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広告主の課題解決エンジンへ、スマホファーストで業界をリードするヤフーの“爆速”成長戦略/アドテック東京2012

ヤフー宮坂学社長がアドテック東京2012で語った“爆速”成長戦略についての講演をレポート
ヤフー株式会社
代表取締役社長
宮坂 学氏

これまではヤフーの技術だけでクライアントの課題を解決しようとする姿勢だったが、それでは追いつけないと思う。これからはパートナーとデジタルマーケティングのチームを組んで課題を解決していきたい。

10月30日から31日にかけて開催されたデジタルマーケティングカンファレンス、アドテック東京2012のクロージングキーノートでは、ヤフー代表取締役社長 宮坂学氏が登壇し、“爆速”を掲げて第二の創業へと船出したヤフーの成長戦略を語った。これまでの自前主義と決別し、広告主の課題解決エンジンとなると、戦略が示された講演をレポートする。

スマートフォンを制する企業がリーダーシップをとる

ヤフーが経営陣を刷新し、2012年4月から新執行体制へと移行したのは記憶に新しい。この変革を宮坂氏は第二の創業とし、スマートフォンという新しいインターネット大陸で事業を開始するためだと話す。

Yahoo! JAPANでは、2012年3月にスマホとフィーチャーフォンのPV数が逆転し、近いうちにPCを逆転することも考えられる。これまで、検索、動画、ソーシャルなどのキラーアプリが来ると言われていた。これから何が来るかはわからないが、スマートフォンを制する企業がインターネットのリーダシップをとることは確実だろう。

これまではPCとのバランスをとってきたが、歴史的な転換点ではバランスを崩してでも、思い切ってワイルドにスマートフォンに踏み込んでいくべきであり、スマートフォンファースト、PCセカンドへと大きく舵を切っている。

一方で、新体制へと移行しても変わらないことがある。“常にユーザーファースト”であり続けること、そしてポータルサイトとして人々や社会のあらゆる課題をITで解決することであり、新たなミッションとして“課題解決エンジン”であることを掲げた。とはいえ、16年以上PCファーストで続けてきた習慣もあるため、新サービスのデザインが、PCサイトの画面を貼り付けたパワーポイントでくることもあるという。それでもあえてスマートフォンファーストと言い続け、それを実行する“爆速”体制を宮坂氏はキーワードとして掲げる。

状況把握、意思決定、実行のサイクルを爆速でまわす

なぜ爆速なのか。スマートフォンはPCよりも圧倒的に未知数です。PCの場合は、新サービスのPV数やクレームなどをある程度想像できるが、スマートフォンはまだまだ先に何があるかはわからない。歩きながら考え、状況把握、意思決定、実行の3つすべてを爆速でやらないと未知の事業ではうまくいかない。組織として爆速という能力を身につけたい、いまはとにかく爆速的にやると自分自身にも言い聞かせている。

爆速体制を実行するため、まず社内の承認プロセスは8つから2つに短縮された。「毎週の定例会議で判断していては1週間遅れてしまうため、間違ってもいいから現場で決めろと言っている。そのために権限移譲を行った」と宮坂氏は話す。また、目標は最長で2019年までに営業利益を2倍にすることであり、宮坂氏は爆速体制における3つの成長戦略を次のように説明する。

1. Only one

ポータルサイトとしてサービスを開始したヤフーも開始当初は外部サイトのリンクをまとめた、いわば「ポータルサイト1.0」的存在だった。しかし当時は、野球、天気、株価などの情報はまだなく、自ら100以上のサービスを「ポータルサイト2.0」として提供開始し、そしていま、世の中にはヤフー以外にも良いサービスがあふれている。「振り返ったとき、Yahoo! JAPANというポータルのままでいいのか」と、自問自答して考えられたのが、日本一のまとめサイトとなる「ポータルサイト3.0」の構想だ。

自前のサービスを作りながらも、より良いサービスを提供する企業がいれば提携してスイッチしていく。すでに始まっている食べログ、クックパッドとの提携はその1つであり、同時に自社サービスについて選択と集中を行う。具体的には、Yahoo! JAPANの売り上げやトラフィックの8割を占める上位20サービスにリソースを集中し、それ以外のサービスは再生プランの計画、他社との提携、場合によってはサービス停止を考える。

Yahoo! JAPANで提供する約150サービスを営業利益やアクセス数、ユーザーアンケートなどを加味して毎月評価。Y1~Y2の上位20サービスへとリソースを集中していく。

2. 異業種最強タッグ

異業種最強タッグについて、宮坂氏は「インターネット業界のYahoo! JAPANと別の業界の存在を結合させること。イノベーションによって新しい価値を生み出していきたい」と話し、オフラインのポイント市場で強みを持つカルチュア・コンビニエンス・クラブ、BtoBで強いアスクル、スマートフォンに一番詳しい通信キャリアであるソフトバンクとの提携を例に挙げた。ソフトバンクとはクーポンをスマホで発行し、店頭の読み取り機で引換券を発行する、O2Oサービスが展開されている。

3. 未踏領域への挑戦

この16年はインターネットの可能性を広げた時代だったが、もっと広がるのではないか。ヤフーは米国から日本へ来たものだが、日本で紹介したいインターネット企業はまだまだある。そして今度は日本から西へ、アジアへと運んでいくことに挑戦したい」と宮坂氏は“DEJIMA Strategy”を説明する。すでに取り組みの1つとして、インドの通信キャリア大手、バーティグループとの間でヤフーが培ったノウハウを提供することが行われているという。

また、「いま日本で最大の課題は、被災地域の経済を元通りにできるのかということ」と、インターネットの可能性のとして、復興、復旧を宮坂氏は挙げる。大災害の復興、復旧にインターネットが本当に役立つのかを知るため、ヤフーでは石巻復興ベースを現地に立ち上げているが、まだまだインターネットにできることは少ないと感じたという。

ヤフー自身が広告主として日本最大のモルモットに

次に宮坂氏は、ヤフーが持つ「媒体社」「広告主」「マーケティングソリューション提供者」という3つの顔、それぞれの領域で脱皮する時期にあると話す。

Yahoo! JAPANが持つ3つの顔

1. 媒体社

Yahoo! JAPANにおけるスマートフォンのPV数は、2008年9月から2012年3月までにYahoo!知恵袋で1,150倍に、Yahoo!ショッピングで4,600倍にまで推移し、スマートフォン利用者の約78%がYahoo! JAPANのサービスを利用しているという。iOS、Androidアプリの累計ダウンロード数も4,000万を超え、利用者は順調に伸びているようだが、「スマートフォンはアクセス頻度が高いメディアです。マンスリーのユニークユーザーよりも、ウィークリー、デイリー、1時間おきでは何人来ているのかというメディア。まだスマートフォン大陸の数歩目でしかない、もっと先まで行ってみたい」と宮坂氏は話す。

2. 広告主

媒体社であると同時に、ヤフー自身が年間数百億円を使う巨大な広告主でもあり、バナー、アフィリエイト、リスティングなどのあらゆるインターネット広告をはじめ、テレビや雑誌、福岡ドーム(ヤフードーム)の命名権、五輪スポンサーなどのマーケティング活動を行う。ここで宮坂氏は、広告主ヤフーとしてさまざまな実験を行う、「まずやる宣言」を告げる。

ヤフーには迷ったらワイルドなほうを選べという宣言がある。しかし立ち止まってみると、クライアントには実験的でイノベーティブなマーケティングをしようと言うが、我々ができていなかった。ヤフー自身が日本最大のモルモットになってワイルドな広告を実践し、そのうえでクライアントのみなさんへ、結果はこうでしたと提案したい。

効果、技術などのフィードバックを蓄積し、それをクライアントや広告業界にフィードバックしていく。このサイクルを爆速でまわすために、これまでヤフーにはなかった宣伝部として、Yahoo! Marketing innovation Office(YMO)を立ち上げている。ヤフー自ら革新的なキャンペーンを実施し、広告主へフィードバックしていく考えだ。

YMOの主なミッションは「広告主ヤフーとして最大のアセットを使う」「さまざまな企業とのコラボレーション」「それらの情報を発信すること」の3つ。初代室長には友澤大輔氏が就任。

3. マーケティングソリューション提供者

マーケティングソリューションチームのミッションは、インターネットテクノロジーを活用して、事業者のマーケティング課題を解決することだが、「いまのままでは課題解決エンジンになれていない」と、宮坂氏は広告ソリューションのラインアップを「プロモーション広告(リスティング)」と「プレミアム広告(ディスプレイ広告)」に再編すると説明する。

プロモーション広告は、資料請求や来店などのユーザー行動を起こす広告で、スポンサードサーチとインタレストマッチの2種類が当てはまる。今回は、まず興味関心連動型広告のインタレストマッチを大きく変え、「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)」として、Yahoo! JAPANの膨大なデータを活用し、ターゲティングとマッチングの量と質を高めた広告サービスを提供する。YDNは2013年1月末開始を予定し、これまでクリック単価(CPC)中心だった指標に表示回数(CPM)も加え、テキストだけでなく画像や動画を配信可能にし、今後はテレビやサイネージなどの新しい端末にも展開していく。

プレミアム広告は記憶に残る広告。宮坂氏は、「ディスプレイ広告、ブランド広告の伸びが悪いと言われるが、これは決算を見ても逆風なのは明らか。しかし、ヤフーが最初に始めた事業であり、プレミアム広告にチャレンジしたい」と話し、さまざまな企業との協業でインターネット広告で重要な「パフォーマンス」「メジャーメント」「クリエイティビティ」3つを改善していくと説明する。

これまでは自前主義を徹底してきましたが、そのスピード感では、企業やマーケッターの課題解決に追いつかない。ヤフーだけで解決するのではなく、デジタルマーケティングを改善しようという企業や個人とチームを組んで課題解決しなくてはならない。

宮坂氏はこのように話し、各分野での提携を発表した。

まずパフォーマンスの分野では、リターゲティング広告技術を有するフランスのCriteoとの提携で「クリック課金型リターゲティング広告」を開始する。すでにヤフー自身で実施しており、ターゲティングしない場合と比較し7倍の広告効果を上げているという。メジャーメントでは、タグマネジメントソリューションを提供する米国BrightTagと提携し、効果測定の準備を効率化する。クリエイティビティでは、リッチ広告で実績のあるMediaMindと提携し、第三者配信アドサーバーによる広告配信を2013年1月に「Gyao!」で開始する。

会場には米国DG社 CEOのNeil Nguyen氏(中央)も駆けつけた。※MediaMind TechnologiesはDG社傘下

脱皮しない蛇は死ぬ。日本のデジタルマーケティングは脱皮する時期に来ているかもしれない。痛みをともなうが、我々は最前列で主体的に、楽しみながら脱皮をしたい。ヤフーは、だれかの課題を解決するために、自分の時間をささげる人の集まりになりたい。課題を解決し、次の世代へ新しいデジタルマーケティングの世界を残していくために、これからもみなさんと頑張っていきたい。

講演の最後、宮坂氏は“脱皮しない蛇は死ぬ”と、変革期にあることを伝える。これからはヤフー独自のソリューションにこだわらず、パートナーとタッグを組んで課題解決を爆速で進めていく考えだ。新執行体制へと移行してからこれまで、ヤフー側から広告主向けに表立って戦略が発表されることは少なかったように思うが、爆速の言葉通りに進む同社の姿がうかがえる講演となった。

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