うわっ…正式リリース前にバズりすぎ…? @typeの「年収低すぎ」モデル募集キャンペーンに見るソーシャルメディアの怖さ

正式リリース前の情報が爆速でソーシャルメディアを駆け巡り、ヤフトピにも……

キャンペーンを仕掛けるにあたって、ソーシャルメディアで話題になれば効果が上がる。しかし、仕掛け側が予想しない早いタイミングで、しかも正式リリース前に、キャンペーンが話題になりすぎても、困った事態が起きてしまうようだ。今回は、そんな事例をお届けする。

徐々に話題が広まって、募集スタート時点で最高潮になれば……

「うわっ…私の年収低すぎ…?」のキャッチコピーと、驚く女性の顔が特徴的な、転職サイト「@type」のバナー広告。ほとんどの人が目にしたことがあるだろう。

@typeでは、このバナー広告のモデルを公募するキャンペーンを行っている。同社によると、このバナーのモデルを公募するのは初めての試みだということだ。

同社では、バナー広告モデルの募集開始を2012年4月19日の予定で進め、3日前の4月16日午前11時ごろにはキャンペーンサイトを本番環境にアップした。

少し前にサイトをオープンしておけば、徐々に話題が広まり、募集が始まる19日くらいに盛り上がりのピークを作れるのではないかと考えてのアップでした」(同社担当者)

しかし、その予測は見事にはずれた。

爆速でソーシャルメディアを駆け巡り、ヤフトピにも

アップしてしばらくするとこのキャンペーンが話題となり、数時間後にはTwitterやFacebookにキャンペーンの情報が大量に流通した。まだ募集は開始されておらず、サイトにはキャンペーンの情報と「4/19(木)から募集スタート!」という、クリックできないボタンが置かれている状況なのに、だ。

ツイートは16日~17日に盛り上がり、正式スタートの19日にはすでに沈静化してしまっていた(時系列でのツイート数はtopsyから取得したデータを編集部で加工)

さらに16日の午後8時ごろには、このキャンペーンのニュースがYahoo!トピックスに掲載され、あっという間にネットユーザーに知れ渡る結果となった。

驚異的な拡散スピードに、ソーシャルメディアの威力を実感しました」(同社担当者)

キャンペーンが盛り上がって嬉しいはずの@typeだが、想定外の出来事に社内は困惑していた。

話題にしていただけるのは大変ありがたいのですが、そのタイミングが……。本来の意図としては、募集が始まる4月19日に話題のピークを作りたかった。そのためにプレスリリースを19日に出す準備をしていました。応募ができない段階でYahoo!トピックスに上がるというのは想定外。情報リリースに対する認識の甘さを痛感しました」(同社担当者)

盛り上がった時点ではまだ応募はできない状態だった
◇◇◇

ここからは編集部の推測になるが、担当者は、最初は「おっ、話題になってきているな」と喜んでいたことだろう。しかし、その話題が急速に広まりYahoo!トピックスに掲載された時点で、「まずい」と蒼い顔をして広報部やPR代理店との間で緊急のミーティングを開いたのではないかと思われる。

マーケの担当者としては話題が広がるのはありがたいことだが、広報サイドの人たちにはそれぞれの役割があり、想定を超えて話題が広がったことで、彼らの動き方にも影響が出る可能性があったからだ。

この事例で改めて認識を強められるのは、「ソーシャルメディアは企業がコントロールできない」「ソーシャルメディア上では企業の都合とは関係なく情報が扱われる」という当然の事実だ。

企業側が「ソーシャルメディアで話題になれば」と思っていてもユーザーにスルーされてしまうことは多々あるが、今回のように企業側が「少しずつ話題が浸透していけば」と思っていても、おもしろい話題ならばユーザーの間で情報が一気に広まってしまう。

そしてユーザーたちは、「正式リリース前なのに」「まだ募集開始していないのに」という企業側の都合など、一切気にしない。

では、@typeではどうすればよかったのだろうか。

1つの手法としては、「ティザー広告」(「ティーザー広告」)、つまり「ちょっと出し」のスタイルをとるやり方があったかもしれない。「年収低すぎモデル募集キャンペーン」という情報を事前にすべて出してしまうのではなく、「“うわっ…私の年収、低すぎ…?”のモデルに何かが起こる! X-Dayは4月19日」というように、全体像がわからない形で興味を喚起しておくやり方だ。

いずれにせよ、Web担当者やマーケ担当者は、@typeの事例を情報管理とソーシャルメディア活用に関する良い教訓だとしてとらえておくのがいいだろう。

iPhoneから写真を投稿できない? キャンペーンこぼれ話

こういったキャンペーンは初めて実施したという@type。実はもう1つのドタバタ劇があった。

というのも、写真を送ってもらうというモデル募集キャンペーンなのに、最後の最後になって「iPhoneから写真をアップロードできない」という問題が発生したのだ。

同社では、応募フォームの送信テストを事前に何度も実施していたが、テストしていたのは社内のPCから。スマートフォンやiPadなどでテストをしたのは、募集開始3日前だったという。

3日前のテストで初めて、iPhoneからは応募できないことがわかったのです。モデル応募に必要な、応募写真のアップロードボタンがiPhoneで見るとうまく表示されないのです。応募フォームのどこに不具合があるのか、募集開始直前に大騒ぎになりました」(同社担当者)

しかしよく調査してみると、そもそもiPhoneの標準のブラウザであるMobile Safariは、フォームからファイルをアップロードできないブラウザだったというだけだった。応募フォームにはその注意書きをすることで一件落着。無事、キャンペーン初日を迎え、その日のうちに数十件の応募が来たという。

計画的に進めていたつもりでも、いざスタートするといろいろ想定外のことが起き、なかなか思った通りにはいかないものですね(笑)。

ただ、応募は毎日順調に来ていますので、結果オーライでしょうか。これから第一次選考、最終選考が控えてますので、ぬかりなく進行したいと思います!」(同社担当者)

ソーシャルメディアで話題になり、Yahoo!トピックスに掲載され、順調にスタートダッシュを切ったように見えるキャンペーンだが、内部ではさまざまなことが起きているもの。同様のキャンペーンを考えている場合は、@typeが経験した落とし穴を、念のためチェックリストに入れておくといいだろう。

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