広告主、広告会社、プラットフォーマーが語るモバイルマーケティングの将来「スマホ時代のネットとモバイル対応」
スマホ時代のネットとモバイル対応
変化の過渡期における企業戦略を問う
第二部のパネルディスカッションでは、「スマホ時代のネットとモバイル対応」をテーマに、東急エージェンシーの菊井健一氏がモデレーターとなり、第一部から引き続きD2Cの細川氏と、サントリーホールディングスとして君野氏が登壇。さらにNHN Japanの山浦総一郎氏、花王の広末守正氏、計4名をパネリストに迎えてディスカッションが進められた。
スマートフォンサイトの制作は
PCとフィーチャーフォンどちらから取り組むか
まず菊井氏は、
と話した。
各パネリストの紹介とスマートフォンへの取り組みの発表が行われた後、各社のスマートフォン対応レベルに対しての質問が行われた。比較的早い取り組みが行われているサントリーホールディングスでは、「2010年くらいからトップページや第二階層のスマートフォン対応が行われていた
」と君野氏は話す。製品情報ページや顧客からの要望が高い動画チャンネルの「サントリーチャンネル」、キャンペーン一覧などの対応を優先し、続いてレシピサイトなど横断型のコンテンツを対応していく予定だ。また、商品ブランドサイトのスマートフォン対応も加速することになる。
それを受けて、細川氏から「スマートフォンに対応するからといって大きな予算をかけづらい中、社内のリソース配分はどうしているのか。元々フィーチャーフォンの人がスマートフォンをやっているのか、PCの人がスマートフォンをやっているのか」という質問がされた。
それに対して花王の広末氏は、
と話した。
また、菊井氏は
と説明した。
細川氏も、
と話した。
オンラインゲームのハンゲームやWebサービスのNAVER、Livedoorといった事業を行い、スマートフォンアプリも数多くリリースしているNHN Japanの山浦氏は、
と同社の現状を説明した。
続いて菊井氏は、「第一部で、男性はPCの代わりにスマートフォンを使い、女性はフィーチャーフォンの延長でスマートフォンを使っているという話しがあったが、スマートフォンは何に近いと考えているのか」とパネリストに質問した。
広末氏は、
細川さんからフィーチャーフォンからスマートフォンサイトを作るケースが多いと聞かされたが、我々はPC用サイトからコンバートする結論に落ち着いている。フィーチャーフォンサイトをスマートフォンから見た場合、UIが物足りなく、お客さんが求めているのはPCに近いものだと思う。
と話す。同様に山浦氏も「スマートフォンはフィーチャーフォンに比べると多機能すぎるので、どちらかと言えばPCに近いと思う」と話した。
一方で、君野氏は
フィーチャーフォンのコンテンツを資産として活用するのも有効な対応だと思うが、今後スマートフォンユーザーがフィーチャーフォンユーザーを超えてくることを考えれば、PCのコンテンツを活用するか、スマートフォン独自のものを作った方がよい。スマートフォンにはスマートフォン用のサイトを作りたいというブランディング側の要求もあるので、スマートフォン専用のサイトを作りつつ、PCのコンテンツをツールなどで変換することも検討している。
とした。また、君野氏は
スマートフォンはPCか、フィーチャーフォンかと聞かれると、矛盾するようであるが、個人的にはどちらでもないが、どちらにも近しいと考えている。いつでも持ち歩けるという、日常行動や生活支援を考えるとほぼフィーチャーフォンと同じ関係性になるし、情報量の多さや画面の美しさ、活用方法や機能はPCになる。
と答えた。
これに対して細川氏は、資料を見せながら、スマートフォンでの検索利用頻度はPCに近いこと(利用者平均検索回数/週、PC35.7回、スマートフォン26.1回、フィーチャーフォン11.5回)、モバイルユーザー全体のうちスマートフォン利用者は26%であるが、モバイル検索利用量は61%となることなどを説明し、購買プロセスと利用デバイスという調査でも、PCの代替としてスマートフォンが使われていることが明らかだとした。
フィーチャーフォンはなくなるのか
モバイルマーケティングの将来を探る
次の質問は、「将来的にすべてのモバイルフォンがスマートフォンになると思うか」というものだ。
君野氏は、「すべてがスマートフォンとなり、モバイルデバイスとして一本になっていくと思っている。各調査会社の予測よりも早く、2年後には大きく状況が変わっているのではないか
」と話す。一方で山浦氏は「すべてスマートフォンになってほしいとは思うが、2~3年後に実現するかは難しいと感じる。自分の両親もフィーチャーフォンだし、スマートフォンを使いこなすのは難しいと思う
」と言う。また、広末氏は「2011年4月にロードマップを作るとき行ったユーザーインタビューでは、ネットを使って検索やコミュニケーションを行う人はすでにスマートフォンに移行しつつあり、それが必要ない人はフィーチャーフォンのままという二極化があると思う
」と話した。
それに対して細川氏は、
いつかという話はあまり意味がない。企業がプロモーションやマーケティングでどのように使うかという視点では、日本は2000年頃から通話やメールだけでなく、決済機能などのツールとしての利用を付加しており、モバイルマーケティングとしての実績を持っていると思う。
と話した。
この話の流れの中で、今回登壇している5名中4名がすべてスマートフォンとフィーチャーフォンの2台持ちであることを確認した菊井氏は、
いずれ何かに収束していくという話の中で気になるのは、震災時に携帯電話が重要なライフラインとして注目されたこと。ライフラインと個人的にはおもちゃだと思っているスマートフォンを一緒にするのは抵抗がある。現在の一番の課題にバッテリの問題があるが、それも含めて携帯電話が担っている役割をそのままスマートフォンにどのタイミングでスイッチしていくかということは、かなり注意深く見守っていくべきだと思う。
と話した。
最後に菊井氏は、「今年はスマートフォン推しか、フィーチャーフォンはどうするのか」と言う質問で締めくくる。
君野氏は、
コンテンツよりもプラットフォーム作りを行わなければコンテンツを乗せられないので、今年はそれを急いでやるためにもスマートフォン推しとなる。一方で、まだまだフィーチャーフォンを使っているお客さんも多いため、フィーチャーフォンの運用も引き続き行っていく必要がある」と話す。また、先ほどのスマートフォンを高齢者が使いこなせるかという山浦氏の話に答える形で「タッチパネルは銀行ATMに利用されているように高齢者にも使いやすいものだと個人的には考えている。高機能化が進むスマートフォンだが、逆に機能を制限したようなものも出てくると思っている。そうなれば、すべての世代でスマートフォンが使えるようになるのではないか。
と話した。
山浦氏は、
広告宣伝費は去年よりも増えているので、どちらかと言えばスマートフォン推しとなる。一方で、フィーチャーフォンの広告宣伝費はほとんどない。ただし、最も多いのはPCであって、スマートフォンにはまだそれほど広告宣伝費をかけているわけではない。メインはPCで、売上構成もPCが多い。
と話した。
広末氏は、
フィーチャーフォンを続けることは間違いないが、スマートフォンに関してはPCサイトをコンバートする方がよいと考えている。実際にPCサイトをスマートフォン用に変えたときにユーザーの行動がどう変わるかという実験の年になると思う。
と説明した。
まとめの言葉を求められた細川氏は、
我々としてはフィーチャーフォンの市場が今すぐになくなるとは思っておらず、前述のように2014年頃にスマートフォンと半々になることを予測している。ただし、スマートフォンでイメージインターフェイスやマルチタッチが実現できるようになったのはすごいことで、自分の子供も3歳くらいから検索は行えないが普通にスマートフォンで動画を見たりしている。テクノロジーの進化があって人のライフスタイルは変わっていくので、今後どのように変わっていくか、調査などを行いながら想像していかなければならないと思う。
と話し、今後の未来を想像していくことが重要であることを強調した。
最後に菊井氏は、
全般的に大きなうねりの中にあることは間違いない。変化の最中なので、正解が必ずしも1つではなく、みなさんが自分の正解に進んでいるのだと思う。いずれにしても、要注目であることは間違いなく、今後もスマートフォンに注目していただきたい。
と話し、第二部をまとめた。
オリジナル記事はこちら:「何が変った? スマートフォン急増によるネットとモバイル」第二部 2012年3月27日開催
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