BtoBマーケティング最前線

量産型SEOはもう通用しない! AI時代のコンテンツ戦略で重要なのは「質と中身」「届け方」を見直すこと

必勝法が通用しないゼロクリック時代。アクセス減をチャンスに変える、AI時代の新たなコンテンツマーケティング戦略。

野本 纏花

7:05

ゼロクリック問題の勃発や、運用型広告のコスト高騰など、従来のマーケティング手法が、急速に効力を失いつつある。広告やSEOで新規の見込み顧客を獲得し、コンテンツを通じてエンゲージメントを高め、購買までの道筋を作っていく——。そんな必勝法が通用しなくなったいま、「このままコンテンツマーケティングを続けていて良いのか」と不安を覚えるのは当然だ。

AIを活用してコンテンツの量産スピードを上げるだけでは、この荒波を生き延びることはできない。AI時代のコンテンツ戦略をどう描いていくべきなのか。

『いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本 人気講師が教える「信頼される」企業になるための情報戦略』の著者であり、イノーバ代表取締役社長CEO 宗像 淳 氏に話を聞いた。

コンテンツマーケティングは内製化の時代へ

——コンテンツマーケティングを取り巻く環境の変化を、どう捉えていますか。

まずBtoCでは、昨今のAI対策に加え、SNSなど広告以外のチャネルでもタッチポイントを作っていかなければならないため、広義のコンテンツマーケティングに力を入れる動きは、引き続き広がっていると思います。

一方のBtoBでは、これまで営業偏重だった企業が、徐々にマーケティングを強化している印象です。少人数かつ兼務でマーケティングに取り組み始めたところから、少しずつチームが大きくなって盤石になるにつれ、「当初はコンテンツ制作を外注していたけれど、せっかくAIもあることだし、これからは内製化していこうか」という動きが見られます。

——内製化の動きは、BtoCでもありますか。それともBtoBだけの特徴でしょうか。

むしろ内製化の動きはBtoCのほうが早くからありました。運用型広告を出稿したりSNS施策を実行したりするには、コンテンツをつくり続ける必要がありますから、都度外注していたらコストがかさみますし、内製化したほうがクオリティもコントロールしやすいですよね。それに、GoogleやMetaなどのプラットフォームにAI機能が搭載され、細かな手動設定が不要になったことで、広告運用の難易度が下がったことも背景にあると思います。

イノーバ CEOの宗像 淳氏(イノーバ提供)

AIによってWebサイトの役割はどう変化した?

——コンテンツの使われ方や、コンテンツマーケティングの目的に、大きな変化はありませんか?

そうですね。そこはそれほど変わっていないと思います。とはいえ、直近では検索経由での流入が激減していますので、コンテンツマーケティング界隈は、いわゆるAIOやLLMOの話題で持ちきりです。「ヤバい。AIのせいで約95%もアクセスが減っているぞ!なんとかならないのか!?」と。

——実際、減少したアクセスをコンテンツマーケティングの力で回復させることはできるものなのでしょうか。

いや、残念ながら難しいと思います。AIによって、ユーザーの検索行動や検討の進め方がガラッと変わってしまっているからです。

以前は、検索エンジンで調べながら情報収集をして、「こっちがいいか?それともあっちがいいか?」と検討を進めていたと思いますが、いまはもういきなりAIに相談しますよね。

しかし、これは見方を変えれば、「今アクセスしてくれる人は、以前アクセスしてくれていた人よりも興味・関心が高い」ということです。だってAIに相談して、比較・検討が終わっているにもかかわらず、それでもアクセスしてくれているわけですから。

——なるほど。AIによってアクセス数は減っても、ユーザーの質は逆に高まっているんですね。

そうです。企業のWebサイトが「比較・検討のための場」から「最後に購入を決めるための場」へと移ってきているとも言えます。この変化による影響は大きいですね。

AI時代は既存顧客に向けたコンテンツ戦略を

——AI時代の顧客行動の変化に合わせて、企業はコンテンツ戦略を変えなければならないのでしょうか。

間違いなく、変えなければなりません。見直すべき要素は、コンテンツの「質と中身」と「届け方」の2点です。

見直すべき要素1質と中身

まずは「質と中身」について。昔はオウンドメディアが万能でしたので、正しくSEOをしていれば、しっかりとアクセス数を稼ぐことができ、継続的にコンテンツを蓄積すれば、ある程度、見込み顧客の獲得数を予測することもできました。SEOのテクニックを駆使して、ねらいたいキーワードで上位サイトの構造的な特徴を踏まえて質の高い記事を作成すれば、上位表示されてアクセス数を稼げたからです。

ところが、AIは検索結果を参照して回答を生成するので、いまもSEOの重要性は高いとはいえ、もうかつてのようなわかりやすい必勝パターンは消失してしまっています。

さらに、YouTubeのような、もともとBtoCで影響力が強かったチャネルがBtoBでも影響力を強めているなかで、他社と似たり寄ったりの既視感のあるコンテンツを作ってしまうと、ユーザーだけでなく検索エンジンにも見放されてしまうでしょう。「本当に刺さるコンテンツ」や「ポジティブな印象を残すコンテンツ」がどういったものなのか、いま一度考え直さなければならないときが来ているのだと思います。

見直すべき要素2届け方

次に「届け方」について。昨今、海外では、YouTubeやポッドキャスト、ニュースレターなど、ユーザーが購読・チャンネル登録するような「サブスクライブ方式」が優勢であると言われています。

ですが、検索エンジンやSNSの先行きが不透明、かつ発信すべきチャネルが多様化しており、こちらもまだ明確な答えがあるわけではありません。届けたいユーザーにコンテンツを届けるには、コンテンツのあるべき姿とともに最適な届け方を模索し続ける必要があるでしょう。

——そのようなゲームチェンジが起きているいま、「このままコンテンツマーケティングを続ける意義はあるのだろうか」と不安を感じている方も少なくないかと思います。現在のような状況下でも、続けたほうが良いのでしょうか。

結論から言えば、「他に代替手段がないため、続けるしかない」というのが実情です。広告費が高騰し続けるなかで、非広告領域の施策として何ができるかを考えてみると、結局、SNSやYouTube、ポッドキャスト、メルマガなどを通じて、優れたコンテンツを発信するほかに、選択肢はないはずです。

もっとも、従来のように新規顧客だけに目を向けたコンテンツマーケティングに固執するのは得策ではありません。たとえば、弊社が支援するEC企業でも、これまでは店舗とECを切り分けて考えていたところから、「Google広告に多額の費用を払うくらいなら、すでに店舗に足を運んでくれている顧客をしっかりとECへ誘導しよう」という方針に切り替えています。

コンテンツを通じて既存顧客にさらにファンになってもらい、リピート率を高めたり、購入額を増やしてもらったりするほうが、コンテンツマーケティングの難易度は下がりますから。加えて、1社単独で行う施策にこだわらず、複数社でコラボレーションしながらコミュニティマーケティングにも挑戦するとか、そこにインフルエンサーも絡めてみるなど、企画力によってコンテンツの価値を高められる余地は、まだまだあると考えています。

発信者の“確からしさ”が重視される時代へ

——そうなると、これまでBtoBで一般的だったコンテンツによる「リードナーチャリング(顧客育成)」の発想も見直すべきなのでしょうか。

そうですね。BtoBでは、「広告や展示会でリードを集め、片っ端からインサイドセールスが電話をかけて、商談を獲得する」という手法が横行していて、実際にコンテンツで顧客育成に成功している企業は、見たことがないんですよね。

ましてや、いまはAIを活用した営業メールが大量に届くようになっています。AIが送った営業メールを、受信側のAIがフィルタリングする。「攻める側」も「守る側」も、情報を「提供する側」も「受け取る側」もAIという、残念な構造が生まれています。

それでも「この会社の情報だけは絶対に受け取りたい!」と思われるコンテンツを作っていく必要があるわけですが、これだけ情報が溢れていると、発信者の“確からしさ”によってしか、コンテンツの良し悪しを判断しようがありません。

買い手が選びやすい状態を作るために、役立つ情報を継続的に発信することも重要だ(「いちばんやさしいAI時代のコンテンツマーケティングの教本」より)

そのため、企業のコンテンツであっても、専門性が高いとか、しっかりとした実績があるとか、誰とコラボしているのかといったことが、より一層重視されるようになるでしょうし、企業名ではなく個人名で発信したほうが記憶にも残りやすく、継続的なエンゲージメントの構築にもつながりやすい。これからの潮流は、企業発信から個人発信へとシフトしていくのではないかと見ています。

——フォーマットやコンテンツの種類といった観点では、どのように優先順位や注力ポイントを決めていけば良いでしょうか。

もし自社ビジネスの競合が限られており、SEO対策の難易度もそこまで高くない領域であれば、従来のブログやコラムなどのテキストコンテンツから始めるのが、依然として有効だと思います。

逆に競合が多く、SEO対策の難易度も高い領域なら、レッドオーシャンなテキストでの勝負は避け、動画や音声コンテンツに注力するほうが賢明でしょう。これらを生み出しやすい場づくりに力を入れるのも有効です。僕の感覚的には、AIによって検索全体のパイが従来の半分から3分の1ほどに狭まっており、競争度合いは2〜3倍にまで高まっていると考えたほうが良いからです。

海外では、数年前から長尺コンテンツが流行していて、YouTubeやポッドキャストで2時間超のコンテンツがザラにあります。おそらくこれから日本でも、そうした超長尺で密度の濃いコンテンツと、短尺で消費しやすいコンテンツの二極化が進んでいくと考えています。

AIコンテンツの落とし穴は“ハルシネーション”

——AIを活用してコンテンツを量産する企業が増える一方で、品質管理方法に懸念を抱く声も多く聞かれます。AI活用で陥りがちなリスクや注意点についてどうお考えですか。

気をつけなければいけないのは、やはりハルシネーションや事実誤認の対策です。

生成AIは仕組み的に手前の情報をもとに次に来る情報を予測しているだけなので、ある意味「予測マシン」でしかないです。人間とは違って、生成AIは事例が出てきそうな文脈だったら存在しない数字、人名で事例を作り出してしまうリスクがあります。そのため、ファクトチェックやハルシネーションをそのままスルーしないための工夫が必要になります。

これを象徴するようなおもしろい事例があります。「FDE(Forward Deployed Engineering)」という言葉があるのですが、AnthropicやOpenAIなどもコンサル会社のようなものを立ち上げていて、業務をAI化するための「AI業務コンサル」のようなことをやっています。

FDEについては非常に報酬が高いという話もあり アメリカなどで流行っています。そこで、私がAIを使ってFDEの市場調査を行わせた際、FDEについて発信しているWebサイトの6割か7割に嘘の情報が含まれているという結果が出ました。なぜかというとFDEの会社なので、Webサイトのコンテンツも完全自動で出していて、ファクトチェックをしていないんです。

AIが情報を集めてクロスチェックさせるとすぐに嘘が見破られてしまうような状況が起きています。そのため、ファクトチェックやハルシネーションを発生させない使い方・作り方というのが、土台としてないといけないと思います。

ハルシネーションが起こりそうなところは決まっているため、AIにダブルチェックさせる仕組みが有効です。Claude CodeのようなツールではAIを複数立ち上げてお互いにやり取りさせることができますが、たとえば「AIエージェントA」が書いた記事を、別の「AIエージェントB」に「ハルシネーションがある前提で徹底的にチェックさせる」といった方法があります。AIは自分が作ったコンテンツには甘いものの、他のAIが作ったものに対してはシビアに欠点を指摘できる特性があるため、そのような方法で解決できる部分もあります。

 なお、読んで「なるほど」と思ったり、おもしろいと感じたりする部分は、AIはとても苦手です。AIにお笑いやギャグ、大喜利などを作らせると、いかにAIがお笑いに弱いかがよくわかります。人の心を動かしたり、感動させたりすることは、まだそれほど得意ではないようです。AIは汎用学習をしているのでアウトプットも汎用的なものになり、心が動かない、面白くないというところはある気がします。

——その「おもしろい」についてですが、やはりAI向けにコンテンツを作った方がいいのか、それとも人間の心を動かすコンテンツを作った方がいいのか、どちらでしょうか?

今は過渡期で、例えば先日もX(旧Twitter)上では「もうWebサイトは人間が読むものじゃない、AIに読ませるものなんだ」という意見がありました。Webサイトも言わばデータベースですので、AIがMCP(Model Context Protocol)で読み取るようになり、人間がWebサイトを読まないような近い未来もあり得る、という話です。

ただ私はまだそこまでAIが技術的に成熟し切っていないのではないかという仮説を持っています。個人がプロンプトを叩いていても「あれ?」と感じるアウトプットをするレベルなのに、会社間のお金のやり取りやECサイトでの買い物を安心して任せられるかと言ったら、そこまでではないと思っています。

今までコンテンツもWebサイトも、興味の度合いが異なる人たちが混じって読みに来ていました。しかし、これからは興味度合いの低い人はAIと対話をするようになるので、検討が進んでいない人の場合はWebサイトに来なくなるのは間違いないと思います。

ただ、車のディーラーの例えで言うと、現物を見ないで車を買う人はいないわけです。それと同じで、Webサイトだからこそできる見せ方や出し方をどんどん追求することになっていくのではないかと思います。未だにWebサイトには部分的な情報しか出ていない会社もたくさんあると思いますし、もっと工夫できる余地はあります。コンテンツも作りやすくなったこともあり、「もっと工夫できるじゃないか」というように今後なっていくのではないでしょうか。

AI時代のマーケターに求められるマルチスキル

——今後、AIを使いこなすマーケターが増えていくなかで、成果を出し続ける人と、マーケターとしての価値を失ってしまう人にわかれていくと思います。その明暗を分ける「分岐点」はどこにあるとお考えですか。

まず「マルチスキルなマーケターにならなければいけない」ということです。AIに聞きながらある程度の作業ができてしまう時代になったときに、一つの専門性だけで戦える時代は終わる気がしています。そのため、「フルスタックマーケター」を目指すというのは一つの方向性としてあると思います。

 また、従来のマーケターはやや文系寄りで、プログラミングや技術的な実装はエンジニアに頼ることが一般的でした。しかし今後はその境目が消え、文系であってもプログラミングやAI活用まで足を踏み入れ、ITやAIを使いこなすことが当たり前になるのではと思います。

某社で働いていた知人から聞いた話ですが、先輩から「マーケティングとは何か」と問われた際に「トップライン(売上)を伸ばすこと」と回答したところ、「マーケティングは単にトップラインを伸ばすことではない。P/Lを伸ばし、どれだけ利益を生み出せるかだ」と強く説教されたそうです。

実はここに重要な真実があると思っています。結局マーケティングの本質とは、「売れる可能性のあるプロダクトやサービスを最速で売り、どれだけ利益を生み出せるか」であり、これは実質的に「経営」とイコールです。

そういう意味だと、今のマーケターはマーケティングの職域に閉じがちで経営との接続が弱いですが、今後は経営側ももっとマーケティングがわかるようになってくると思います。そうなると、マーケターも経営の言葉を喋れなければいけない時代になるので、経営とマーケティングが一体化していくというのもあるような気がしています。

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