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大企業がローカルSEOのために考慮すべきハイパーローカル市場対応(後編)

今回は、地域特有の「ハイパーローカル」なニーズに対して大企業がどのように対処すべきかを説明する

3回にわたって大企業のローカルSEOノウハウをお届けしてきたこの記事も、この後編が最終回だ。今回は、地域特有の「ハイパーローカル」なニーズに対して大企業がどのように対処すべきかを説明する(筆者の住むカリフォルニア州を例にする)。
まず前編を読んでおく
中編のチェックリストも確認しておく

地域に進出する大企業向けの無料アドバイス

1つ確実なことがある。次のことだ。

顧客は、企業が言ったことを忘れても、企業に対して持った感情は決して忘れない。

いかにもカリフォルニアの住人らしいと言われるかもしれないが、私は、巨大なトラックが美しい川を渡る自動車のCMを見るたびに呆れてしまう(州のあちこちが洪水に見舞われたというのに、川の貴重な生態系を破壊してくれてありがとう)。まだ荒らされていない北極圏の雪原をトラックが走るCMを目にしたときにもだ(このようなCMを見ると、すぐに気候変動のことを考えてしまう)。

一方、私の家族はテスラウォッチャーと化し、テスラの高級エコカーがそばを通るたびに、車体の後部に掲げられた「ゼロ・エミッション」というメッセージに目が引き寄せられている。

このように、私たちは自分が消費者としてどのような感情を抱くのかを知っている。

そして技術的な面や組織的な面を別にすれば、地域の人々が企業に対して抱く感情は、その地域の企業に最も大きなリスクをもたらしうると私は考えている。

最近の事例からわかるように、顧客のニーズを調べてそれに対応しようとせず、地域や地元の感情を無視していれば、大企業にとって驚くほど悪い事態をもたらすことになる。具体的には、たとえば、次のようなものだ。

消費者に好意的な「感情」を持ってもらえなかった企業は、ローカル検索マーケティングを再考するのではなく、自社の中心的なアイデンティティを再構築することが必要かもしれない。

こうした考え方がなじめないものや疑わしいものに思える人は、米国にとって重要な問題への立場を明らかにする動きがCEOの間で拡大していることを思い出してほしい。ここでも、問題になっているのは感情だ。消費者はCEOらのこのような動きを期待するようになっており、またこうした期待が地域レベルにまで見られるようになっている。

ハイパーローカルな市場調査

新しい州や都市に支店を開設することを検討している場合は、調査の一環として企業プロファイルを作成してみよう。そのために、

  • 地元の新聞を読む
  • 本格的な世論調査を行う

など、さまざまな取り組みを実行してほしい。

カリフォルニア州の筆者が住む地域を対象にする場合、筆者なら次のような点に焦点を当てる。

  • カリフォルニア州の状況

    私たちは干ばつと山火事の猛威にさらされてきた。2017年だけでも9133件の火事が発生している。

    良い話としては、最悪の環境問題(水不足、サケの絶滅危機、伝統的な林業の危機)を解決するために、先住民の知恵を再び活用する動きが一部の地域で出始めたことがある。

    企業として考えるべきこと

    あなたのブランドは、次のようなことができるだろうか。

    • 節水の支援
    • 家を失った数千の市民の住宅再建
    • 予算の削減に悩むメンタルヘルス事業への資金援助
    • 法律サービスの料金適正化
    • 将来の安全向上に役立つソリューションの提供

    環境保護のためにどのような取り組みを行っているだろうか。先住民地区、都市、州レベルで、生態系を回復するための取り組みを促進しているだろうか。

  • カリフォルニア州の状況

    ハイテク企業のせいで住宅価格が上昇したという不満の声が大きくなっている。

    ミシシッピ州に住んでいれば、この種の問題とは無縁だろう。ミシシッピ州では、住宅の平均価格が19万9028ドルだ。だが、カリフォルニア州の私が住んでいる地区は、平均価格が82万5000ドルにもなる。サンフランシスコでは、小さなワンルームマンションを買うにも120万ドルが必要だ(しかも、マンションが見つればの話だ)。

    この原因はさまざまだが、筆者が話を聞いた人は、たいていシリコンバレーを非難する。

    企業として考えるべきこと

    あなたのブランドは、この話題に触れることができるだろうか。できないのであれば、カリフォルニア州の消費者の思いに応えきれていないことになる。

    特に、あなたがテクノロジー系企業のマーケティングに取り組んでいるのなら、住宅問題を深刻に受け止め、解決策を提示してみよう。たとえそれが控えめな救済策であっても、良い印象を与え、報道価値の高い話題を提供するのは間違いないだろう。

  • カリフォルニア州の状況

    人びとがオンラインショッピングに目を向け始めた理由は、実にさまざまだ。たんにハイテク好きだからではない。

    たとえば大都市(サンフランシスコなど)では、商品が選びきれないほどたくさんあるという状況がある。

    その一方、小さな町(クローバーデールなど)では、商品の選択肢が少なすぎて、生活必需品を買うことも高級品を求めることも難しいという背景がある。

    企業として考えるべきこと

    あなたのブランドは、このギャップにうまく対処できるだろうか。

    大都市でビジネスをしているのなら、消費者がさまざまな選択肢から適切な商品を選べるように支援するサービスが必要になるかもしれない。

    小さな町の近くでビジネスをしているのなら、当日配送などのサービスを提供すれば、競争力を維持できる可能性がある。

  • カリフォルニア州の状況

    私たちは、ヒスパニック/ラテン系としてのアイデンティティを取り戻しつつある。カリフォルニア州の建物・街・通りの名前は、カリフォルニアがメイフラワー号よりメキシコとの関係が深いという事実を毎日のように思い出させてくれる。

    カリフォルニアが米国の一部になったのは1850年頃だ。だが、注目すべきは2014年だ。この年、ヒスパニック/ラテン系の人たちが州で最大の人種グループになった。これは、カリフォルニア州で最もワクワクする出来事の1つだ。

    その一方で、州政府が移民のためにサンクチュアリ(聖域)法を成立させたため、州は米司法省から提訴されている。

    企業として考えるべきこと

    あなたのブランドは、カリフォルニア州の多様性を支持できるだろうか。カリフォルニアでこれからビジネスをするなら、多言語に対応したマーケティング・スタッフ・店舗ディスプレイが必要だ。

    ピュー研究所は、ヒスパニック/ラテン系住民の人口動態に関するデータを定期的に公開している。ヒスパニック/ラテン系の顧客に心から満足してもらえるようにするために、あなたのブランドはどのような取り組みをしているだろうか。

  • カリフォルニア州の状況

    私たちは政治的に多様化している。カリフォルニア州はスウェーデンと同じくらいの面積を持ち、あらゆる政治思想の人を抱えている

    人工のダムを撤去しようとする市民を、「生態系の回復を目指す英雄」だと考える人もいれば、「商売を妨害する人たち」だとみなす人もいるのだ。ここでは、あらゆる立場の意見を耳にすることになる。

    企業として考えるべきこと

    あなたのブランドは、自社の基本的な価値観を率直に述べるリスクを引き受けられるだろうか。

    できるのであれば、あなたのブランドはカリフォルニア州の消費者の支持を確実に得るか、確実に失うかの、どちらかになる。したがって、調査を行い、自社の立場を明らかにする準備をしておこう。

    地域レベルでは、コミュニティごとに大きな違いがあることを知っておくべきだ。スパイクタイヤを履いたトラックが生態系の壊れやすい場所を走り回るCMは、一部の地域では受け入れられても、別の地域では大きな嫌悪感を持たれる可能性がある。

  • カリフォルニア州の状況

    お金は最も大切なことだ。

    カリフォルニア州では、住民の3分の1以上が貯金をしていない。また、半数以上が1000ドル未満の貯金しか持ち合わせていない。州が社会保障費として支払っている金額は、社会保障費が全米で2位と3位の州を合わせた額よりも多いのだ。

    さらに、億万長者が最も多い州であるにもかかわらず、これをはるかに上回る数の市民が、日々の生活に常に不安を抱えているという。何かを買うかどうかの決断は、決して簡単ではないのだ。

    企業として考えるべきこと

    あなたのブランドは、多くの地域住民を雇用し、生活していけるだけの給料を払えるだろうか。新しい地域の市場に参入し、その町を貧困から救ったり、町の財政を安定させたりできるだろうか。そうしたことができれば、報道価値の高い話題になるのは間違いない。

    商品の価格を下げるためのアイデアがあるなら、そのような取り組みも注目を集めることになる。

これらの例は、当然ながらごく大まかな話だ。企業がどこかの都市や州でビジネスを始めるかどうかを決めるにあたって、検討すべき重要な要素の一部を紹介したに過ぎない。

こうした検討はなぜ重要なのだろうか。地域に特化したマーケティングがますます盛んになるなか、コミュニティと関わりを持てるようにするには、まずそのコミュニティを理解する必要があるからだ。

地域の真のニーズを理解できなかったせいで閉鎖の憂き目に合った企業や店舗を毎月のように目にする。

その銀行は、新しい支店に適切な場所を選んだだろうか ―― イエス。その支店は、同じ町にある別の支店から遠く離れた場所にある。

新規開店したタコスのフランチャイズ店は、今も営業しているだろうか ―― ノー。同じ通り沿いにはすでに人気のタコス店があり、そちらは夜になってもお客の列が駐車場の外まで伸びるほどなのに。

まとめ

人々を助けてくれるものが、ビジネスを助ける

レオ・バーネット氏

この記事の中編で示したチェックリストは、大企業にとって適切な戦略を策定し、優れたローカル検索マーケティングを実行するのに役立つだろう。

SEOに関するあらゆるアドバイスに耳を傾け、自社のモデルに合っているのか評価してほしい。これらは、最低限行うべき取り組みなのだ。

だが、面白いのはその先だ。サービスを提供しようとしている地域に固有のニーズに対応できる、クリエイティブなソリューションを見つけ出せば、あなたのブランドは長期にわたって成功できるだろう。

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