コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の313
ボーナス商戦の火ぶた
まもなく、大手企業を皮切りに夏のボーナスの支給がはじまります。公務員の6月末、中小に多い7月中旬の支給までの「ボーナス狂想曲」の始まりです。今年は「アベノミクス」から、盛り上がりが期待できます。それを裏付けるかのように、1千万円超の「超高級車」が2~5割増の売れ行きと産経新聞が報じ、J-Castニュースは、高級腕時計や宝飾品、ブランドスーツやバッグなどの販売が前年に比べて2ケタ増で伸びていると百貨店を紹介します。
一方で、「景気回復は本物か!?」という声もあります。しかし、Web担当者ならこの議論は、アフターファイブの居酒屋談義に先送りし、業務時間中はアベノミクスに乗らなければなりません。プチバブルと揶揄する声もありますが、そのぜひを問うこともWeb担当者の仕事ではありません。
アベノミクスにいつ乗るの? 今でしょう!
というのが今回のテーマ。食傷気味な「今でしょう」を使った理由は後ほど。
謙虚な日本人
景気は回復している……と断言する証拠を開陳することはできません。しかし、日経平均株価から、確実に利益を得ている人はいます。2013年5月23日に1,000円を超える下げを記録し、その後乱高下を繰り返していますが、半年前には8,000円台だった日経平均株価が、今は14,000円台まで上がっているのです。単純計算すると、半年前に80万円の株式をもっていれば、140万円になっています。
テレビの街頭インタビューなどで「給料は上がっていない」という声も聞かれますが、当然です。給料は景気に遅れて反応するものです。ざっくりと説明すれば、企業間取引は「まとめ払い」が多く、1か月、2か月遅れで現金化され、契約によっては半年や1年先になるものもあります。
給料はこうした支払いと受け取りが終わった後、さらに、翌年も同じかそれ以上の利益を見込めてはじめて上がるものなのです。むしろ、少し売上が良かったからと、すぐに給料を上げる経営を「どんぶり勘定」と呼び、経営継続性に疑問符がつきます。
儲かっている人はいます。そしてそこは日本人です。自慢などせず、口を閉ざします。
“客”の定義とは
世間体を気にする日本人は、儲かったことを自慢しません。関西人の慣用句に「ぼちぼち」とあるように、順調でもストレートに自慢しません。いらぬ妬みやそねみを買わぬように避ける処世術です。かくいう弊社も、銀行口座に預けていても1%の金利すらつかないことから、多少の余裕資金を株式に投資していました。主に日経平均に連動する金融商品です。そしていま、うっかりすると、勤労意欲が薄れるほどニタニタしています。自慢です。もとい、弊社のような小銭の儲けでもニタニタするのです。アベノミクスで大金を手にした人は何を思うでしょうか。
商売の原則は“客”です。客がすべてです。それでは“客”の定義とは何でしょうか。ひとことで言えば、
金を払う人
です。
ボランティアでは成り立たない
どれだけ商品やサービスを賞賛し、気に入ってくれる人がいても、金を払わないものは客ではありません。友達だとしてもビジネスにおいての“客”ではないのです。
たとえば、あなたが「マンゴー」生産農家だとします。あなたが丹精込めたマンゴーをお隣さんは「旨い美味い」と誉めてくれますが、1円たりとも払ってくれません。もちろん近所のよしみであなたも請求はしません。一方で、都会からは1個1万円で購入したいと求める声があります。果たしてどちらが“客”かということです。
そして先のアベノミクスに戻ります。お金を持っている人はいます。給料が上がらないとぼやく人もいます。ならば、いま注目すべき“客”はどちらかということです。
高額商品はネットで探す時代
かつてはお歳暮やお中元をもとめ、銀座の百貨店に出掛けていました。アイラブ足立区を広言していますが、地元では単純に高いだけの商品はあっても、気の利いた贈答品がなかったからです。しかし、不況が長引くにつれ、銀座の質も低下します。そしてたどり着いたのが「ネット」でした。
ネットの魅力は「カカクコム」に代表される最安値競争だけではありません。珍しいものを探し出し、高級商品をリーズナブルに購入できるのも魅力です。量販店や街場の専門店では取りそろえていないブランド品はネットの独擅場です。ある眼鏡店では、今年に入り根強い人気を保つ「Kazuo Kawasaki」への引き合いが強まっています。そして、リーズナブルとは「相場」と換言でき、1本3万円が相場のワインが、2万円なら飛びつく客がいます。
売るのなら今でしょ
先日視聴したテレビ東京の経済番組「モーニングサテライト」のなかで、双日総合研究所チーフエコノミストである吉崎達彦さんは、次のように指摘します。
今でしょう。とは時代の言葉
ご存じ、東進ハイスクールの林修講師の言葉ですが、CMは数年前からオンエアされており、フィーチャーされたのが最近であることから、まさしく「時代」を表しているというのです。
長らく続いたデフレ不況の果てに、円安株高アベノミクスで小銭や大金を得た人がいます。彼らはお金を使いたがっています。お金を使うのは1つの快楽なのです。ところが店頭ではデフレ系の品揃えがいまだ幅を効かせています。そんな“客”のために、高額商品を提供するのはまさしく“いまでしょう”と。ネット店舗の機動性を活かし、アベノミクスに便乗する最初のチャンスが今夏のボーナス商戦です。
最後に不動産にITバブルと、二度のバブル経済を経験した一市民として指摘しておきます。
どちらも庶民に恩恵は少なかった
ITバブルは、本家アメリカがすぐに破裂したので論外として、昭和の終わりから平成の始まりにかけての不動産バブルのときも、庶民に恩恵が届く前に崩壊しました。ただし、どちらのバブル期においても、金持ち層をターゲットにした商売は活況を呈していたものです。アベノミクスがバブルか否かはまだわかりませんが、全体を見て庶民の味方面をして嘆くのは経済学者やマスコミに任せ、ビジネスとしてWebに取り組むものは、今の“客”に照準を合わせなければならないのです。
今回のポイント
日本人すべてが儲かることはありえない
お金を使いたい客を捕まえよ
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