私がTwitterをやめた理由。Web断食で作業効率アップ
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の弐百伍十参
DeNA監督のように
臆面もなく現状を述べれば「絶好調!」。年が明けてから、幸運が通りの向こうからスキップしてやってくるかのように、新規案件が舞い込み、サイトの仕掛けが当たり、毎日聞いているFMラジオ番組から出演のオファーがきて、突然ですが今日から別の媒体で新連載がはじまります。昨年までの停滞が嘘のようです。
実はこの2年ほど停滞していました。顧客数に大きな変動はなく、生活に十分な稼ぎはありましたが「現状維持」はやはり停滞です。そこで「ブラック・テキスト芸」をさらにえぐく「ダーク」な販促手法だけをまとめて電子書籍で販売する計画を立てるものの、プロットの段階で止まっており、他の書籍企画やプロジェクトも企画の枠を越えることのない中途半端な状態でくすぶっていました。そこに東日本大震災がやってきて、対応に追われたのはせいぜい夏までのことで、それ以降はふたたび停滞へと逆戻りです。
ところが新年を迎え、急転直下、動き出しました。それはTwitterを止めたからと断言できます。これをわたしは「Web断食」と呼びます。
チャネルの切り替え
私をフォローしている読者は「やめてないジャン」と思われるかもしれません。1日に数回はタイムラインに、「@miyawakiatsushi」からのつぶやきが流れています。私がやめたのは「Twitter」の醍醐味である「コミュニケーション」であり「タイムライン」を追うこと、情報発信チャネルとして「つぶやき」は続けています。
Twitterは作業と作業の合間に見るぐらいと思い込んでいました。ところがPCの前に座ると、メール、SNS、そしてTwitterに新着情報がないかとチェックしていました。特にTwitterではタイムラインを遡ることもあり、ツイート・リツイートを追いかけて気がつけば十数分が経過し、その後も続報がないかと数分おきにブラウザのタブを切り替えていました。
わずかな時間でも、積み重なれば膨大な時間損失へとつながります。それは「まだ大丈夫」と甘いものを食べ続けた結果の「メタボ」のようなものです。いうなれば「Webメタボ」といったところでしょうか。
ワーキングエリアの損耗
Twitterを使いながら活躍している人もいる、という反論があるかもしれません。彼らと私との違いはこうです。
細切れの時間を使っているのか、時間を細切れにしているのか
テレビやラジオで活躍するジャーナリストやタレントが積極的にツイートできるのは、取材先や撮影現場への移動時間や、出演の合間という細切れの時間をあてているからです。その短い時間に140文字のツイートは適しており、彼らにとっての情報発信は営業活動や備忘録となり一石二鳥です。
一方、私はまとめて使える時間をわざわざ細切れにしてツイートをしていたのです。一回の時間は数分間でも、そのたびに「頭の切り替え」が求められ、失う前後のロスタイムもあわせれば、書籍一冊の執筆時間以上を失っていました。
毒された自分
Webメタボになった理由は、胴回りのメタボと同じく「生活習慣」です。情報とコミュニケーションは知的好奇心を刺激し、刺激が繰り返されると感覚は麻痺して、さらに強い刺激を求めるようになります。少しずつ「常駐」している時間が長くなったのでしょう。そこに東日本大震災。タイムラインは偽情報で覆い尽くされ、否定するツイートで対抗し、裏をとり拡散を呼びかけました。社会活動をしているという高慢な思いこみが常駐に拍車をかけ、震災が落ち着いてからも変わらずアクセスし続け、気がつけばすっかりWebメタボの完成です。
何でもない日常に1gの疑いも持たないように、Twitterで時間を浪費していることに気がつきませんでした。Webに冷静な意見を述べるスタンスから「自分は大丈夫」という過信を否定しません。しかし「病」に気がついたのはTwitter界の超有名人の一言です。
その通りと膝を打つ
ある日、この著名人の最近の活動をTwitterで指摘しました。するとご本人から「余計なお世話(筆者要約)」とリツイートを頂戴した刹那「その通り!」と膝を打ちます。彼とは戦う戦場もネットへのスタンスも異なり、たぶん描く未来と求める幸福も違うことでしょう。その他人の領分に土足で上がり込むのは「余計なお世話」以外の何者でもありません。まだ肥ていない、ぽっちゃりだと我が身を甘やかせていたら、ショーウィンドウに映る「デブ」が自分だったと知ったときの恥ずかしさのように、耳まで真っ赤になったことを告白します。
必要でない情報を探し、必然性のないコミュニケーションを求めるのは、空腹を感じてもいないのに午後3時になったからとおやつを食べるようなものです。そしてTwitterを止めたのです。
プチ断食のすすめ
おかげさまで絶好調。自分が成すべき仕事について沈思黙考でき、クライアントの戦略を練る時間が確保でき、急なラジオの出演依頼にも対応できる余裕が生まれ、春を待たずに花が咲きました。Twitterを止めたことで、目標に集中できる時間が増えたのです。そこでわたしがオススメするのが
Webぷち断食
メールやTwitter、Facebook、mixiなどのなかから、「業務連絡に使っていないチャネル」を1週間「断食」します。経験を述べれば、Twitterがなくて不安になるのは3日目ぐらいまでです。4日目になると存在すら忘れることも。そして1週間後のタイムラインには、断食前とさして変わらぬ発言が並ぶだけで、追いかけていた「最新情報」は不要だったと結論づけたのです。
アカウントを停止する必要はありませんし、情報発信チャネルとしては継続すべきです。ただ、すでに述べたように「時間を細切れにしている」ことで失っている時間が、本来成すべき業務の足を引っ張っていることもあるということです。人生いろいろ、会社もいろいろ。業務に必要なチャネルなのか、それは適材適所で使われているのか見極めます。
今回のポイント
意図的に情報を遮断することで目標に集中する環境が生まれる
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