レンタルサーバーの基本スペック ――パフォーマンスの観点からハードウェア性能を読む
国内1700サービスの統計にみる
レンタルサーバーを選ぶ際、専用サーバーや仮想専用サーバーにおいては、ハードウェアスペックのチェックは不可欠だ。搭載されているCPUの性能やメモリおよびHDD容量のチェックは当然だが、用途によっては、より高いデータの保護が必要とされる。こうした場合には、RAID(ミラーリング)の有無をチェックしよう。
また、動画系コンテンツの提供を行うのであれば、帯域保証のサービスが提供されるかを確認することも必要となる。
TEXT:レンタルサーバー完全ガイド編集部
CPUスペックは用途に応じて使い分けも検討
CPUスペックが、処理能力を決定することは改めていうまでもない。そこで、処理能力が高いCPUが使われているサービスを利用することを真っ先に考えるだろう。それは決して誤りではないが、性能が高いCPUを搭載したサーバーは相対的に高価であり、費用にも反映される。
また、XeonやPentiumDなど消費電力が大きなCPUは、1ラックあたりの消費電力が大きくなり、放熱対策がなされていないとラック全体のサーバー動作が不安定になるので、ユニットスペースに空きを作るように設置する。すると、ラックあたりのサーバー集積率は低くなる。レンタルサーバー事業者がiDCに支払う費用で、大きな割合を占めるのはラックスペースと回線費用なので、集積率が低くなれば、それも費用に転嫁される可能性が高い。したがって、負荷が少ないと判断できるようであれば、処理能力が多少落ちるCPUを採用しているサーバーを選択したほうがコストパフォーマンスがよい。
それでは、現状、どのようなCPUが使われているかを見てみることにしよう(グラフ4)。なお、ここではCPUを4つの世代に分けて分類していいる。これについては表1を参照してほしい。
専用サーバーでは、第2世代と第3世代がともに3割以上を占める。仮想専用サーバーでは圧倒的に第3世代が多い。これは、多数のサービスを多重化し、1台でより多くのバーチャルマシンが動作するように、導入時点において最新(最高)スペックのハードウェアを選択しているためと考えられる。
第1世代 | Intel/Celeron、Pentium3以下など |
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第2世代 | Intel/Celeron D/M、Pentium4/M、AMD/デスクトップ用CPU |
第3世代 | >Intel/Xeon、Pentium D、AMD/Opteronなど |
第4世代 | Intel/Core各種、Dual-Core Xeon |
性能重視なら最新CPUを狙え
複数台構成可というサービスも
非常に多くのアクセスが予想されるサイトの運営や、高い処理能力が要求されるデータベースサーバー、アプリケーションサーバーでは、高い性能のCPUを使用する必要があるだろう。そこで、マルチCPUに対応したサービスがどれだけあるかを見てみることにする(グラフ5)。
グラフでは「CPU個数」となっているが、正確にはソケット数を意味している。グラフ5を見ると、専用サーバーでは、その多くが1個となっている。2個というのもあるが、その比率は1割強に過ぎない。これに対して、仮想専用サーバーでは、6割以上が2個となっている。これは、サーバーの性質上、多数のゲストOSが同時に稼動し、負荷が高くなった場合でもパフォーマンスを維持するためだ。
なお、より高い性能を得るための方法として、複数台のサーバーを使用し、ロードバランサによって負荷分散を行うという方法もある。こうしたサービスは、明示されていないことが多いが、レンタルサーバー2台をパックにしたものやオプションとして用意されているもの、個別に相談することで対応してもらえる場合もある。高負荷が予想されるサーバーを必要とする場合には、レンタルサーバー事業者に相談してみるとよいだろう。
データベースやブログで使うならメモリ容量にも注意
搭載メモリの容量は、多いに越したことはない。しかし、これも費用に関わるものなので、容量と費用とのバランスが重要だ。
データベースサーバーやブログサイトの運用で使用するのであれば、1GB以上のメモリーを搭載したサーバーを選択するのが無難だ。これらは、プログラムの構造やアクセス数により必要とされる容量は異なるが、経験から512MBがボーダーラインであり、512MB未満ではメモリ不足に陥り、システムが停止する可能性が高い。ブログシステムでは、Movable Typeが使われることが多いが、ブログの書き込みそのものではなく、トラックバックが増加するとメモリ消費量が増大することによるものだ。
さて、それでは現状、提供されているサーバーのメモリの状況はどうだろうか。専用サーバーでは、「1GB未満」が3割以上を占める。推測に過ぎないが、これは、ほとんどが512MBであろう。これだとデータベースやブログ用サーバーとしては心許ない。
仮想専用サーバーでは、「3GB未満」および「3GB以上」が、それぞれ3割を超えている。これは、複数のバーチャルサーバーを仮想化技術により動作させていることから、メモリ不足に陥らないように、多くのメモリを搭載しているわけで、このデータから「専用サーバーより多くのメモリを搭載しているので、メモリ消費が多いと思われるシステムでの仕様に適している」とはならないことに注意しよう。
サービス停止、データ消失が許されないならRAID構成を選択
ハードウェアでもっとも障害が発生しやすいのは、ハードディスクだ。そこで、冗長化構成でも最初に手をつけるべきところがハードディスクということになる。特に重要な情報を扱っているデータベースサーバーなど、バッチによるバックアップでは不十分なものについては、RAID1によるミラーリングシステムを採用しているサーバーを選択するのがよいだろう。費用面では割高になるが、データ保全の重要性には代えられない。
また、こうすることで、ディスククラッシュによるサービス停止の可能性も減少させることができる。
さらに冗長性を高めるなら、サーバーを複数台構成にするのがよいだろう。RAIDによるミラーリング構成では、電源のトラブルには対応できないが、複数台構成であれば対応可能だ。
ディスク交換のタイミングも確認しよう
「ハードディスクはいつかは壊れるもの」という認識を持つことで、無用なトラブルが回避できる。一般には公開されていないことが多いが、契約の段階でハードディスク交換のタイミングを確認するとよいだろう。「問題が発生なくても2年経過ごとに交換」としているレンタルサーバー事業者もあるが、「壊れたら交換」としている場合もある。
無償で回線帯域を保証するというサービスも
基本的なコースでは、ベストエフォートとなっており、帯域保証がないのが普通だ。この場合、回線を共有している他のサーバーが多くの帯域を占有するようだと、ネットワーク性能が悪くなる可能性がある。こうしたユーザーの不安を解消するために、帯域保証を行うサービスもある。グラフ6を見てほしい。
専用サーバーでは、3割弱が「非公開」となっているが、同程度、有償で帯域保証を行っている。また、1割強は無償で帯域保証を行っている。
仮想専用サーバーでは半数以上が「非公開」となっているが、1割弱は無償での帯域保証を行うという結果となっている。
パソコンゲーム、携帯電話向けゲームや動画配信などのコンテンツ提供サービスなどの用途で使用するサーバーであれば、帯域保証のオプションを利用しない手はないだろう。ただし、保証帯域が1Mbps単位なのか、10Mbpsや100Mbps単位なのかといったことまでは、このグラフから読み取ることはできない。また、設定されている単位もレンタルサーバー事業者ごとに異なるので個別に問い合わせを行って確認してほしい。
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