種など、広範な種を対象にグローバルな多様性パターンの信頼性を検証しました。

3. 定量化の新規性:「情報収束(Information Convergence)」
本研究の最大の特筆点は、統計学習の原理に基づき、データの蓄積に伴って生物多様性パターンがどれだけ安定(収束)するかを評価する「情報収束」というフレームワークを導入した点にあります。




信頼性の可視化: データが増えても描き出される多様性のパターンが変化しなくなった状態を「収束」と定義し、その度合いを0から1の数値で定量化しました。これにより、どの知見がビジネスや政策に即座に利用できるほど成熟しているかを科学的に判別できます。




4. 主な研究成果と意思決定への示唆
解析の結果、指標の種類によって知見の成熟度に大きな差があることが判明しました。
- 広域的な分布パターンの高い信頼性: 経済的・生態的関心の高い魚類や造礁サンゴ、海藻類などは、種豊富度のパターンが高い収束(収束度 ≈ 0.74-0.90)を示しました。これらは広域的な環境評価の土台として、現在のデータでも十分に高い信頼性を持つことを意味します。
- 希少種指標に潜むリスク: 一方で、保全上の意思決定にも用いられる「分布域の希少性を加味した種数(RWSR)」は、全分類群において極めて不安定(収束度 = 0.31)であることが明らかになりました。
- 保全指標(STAR等)への影響: このRWSRに基づく生物多様性リスクの評価は、国際的な自然関連情報開示で注目されるSTAR指標(Species Threat Abatement and Restoration Metric : https://www.iucnredlist.org/assessment/star)として広く利用されています。今回の結果は、現在の知見では希少種のホットスポットを正確に特定することが難しく、これらの指標のみを特定の事業サイトの評価に用いることには、依然としてリスクが伴うことを示唆しています。



5. 今後の展望:科学的根拠に基づくデータ投資とビジネス応用
本研究が提示したフレームワークは、次にどの海域や分類群を優先して調査すべきか、という海洋生物多様性の基礎研究にとって重要な指針を与えます。

ビジネスの文脈においては、企業は事業と海洋生物多様性との接点の評価において参照するデータの品質を客観的に裏付けることが可能になり、透明性の高いリスク管理と、効率的な自然への投資につながります。


【論文情報】
タイトル: The maturity of marine biodiversity maps: insights from the convergence of global patterns
著者: Shogo Ikari, Takayuki Shiono, Yasuhiro Kubota
雑誌: Frontiers of Biogeography 19, 2026, e178549
DOI: https://doi.org/10.21425/fob.19.178549
URL: https://biogeography.pensoft.net/article/178549/

【会社概要】
当社はマクロ生態学、生物多様性保全科学において卓越した研究実績を有する国内・海外の研究者を有するグローバル企業です(https://think-nature.jp)。世界の陸・海を網羅した自然史の研究論文や標本情報、リモートセンシング(人工衛星・ドローンによる観測)、環境DNA調査、野生生物のバイオロギング、市民科学などで収集された生物関連データ(地理分布、遺伝子、機能特性、生態特性など)をデータ統合し、AI等の最先端技術を用いたネイチャーの可視化や予測や、シナリオ分析技術を有しています (J-BMP*1)。TNFDのデータカタリストイニシアティブに参画し、自然資本ビッグデータを活用した自然の持続的利用に関する分析、評価、ソリューション(TN LEAD*2)で、金融機関・機関投資家・企業の生物多様性対応を支援しています。さらに、「生物多様性ネットゲイン」を可視化し、ネイチャーポジティブ事業を推進するためのサービス(TN GAIN*3)を提供しています。また、生物多様性の記載に尽力している研究者を表彰する「日本生態学会自然史研究振興賞(*4)」および「NPJアワード(*5)」を提唱し、賞金を提供して基礎科学の裾野を支える活動を行い、さらには一般向けに、生き物の豊かさを、地図で見える化したスマートフォンアプリ「ジュゴンズアイβ版(*6)」(無料)をリリースし、生物多様性の主流化(教育普及)を推進しています。また、生物多様性に関する最新の動向やアカデミアの知見を社会に繋ぐメディア「ネイチャーポジティブジャーナルNPJ(*7)」を運営しています。

*1 J-BMP: 日本の生物多様性地図化プロジェクト
https://biodiversity-map.thinknature-japan.com/

*2 TN LEAD:全産業セクター&グローバルな事業拠点に対応した TNFD対応支援サービス
https://think-nature.jp/service/

*3 TN GAIN:住宅の庭づくり、都市再開発における不動産物件の緑化計画 、企業緑地や社有林の森づくり、ビオトープの計画など、ネイチャーポジティブ関連事業の効果量をビフォー・アフターの比較を基に算定し、生物多様性ネットゲインを可視化するサービス 
https://services.think-nature.jp/gain/

*4 日本生態学会自然史研究振興賞:日本生態学会の新賞、生物多様性に関する記載研究を推進している会員を表彰する新たな賞 
https://note.com/thinknature/n/n885ba7f11009

*5 NPJアワード2026:ネイチャーポジティブにコミットする基礎研究を顕彰する賞
https://np-journal.jp/2026.npjaward/

*6 ジュゴンズアイ(DugongsAI)β版:生物種毎の生物の豊かさが地図上で可視化された個人向けスマホアプリ
https://services.think-nature.jp/dugongsai/

*7 ネイチャーポジティブジャーナル:地球の未来を一緒に考える
https://np-journal.jp/
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