企業ホームページ運営の心得

突然ですが終わります。総決算の例え話

客の納得を得るために役立つ例え話
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の510

突然ですが卒業です

Ridofranz/Thinkstock

突然ですが「Web担当者Forum」サイト史上、最長を誇った本連載。日替わり弁当の隙間を埋める柴漬けのようでありながら、何かの拍子で旨いと喜ぶ読者もいましたが、今月で卒業となります。

長いようで短いようとは、まさに本当……といいつつも、ネタが切れたらそこが最終回。もしかしたら今回がそうかもしれません。無事、完走できるか見守っていただければ幸いです。

営業やプレゼン、日常会話はもちろん、コンテンツで期待通りの結果を得るコツは「説得より納得」にあります。経験上、お客が喜んで財布のひもを緩めるのは納得したときだけだからです。

「説得させる○○」というハウツーもあり、説得は大切なことですが、理屈がどれだけ正しくても、お客が納得まで至らなければ「丸め込まれた」と不信感を抱くこともあります。説き伏せるのではなく「なるほど」と思わせるということです。その納得に役立つのが「例え話」です。

今から9年前に「初級編」と紹介して以来、折々のネタにしながら詳細説明をせぬまま放置していた例え話の総決算です。

相手の想像力を利用する

この連載で紹介してきた例え話をいくつかとりあげ、それぞれに説明を加えていきます。

2010年2月24日に公開された「チャーシューメンで語る営業戦略。MAGIでも解けない計算式」では、昔の勤務先の営業会議で「特化戦略」を説明するために「チャーシュー麺専門店でいきましょう」と切り出し、先輩社員の納得を得たエピソードを紹介しました。

コラムでは続けて、当時は牛丼のみを提供していた「吉野家」を例に挙げて補足していますが、会議の場での説明はチャーシューメンだけ。上司や同僚がもっとも納得しやすいと判断したからです。「吉野家」を持ち出して、「牛丼」つながりから多様なメニューを提供する「すき家」や「松屋」で反論されることを避けたのです。

例え話は、相手の想像力を利用して納得させるアプローチであり、相手(想定客)のレベルにあわせると同時に、望む結論に導く選択が必要です。

寿司屋のカレー

対面での説明や交渉の場合、相手の外見や態度から臨機応変に例え話を使い分けられますが、不特定多数の目に触れるWebコンテンツでの難しさは本連載で学びました。それが「見積もりが高いといわれたら。Noという交渉術」の回です。

仕事へのプライドを語る例えとして、寿司職人を例にだします。

寿司屋でカレーをだせという客の注文に応じる店と、断る職人のどちらの「にぎり」を食べたいでしょうか

これは、リアルで何度も納得させた例え話だったのですが、ネット上では、

寿司屋でカレーがあれば、むしろ嬉しい。生もの苦手だし

と反論されます。コンテンツにおける例え話は、より条件を限定し、1つの結論に到達させるための工夫が必要だと改めて確認したものです。

もっとも、この書き込みを見たときの正直な感想は「生ものが苦手なら寿司屋に行くなよ」でした。しかし、「くら寿司」が「すしやのシャリカレー」の提供を始めたとき、荒唐無稽に思える「客の声」でも、やぱり大切なのだと別の角度からの反省をしたものです。

床屋の技術料

「見積もりが高いといわれたら」の回では、Webサイトの納品が完了した案件で、相手のミスによる変更作業を無料で要求されたときの断り方として、こんな例え話も紹介しています。

理髪店で髪をちょっと切っても、ごっそり切っても同じ料金でしょ? 私たちは技術で飯喰っているんだよ

Web制作と理容師はまったく別の業界で、異なる業務内容ながら「技術」という共通項があります。素人目には簡単に見えても、それを身につけるために投資した費用と時間がかかっており、それが「価格」に反映されているという意味です。経験則ながら、まったく別の業界を引用すると納得する確率が高まるようです。意表を突かれるからでしょうか。ちなみに、相手によって「床屋」と「パーマ屋」を使い分けています。

例え話のタブー

特化戦略をチャーシューメンで説明し、Web屋を床屋で語るなど、いわば何でもありの例え話ですが、「仮定に仮定を重ねる」というタブーがあります。「寿司屋」を切り口に「無駄」だと指摘したいとします。次に挙げるのは、これではダメだという例えです。

寿司屋の専門学校でカレーを教えても意味がない

「寿司屋の専門学校」は実在しますが、一般的には馴染みがありません。加えて十分な説明のないまま、「カレーを教える」という論理の飛躍に、お客は迷子になってしまうことでしょう。また、ビジネス視点で捉えれば、「くら寿司」のような事例もあります。

「仮定」を重ねると、相手の想像余地が拡がり「反発」や「不信」を招きかねません。特化戦略の説明で「吉野家」を採用しなかった理由と同じです。例え話における仮条件は1つまでとしてください。

認知のメカニズム

原稿では省略していますが、実際の会話やコンテンツでは「たとえば」と断ってから話し始めます。架空の話ですよと宣言することで、事実という制約から解き放たれ、表現も説明も想像の翼を得て、自由に羽ばたくことができるのです。

正確な語彙を用いて正しく説明しようとすると、「専門性」という隘路(あいろ)にはまります。すると基礎知識、業界常識を持たないお客には理解できません。一方、相手に身近な話に「例える」ことで、わかったつもりにさせるのです。人間は知っていることからしか理解できません。手持ちの知識をもとに理解するということです。

例え話とは、相手が知っているであろう話を「土壌」として、「想像力」という種をまき、「納得」という花を咲かせること。これももちろん例え話です。

今回のポイント

納得を目指すための「例え話」

仮条件は1つだけ

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