失敗しないためのCMS導入事例

CMSではテンプレートを使わずDreamweaverで更新という選択/コニカミノルタ+TeamSite

[Sponsored]
失敗しないためのCMS導入事例

コニカミノルタホールディングス株式会社+TeamSite(インターウォーブン・ジャパン株式会社)

取材・文:加藤さこ

写真:編集部

CMS導入というとテンプレート作成が付きものだ。ページの種類ごとにテンプレートを作り、だれでも簡単なインターフェイスからコンテンツを更新できるようにする例が非常に多い。

しかし、そうではないCMS導入のスタイルもある。

今回は、コニカミノルタが2003年の旧コニカ・旧ミノルタ経営統合時に新しいサイトを作ったときのCMS導入事例から、組織のリソースとCMS機能のマッチングによる、「よくあるCMS導入とは少し違った」CMSの利用スタイルを見てみよう。

ウェブサイトの基本的な情報や利用CMSに関する情報はページの末尾に記載

CMS導入の目的

  • 2社の経営統合によるウェブサイトのリニューアルを短期間で行いたい
  • コスト削減とブランドの統一化を図りたい
  • コニカミノルタの世界各国のサイトをワールドワイドに統一したい

事業統合にともなう
大幅なリニューアル
CMS導入で短期実現

コニカミノルタホールディングス株式会社(以下コニカミノルタ)は、2003年の経営統合により、「新しい価値の創造」を理念とし、「The essentials of imaging」を企業メッセージに掲げて新しい企業としてスタートした。

コニカミノルタホールディングス株式会社
広報・ブランド推進部
ブランドマネジメントグループ課長代理
樋口 博一氏

大幅な構造改革が行われる中で、世界各国にあるウェブサイトをワールドワイドに統合してブランドの統一化を図り、グループ全体のサイト運営の効率化を実現させるという課題があった。事業統合までに確実にリニューアルを終えなければならない状況の中、ウェブサイトの制作現場は、どのような問題を抱え、どう解決していったのか。

広報・ブランド推進部の樋口博一氏は、旧サイトが抱えていた問題点を次のように語った。

「当時のサイトは、ワールドワイドでは各国でデザインの統一もされておらず、サイト運営に対してのルールもありませんでした。そのためにサーバーが乱立し、効率の悪い運用でコストもかさむようになっていました。日本サイトではリニューアルに向けて旧コニカ・旧ミノルタのウェブサイトを一本化するためには、合計数千ページに修正を加える必要がありました」(樋口氏)

統合が発表されたのは2003年1月。10月の事業統合までに旧2社のコンテンツを統合して新しいサイトを作るためには、数千という単位のページを問題なく運用できるCMSが不可欠だということで、新たなCMSを導入することが必須となった。

CMSは移行がしやすく
システムに組み込めるものを
制作ツールとして選定

大規模なサイトを短期間で統合し、その後も効率的にウェブサイトを運営していくためには、サイト運営のスタイルに適した機能を備えたCMSを選定していくことが必要だ。

塚田氏はCMS選定にあたり、必須となるポイントを定めていった。最大のポイントは既存データを移行しやすいこと。そして訪問者にとってストレスのないサイトとするために動的なコンテンツ生成ではなく静的HTMLファイルの出力ができることとした。

ソリューション本部コンテンツシステム部の塚田広造氏は、CMS導入について、ユーザーの声を身近で聞けたことも選定に役立ったという。

「旧コニカですでにいくつかのCMSの導入実績があったことも、CMSの選定をスムーズにしました。旧コニカで利用していた中の1つ、インターウォーブンのTeamSite(チームサイト)は、うまく導入できれば非常に使いやすいシステムだと評価されていました。また、高価な製品ではありますが、試算によってランニングコストを削減できることを考えれば3年で元がとれると判断し、TeamSiteと配信システムのOpenDeploy(オープンデプロイ)の導入を決定しました」(塚田氏)

リソースを複数サイト間で共有できる点もポイントだった。海外に事業展開しているコニカミノルタでは、新商品のコンテンツを日本で制作し、それをローカライズ用のマスターとして各国に配信できれば効率が良いからだ。

CMSの役割は
大量ファイルの
バージョン管理と配信

一般にCMS導入というとテンプレート作成が付きものだ。ページの種類ごとにテンプレートを作り、だれでも簡単なインターフェイスからコンテンツを更新できるようにする例が非常に多い。

ところが、コニカミノルタでは、ページの種類ごとにテンプレートを作ることはこの時点ではせず、あくまでもHTMLファイルのバージョン管理と配信のためのツールとしてTeamSiteを利用した。というのも、旧コニカでは1995年にサイトがスタートした時点からインハウスの制作チームのようなかたちでデザイナを抱えていて、CMSの導入時点ですでに10人強のデザイナがいたため、特殊なコンテンツ以外はその制作チームで作業が進むようになっていたからだ。制作チーム以外の現場のスタッフがページを作る必要がないのならば、工数のかかるテンプレート作成は必要ない。陸上競技部の大会関連のページのような、現場の人が更新している一部のコンテンツに関しては、テンプレート開発コストの安い別のCMSを併用したということだ。

TeamSiteは既存のコンテンツをフォルダごとドラッグ&ドロップすれば、即座に全体のバージョン管理を開始できる。ファイルをTeamSiteからチェックイン・チェックアウトできれば、あとはコンテンツの修正はデザイナが使い慣れたDreamweaverで行える。「とにかく大量のコンテンツ統合を時間に間に合わせるために」と塚田氏は笑うが、利用可能な社内リソースと製品の特徴のバランスからたどり着いた使い方だといえるだろう。

コニカミノルタ情報システム株式会社
ソリューション本部
コンテンツシステム部
制作・運営グループリーダー
塚田 広造氏

CMS製品の検討と選定に要した期間は約2か月。半年後には、旧コンテンツの統合を終えて新生コニカミノルタとしてのウェブサイトを完成させなければいけない。しかし、新しい企業としてのブランディングが固まるまではデザインは確定しない。そのため、先行してページのナビゲーション部分を取り除いてコンテンツ部分だけにする作業を進めた。

「ページからコンテンツ部分だけを切り出すプログラムを作っていたのですが、さまざまなHTMLに対応するために作っては全ファイルに実行してみるという試行錯誤が必要でした。その際に、全ファイルのスナップショットを即座に作れるTeamSiteの機能が便利でした。数千ファイルを毎回手でコピーしていては無駄に時間がかかってしまいますから」(塚田氏)

結果として全体の9割ほどは新規ページとして作ることになったのだが、こうして無事リニューアルは終了し、2003年10月には新会社の経営理念に準じた「進化するサイト」としてスタートを切った。

「実は、最初はTeamSiteの良さを理解できなかったんですよ。というのも、TeamSiteは他のデータベース志向のCMSとは違い、制作現場の人の運営に必要なリポジトリを用意している仕組みなんですね。最初は変な構造だなと思っていたのですが、使っていくうちに、これが大規模な制作現場の流れを反映できる仕組みになっていることがわかりました。たとえばデザイナが複数いた場合に必要なだけワークエリアを作って、それをまとめてステージングエリアに移して、必要に応じてバージョニングできてといった具合ですね」(塚田氏)

今は日本語化されているが、当時のTeamSiteはインターフェイスもマニュアルもサポート問い合わせも英語だけという難点はあったし、「最初は間に合わせるためのプラットフォームという意図だった」と笑う塚田氏だが、使うにつれてコニカミノルタのワークフローに合った製品だと感じるようになったという。

BtoCからBtoBへ
事業転換にともなう
2006年の再リニューアル

コニカミノルタへの統合時から、複合機やプリンタなどのオフィス向け製品や業務用印刷事業、医療・ヘルスケア事業などの事業を推し進めていたが、統合から3年後の2006年、創業事業だったカメラ事業の終了が決まった。デジカメの普及によるフィルム需要の急激な縮小、またデジカメ市場の競争激化による収益の悪化による判断だった。

これにより、ウェブサイトのコンセプトもコンシューマー向けから企業向けへと大きく変える必要が生じ、前回のリニューアルから3年が経過していたこともあり、改めてサイト全体をリニューアルすることになった。

「2003年に作ったサイトはコンシューマー向けという側面を強く意識したもので、たとえば異なる商品のジャンルを横断して商品情報を見られるようにしてシナジーが出るようになどの工夫をしていました。しかし、BtoBサイトとなれば、事業によって最適なものを選べるようにしなければなりません。複合機の情報を調べにきた人がついでに医療用機器を購入してくれるわけではないですから(笑)。

そのため、以前は『商品』『サポート』『会社情報』と分かれていた情報構造を、商品カテゴリを主階層とした形に設計しなおしました」(樋口氏)

情報構造の変更自体は、今まで「商品>複写機」だった分類を「複写機>商品」と変えるだけで済むようなものが中心なのだが、カテゴリの切り直しということはナビゲーションも変わる。そのため、改めてページからコンテンツ部分を切り出す作業が必要になった。しかし、2003年リニューアル以降は統一されたHTMLになっていたため、作業はスクリプトで自動化しやすく、今回は非常にスムーズにコンテンツを切り出せたという。

ナビゲーションの多様化に
対応するための
LiveSite導入

「メニューも大きく変えました。以前のメニューは横幅800ピクセルの画面向けに作っていましたが、主流である1024ピクセル幅向けのデザインにしました。

さらに、以前は2種類だけだったナビゲーションメニューを4種類に増やして、より探しているコンテンツにたどり着きやすく、かつ操作性を良くしました」

(樋口氏)

これを実現するためには、数千ページあるコンテンツのほぼすべてのページで異なる多様なナビゲーションメニューの内容を間違いなく確実に設定する必要がある。半数のページに関してコンテンツ部分を移行して、さらにデータベースと連携してナビゲーションを自動的に作るために、TeamSiteの機能拡張オプションであるLiveSite(ライブサイト)という製品を利用することにした。

すでにサイト全体の情報構造は新しいものに変え、コンテンツ部分は切り出してあったため、さらなる準備として、切り出したコンテンツをLiveSiteから利用できるXML形式に変換して保存しておき、情報構造の並びや各カテゴリの親子関係などのデータも別途データベースに保存しておいた。あとはLiveSiteを使って各コンテンツに対応するナビゲーションを生成し、コンテンツのデータとナビゲーションを組み合わせて全ページのHTMLを生成するところまで自動化して進められた。これにより、数千のコンテンツを新しい情報構造に変換する作業の95%ほどを自動化でき、かつ静的HTMLによるサイトのパフォーマンスも保つことができたのだ。

「膨大なデータを短期間で変更していくことが必要ですから、今回のリニューアルも前回と同じく、いかに作業を短縮化するかという点が重要でした。制作・運営チームは専門家集団ですから、ツールを見極めてどう使うかという応用技術には長けていましたね。ちょうどLiveSiteがリリースされたのも時期が良かったといえます」(塚田氏)

こうして、リニューアルが決まってから約3か月の作業期間で数千ページのコンテンツをリニューアルすることに成功した。

「LiveSiteはブラウザからページの見た目を確認しながらHTMLを修正したりドラッグ&ドロップでレイアウトを変更したりできるので、各コンテンツの最終調整もLiveSiteでやる予定だったんです。でも、デザイナがいちいちページを開くのも面倒だし、一括置換したいこともあるなどの理由で、ページの最終調整は結局Dreamweaverでやりました(笑)」(塚田氏)

さらに続くグローバルな
各国サイトのリニューアルと
マーケティングの体制作り

今回はリニューアルに併せて、サイト内検索やアクセス解析のシステムも変更していったという。これは、各事業会社がマーケティングしやすいプラットフォームを築くことが目的だ。

「この再リニューアルを行うことで、事業別に『進化するサイト』として将来的にも情報構造を変えたりマーケティングを進めたりしていけるような体制が整いました」(樋口氏)

日本のサイトは二度にわたるリニューアルを無事完了したが、これで終わりではない。

「次は世界各国のサイトも同様にリニューアルしていきます。以前からの課題として、サイトをBtoB向けに作り変えることのほかにも、グローバルを意識したサイトにしていくことが求められていました。8月にリニューアルオープンした米国を皮切りに、進化できていない部分をどんどん手がけていきます」(樋口氏)

◇◇◇

少し変わったCMSの利用スタイルも、実際には多数の各国サイトとブランディングを統轄し、大量のコンテンツを管理していかなければいけないコニカミノルタの、至極まっとうなROI(投資対費用効果)の検討に基づく決定なのだ。決して安価だとは言えないTeamSiteではあるが、塚田氏いわく、4000~5000ページ以上のコンテンツをもつサイトならば、導入にかかるコストを上回る効果が得られ、ROIは合うということだ。

もちろん、数千ページのコンテンツと20人もの制作スタッフを抱えるコニカミノルタならではのスタイルではあるが、同時に、TeamSiteがその要望に応えられるだけの柔軟性とパフォーマンスをもっていることも確かだといえるだろう。

ページの先頭に戻る

コニカミノルタサイト概要
URLhttp://konicaminolta.jp/
目的
  • コニカミノルタブランドの事業グループ全体のお客様に対する情報発信+サポート(ウェブ上でのサポート+窓口探し)
  • コニカミノルタを知ってもらうこと(ブランディング)
  • 各事業会社それぞれのマーケティング
総ページ数6000ページ超
オープン2003年10月
更新頻度ほぼ毎日更新

利用CMS情報
製品名TeamSite
提供事業者インターウォーブン・ジャパン株式会社
URLhttp://www.interwoven.jp/
出力形態静的HTMLファイル出力/動的ページ生成
対応OSWindows 2000/2003、Solaris、Linux
特徴中・大規模サイトに必要な、コンテンツの共同制作、承認ワークフロー、本番サーバーへの配信、過去のサイト全体のバージョン管理など機能が揃ったCMS。既存の膨大なコンテンツを、テンプレート化することなく、ファイル単位やサイト単位などでCMSに短時間で取り込み、すぐにワークフロー管理やバージョン管理を開始できる。時間指定公開やステージング環境の構築、障害時のロールバックなどにも対応し、さらにリンクチェックや差分確認なども可能。複数言語/複数サイト対応。
CMS導入概要(2003年)
  • 旧コニカ・旧ミノルタのウェブサイトのコンテンツを統合するかたちでサイト作成
  • TeamSiteとOpenDeployを導入
  • 出力形態は静的HTMLファイル出力
  • 20名弱のウェブサイト専門の制作チームで過去のコンテンツを移行
  • CMSの選定期間は約2か月
  • CMSの導入+サイトリニューアル期間は約4か月
  • コンテンツの更新にはDreamweaverを利用
CMS導入概要(2006年)
  • 事業内容の変化にともない情報構造とナビゲーションを変更
  • ナビゲーションの自動生成のためにLiveSiteを導入
  • ページは静的HTMLファイルのまま
  • ディレクタ/プログラマ各1人、デザイナ2人で作業
  • 作業期間は約3か月
  • コンテンツの更新には引き続きDreamweaverを利用
CMS選定のポイント
  • 既存のコンテンツを移行しやすい(TeamSite)
  • 静的HTMLを出力できる(TeamSite)
  • 制作チームがDreamweaverでコンテンツを制作できる(TeamSite)
  • ランニングコストを削減して導入費用をリクープできる(TeamSite)
  • コンテンツのXMLと情報構造のDBを元に各ページのHTMLを自動的に生成できる(LiveSite)

※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。

用語集
CMS / Dreamweaver / HTML / アクセス解析 / インタビュー / インターウォーブン / テンプレート / ナビゲーション / リニューアル / リンク / 事例 / 訪問者
[Sponsored]
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

ROAS
広告関連の指標。「広告費用対効果」のこと。 使った広告費用によって得たビジ ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]