ソーシャルメディアマーケティングに活用すべきツールとは? 米国の実情とツールの特徴を一挙解説
ソーシャルメディアマーケティングを効率的に行うために、企業はどのようなツールを活用しているのだろうか。Web広告研究会の4月の月例セミナーでは、第一部で米国の実情と日本の現状が語られ、続く第二部ではソーシャルメディアマーケティングツールを提供する各社がそれぞれの特徴を発表した。
海外IT企業の買収に見る
ソーシャルメディアマーケティングツールの統合化
第一部では、「ソーシャルメディアマーケティングに活用すべきツールとは? ~活用先進国アメリカの実情と日本の課題~」と題した講演を、アドビ システムズの井上慎也氏が行った。井上氏は、アドビや業界を代表するものではなく、あくまで個人的にヒアリングしたものだとしたうえで、「ソーシャルマーケティング活動をサポートするツール・サービス・ソリューションについて、海外のデータや海外企業の買収状況をベースに説明したい
」と話を進めた。
まず井上氏は、「ソーシャルメディア集客ラボ」で昨年公開された記事「【海外事例】ソーシャルメディア関連企業の買収状況まとめ - マイクロソフト・セールスフォースなど」を引用し、米国では、オラクル、Google、マイクロソフト、アドビ、セールスフォースといった企業がソーシャルメディア関連企業の買収を盛んに行っていることを示す。「買収状況によって、各社の方向性が見えてくる
」と井上氏は説明した。
続いて井上氏は、Econsultancy社「Quarterly Digital Intelligence Briefing」の2012年9月の調査を引用し、説明を続ける。英国や米国を中心にグローバルで行われているこの調査では、20~40%の企業が有料ツールを導入し、20~30%が無料ツールを使っており、どの分野でも半分以上の企業が何らかのツールを使っているという状況だ。「日本国内でこのような調査は見当たらないが、感覚的には日本企業の10~20%がツールを使っているのではないだろうか。特にリスニングやモニタリングといった傾聴に関しては、日本でもツールの導入が進んでいる
」と井上氏は話す。
では、企業はどのような目的でソーシャルメディアを使っているのだろうか。同調査のアンケートで最も多いのはブランディングやアウェアネスの役割であり、続いてマーケティングキャンペーン、コンテンツマーケティング、顧客サービスと続き、企業規模にかかわらず同様の傾向となっている。
海外では企業規模間で違いがあり、特徴的なのは、ソーシャルメディアをリードジェネレーションのチャネルとして使っているという回答が売り上げ規模150億以下の方が多くなっていること。海外では、B2B企業でリード(問い合わせや見込み客)を獲得するためにLinkedInなどを使っていることがデータから読み取れる。
マーケティング活動にかかわるROIのすべて数値化
ソーシャルマーケティング活動を行うには、さまざまなメディアのなかでソーシャルメディアを活用することの目的を設定し、その効果を測るKPIを設定して戦略を練っていくことが必要だ。井上氏は、こうした企業のソーシャルマーケティング活動の考え方についても日米で異なると、自社のソーシャル活動の担当者およびソーシャルメディアツールの開発者と議論したときに作った図を次に示す。
海外での基本はすべての活動を数値化、そしてROIで考える点だ。ソーシャルマーケティングの効果を明確に数値化し、人件費も投資と捉えてコストの1つとして考えており、日本のように「そこは人が動けばタダ」という考え方はしない。そのため、ツールを導入することによって人の労力(コスト)を下げられるのであれば、積極的に導入を進めていくという。
そのうえで、「ソーシャルマーケティングの目的やROIの考え方に応じて、戦略および必要なツールは違ってくる
」と話す井上氏。マーケティング、サポート、製品開発、営業といった分野によってやるべきことがそれぞれあり、それによってツールやサービス、コンサルティングが異なってくため、次の図のように、用途ごとにさまざまなサポートツールがあるのだ。
そして、これらの数多くのツールや技術は、前述のように大手IT企業によって盛んに買収されているのが今の状況だ。また、アドビは「Adobe Marketing Cloud」、オラクルは「Oracle Social Relationship Management」、セールスフォースは「Marketing Cloud」というように、従来からの自社ソリューションに新たに買収したソーシャル関連の機能を加える形で統合化し、自社のソリューションの価値をより高めることが進められている。
井上氏は、個人的な意見としながら、ソーシャルメディア関連ツールやソリューションはそれぞれ独立した「個別特化ソリューション」を加えた、5つの方向性に分かれていると話す。
- 個別特化ソリューション
- ソーシャル統合ソリューション
例)コムニコ - マーケティング統合ソリューション
例)オラクル(CRM中心)、アドビ(Webサイト解析・トリプルメディア) - エンタープライズソーシャル
例)マイクロソフト、セールスフォース(Chatter) - ソーシャルサービス強化
例)Facebook、Twitter、Google
そのうえで、ソーシャル統合ソリューションを提供するコムニコ、CRM中心でマーケティング統合ソリューションを提供するオラクルやセールスフォース、Webサイト解析やトリプルメディア中心でマーケティング統合ソリューションを提供するアドビ、エンタープライズソーシャルを提供するマイクロソフトやセールスフォースのChatter、ソーシャルサービス強化を提供するFacebook、Twitter、Googleというように位置づけた。
最後に井上氏は、企業買収によるソーシャルサービスの強化について、Twitter、Facebook、LinkedInといったソーシャルメディアプラットフォーム自体が、動画制作、ファイル共有、写真共有アプリなどさまざまな買収を行い、自らサービスを強化していることを示す。「海外の買収を見ていくことで、今後のソーシャルの流れや方向性が見えてくると思う
」と井上氏はまとめ、第二部の各社のツール紹介につなげた。
ソーシャルもやってます!