「Uber」よりも便利?! お客の支持を集める「Shuddle」のビジネスモデルとは?
この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
最近、何かと世間を賑わしているスタートアップに、米国の有名な車のシェアリングサービスのスタートアップ「Uber」がある。「Uber」は米国では一般的にかなり浸透しているサービスで、日本でも徐々に利用者が増えてきているようだ。
この業界では「Uber」以外にも「Lyft」など、多くの同様のサービスを手がけるスタートアップが登場してきており、大変にぎやかな業界。だが、ドライバーによる乗客への誘拐、レイプといった事件も多く、米国ではその安全性に対する懸念の声も多い。
そんな業界において、子供も安心して利用できる車のシェアリングサービスという独自のポジショニングによって米国のスタートアップ界で注目を獲得。実際に顧客からの支持を集めて今後さらなる成長が期待される車のシェアリングサービスがある。それが今回紹介する「Shuddle」だ。
現在、「Shuddle」は米国サンフランシスコをサービスエリアの中心として、200以上のドライバーが数千の顧客を車で送迎しているという。
これまでに受けた投資の総額は1220万ドル(約14億円)。このうち960万ドルは2015年3月に受けたもので、その資金は今後さらなるサービスエリアの拡大と人員の拡充にあてられるとのことだ。
通常の車のシェアリングサービスでは足りない部分を見つけたのがきっかけ
【この記事のポイント】
既存サービスではクリアできなかった問題を、利用対象者を限定することで解決。
確かに存在する潜在ニーズを、「安全性の確保」という観点によるビジネスモデルで開拓。
創業者のNick Allen(アレン)氏はトリニティー大学で経済学を専攻し、2000年に卒業した後、モルガン・スタンレーなどの投資銀行のアナリストとして働いてきた。
2010年からは投資家としてベンチャー企業の経営にも携わるようになり、2011年には自ら共同経営者として「Uber」の競合ともいえる車のシェアリングサービス「Sidecar」を設立した。
「Sidecar」は通常のタクシーよりも10%安い料金で乗ることができ、フリーランスの働き手が会社に属さずドライバーとして副業ができるというもので、現在も続いているサービスだ。
「Sidecar」を経営するうちに、アレン氏はあることを発見した。それは、子供の保護者には自ら子供を送迎をできない人々が多く、「Sidecar」のサービスを子供の学校や部活動の送迎に多く使っていることだ。
しかし、「Sidecar」はこうした使い方を想定したものではなく、子供の送迎などに適しているとも言えなかった。そもそも子供を1人で、見知らぬ人が運転する車に乗せること自体、一定の危険性がある。実際にUberなどでもドライバーによって乗客が誘拐されたり、レイプの被害に遭うなどの事件が発生しているのだ。
もちろん会社がドライバーのことをよく把握している普通のタクシー会社であっても事件に遭うリスクはある。「Uber」や「Sidecar」のような、不特定多数の働き手が自由にサイトへ登録し、顧客に運転サービスを提供するようなビジネスでは、一般的なタクシー会社よりも事件が起きやすいことは確かだろう。
そこでアレン氏は「Uber」を代表とする現在の車のシェアリングサービスだけでは拾えきれないニーズがあると考え、子供の送迎に安心して利用できる、より安全性に特化した車のシェアリングサービス「Shuddle」の設立を思いついたのだった。
子供も安心して利用できる車のシェアリングサービス
「Shuddle」は「Uber」などとは異なり、子供の車の配車に特化している。年齢に関する要件は「保護者の助けなしに1人で車に乗れること」。カリフォルニア州であれば、身長4フィート9インチ(約145cm)以上あるいは8才以上に限られているそうだ。なお、両親や保育者が同乗するのはOKとのこと。
配車サービスを利用するときには、あらかじめ前日までに車の予約を行っておく必要がある。専用のアプリで、車を配車してほしい場所、降ろして欲しい場所と日時を指定すると、距離と時間から推定見積もり料金を提示。同時にドライバーの車情報が表示される。
乗車料金は「Uber」に比べると15%ほど割高で、一般的なタクシーと比べると10%低い程度の料金になるという。この乗車料金とは別に、月額利用料金9ドルを支払う必要があるそうだ。
また、18歳以下の子供には適用されない保険(乗車中の事故や事件に対する)が「Shuddle」では適用される。これは保険会社が、「子供が利用しても安全なサービスと判断した」と考えることもできるだろう。
予約後は子供がいつ車に乗るか、いつ降りるのか、実際に車に乗る前後の経過などをアプリ上のマップで確認することができる。また運転者に電話をかけることも可能だ。
なお、子供にも事前に到着時刻、ドライバーの名前が記載されたメールが届き、到着時刻の直前にはリマインダーメールが送られる。親子の間で時間を勘違いしていたなどのすれ違いも起きにくい。
実際に「訪れる車が本当に『Shuddle』のドライバーか」という心配もあるが、同サイトは前もって「合言葉」を決めている。ドライバーがその合言葉を伝えることで確認し合うといった、ユニークな確認方法を用いているそうだ。
ちなみに「Shuddle」のドライバーは今のところすべて女性となっている。これは規則を設けて選抜しているわけではないが、選考要件の内容や仕事のスタイルなどの結果から、結果的にそうなったのだという。
「Shuddle」は、ドライバーの選考の際はまず、「Uber」などと同じく犯罪歴、交通事故歴などのバックグラウンドチェックを行う。利用者が子供であることから、ベビーシッターや乳母、教師などの子供に関わる仕事を、過去もしくは現在2つ以上したことがある人を雇用条件としている。「Shuddle」のスタッフと1対1で行う面接をくぐり抜けた人のみを採用。その結果として、女性スタッフばかりがドライバーを務めているのだ。
「Uber」などの場合、夜から深夜の客はお酒で酔っている人も多く、女性ドライバーにとって安全性が確保された環境とは言えない。対して、「Shuddle」のニーズは子供の学校が始まる朝と、学校が終わる夕方が中心。顧客は基本的に子供のみだ。女性ドライバーにとっても安全な点も、女性の応募者が多い理由の1つだろう。
既存サービスの問題をビジネスモデル郊外を中心に顧客を開拓
「Shuddle」は、「Uber」が手こずっている「安全性の確保」をビジネスモデルで実現した面白い事例だ。
女性ドライバーであれば顧客はより安全だが、今度はドライバー自身が犯罪の対象となる危険性もある。そこで利用者を子供に限定することで、両者の安全性を確保している。
今後は、安全性を武器にどこまで事業を拡大していけるかに焦点が集まるだろう。
現在、「Shuddle」の利用の3分の2はサンフランシスコ郊外。人口密度の高い都心だけではなく郊外におけるサービスの拡充にも熱心だそうだ。タクシーがそこまで多く走っておらず、家や学校の間の距離が遠い郊外に同社のニーズがあると見ているようだ。
オリジナル記事はこちら:「Uber」を追随する「Shuddle」に学ぶ、お客の支持を集めるビジネスモデルの作り方(2015/07/08)
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