税理士から見た「電子帳簿保存法の改正」、データ保存方法にもリスクあり【パイオニア調べ】
パイオニアは、「電子帳簿保存法の改正」に関する調査結果を発表した。現役税理士(実務経験者)111人から回答を得ている。
生産性向上や記帳水準向上を目的に、「電子帳簿保存法」が2022年1月に改正された。主な変更点は「国税関係帳簿書類の電子化要件の緩和」と「電子取引に関するデータ保存(7年間のデータ保管義務)」の2点だが、準備不足などの理由から2年の猶予期間(2024年までに完全義務化)が設けられており、多くの企業が対応に取組中だ。
電子帳簿保存法の改正で注視される「データ保存のリスク」とは?
まず担当しているクライアントの主流は、個人事業主や小規模事業者が7割近くを占める。これらクライアントの「電子帳簿保存法の改正」への対応度合いを聞くと、「まったくいない」3.6%から「ほぼ100%」2.7%まで千差万別だが、最も多かったのは「50%程度」18.2%だった。7割以上が5割以下の対応にとどまっている。
「問い合わせ内容で最も多いもの」は、「対応した会計・精算システムについて」59.1%と最多で、「各制度に応じた具体的な対応方法」50.9%、「電子取引の電子データの保存方法について」42.7%がそれに続いた。
電子帳簿保存法の改正では、文字どおり“保存方法”が重要だが、「実際に採用している保存先」では「USBメモリ」26.9%が最多で、「SSD」18.3%、「HDD」17.3%を大きく上回る。USBメモリは汎用面で便利だが、帳簿などの重要情報を保存するには心許なく、実際にさまざまな紛失事例も多発しているため、今後のトラブルが予想される。
そこで「データ保存の課題やリスクとして考えていること(3つまで)」を聞くと、「データを誤って削除・上書きするなどのリスク」51.0%、「機器の故障などによるデータ消失」48.1%、「長期保存性(経年劣化、買い替え、データ移行が必要など)」39.4%などが上位だった。こうした面でもUSBメモリは最良とは言いにくい。パイオニアではUSBメモリに対して、媒体紛失・セキュリティ・データ上書き・データ消失のリスクについて、すべて「高」と評価している。
最後に「電子帳簿のデータ保存で重要だと思うこと(3つまで)」を聞くと、「セキュリティ(パスワードの設定など)」50.0%、「データ消失リスクが少ないこと」45.5%、「長期保存できる耐久性」32.7%が上位だった。ストレージの特性を踏まえて媒体を選ぶだけでなく、バックアップ方法や日々の運用についても、堅牢な手順を構築する必要があると思われる。
調査概要
- 【調査対象】実務を行っている税理士
- 【調査方法】アンケート調査
- 【調査時期】2022年10月15日~18日
- 【有効回答数】111人(おおよその担当クライアント:個人事業者24%、100人以下の小規模事業者43%、100人~1000人の中規模事業者17%、1000人以上の大企業14%、そのほか2%)
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