アクセス解析ってどこまでやるべきか? ―― マクロとミクロを意識すれば見えてくる
当クリニックの代表。
イケメンの研修医。
優しい天然ボケの研修医。
ここ「アクセス解析5分クリニック」には、Webサイトについてさまざまな悩みを抱えた患者が、毎日のようにやってくる。研修医の来栖と綾瀬はデコボココンビだが、院長の丸山先生がとにかく名医。たった5分ですべての悩みを解決する!というのだ……。(登場人物紹介を詳しく見る)
今回のお悩み
アクセス解析ってどこまでやるべき?
マクロとミクロ
いきなりだけど、アクセス解析って、どこまでやったらいいのかしら?
どうしたの!? 確かに急だね。
私たち、初めの頃よりはだいぶレベルアップしたと思うわ。でも、いつまでやっても不安が取れないというか……。常にもっと調べることがあるんじゃないかと感じてしまうのよね。
ちょうど前回(アクセス解析で大きな問題点が見つからず、困っています)の僕の逆だね(笑)。先生の言葉を借りるなら、やらなくてもいいんじゃない?
お仕事としてそれでは失格よ。もっと調べないといけないと思うのよね。
レベルが高いWebアナリストが思いつく指標などは、なかなか自分では思い付けないよね。だから、だんだん見るところがなくなっちゃうのかも知れないね。
二人とも、同じ時期に、似たような悩みを持ったんだね。
先生、なんで、ある一線から、アクセス解析が急に難しくなるのでしょうか?
おそらくそれはね、まずアクセス解析に、“マクロ”と“ミクロ”の2つのアプローチがあることを意識していないからだよ。
マクロ? Excelのマクロですか?
いやいや、そのマクロは操作を自動化するものだね。
そうじゃなくて“マクロのアプローチ”というのは、全体を見ることだよ。データを取得し、精査し、うまくグラフなどを用いて可視化することで、ある法則性や気付きを得ることが主目的。これはちょっと数学っぽい話になる。
あぁそれです! 私がいつも反省している理由は、マクロのアプローチができていないからです。
マクロのアプローチは、いわゆる「統計・データ解析」(データマイニング)という分野だね。
私は、学生時代に数学と統計学が全然ダメだったんです。だからダメなのかなあ……。
大丈夫。マクロのアプローチには、ハイレベルなものから、単純に取得できる値を折れ線グラフで確認するものまでさまざまだ。書籍を見て、真似できそうなものから、やってみるのがいいと思うよ。
ミクロのアプローチも立派なアクセス解析
もう一方の“ミクロのアプローチ”は、全体ではなく部分・個を見るもので、顧客の足あとを辿るようなアクセス解析だ。
コンバージョンしたユーザーのキーワードを一個ずつ確認するようなアクセス解析ですか?
そう。僕がこの連載で触れているのは、どちらかというとミクロ視点のノウハウが多い。
なぜなのですか?
データマイニングの知識がなくても、誰でもできるからだよ。あとは、サンプル数が多くなくてもできる。つまりどんな中小企業でも実行しやすいんだ。
確かに、私でもできました。
ミクロのアクセス解析に必要なメインの知識は、統計学というよりは、心理学。まあ、常に両方あるほうが望ましいけど、人により得意不得意や多少の偏りはあるからね。
大切なのは“改善に結びつくヒント”を得ること
ところで、二人はアクセス解析っていうと、何を思い浮かべる?
私は……Googleアナリティクスを見ることかしら。
僕は、テクニカルな計測の話ですね。あとはデータ・マイニング。
「アクセス解析をする」ということの定義は、今や多種多様で、かつ曖昧だと思う。そしてその曖昧さが、綾瀬さんの不安を呼ぶ一番の原因だと思っている。
どういうことですか?
「アクセス解析」の定義が曖昧なために、やるべき範囲が決定しないんだよ。そのせいで、いい話を聞くと、全部自分でやらなきゃ!ってなっちゃう。
確かに、よく考えてみると、私は「Googleアナリティクスを見ればいいだけ」とは思っていないですね。
ちなみに僕の定義をいうと、“Webサイト改善のヒントを得るための計測と分析”が、現代のアクセス解析の範囲になってきていると思う。
改善のヒントを得る調査ってことは……極端な話、顧客アンケートなんかもアクセス解析だということですか?
本来はアクセス解析の範囲ではない。だけど周囲のアクセス解析に対する「Webサイトで結果を出す」という期待と役割から逆算すると、そこまで含まれてしまう。
なるほど。確かにWebサイト改善を考えるために、顧客アンケートは効果的ですもんね。
会社にもよるけど、Web担当者は結果を出すことが求められてしまう。それはもはや事業責任者という意味になるのだけど、そうなってくると、多角的な分析が求められるよね。そうしないと結果が出ないから。
なんだか、わかってきました。アクセス解析の目的を「サイトで結果を出すこと」だとすると、Googleアナリティクスだけを見ていても、結果は出ないこともある。そうなると多角的な分析をしなくてはいけない。だから範囲がどんどん広くなっている、ということですね。
マクロとミクロの関係
多角的な分析が必要だってことがわかると、マクロとミクロって話もより理解しやすくなる。たとえば、個人商店が売り上げを伸ばしたいなら、自分の顧客の声をしっかり聞いて、改善を行うのが基本だ。だけど、数か月後に目の前に大型スーパーが作られることを知らなかったら、どうなるだろう?
そのたとえだと、前者がミクロの視点で、後者がマクロの視点ですね。
そう。事業をうまくいかせようと思ったら、両方の視点が必要なんだよ。ときに両者が矛盾することもあるけど、うまくバランスをとって、進めていくことが求められるんだ。
なんだか、やることが多いですね。
だから「範囲を限定する(フォーカスを絞る)」ことが重要になってくるんだ。自分はどこが得意で、どこが不得意なのかを意識し、あるレベルからは、積極的なアウトソーシングなどの推進を考えなくちゃいけない。プロにはプロの仕事があるからね。少なくとも、アクセス解析に関わるなら、マクロとミクロの視点は、意識したうえで仕事をしたほうがいいよ。
まとめ
アクセス解析でどこまでやるべきか? そんな不安が出てしまうのは、そもそも定義が曖昧で、アクセス解析の範囲がぼやけてしまっているからだろう。アクセス解析を“Webを改善するための計測と分析”と位置づけるならば、少なくともミクロとマクロの視点を意識して行うと、整理がつきやすくなる。「自分はどちらが得意か?」「自分に求められている役割はどちらか?」を意識するだけで、ずいぶん気が楽になるだろう。
一方で、Web担当者としては、事業責任者のように、さらに多角的な分析が求められてしまうのも事実だ。それは、もはや経営であり、アクセス解析だけという話でもない。つまり、Web担当者は1人の経営者だとすると、いい意味で自分の得意分野を伸ばし、あとは有識者の力も借りるつもりでやったほうがよい結果を生みやすい。ちょっと気を楽にして、チーム戦で挑むくらいの気持ちでやってみよう。
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